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03-08-09 最近のアニメってば盛り上がってきた所で総集編とか良くやるよね

 そんな感じで王都での些事も終わったのでそろそろ旅を再開と行こうじゃないかと皆に相談したんだが思いも掛けなかった事にガッシュ達が待ったを掛けてきた。どったの?

 そこで詳しく話を聞いてみると家の領地へと帰る街道には現在では殆ど魔獣が出なくなっている状況なんだそうでこれからの道程では全然修行の役には立たないだろうから王都の道場にてこれまでの鍛錬の総纏めをやって置きたいんだってよ。

 まあ考えてみればガッシュ達に取ってはこの旅に同行している主な理由は修行目的なんだからそれを考慮すればそちらに都合を合わせるのも致し方ないだろう。多数決的にね。

 それでどの位の期間が必要なんだと尋ねると一週間も有れば良いだろうとの事なので俺達は思いがけず暇な時間を得る事になった。

 うーん。俺ってば急に出来た暇な時間をどういう風に使おうかねえ。


 ここは現在の俺を取り巻く状況を正しく認識してからちょっと浮ついていた感じの精神状態を落ち着けた後で今後の見通しについて深く考えてみるとしよう。うんうん。

 そもそも今の俺の行動原理はどうなっているんだろうか?

 現在俺は皆を連れて旅を行っているんだけどその旅の目的というのは当初は大雑把に言えば俺が世界の状況を知る為に必要だったからだ。

 旅に出る前に俺が考えていた事はと言えば自分や周りの人達が幸せに生きる為には自分の村の周囲を取り巻く世界情勢が分からなくてはどうにも対処出来ないのでその詳しい情報を集めたいという物だった。

 そうだよ。俺はただ幸せに暮らしたいと思っただけだったんだ。


 俺は別に魔獣を殺しまくったり盗賊を皆殺しにしたり武闘大会に出て暴れ回ったり海賊退治に奮闘したりなんかをしたかった訳じゃあ断じてない。

 むしろそういった事には一切関わらない人生が理想だった筈だ。

 なのに今の状況を振り返って見てみるとどうだ?

 俺は嬉々としてそういった事件に関わる方向に行ってるんじゃないか?

 何故だ? なんでこうなってしまっているんだ?


 俺は一体どこで間違ってしまったんだ?

 記憶の奥をさかのぼって思い出してみると最初の分岐点はやっぱりパンロックの杖による記憶転写事件だろうな。

 あれが無ければ俺は魔石操作のスキルを使っての管理者権限の上昇に励んで田舎の村長に恙無く就くという人生だった筈だ。

 スキルや管理者権限の獲得なんかは村で生きていればそうなるのは避けられないだろうし前提として五歳の時に既にヘルは俺に取り付いていたみたいだからそこら辺は変わらないだろう。

 そして俺はそれなりに可愛い幼馴染と結婚でもして沢山の子供に囲まれた幸せな人生を送れたのかもしれない。


 まあそうなるのは可能性としてはかなり高かっただろうな。

 感じとしてはビジターナの様に現状に対して大きな不満は無いがちょっと物足りない様な気分だったりしただろうな。

 まあそんな事は取り敢えず今は関係ないか。

 話を戻すと記憶転写によってヘルは俺の脳の電脳空間から杖の宝玉に移動する事になった訳だがこの事はなんだか不自然に感じるよな。

 まず電脳内にいたヘルが総合ネットワークの支部に簡単に退避した事がおかしい事に挙げられるだろう。


 元々AIなんて物がそんなに簡単に脳内を出入りしたり出来るもんなのか?

 俺の子供の頃の一番古い記憶の中にアリの行進を見るのが好きだったというのが有るがアレって多分なにかのインストール画面を見ていたとかじゃないのか?

 まあなにかというのはもちろんヘルの事なんだけどね。

 いや。 違うか?

 前にヘルから聞いた話をそのまま鵜呑みにすると魔石を持っている人類は全員生まれてから電脳化する作業を脳内で行っていてその所為で幼児の頃は頭が弱くなっているとかだったからその進捗状況を表示していたと言うのも有りそうだな。


 だとするとAIの移植は電脳化さえされていれば簡単に行える様な事なのか?

 いやでもAIの基幹部は共通の物だろうからそこは補完出来るとしても記憶したデータなんかは膨大になって移動に時間が掛かる物なんじゃないのか?

 と思ったが良く考えてみるとあの時点ではヘルが再起動し始めてそれ程時間が経ってなかったからデータ総量も少なくて可能だったのかもしれんな。

 まあ理由は兎も角としてヘルは杖に移動して多分歴史上初めてのインテリジェンスウェポンとなってしまった訳だ。

 あれ? なんでヘルが初めてなんだろうか?


 大昔から有る総合ネットワークは規模は違うとしても言わばヘルと同じで魔石に宿ったAIという存在だよな。

 それなのになんで昔の人、特にパンロックは杖の宝玉とかにAIを載せようと思わなかったんだろうか?

 何かそれが出来ない理由とかがあったのか? ダウンサイジング関係とかか?

 さっぱり分からんな。まあ分からん事は置いといて次に行くか。

 ともあれヘルが杖に移動してからの事が一番俺の人生に影響を及ぼした様な気がする。


 どんな影響か? それは力だ! それも絶大な破壊力だ!

 それまで理不尽な暴力に対して一切抗えなかった十歳の子供が大人が何人で来ようともどうにでも対処出来る攻撃力を持ったのだ。

 これで舞い上がるなという方が無理な事だろう。

 今まで少なからず我慢していた事も自分に強力な力がある事から後でどうにでも出来ると錯覚して鷹揚に構えられる程の余裕を持つ事が出来た。

 いわゆる金持ち喧嘩せずという感じだな。


 そしてそれはチートだ。転生者アルアルだ。

 つまりは碌な事にならない事は確実だ。

 だが俺はその事に偶然気付く事が出来た。

 俺がその時に思ったのが、


「ハッ?! これは罠だ! 俺は何者かに嵌められている!

 だが絶対にザマァ展開に等にはならないぞ! 」


 という物だったのはまあ転生者だったんだからしょうがないよね。

 それから俺は村を出るまでの間はヘルの入った杖の実力を出来るだけ周囲に晒さないようにしていた訳だ。

 もしここで自重しないでそのままはっちゃけていたとしたら現在の俺達は多分こんな風になっていただろう。

 まず俺は魔法使いとして地方では知ら無い者がいない程の有名人になっていたよね。

 極めつけは魔獣を使った隣国の襲撃事件を俺達三人だけで排除して隣国まで報復に行っていたかもしれない。


 だがそんな事を一地方領主が勝手にやって良いなんて事は中央政府は絶対に思わないだろうな。

 そしてその責任をバズロックが取らされるか若しくは俺が取らされるかして領地没収とかされるかもしれない。

 又はそれと引き換えにしてか俺はただの武力行使するだけの駒として中央政府の都合が良い様に利用されて使い潰されるんだろうな。

 そんな風に使っている間は英雄だなんだと持て囃して置いて要らなくなったらパンロックの様にまた地方の領地に押し込まれてお終いだ。

 そして歳を取ってから昔を振り返って俺の人生はなんだったのかとか愕然として思うんだろう。


 うん。俺は今現在総合ネットワークの駒としてはアレコレやらされてはいるが仕事内容に関してはなんとか方向性だけは自由意思を持つ事には成功している様なんだから予測していた事態の最悪とまでは行っていないよな。

 まあこのまま行ける所までは頑張って行こう。

 ここ迄の俺の人生の選択肢はまあ間違えてはいないと言える物だろう。

 さて、話を戻して村を出てからの俺の行動の分岐点はどこかに有ったかと思ったがそうだな、ヘルが杖部分をなくして宝玉だけになってしまったという事も当て嵌まるだろう。

 あれが無ければ新しい杖部分を探しに鉱山街をぶらつく事も無く依ってヘルの動甲冑を見つける可能性は限りなくゼロに近かったに違いない。


 ホント偶然という物は恐ろしいよな。

 うん? 偶然だよな? なにか必然だと言える様な事象は起こっていないと思うんだが?

 ああ、そう言えば最初に鉱山街に行く事を勧めてきたのはヘルだったな。

 だったらその時に既に自分用の動甲冑が売っている事を知っていてそちらに俺達を誘導したという事なのか?

 いや、それは有り得ないだろう。


 あの時点では鉱山街は総合ネットワークから切り離されていた事は後の事件やらなんやらで証明されているからな。

 それでも、もしそこまで念入りに偽装工作をしていたとするならそうする意味がなにか有ったという事になるが俺にはそんな事をする理由は特に思い当たらないな。

 だがそう考えてしまってもおかしくない程の偶然が重なって起きていただろう事は分かる。

 まず前提として動甲冑は領主のシアターさんの屋敷に保管されていた所を職人の技の見本になるだろうと下げ渡したと言っていた。

 だからそうなるように誰かが彼の思考を誘導するなりしないといけない訳だがもしそういう事をしていたんだとしてもその時期がどう考えても俺達が旅に出るよりも遥かに前の事だったというのは誰にも説明が出来ないだろう。


 もしそれが出来ると言うのならそいつはどれだけの未来予知能力が有るというのか。

 そんな奴はもはや神だと言うしかないな。

 だが万に一つの可能性を挙げるとしたら「そんな事も有ろうかと」と言って考え得る全ての事象に対して伏線を張って置くとかいう場合が有るかもしれないがそんな事はどう考えてもコストが天文学的に膨大になり過ぎて現実に有る筈がない。

 有ってたまるか。議論にもならないぞ。

 もう偶然かどうかと言う観点の話はどうでも良いだろう。


 時間の無駄だ。話を進めよう。

 とにかく偶然に寄ってヘルが身体を得た事で俺達の旅は格段に楽になった訳だな。

 それまでは馬車の上に取り付けたパトランプ状の宝玉を使って色々な事の補助をさせてはいたが人力という物理的な面が足りていなかったからな。

 その色々な事を挙げるとすると次の様な事だ。

 まず一番は野営時に見張りが交代で起きていなくても良くなった。


 これで全員が取り敢えず寝不足になどにならずに済んで体調管理の面でも問題が無くなって襲ってくる魔獣と行う戦闘での修行も捗る事になった。魔石採取という面でもね。

 とにかく熟睡出来るという事がこんなにも有り難い物なんだという事が骨身に染みたよ。

 旅に出る前の野営を甘く見ていた俺をぶん殴ってやりたい気分だ。

 これまで野営をしていた人達は凄く偉かったんだなあとつくづく思ったよ。

 次に思いつく事と言ったら野営時の料理を任せられるという物かなあ。


 俺達のチームメンバーにはもちろん女性も含まれているんだけれども何故か全員料理が下手と来ている。

 別に女性だから料理をしろとまでは言わないが普通はそれなりに出来ると思っても悪くはないだろう?

 なんで俺達男連中より料理が下手なんだよ。

 こう言ってはなんだが特にサーラさんには失望致しました。

 いや、失望とか言うのはなんか言い過ぎじゃないかと思われるかもしれないがサーラは特に戦闘特化とかいう訳でも無いし訓練とかで忙しいからという訳でも無く普段は結構暇そうにしていたんだよ。


 だから料理を習う時間が無かったとは言わせないぞ。

 それに以前サーラの家でご飯をご馳走になる機会が有ったんだけれどその時出された料理が今まで食べた事が無い位にめっちゃ美味かったんだよ。

 サーラの母親のカーラ叔母さんが作ってくれた物なんだけれどそれと家の飯の味の差に凄くショックを受けて是非家の厨房の専属料理人になって欲しいとさえ思ったもんだ。

 だけどそれはバンドナさんの有無をも言わせぬ圧力に屈してその夢は叶いませんでした。無念。

 そんな事も有ってその娘さんのサーラさんに過度な期待をしてしまっていた事の何が悪いのか?!


 俺は声を大にして言いたい!

 お前はそんな風で俺に将来不味い飯を毎日食べさせる心算だったのかと!

 いやもうサーラとの間の将来の事は半分諦めてはいるがこれだけは改善してくれないとなるともう婚約破棄までルートはまっしぐらですよ!

 フラグが立ちまくりですよ! ザマァ展開確定ですよ!

 ハァハァ……。


 ちょっと関係ない横道に入り込んで暴走してしまいました。済みません。

 とにかく! ヘルが身体を得た事でその後の旅に大きな影響が有った事は言うまでもない事だ。

 王女救出作戦や王都パレード襲撃阻止などヘルがいなかったらもっと苦労していただろう事には枚挙に暇が無いだろう。

 あと残っている事で大きな事象はそうだな。

 俺が総合ネットワークの特別監察官に任命された事が挙げられるな。


 これがなければ俺はずっとヘルの影に隠れて行動しなければならなかっただろうしその時の心的負担もかなり重く圧し掛かっていただろう。

 そしてパンロックの二の舞にならない様にとなにかする度にビクビクと政府の目を気にして行動するなんて気が滅入る事甚だしかった筈だ。

 だが、これが今問題に思っている厄介事に自分から突っ込んで行っている事の元凶でも有るよな。

 これはヘルや総合ネットワークに上手く乗せられているという事でもある。

 まあヘルは俺の為にと便宜を図った心算なんだろうがな。


 でもこの特別監察官の肩書という物は本当に使い勝手が良い。いや良過ぎる。

 今これが無くなったとしたら俺はもうなにもする事が出来ないしそもそもやる気さえ起きないだろう。

 一種の麻薬の様な物と言っても過言ではない。

 そんな物を手に入れてしまった俺はこの後どんな厄介事に関わっていく事になるのかと不安でならない。

 それが今回の思索を行った真の理由なんだろうな。


 そしてこの後俺は自分の領地に帰ってそこにある総合ネットワークの支部に行く事になっている。

 そこに行く理由は定かでは無いがその時になにも起こらないなどという事は決してないだろう。

 俺は、俺達は一体どこに向かって進んでいるんだろうな。

 誰か分かっているんなら是非とも俺にこっそりとでも教えてくれ。




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