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マセキ・コントローール!  ~せっかく異世界に転生したのになんか捻くれた性格に育っちゃったみたいです~  作者: さんご
第三転生期編  第八章  飛躍、飛翔の物語

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03-08-03 ロック vs. マジュウ 海上大決戦

 早くも一週間が経ち船の改修が完了したようだ。

 その間にも海賊の襲撃が数件あったようだが奴らも勤勉だよなあ。

 もう少し期間を開けるとか普通はするんじゃないか?

 もしかするとなんかノルマとかでも有るのか?

 まあそう言うのは奴らを捕まえてからじっくりと聞けば良いか。


 それよりも我が艦の進水式を執り行うぞ!

 船の名前は【アルカロイド】だ!

 分類で言うと強襲突撃艦だ!

 その証拠に艦首に衝角が付いているぞ!

 うん? 衝角って知らないか?


 説明すると船の先っぽに尖った棒とかを付けておいてそれで敵艦を突いて船に穴を開ける為の武器だな。

 これは俺が付けてくれと言った訳じゃあないんだけど船大工の爺さんが良かれと思ってサービスで付けてくれた物だ。

 まあこのご時世だと海賊とやり合うと言えばそういう方法しか思いつかなくてもしょうがないね。

 でもなあ。俺達の戦い方には全然必要がないんだよなあ。

 ともすれば重量が重くなって船の速度が落ちるんじゃないか?


 まあこれは後付けで付けてあるので弊害があればその時にでも取れば良いか。

 爺さんの親切を無下にするのもなんだしな。

 出来上がった船を見てみると現在の主流の船にある筈のマストは付いていない。

 あんな物は只の飾りです! 偉い人にはそれが分からんのです!

 なんていうのは冗談でそもそも帆なんか有っても俺達には操作なんか出来ないし動力は魔道具頼りなんだから取っ払って貰ったんだ。


 まあそのマストを流用して衝角が付けられたという経緯もある。

 不景気になって暫く無かった進水式が行われたからか見物人がちらほら来ていたが船の形状が普通とは違うので皆どんな船なんだと興味を持ったようだ。

 爺さんにどんな船なんだと確かめる者が数人いたが詳しく聞くと「なんだ、貴族のお遊びか。」ととたんに興味を失っていた様だ。

 まあ実際に船が動くのを見るまではそうなるだろうね。

 進水式が恙無く終わって海に浮かんだ船を確かめたが特に問題が有るようではないね。


 早速魔道具に火を入れて港の中で船をゆっくりと進ませてみた。

 うん。全然問題無い。舵の効きも良く機敏な動きが期待出来そうだ。

 湾の中をクルクルと回るのも飽きたのでそろそろ外海に出てみるか。

 港の堤防の切れ目から外海に出て暫く進んでから魔道具の出力を徐々に上げていった。

 魔道具の調子も良い様で船の速度がどんどんと早くなっていく。


 凄い速さで船が飛ぶ様に走り水面を何回かジャンプする。

 あ。これあかん奴だ。この速度でちょっと操船を誤ると船が縦に大回転して転覆してバラバラに大破するのが脳裏に浮かんだ。

 おおう、怖っ! 速度を即座に安全域まで下げてそれからは限界を見極める事に注力したのは言うまでもないだろう。

 だがこれはいざとなったら敵艦に特攻攻撃を仕掛けたら一発で撃沈出来るんじゃないか?

 まあその時は乗員は全員海に飛び込まなければならんだろうがね。


 だが最悪そういう事も考慮して置かなくてはならないだろう。

 だったらあれが要るよなあ。

 そう。救命胴衣だ。ライフジャケットとも言うな。

 なにかそういうのに使えそうな物は無いかと港に帰って探してみたら水袋が使えそうだと分かった。

 水が入れて置けるなら水が入るのも防げるよね。


 早速水袋を買い漁ってそれを使ってライフジャケットっぽい物を人数分でっち上げた。

 ヘルには普通の人間用の物では浮かべられないだろうから浮き輪状の物を作って身体に繋げて置く事で応急処置とした。

 まあ出来るだけ海に落ちないように気を付けて貰おう。

 というかヘルって防水機能ってあるの?


『雨に打たれたり料理等を作っている時に水に濡れていますが特に問題無い様ですので最低でも生活防水位の機能はあると思います。

 本格的な事は川に入ったりして確かめるしか無いですがもし壊れたり錆びたりしたら直せないので確認出来ませんね。』


 だよね。まあ今はそれで良いか。

 とにかく準備も完了したし遂に海賊討伐開始だ!

 と意気込んで早速次の日の朝から港を出航した船を後ろからストーカーしたりしたんだけど全然海賊と出会わない。

 なんでだよ?! 襲撃には何か俺達が気付いていない法則でもあるのか?

 数日空振りして今日も海賊と出会えず意気消沈して港への帰路に付いていると急にヘルが警告を発して来た。


「皆さん! 左前方から海中を急速接近して来る物が有ります!

 多分海の魔獣です!

 マスター! 進路を右に取ってください!

 このままだと衝突します! 」


 俺は言われた通り船の進路を右に急旋回させるとヘルに問いかけた。


「どうだっ?! 速度はこの船より速いのかっ?! 」


「レーダーから推測される速度は同等位ですが現在の速度が最高速とは限らないので油断出来ません!

 取り敢えず今は現在の進行方向と速度を維持してください! 」


 海賊を襲おうとしていたら逆に俺達が襲われる事になるとは思ってもいなかった。

 まあ陸地に魔獣がいるんだから海にもいても全然おかしくはないよな。

 俺の考えが全然足りていなかった。

 俺は魔獣対策を怠っていた事を痛感させられた。

 今船にある有効だと思われる攻撃方法はヘルのレーザーと俺の銃と後は念の為に積んでおいた槍が数本位だ。


 だがヘルと俺のレーザーでは水中の魔獣には当てる事は勿論傷を負わせられるかも分からん。

 丁度よく海面の上に飛び上がってくれるなりしたら良いんだけど普通襲撃時には無闇に飛び上がったりはしないだろう。

 こんな事なら銛撃ち銃でも用意して置けば良かったな。失敗した。

 船を旋回して魔獣と並走するような形になったが魔獣は進路を修正して船の後ろに付くような位置に移動したようだ。

 俺はどんな魔獣が襲ってきたのかと船の後方を振り返って見てみたが付いてくる魔獣は海面を少し盛り上げるだけで姿どころか全体像も確認出来ない。


 船との距離がどんどん近付いて来ているんだが魔獣の奴はどんな攻撃を仕掛けてくるつもりなんだ?

 まさか船に噛みついて来るとかじゃないよな?

 もし飛び上がっての体当たりならばこちらに取っては好都合なんだけどなあ。

 などと思っていたら不意にガツンという音が船の後方から響いて来た。

 オイオイ、こいつもしかして角とかを持ってる奴なのか?!


 だからいつ迄も後ろを追いかけて来ていたのか。

 最後には疲れて速度が落ちたところを串刺しにしてやろうと待ち構えていたという事かね。

 でもまあこの速度差で突かれても船の船体には大した傷は付かないだろうけどいつ迄も追いかけっこを続けるのも馬鹿らしいな。

 それに魔獣が船体に届く位近付いてくれたのなら逆にこちらからの攻撃も届くという事だ。

 俺はヘルに最大威力での電撃を海中に流してやれと言ってやった。


 ヘルは念入りに電圧を高めてから海中に電撃攻撃を食らわせた。

 海面が一瞬光ったような感じになったが俺はそこでもっと有効な手段があった事にようやく気が付いた。

 海面が光ったのは多分海水中にあるマイクロマシンが電撃に反応した所為だろう。

 空気中にマイクロマシンが有るのなら海水中にも当然有る。

 この船の動力に使用している魔道具は海水中のマイクロマシンを使ったマイクロマシンジェット機構を採用しているんだからどんだけ慌ててたんだって感じだ。

 それに魔獣がこんなにも元気一杯なのは海水中のマイクロマシンからエネルギーの供給を受けているからだろうな。


 そのマイクロマシンを魔道具で船の推進力に使った後で残ったエネルギーを全て熱エネルギーにでも変換してしまえば海水は沸騰するし魔獣はエネルギー不足になって失速するだろう。

 まあその前に熱湯となった海水を吸って体内に大火傷を負って死ぬんじゃないかな。

 でなければ熱さを避けて海面から飛び上がるかするだろう。後はそこを狙えば良い。

 まあ次に襲われた時はそれを試してみよう。

 今は電撃で痺れた魔獣に止めを刺してしまおうかねえ。


 船を旋回して戻ってくると魔獣が海面にぷかぷかと浮いていた。

 魔獣を良く見てみると一角獣のクジラかイルカかシャチのような海中哺乳類の一種だな。

 これは魔石を取るだけじゃ無くて本体も出来るだけ持っていった方が良いか?

 ヘルによると海の魔獣は滅多に取れないからか結構な金額で買い取ってもらえるか競りにかけられて高額落札が期待出来るそうだ。

 こりゃ絶対に持って帰らないとな!


 今度からは海賊が見つけられなかった時は魔獣を探しながら帰って来ると言うのも良いんじゃね?

 まあその前に魔獣に止めを刺して港にけん引していくかねえ。

 こりゃまた俺達は港町の話題独占じゃね?

 王都でも武闘大会で優勝して港町でも海の魔獣討伐で後は海賊だけなんだけどなあ。

 早くどうにかならんもんかねえ。


  + + + + +


 海の魔獣討伐から既に一週間が経った。

 その間何故か海賊の襲撃が起こらなかったんだけどもなんでなのかねえ。皆目見当がつかん。

 俺達が引いて帰った魔獣はやっぱり注目を浴びてどうやって倒したのかと聞かれたりしたがヘルの事は話せないので秘密の方法だと言い張って誤魔化しておいた。

 こりゃ今度また魔獣を倒して来たらなんていわれるか分からんな。

 なんか上手い言い訳でも考えて置いた方がいいか?


 そうだな。やっぱり銛撃ち銃でも付けておいて最後はそれで止めを刺すようにでもした方が良いかねえ。

 そんな本来の目的ではない事にかまけている今日この頃なんだけども今日もその内の一つである魔獣の競りがあってそれを見物する予定だ。

 魔獣を持って帰ってからどうするかと漁業組合の人に相談したら競りをやってくれと向こうの方から頼まれた。

 最近不景気だった港町ではこれを起爆剤にして一気に挽回しようと考えたらしい。

 そこで最近繋がった総合ネットワークを使って国中に競りを行うと大々的に発表して話題を集めるんだと。


 だけど一週間じゃあ王都からなんてとても来られないんだから意味ないんじゃねと思ったがあの中間の街にある商店なら何とか間に合うそうで王都の商店から代理を頼まれたりしてやる意味はあるみたいだな。

 まあそう言うのはそっちで勝手にやってくれれば良いよ。

 俺達は出来るだけ高く売れればそんな事には頓着しないからね。うん。

 つらつらと考え事をしている内にどうやら競りが始まるようだ。

 みんな実弾をたんまり持って来てくれたかねえ。

 最初は肉とか油を小分けしたようなのをちびちびと捌いてきたが段々と量が増えていき終盤には大きな魔獣の皮が出たりした。


 ここ迄でも合計金額は結構な高額になっていたが最後に立派な角が欠けも無く現れてからは競りの値段が桁違いに上がっていった。

 おいおい。なんでだ? あれってただの角だぞ? カルシウムの塊だぞ?

 まあ高く買ってくれるのはありがたいんだが良いのかねえ? あんな物に大金をはたいて。

 もっと価値の有る物が他に幾らでもあるだろ?

 金持ちの考える事は良く分からんねえ。


 俺もその金持ちに含まれる程の資産は持っているがこんな物に大金は絶対に出さないぞ。

 という事は俺は本物の金持ちではないのかもね。

 まあ金持ち談義はこの際置いておいて競りが終了したようだ。

 魔獣の角は港町の大店の御曹司が落としたようなんだけどこれで良いのかねえ。

 だって他所の街の商店にわざわざ来て貰ったのに結局一番の目玉商品は見せるだけで売ってくれないんじゃあ来た意味がないよね。


 なんか件の御曹司は空気の読めない人物で有名らしく港町の人達は皆溜息をついていた。さもありなん。

 まあ俺達は大儲け出来ればそれで良いので後の事は知らんよ。

 さて、魔獣も売ったし後は海賊だけだ!

 と言っても出て来なければどうしようもない訳で。

 俺はここ迄来てようやくこの港町にいる奴の中に裏切り者か海賊本人がいるような気がしてきた。


 ヒントは既に出切っているので皆の中にもそうじゃないかと思っていたという人もいるんじゃないかな。

 だけどさあ。普通自分の住んでいる街の景気を悪くする様な事をするか?

 と思っていたんだから俺もまだまだ甘いよなあ。

 人の中には空気を読めない奴や自分以外の事はどうでも良い奴がいるって事を軽視していたよ。

 それに気付かせてくれた御曹司には感謝しないとな。


 と言うか奴こそが……いやまだ確定していない事に言及するのは止めて置こう。

 とにかくこの街の中に海賊が紛れ込んでいる事は確実だろう。

 どうにかして奴らを出し抜かなければ事件解決なんて到底望めはしないよな。

 そこで俺達は一度実家に帰る事にした。表向きはね。

 理由を付けるとすれば海の魔獣を売って儲けた金を宿屋に置いたまま海に出ていると金を盗まれそうで物騒だからだ。


 実際にこのお金どうしようかと思っていたからなあ。

 なにか換金率が良い金目の物に替えて置こうかと思っていた所だし。

 まあ解決策は他人に気付かれない様な所に埋めて置こうと思ってるんだけどね。

 取り敢えず金を盗まれるんじゃないかと疑心暗鬼に陥っている奴ムーブを住人に晒して置いて早急に港町を出る事にした。

 そして近くの村に内緒で馬車を預かって貰い夜の内に港町に舞い戻って暗い内に静かに船を出して港の外で朝まで待機だ。


 ここ迄やっても海賊が出ないようならもうお手上げだね。

 港町に来ていた商人が魔獣の競りで落とした物を今日辺りの船で運ぶのを狙って念願の海賊が出る事を祈ろう。

 そんな事を祈らないといけないなんて全く情けない事この上ないがもう打つ手はないよ!

 おい! 海賊共! ホントに出て来いやあーー!!





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