第16話 カミラ
今回から第2章です。舞台が大森林から王国へと変わっていきます。
門の上にはさきほどの小鳥に加え、黄色い鳥がとまっていた。
鳥たちはこちらを品定めする様に眺めている。
体を引きずるようにして門に近づくと、三羽の鳥が降りてきて揃って一声鳴いた。
すると鳥は段々と大きくなってゆき、人へと姿を変えてはじめた。
黄色い鳥は金髪の少女に、青い鳥と赤い鳥はそれぞれ赤毛と青髪の少年に変身した。
「こっち、ついてきて」
1番年長に見えた金髪の女の子は僕にそう声をかけると門の中に入っていった。
赤髪と青髪の少年達は、ドレイクを僕にかわって担いでくれた。門をくぐるとそこには、幅7メートルほどの道があり、その両端にはいくつもの石造りの家が建ち並んでいた。道はしばらく続いていて、途中でいくつもの道と交差していた。
すでに日は高く昇っているのに通りには人がいなかった。
何回か曲がると、突如目の前に4階建てのアパートのような者が現れた。
2階から看板がぶら下がっている。何かしらの文字が書かれていることはわかるのだが、何と書いてあるのかはわからない。
金髪の少女がドアを開けると、中にいた数人が一斉にこちらを向いた。何人かはぎょっとしたような、何人かは敵意をむき出しにした視線をこちらに送っていた。そのうちの一人、背の低い太った男が突然大声で叫びだした。
「おいライリー! なんてものを連れてきたんだ! こいつらが俺たちに何をしたかわかってるのか!」
ライリーと呼ばれた少女は意にも介さず奥にある階段の方へと歩いて行った。
「カミラさーん! つれてきたよー!」
「ありがとーう! 今行くわねー!」
少女に応じた声にはなんだか聞き覚えがある気がした。すぐに声の主は階段を降りてきた。階段を降りてきた声の主は、栗色の髪と大きな瞳が印象的な背の高い女性だった。それもよく見ればさっき助けてくれた水の精霊のようなものとよく似ている気がする。
「マルスとマークはドレイクを看護室に運んでくれる? ライリーは森の監視をお願いしてもいいかしら?」
「「「いいよ」」」
少女は鳥になって飛んでいき、少年たちはドレイクを運んでいった。
「それであなたは、デューク君よね?」
「は、ぃ」
水分不足の喉はうまく音を出してくれなかった。女の人は僕を少しの間観察していた。
「う~ん、君も治療が必要ね。ついてきて」
「ちょっと待てカミラ! なんで子供とはいえドラゴンを連れてきたんだ! 説明しろ!」
「あとでね。今はちょっとそれどころじゃないの」
「だめだ! 説明しろ!」
「ねぇ、あんた何か勘違いしてるみたいだから言っておくけどさ、すでにあんたは貴族じゃないの、つまりもうあんたには誰かに何かをさせるような力はないし、もし今すぐにあんたをここから放り出したってもう誰も私を咎めない。しかもね!あんたと違って私は忙しいの! わかったら私の邪魔をしないでそこで大人しくしてて!」
ものすごい剣幕で捲し立てるとカミラは僕の方に振り向いた。
「こっちよ、ついてきて」
「は、はい」
カミラについて廊下を進んでいくと大きな部屋に通された。部屋には何人もの人たちが寝ていて、時折うめき声を上げていた。よく見れば腕や足の無い人たちもいた。しかしその部屋には用がなかったようで、カミラはすぐに入ってきた扉とは別の扉から出て行った。
後について部屋をでると、そこは先ほどよりも小さい部屋で、一人の黒髪の男の人が椅子に座って本を読んでいた。僕が入るとその人は本から目をはなして僕の方を見た。少し驚いた様子だったが特に何も言われなかった。
「デューク、こちらは医者のオスカーさん。オスカーさん、こちらは、えーっと、ドラゴンのデューク君。先生に彼の治療をお願いしたいの」
「いいんですけれどもねぇ、なにせ私の専門は人間ですので、失敗しない範囲で治療しようとすると大したことは出来ませんよ?」
「それでもいいので、とにかく治療しておいてください。その間に私は彼の食事を用意しておきます」
そう言うとカミラは部屋を出て行った。
「それじゃあ診察からしていきましょうかね。いや〜、ここの切り傷は酷いですね〜。こちらは、え〜、軽度の骨折ですかね、皮膚が硬くてわからりづらいですねぇ〜」
そんなような感じで僕の治療は進められた。たまに傷が痛んで、僕が「ビクンッ」と動くと、先生も驚いて「ビクッ」とする。それが面白くて笑うたびに、先生は不思議そうにこちらを見つめて、「不思議ですねぇ〜」と呟いていた。何だか変わった先生だった。
2章からはデュークとドレイクがいろんな人と関わり始めます。いろんな勢力が出てくるので是非お楽しみに!




