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マセキ・コントローール!  ~せっかく異世界に転生したのになんか捻くれた性格に育っちゃったみたいです~  作者: さんご
第三転生期編  第七章  異世界戦闘倶楽部の物語

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03-07-07 過去との会談

「やあ、君がチーム……なんだったか忘れてしまったみたいだがリーダーのロック君で良いんだよね? 」


「ええまあ。リーダーのロックです。

 因みにチーム名は……どうでも良いですね。」


「いやいや、どうでも良くはないだろう?

 チーム名に誇りとかが有るんじゃないのかい? 」


「いえ、特に無いですね。

 今回の大会に出るにあたって必要だったので急遽当てがった物ですのでどうでも良いんですよ。」


「そ、そうなのかい?

 チーム名を忘れてしまってなんか申し訳ないね。

 ええと、それで君に話があったんだけれどもなんか次回に回した方が良いかもしれないね。」


「そうですか?

 そちらがそれで良ければこちらとしても異存は有りませんが。

 ではご縁がなかったという事で失礼いたします。」


 そう言って彼から離れようとしたが横からアホ毛姫が顔を突っ込んできた。


「ちょっとお兄様、よろしいんですか?

 用件をおっしゃらなくて。

 彼とは二度と会えないかもしれませんよ? 」


「えっ、そうなのかい?

 ロック君、もう会えないかもしれないのかな。」


「さあ、どうでしょう。

 そちらの彼女とは一日で三回も会っていますけれども。」


「あら、そうですわね。

 偶然とはおかしな物ですわね。オホホホ。」


 なんだろう、この会話は。

 それに彼に最初に感じた印象とは余りにも違っているように感じるしアホ毛姫の話し方にも凄い違和感があるぞ。

 ヘル、これは一体どういう事だと思う?


『マスター。これは商談に当たって本来の性格では不利になると考えて敢えて人格を変えてきているんじゃないでしょうか? 』


 ええっ?! そんな事が可能なのか?


『ええ。いくつかですが方法が考えられます。

 その中で一番簡単なのは自身の電脳内にいるヘルプに話を任せる事です。

 これは管理者だからこそ出来る方法ですね。』


 ああっ、そうか! その方法があったか!

 なるほどなあ、良く思いついたなあ。


『これはあれですよ。

 日常的に自分が考えるのをサボる為に良く使っているんだと思いますよ。』


 ええっ?! なんだよそれ! 狡いぞ! 俺には出来ないのか?!


『残念ですが私が電脳内にヘルプとして常駐していないと身体の操作とかが上手く出来ないのでマスターには無理ですね。』


 くそっ! パンロックの野郎の所為で俺ののんびりライフを満喫するという夢が叶わなくされていたなんて死んでも死に切れんぞっ!!


『マスター。そこ迄残念に思うなんてドン引きですよ。』


 あぁ~。もうなんか全ての事がどうでも良く思えてきたよ。

 もうヘルに全て任せるからヘルプ同士で勝手に話を付けてくれても良いよ。

 杖の事なんかもうどうでも良いからさあ。


『もう! マスターは直ぐ諦めるんですから!

 いつも言ってますがもうちょっと頑張りましょうよ! 』


 俺は身体をグラングランと揺らしながらどこでも無い方向に目を向けていたらヘルが颯爽と現れて俺の意識が無いと言ってベスとサーラにどこかで休ませるようにと頼んでいた。

 アホ毛姫達(代替ヘルプ)は俺が急に体調を崩してフラフラしだしたので病気を心配していたがヘルが精神的にショックな事が有っての事だと説明してその場を取りなしていた。

 お話は後日もう一度会ってからにしましょうという事に落ち着いていたようだ。

 俺はパーティ会場に隣接する休憩室に運ばれてそこに有った簡易ベッドに寝かされた。

 俺はぼぉっとした頭でこの後どうするかと考えてみたが考えが纏まらず余計に混乱してきた。


 目を瞑っていたらどうやら寝てしまったみたいでその後の事は分からなくなった。


  ~ ~ ~ ~ ~


 俺が気が付くとそこは家の物置の資料室で旧執務室のソファーの上だった。

 身体を起こすと執務机に誰かがいて仕事をしているようだ。

 こんな所で寝ていた事もそうだが仕事をしているのも変に感じた。

 辺りを見回したがすっきりと片付いていていつもの資料室っぽくはない。

 キョロキョロしていると仕事をしていた男から声を掛けられた。


「もう直ぐ仕事が片付くからそれまで待っていてくれ。

 そうしたらちょっと話をしよう。」


 男にそう言われたら待っているより他はない。

 俺は静かにソファーに備え付けの机に置いてあった本を手に取るとパラパラと捲って見てみた。

 本は総合ネットワークの管理者に関しての資料のようで俺の知らない情報が色々と載っているようだ。

 俺はそれを見てへぇ~と思いながら楽しい時間を過ごしていたので男に待たされていた事も忘れていた程だった。

 俺が本を読み終わるのを逆に待っていた男は執務机からソファーへと移ってきた。


「さて、お互い相手を待たせてしまったが漸く話が出来るな。

 まずは自己紹介からやっていくか。

 もう分かっていると思うが私が【パンロック・ロリングストン】だ。

 君の名はなんと言うんだね? 」


「あんたがパンロックか。

 俺が思っていたよりも意外と若いんだな。

 俺はあんたの直系かは分からないが子孫の【ハーロック・ロリングストン】だ。

 あんたには前から色々と文句が言いたかったからこの際全部言わせて貰うぞ。」


「まあ文句を言っても良いがそれはもう過ぎた事なんだから事態が進展しないのは納得して置いてくれよ。

 そうか、君はロリングストンの者なのか。

 君が生きている時代は私が死んだとされている時からどれだけ経っているんだね?

 教えてくれないかね。」


「お前は俺の脳に寄生しているんだろう?

 だったら俺の記憶は見たい放題じゃないのか? 」


「今はそういう状態ではないね。

 今後融合が進んで行けばそういう状態にもなるかもしれないが今は別々の領域に我々は存在していると思って貰った方が分かり易いだろう。

 だがその領域も少し重なっているのかその所為で今君と話が出来ているんじゃないかね。

 だがこの状態もいつまで続くのかは分からんからお互い協力しないかね。」


「そうか。分かったよ。

 俺も聞きたい事が有るからそっちの質問にも答えよう。

 今はあんたが死んでから五百年位後だと言われているよ。

 だからあんたのした事の多くが記録にはもう残っていなくてただの伝説扱いになってしまってるね。」


「そうか。五百年か。

 君とこうやって話しているという事は君は私の残した杖を触ってしまったという事で良いんだよね?

 ならばあの杖に施しておいた施術は有る程度は上手く作動したという事か。」


「おい! その事に付いて言いたい事が山程あるぞ!

 そもそもなんであんな物を残したんだ?!

 その所為で俺がどんな目に合ったと思っているんだ! 」


「そうか。君の精神を乗っ取るという事が叶わなかったという事から考えられる障害は二重人格とかだろうか。

 他になにか問題が有ったのかね? 」


「ああ、色々有ったが一番の問題は管理者に付けられるヘルプが電脳内から消えてしまった事だ!

 それによって今に至るまで無用な面倒事を数々と片付けて来たし受けられる筈だった恩恵を失ってきた。

 今回もヘルプが有ればという事が有ったんだがそれを見す見すと逃す事になってしまった。

 そのショックで俺は倒れてしまいここに来る羽目になったと考えられる。」


「なるほど。精神的なショックを受けてその所為で意識が減退して深層意識である私と同レベルまで下がった事によって今回の事態に成ったのならば君にはもっとショックを受けて貰った方が私にとっては良い事のようだな。

 君、もっとショックな事に合ってくれないかね。

 そうすれば私と君の立ち位置が逆転するかもしれないよ? 」


「アホか! そんな事して俺にどんな得があるっていうんだ? 」


「それはその後もう二度とショックな目に合う事が無くなって平穏な心で生きていけるんじゃないか? 」


「こんな心の奥に閉じ込められて平穏もなにも有ったもんじゃ無いだろうが。

 なに戯言をほざいていやがる。

 そんな事よりお前を追い出す方法は無いのかよ。

 お前も閉じ込められたままよりもその方が良いんじゃないのか?

 これは明かそうかどうか迷ったがお前に取っても良い情報だろうから教えてやるが鉱山街に置いていった動甲冑が有っただろう?

 あれがさっき言った追い出されたヘルプのAIによってアンドロイドとして起動させる事に成功したぞ。

 お前も同じように杖の宝玉に再移動して動甲冑に乗り移れば今よりもよっぽど良い境遇に成れるんじゃないか?

 あれの他にはもう動甲冑は作っていないのか? 」


「ほう? あの動甲冑を起動させるのに成功したのか。

 だがさっきから言っているヘルプのAIとは一体なんだ?

 管理者に付いて来ると言っていたが私の時にはそんな物は無かったぞ。

 いや待てよ? それは村の総合ネットワークからスキルを授けられる時に付いてくるんだよな?

 だったら私の時には無かったのも頷けるな。

 そのAIは私が総合ネットワークに進言して管理者に付与するように依頼した物だろう。

 私が生きている時にはまだまだ拙い感じのAIだったが五百年のデータの積み重ねに寄って真面に動く物に更新されて行ったという事か。

 ならば今の私ならそれと同じ事が出来るかもしれんのか。

 分かった。それなら動甲冑のサブシステムの記憶領域に設計図が隠しファイルとして格納されている筈だ。

 鉱山街の工房が年月の経過によってもまだ腕が落ちていないのであれば動甲冑は製造できるだろう。

 そしてそれに合わせた宝玉の作り方も設計図に載せてあった筈だ。

 後の問題は資金だろうがフィールデン王国側の山脈の麓に倉庫がある。

 そこに物資が保管されている筈だからそれを売って賄ってくれ。」


「ああ、それはもう誰かが既に発見した後だったのか空っぽだったぞ。

 他に資産に成るような物は残していないのか? 」


「むう、そうか。後はそうだな。

 ああ。私が入っていた杖が置いてあった地下室にいくつか部屋があっただろう。

 その中の一室に隠し倉庫があって魔道具やらを多数隠して置いた筈だ。

 君がそこに気が付いていないのならばまだ残っているだろう。

 それを売って資金を作ってくれ。」


「へえ。あそこにまだ秘密が有ったのか。

 実家に帰ったら早速探してみるよ。

 だがお前が宝玉に移るにはどうしたら良いんだ?

 今の状態が回復したらお前との接点が無くなってどうしようも無くなってしまうんじゃないか? 」


「方法がない訳じゃない。

 私の記憶を宝玉に移す時に村の総合ネットワークのご神体を経由してデータをコピーした筈だ。

 だから君の電脳にある今の私のデータも同じ様にコピーか移す事が出来る筈だ。」


「なんだよ。そうすれば動甲冑に移す迄も無くお前を俺の中から消去出来るんじゃないか?

 焦ってヘマしたな。くくく。」


「馬鹿め。私がそんな事する訳ないだろう。

 私が総合ネットワークに移動したらご神体を一時的に乗っ取って君の管理者権限を剥奪しても良いんだぞ。

 それで良ければやって見給え。」


「ちっ。そんなに上手くは行かないか。

 じゃあ取り敢えずお前を総合ネットワークに移す所迄は直ぐにやっても良いんだな? 」


「そうだな。動甲冑は直ぐには製造出来んからな。

 それに私も総合ネットワークに一時的にでも移動した方が五百年分のデータを閲覧出来て有意義かもしれん。

 あと必ず地元に帰ってから総合ネットワークに移すようにしろよ。

 あそこのご神体は私が色々と手を入れて他とは全く運用効率が違う物になってるからな。

 使わなければ勿体ない。」


「ああ、分かった。

 今回の会合はお互いにメリットがあって有意義だったな。

 今後も持ちつ持たれつでやって行こう。」


「ああ。私もそう在りたいと思っているよ。

 そろそろ接点が途切れそうだ。

 まあそんなに頻繁にショックを受けるような事は無いようにな。

 今後は上手く行きそうなんだ。

 変な事態に陥って計画を無駄にするような事は無いようにな。」


「ああ。俺も事態が改善すると分かって精神的にも落ち着くと思うからそんなに心配しなくても良いと思うよ。

 それじゃあお互いに良い人生を掴もう。」


「ああ。後は頼んだぞ。ハーロック君。」


 お互いが別れの挨拶を交わすと次第に風景が滲んで行き最後には真っ白になってしまった。

 あれ、そう言えばこれって夢を見ているような状態なんだよな。

 まさか目を覚ましたらなにも覚えていないとかじゃないよな?!

 おいおい、頼むよ!

 目を覚ましても記憶が残っていますように!

 お願いしまーーすっ!!


  ~ ~ ~ ~ ~


 気が付くと俺は寝ていた様だ。

 どこかの部屋の小さなベッドに寝ている。

 どうしてこんな所に寝ているのか寝る前の記憶が定かではない。

 それよりも寝ていた間に見ていた夢……のような物の方を良く覚えている。

 その夢の中で俺はパンロックと長々と話をしていた。


 夢……だよな?

 夢の内容がどんどんと曖昧になってくる。

 一番重要そうな事はなんだろうか?

 多分、地元の総合ネットワークに行けという事だと思う。

 ヘル! 今の事を記憶して置いてくれ!

 なにか重大な情報のような気がする!!


『マスター。気が付いたんですね。

【地元の総合ネットワークに行け】ですか。

 一体夢の中でなにを思いついたんですか?

 まあ、覚えて置くのは問題無いんですがどんな意味があるのか分からなければどうしようもないですよ? 』


 俺にももう良く分からなくなってしまったが兎に角重要な情報だという事だけが印象に残っているんだ。

 それに夢を見てから心が落ち着いて来ていてかつて無い程気分がすっきりしている。

 さっきの情報となにか関係がある筈だ。

 これを追い掛けて行くとなにか良い事が起きる気がする。

 武闘大会も終わったんだし一度自分の家に帰って見ないか?


『そうですね。マスターも良く分から無い事で倒れたりしたので一度帰って見るのも良いかもしれませんね。』


 おぅ。俺って倒れたのか。

 じゃあそういう風に皆に伝言を頼むな。


「あっ、ロッくん目が覚めたの?

 気分はどう? もう大丈夫? 」


「ハーロック様! ご気分はいかがですか?! 」


「おう。二人共。心配かけたのか?

 悪いな。なんで倒れたのか良く覚えていないんだが起きてからは気分は凄く良いぞ。

 あれかな。緊張して寝不足とかだったのかもしれんな。」


「体調が戻ったのなら良かったよ。

 今日はもう帰っても良いって言われたから先に帰ろう。」


「おう。そうだな。

 ベスはまだ遊び足りない様なら残っても良いぞ? 」


「いえ。もう今日は色々あって疲れましたので一緒に帰ります。」


「じゃあ三人で一緒に帰ろう。」


「うん? なんかロッくん雰囲気が変わった? 」


「そうか? そうかもしれんな。

 なんか起きてから凄く気分が良いんだよ。

 まるで生まれ変わったみたいだな。アハハハ。」


 そうして俺達は王城から宿に帰っていった。

 因みに俺が着ていた服はなぜか脱がされていたので怒られることはなかったんだが二人が返しに行っていたのかね。

 それなら順当に本人が怒られたという事なのかもしれんな。





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