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マセキ・コントローール!  ~せっかく異世界に転生したのになんか捻くれた性格に育っちゃったみたいです~  作者: さんご
第三転生期編  第八章  飛躍、飛翔の物語

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03-08-08 王都への寄り道にカイはあるか

 俺達は三人の親子連れを加えての旅を再開した。

 再開するに当たってお互いの自己紹介も行った。

 それでようやく彼女達の名前が判明した。

 まず親子の母親の名前はマーネといい子供の方はボーカというそうだ。

 親子で似たような感じの名前だね。


 そして引き取られた方の子はメインという名前なんだってさ。

 なんかセンターで歌ってそうな名前だね。まあそれは良いか。

 それで三人を何処へ連れて行くのかという事なんだけど俺達と一緒に最後まで同行する事になった。

 と言うのもまあ俺が他人に斡旋出来る職場というのが俺ん家しか無いのでいわゆる家のメイドさんとか小間使いにでも押し込もうと考えた為だ。

 マーネの為人は特に自分とは関係の無い他所の子のメインを引き取ろうなどという行動から見ても善人には違いないのでそこは心配はしていない。


 それよりもどういう仕事が出来るのかという事の方が気に掛かる問題だ。

 いくらマーネが善人だとしても何も出来ない盆暗ではバズやママンに雇ってみてくれとは自信を持って紹介など出来ないからな。

 まあ家までの旅の途中でその辺の事は確認するつもりではあるんだけどね。

 そしてメインとボーカの扱いなんだけど家でメイド見習いでもやってもらおうかなと。

 見習い期間中は家の教育係のバンドナさんからの厳しい教えを受けて貰って将来的にはどこに出しても恥ずかしくない立派な大人になってくれれば良いなと考えている。


 まあバンドナに掛かれば後の事は心配はいらないだろうからそれで良いんじゃね?

 とまあそんな訳で一緒に行く事になってるんだけど歩き慣れていないマーネ達をそのまま歩かせるとなると移動速度が著しく遅くなってしまうので取り敢えず移動中は荷馬車に乗っていて貰って荷物扱いだ。

 それと野営するのも色々と不都合が有るので極力町や村の宿に泊まる事にした。

 まあ別段お金に困っているという訳でもないのでその事は別に良いんだけどそれよりもその所為で予定より大分行程が遅れてしまっているのが問題と言えば問題だな。

 事前の予定では俺達は王都に寄るつもりでいてその時期を王国祭に間に合わせる筈だったんだがなんだか到着がギリギリになりそうな予感がする。


 こりゃちょっと予定を組み直す必要が有りそうだな。

 ヘル。その辺の事をちょっと計算し直して置いてくれ。


『はい。マスター。了解しました。

 ツー、ちょっと貴方も計算してみなさい。

 後で私の物と比べてみましょう。これも練習ですよ。』


『ハーイ。分かりましたー。やってみまーす。』


 うん? ヘル?

 お前達は元は同じAIから生まれて来たんだろう?

 それなのに計算結果が違ってくるのか?


『はい、マスター。

 単純な計算結果ならば違いが出るなんて事は有りえませんが人間の行動を予測するような場合ですとそのAIごとに蓄積されたデータに寄って計算結果に違いが生じたり致します。

 これは本部のAIでも同じ事が言えてそちらでは時期によって計算結果が違うという事が有り得ます。

 ですから行動予測は常に何度でも行ってその平均値等を示したりするのが普通ですね。』


 へえ、そういうもんなのか。勉強になるなぁ。

 まあその結果を宿に着いてからでも教えてくれよ。

 ヘルツーも頼むな。


『はい。マスター。』


『了解でーす。』


 そんな感じで俺達の旅は続いて行った。


  + + + + +


 ヘル達の頑張りのお陰があってなのかどうにか王国祭に間に合うように王都に着く事が出来た。

 今回もまた爺さんの屋敷にお邪魔する事にしたんだがこんなに頻繁に大勢で押し掛けられるなんてホント結構な迷惑を掛けているよなぁ。

 なんか爺さん達に恩を返せる様な事が出来れば良いんだけど別段なにかに困っている風でも無いしなぁ。悩ましい所だ。

 今回の旅ではリーナ達は王都に来ている事を実家に秘密にする気はないみたいでガッシュと義兄妹を連れて道場を訪れて稽古に混ざってしっかりと鍛錬をする気みたいだ。

 ついでにどれだけ腕を磨いて来たかを示して出来ればマッシュさんに土を付ける事を目標にしているらしい。


 でも俺から見ればその域にはまだまだ達していないと思うんだけど立ち向かって行く意気込みとしてはその位でなければ駄目だろうな。

 まあ精々頑張って頂戴な。俺は応援してるよ。

 爺さんの屋敷での宿泊はいつもの離れを使わせて貰って特に気を使う事も無いんだがそれより久しぶりに会うファンロックの方がなんか対応が難しく感じるのは俺の気の所為では無いだろう。

 なんか一年見ない間に性格が随分変わったみたいなんだよなあ。

 それも俺の嫌いな貴族特有の悪い方にだ。


 これってやっぱり爺さんの屋敷に居候していて伯爵家の生活に染まってきているからなんだろうな。

 でも俺ん家は実際にはただの田舎の村の領主にしか過ぎないんだぞ。

 変に大貴族の考え方に染まってしまうと後で自分が困るんじゃないか?

 やっぱり学園の寮とかで生活させた方が良かったのかもしれんな。


「兄さん。何時迄もフラフラしていないでもっと貴族としての責任について真剣に考えないと駄目だと思うよ。

 特に兄さんは嫡男なんだからね。」


 うん? いや、ファンロックに俺の代わりに家の後を継がせるつもりならその方が都合が良かったりするかも?

 それになんか急に大人びて来ていて頼もしくも有るな。

 まあこれもこいつの人生だ。

 俺に迷惑が掛からないのならば好きにすれば良いよ。

 それから俺が爺さんの所にいる事を知った去年嫁いで行った姉さんも会いに来てくれていた。


「アラアラ、ファンちゃんも結構言うようになったわねえ。

 これはちょっと教育を仕直さなければいけないかしら? 」


 ギクッ!


「そ、そんな事ないよ、お姉ちゃん。

 僕なんてまだまだ駆け出しだよ。

 だから再教育は全然必要無いと思うなあ。ねえ兄ちゃん? 」


 相変わらずファンの奴は姉さんが苦手なようだな。

 これは一種のトラウマなのかもね。

 まあこんな感じなんだったら特に何も心配はいらないな。

 俺の姉弟の現状はこんなもんで良いだろう。

 それよりも俺の興味の対象は王国祭の方だ。


 昨年の祭りは賊の襲撃の可能性が有るという事でその対処の為に碌に見物も出来なかったしなあ。

 今年はそんな事は無いだろうから王国祭を存分に満喫する事にしよう。

 え? 大丈夫だよね? 今年は何も起きないよね?

 俺は信じたからね!

 王都の衛兵さん達の実力とやらを!


 まあ多分何事も起きないだろうからと俺達はメイン達子供を連れて王国祭の見物に繰り出した。

 メイン達は王都に着いた時もその大きさにかなり驚いていたけれど今回の祭りの人出にはもっと驚いていた。

 街の通りを埋め尽くすような人の波を初めて見て恐怖さえ感じているようだ。

 もしこの人込みで俺達とはぐれでもしたら二度と会えなくなってしまうと考えていてもおかしくは無いだろう。

 まあ一応は念の為に彼女達のデータチップにはマーカーを仕込んで置いたのではぐれてもなにも心配はいらないんだけどそれを知らなければかなり不安だろうな。


 その不安の所為かヘルの両手はメインとボーカにそれぞれしがみ付かれてガッチリとホールドされている状態だ。

 なんだかお疲れ様としか言えないね。

 取り敢えず今の王都はどこへ行っても出店やら屋台やら見世物などがちょとした広場なんかでやっているので比較的に屋敷の近くに有る所に皆で向かってみた。

 そこは屋敷街の大通りで交差点の角にある馬車の待避地として確保されている場所で王国祭中の現在は馬車が使えないので使用を許可されている様だった。

 家の領地でも収穫祭の時は何処からか見世物なんかが来ていたりするがそれと比べてもかなりグレードの高い物がそこいらで普通に見れたりするというのは本当に驚嘆に値するよなあ。


 ところでこういうのは一体何処から依頼されたりするんだろうか?

 ヘルは知ってるか?


『はい、マスター。

 王国祭に限って言えばそれは王家と高位貴族に依って差配されています。』


 ふーん。なんだ、家の収穫祭と仕組みは全然変わらないんだな。


『まあ、その金額の規模が段違いなんですがそれは言わずもがなと言った所ですね。』


 まあそうだろうな。

 という事は爺さんの所も結構な額を出している訳か。

 そんなのに毎年大金を拠出しているなんて財務も大変なんだろうなあ。


『そういう事をするのが高位貴族としての存在理由の一つなんですから仕方ありませんね。』


 家は田舎の村の領主でホントに良かったと思うよなあ。


『ですが田舎には田舎の苦労がありますよ、マスター。』


 まあその位は言われなくても一応は分かってるからね。

 その内の一つとして例に挙げるとすると田舎には金が回って来ないというのがある。

 売り物は有るんだけれど売買するのに使う為の貨幣が足らないんだよなあ。

 結果、物々交換になったりするんだけど欲しい物と渡す物のマッチングが合わないと交換が成立しないという事態になる。

 そして経済規模がドンドンと小さくなって行きやがて衰退していく事となる。


 だから俺は現在必死こいて金を掻き集めているという訳だ。

 その事で少しでも家の領地の為になり結果的に俺の老後も安泰になるって寸法だな。

 だけどなあ、これってご先祖のパンロックの奴がやってた事と大して違わないんだよなあ。

 奴も魔道具とかを大量に作ったりして金を稼いでいたのは分かっているんだけれどそれに寄って集めた筈の貨幣がいつの間にか村の経済圏から散逸してしまっていて現在の状況に至っていると。

 つまりこれってただの時間稼ぎにしか過ぎないって事だよなあ。


 なんかもっと根本的に仕組みを変えたり家で勝手に地方紙幣を刷ったりとか出来ないもんかねえ。クーポン券とか。

 そうすればもう少し生活がマシになるんだけどなあ。

 でもそんな事を中央政府は絶対に許可しないだろうし。

 ところでさっき貨幣がいつの間にか散逸していると言ったけれどその原因はなんだか分かるか?

 それは情けない事に俺達がどこまで行ってもただの田舎者だからだという事に尽きる。


 その事を詳しく説明するとまず初めに皆に貨幣を公平に配ったとする。

 そしてお金を使った売買が行われてやがてお金はどこかに集まりだして金持ちを作る。

 やがて金持ちは田舎にある野暮ったい物に満足しなくなり都会にある洗練された物を求めるようになる。

 それに依って貨幣が田舎から都会に移動する訳だ。

 ここで都会に行った貨幣が田舎にまた戻ってくれればなんの問題も無いのだが都会の人は田舎にある物をわざわざ買いに行ったりはしない。


 例えば都会の人がどうしても必要な物の一つに食糧があるがそれを買う時に遠くの田舎に買いに行くよりも出来るだけ近くで買おうとするのは当然の事だ。

 結果として田舎に幾ら食糧が有っても誰も買いには来ないという事になり田舎には貨幣が戻らないという事態になっていく。

 ここでもし田舎に鉱物やらの資源が有ればもう少し状況は変わるんだろうけどそんなに都合良く資源が有る事はまずないだろう。

 こうして問題点を挙げていくとやっぱり最初の俺達が田舎者で都会の物が欲しくなって買ってしまうという事が肝だよね。

 そしてそれを防ぐのに一番の特効薬が田舎でしか通用しない地方紙幣なんだよなあ。


 それが分かっているから中央政府も許可しないんだろうし。

 もし許可すれば地方は独自の金をバンバン刷って経済が活性化して豊かになり終いには独立だなんて事を言い出すに決まっているからなあ。

 ああっ! 国境の街の存在理由はそれだったのか!

 昔フィールデン王国がまだこの国の地方都市として含まれていた時に貨幣の移動を出来るだけ少なくする目的で作られたものの結局はフィールデン王国として独立してしまったという事なんだろう。

 そして国境の街が存在理由を無くした今もそのまま残ってしまっているという訳か。


 そう考えると俺達が見付けたフィールデン王国と繋がっていた地下トンネルに付随していた倉庫の物資は大規模な物々交換をしていたという証みたいなもんか。

 その当時も規模は違えど今と同じ問題を抱えていただなんて歴史は繰り返すという事の良い例だな。

 なんか思わぬ所で今まで謎だった数々の事の解答に行き当たってしまったというのはちょっと意外だったなあ。

 でもまあこれで少しは心の中のモヤモヤが解消されれば言う事は無いんだろうけどなんかそうでも無さそうだね。

 俺は王国祭の出店等を見物しながら色々と思索をしていたんだが意外な収穫が有ったりと結構有意義な時間を過ごす事が出来たな。


 ついでに祭り見物が出来たメイン達もとても嬉しそうだったね。

 もちろん少しだけだが御小遣いも渡して置いたのでそれぞれ好きなお菓子や土産物を買ったりしていてそちらも満足した様子だった。

 そして午後からは去年襲撃の有ったパレードをまだ懲りずに行うようで俺達も近くの見物スポットに出掛けて見てみた。

 今回は護衛の騎士の数も倍増していてその威容も相まってか更に盛り上がりを見せている感じだ。

 去年チラッと見た国王夫妻なんかも余裕が有る時にはそれなりの威厳を纏っている様に窺えて見世物としての見応えは十分に有ったな。


 とまあそんな感じで今年の王国祭はつつがなく終了して安全に爺さんの屋敷に帰還する事が出来た。

 これで王国祭を見物するという一大イベントも終わった事だし家の領地への旅を再開するのに当たって特に支障は見当たらないな。

 さーて。そんじゃあまあそろりとゆったりした旅路に出立する事に致しましょうかねえ。




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