第37話 地下通路
走っているとすぐにバウスさんの声は聞えなくなり、何かしらの施設の壁だらけだった景色は段々と閑静な住宅街のような感じに変わってきた。
「ねえどこ行くの?」
「ん~、もうすぐ着くよ」
「ふ~ん」
ドレイクは珍しく言葉通りにすぐに止まった。何をするのかと思えば石壁に向かって杖を向け何かしらの呪文を唱えていた。
ドレイクの呪文が終わると、石壁はガチンゴチンと音を立てながら変形し、少しすると目の前にはアーチが出来ていた。アーチの向こうには小さな鉄の門があり、その向こうには木で出来た扉があった。
ドレイクは悪そうな顔でにやりと笑うと
「カミラの家へようこそ」
とそう言った。
「……許可もらったの?」
「……いや、まだもらってない」
「……殺されない?」
「…………き、綺麗に使えば問題無いんじゃないか?」
ドレイクはそう言うと下手くそな口笛を吹きながらアーチをくぐっていった。
*****
「やっぱりこうなったなぁ~」
ドレイクはカミラさんのソファに寝転がり、おいてあった干し肉を囓っている。
「さっきは中将の居場所を探して手紙を渡すって言ってたけどさ、どうやって探すつもりなの? なんか知ってるの?」
「いぃや、なんにもわからん」
「じゃあどうするの?」
「覚えとけ、大体の大きな街には情報屋ってのがいるんだよ。そいつらならその街の事なら大抵何かしらは知ってる。だからとりあえず情報屋に聞いて回るところから始めよう」
「オッケー」
――翌朝
「じゃあそろそろ行くか」
「どこ行くの?」
「そんなもん決まってんだろ、スラムだよ」
「スラムってあのスラム? そんなとこに何しに行くの?」
「ガキンチョに仕事をしてもらうんだよ」
「?」
「まあ俺だけでも大丈夫だからここにいてもいいぞ?」
「いや、行くよ。一人でいてもつまんないし……一個訊いていい?」
「ん? なんだ?」
「それってどこにあるの?」
「門の外だな。俺たちが入ってきた門とは別の門の外に広がってる」
「そこにはどうやって行くの?」
「どうやってって、そんなもん歩いてに決まってんだろ?」
「いや歩いて行くのは分かるけどさ、僕たちって昨日脱獄したわけじゃん?」
「そうだな」
「そしたら普通は探されてる訳じゃん?」
「うん」
「むりじゃん」
「まあ地上は見張られてるかもなぁ」
「……地上はってことは地上以外から行くつもりって事?」
「ご名答」
ドレイクはニヤッと笑うと玄関を開けた。
何をしに行くのかはよく分からなかったし、どうやって行くのか見当もつかなかったが、兎に角ドレイクについて行くことにした。
玄関の前に出たドレイクは、昨日カミラさんの家に入るときにしたように、今度は玄関の前の地面に向かって呪文を唱えていた。
ドレイクが呪文を唱え終わり立ち上がると、地面からマンホールのような形をした物がせり上がってきた。
蓋を開けるとそこにはそのまんまマンホールの中のような空間が広がっていたが、側面は何もついていないただのツルツルの壁で、しかしその穴はそこが見えないほどに深かった。
「これは……なに?」
「地下通路の入り口だな」
「てことはこれを降りて行くって事だよね?」
「そうだぞ?」
「……え? どうやって?」
「見りゃぁ分かるじゃねえか、飛び降りるんだよ」
「……なぜ?」
「……いや、下の地下通路に行くためだろ」
「いやいやいや、もぉ~、冗談はいい加減にしてよ~。ほんとはそれ以外にも方法あるんでしょ? 知ってんだから」
「いや無いぞ? シンプルに飛び降りるだけだ」
「……なぁんで飛び降り自殺みたいな方法しか用意しないのぉ! 普通こういうのには梯子がついてたりロープがついてたりするでしょうがぁ!! なんで飛び降りなのぁ!!!」
「そんなこと俺に言われてもなぁ、作ったのカミラだしなぁ」
「グッ、……なんでカミラさんに注意しなかったの!!」
「アッハッハッハ、お前横暴過ぎるだろ、アッハァー!」
「いやだってこの高さから飛び降りたら絶対死ぬじゃん! よくて下半身粉々だよ」
「イッヒィー、フゥ。そうだぞ、もし誰かが追いかけてきても墜落して死ぬくらいの高さに掘ったって言ってたからな」
「悪辣!! この悪質設計は、わざとだったんかぁぁい!!」
ドレイクは笑いすぎて苦しそうにもだえていた。




