第35話 投獄
「いや、けっして攻撃や偵察で来たわけじゃ無いんだ。ただドパルデュー中将に手紙を渡しに来ただけなんだ」
「ほ~う、そうですか。では中将殿とは知り合いなのですね」
「まあそんなところだ」
「嘘をつくな。お前と中将殿が知り合いなはずが無いだろう。ドパルデュー中将は帝国嫌いで有名なお方なのだぞ」
バウス大尉は声を荒げることも無くただ淡々とそう言い切った。
「いや、申し訳ないがやはり知り合いというと語弊がある。ただ全くの他人というわけでも無いというか」
「苦しい嘘はやめておけ、後々自らの首を絞めるだけだぞ」
デュークは隣でドレイクの言い訳を聞いていたが、それはもう無理だろうと、場所が場所でなければ大声でツッコんでいるところだ。しかしドレイクはひたすらその嘘を突き通すつもりのようだ。
「いや本当に中将は知り合いなんだ。一旦中将を呼んでくれればすぐに分かると思う」
「忙しい中将殿に、帝国嫌いな中将殿にお前のような嘘つきを会わせるわけが無いだろう!」
いつまでも中将の知り合い設定を崩さないドレイクにさすがにイライラしてきたのかとうとうバウス大尉は少し声を荒げた。しかしドレイクは全く退くつもりは無いらしい。兎に角中将を呼んでくれと、その一点張りだった。
「とにかく呼んでくれればわかるから、頼む」
「だめだ、目的を言え」
「頼む」
「だめだ! いい加減にしないと牢にぶちこむぞ」
「この通りだ、頼む」
「もういい! 貴様らは牢屋行きだ! 嘘をつき続けた罰だ! 残念だったな!」
バウス大尉がそう言って扉を開けると、外から3人の兵士が入ってきた。背の低い兵士と合わせて4人で僕たちの腕を後ろ手に縛り、そのままどこかへと引っ張っていく。
連れて行かれたのは牢屋だった。イメージの中にある牢屋そのままだった。しかし鉄格子は頑丈そうで、どこからも抜け出せそうにない。
僕たちを連れてきた兵士達は牢屋の鍵を閉めるとすぐに出て行ってしまった。兵士達の持っていた松明の明かりが届かなくなると、周囲は真っ黒な闇に包まれた。
「なんで手紙届けに来ただけだって言わなかったの?」
「え? 言ってなかったか?」
「うん多分」
「いや言っただろ、・・うん、最初に言ったぞ」
「あれそうだっけ? 中将の知り合いってずっと言ってたのしか覚えてないよ」
「いやちゃんと手紙届けに来たって言ったけどなぁ」
「けどもっと色々説明すればよかったじゃん」
「いやだってよぉ、緊張してたんだよ! 人と話すのが久しぶりすぎてもう、なんか、会話が下手になってんだよ!」
「あっはっは、なるほどね。確かに僕としか話してないもんね」
そんな風に話していると突然近くから
「おいうるせえぞぉ!」
という怒鳴り声が聞えてきた。
「おお怖え」
「やめなよ煽るの」
「ハッハッハ、じゃあ牢屋の雰囲気も味わえたことだしそろそろ手紙私に行くか」
「・・え? 何言ってんの?」
ドレイクが何を言っているのかデュークには本当に理解できなかった。
「だから手紙渡しに行くんだってば」
「だけど・・、無理じゃん」
「なにがだ?」
「渡しに行くの」
「なんで?」
「だって閉じ込められてるから」
「なんだそんなことか」
「そんなことかって! 大事でしょ!」
「いやだってこんなとこから逃げるのなんて余裕のよっちゃんじゃねえか」
「そんなわけ無いじゃん!」
「いやだって誰も見張りがいねえんだぞ? それでまだ魔封じの結界でも張るなら分かるけどよ、ソレも無いんだぞ? 魔法使えば一発じゃねえか」
「そうなの?」
「ああ、だから今回の作戦は変更だ。まず、この牢屋から脱出する。次にドパルデュー中将の居場所を探して手紙を渡す。もし無理だったら王城に乗り込んで王様に直接渡す。まあこれはリスクが死ぬほど高いからやりたくないけど最悪の場合は俺が一人でやる」
「・・・・あのさ、なんでそんな危ない方法しか無いの?」
「それはな・・、俺が安全な方法で何かを成した事が無いせいで安全な方法が分からないからだよ! アッハッハッハ! まあそれにカミラはずっと俺の味方をしてくれてるからな、ちょっとくらいは助けてやらないとなぁ!」
「はぁぁ」
「まあもし何かあったらお前は逃げろ。ドラゴンになればそうそう手出しはされないから、変化の術をといて空飛んで逃げろ。わかったな」
「う、うん」
突然真剣になったドレイクに面食らいながらもデュークは兎に角平和に終わればいいなと、ただそれだけを願っていた。




