第19話 頼み
「そんな名前がDから始まる2人組なんで知らねえな」
「デュークはどう? 知ってるわよね?」
どうしよう、なんて答えるのがいいんだ!?ドレイクはちぎれそうなスピードで横に首を振っているし、カミラは僕の首筋に何故か杖を構えている。オスカー先生は苦笑いしてる。
「あ、そういえば僕まだ文字読めないからDから始まるっていわれてもわからないんだ」
僕の言葉を聞くとドレイクは目を輝かせてニッコニコの笑顔になった。
「なるほどねぇ、そっちがその気ならこっちにだって考えがあるからね。そうね、まずは治療代と薬代とその他手間賃きっちり払ってもらおうかしらね」
その言葉でドレイクの目からは輝きが消え失せた。
「・・ちなみにー、おいくらぐらいでしょうか? たまたま現金の持ち合わせがあんまりないんですけど・・」
「う~ん、オスカー先生は治療代いくら位だと思う?」
「そうですねぇ、デューク君は傷を消毒して軽く固定したり治療しただけですので、う~ん、まあヴィンチ小金貨で1枚ってところですかね。ドレイクさんは傷がひどかったですからね、欠損部の再生と治療が大体ヴィンチ金貨5枚で、ただ魔回路の修復が出来ませんでしたしかわいそうなので1枚くらいなら値引きしてもいいかなと」
「それに私の回復薬と解熱剤が合わせてヴィンチ金貨3枚で、ドラゴンとの戦闘代行がヴィンチ金貨12枚ってところかしらね。だから合計して、えーっとヴィンチ金貨で19枚半ね」
カミラさんがにっこり笑ってそう言うと、ドレイクはげっそりとした顔で小さめの皮袋を取り出した。ドレイクが皮袋をひっくり返すと中からはグリフィンが刻印された金貨が1枚と、1円玉のような小銭がパラパラと落ちてきた。
ドレイクは発火しそうなほど激しく袋を振っていたが、もう何も出てこなかった。
「・・どうにかロワール金貨1枚にまけてもらえないですかね」
「たしかあんた私に借金あるわよね? えーっとあれは、たしか論文を発表するために学会のジジイの推薦が必要だとかなんとかいって、ヴィンチ金貨10枚くらいは貸したわよね?」
「この小貨もつけるんで」
「それ私鋳銭じゃない! いらないわよそんなの!」
(※個人が無許可で不法に作った銭貨のこと)
「おまえ俺がこれ作るのにどんだけ苦労したと思ってんだ! こんなに薄く引き延ばすの普通の奴らには無理だぞ!」
「知らないわよそんなの! どうするの、今全部払えるって言うんならいいけどね。ただもしも今お金に困ってて私のお願いを聞いてくれるんなら、今回の治療費はチャラにしてあげるし借金もなかったことにしてあげる。」
カミラさんは満面の笑みでそういったが、僕にはその頭から角が生え、背中からは禍々しい羽が生えているような気がした。
「クソ、なんだよ、何すればいいんだ?」
「お願い聞いてくれるの! やったー!」
カミラさんはそう言って少女のような喜び方をしていた。ちょっとキツい感じが否めなかったがまあギリギリ耐えてはいた。
「プラジェ男爵がレジスタンス側に力を貸してたって事を王様に報告したいんだけどちょうどいい人がいなかったのよね。」
「ん? まさかお前、王都に行ってこいって言ってる? あのー、知らないかもしれないから言っとくと、俺って元帝国民だy」
「知ってるわよ?」
「あ、知ってて行ってたのか、・・そっか、えーっと無理に決まってんだろぉぉぉ!!!! 敵対国家の元賢者が来てみろよ! 王都に入る前に殺されるわ!」
「けどあんたコソコソ隠れるの得意じゃない」
「それじゃ不法侵入じゃねえか!」
「いいじゃない?」
「良くねぇわなにとぼけてんだ! ばれた瞬間殺されるだろうが!」
「じゃあ正面から堂々と行きなさいよ」
「だからそれも無理だろうが!」
「もう、しつこい男は嫌われるわよ。つべこべ言わずに行ってきてよ」
「死んだら化けて出てやるからな」
「そのときは丁寧に苦しませながら浄化してあげるわ」
カミラさんが笑顔で恐ろしいことを言っていた気がするが気にしないでおこう。
こうして二人は王都に行くことになってしまったのだった・・




