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マセキ・コントローール!  ~せっかく異世界に転生したのになんか捻くれた性格に育っちゃったみたいです~  作者: さんご
第三転生期編  第七章  異世界戦闘倶楽部の物語

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03-07-06 そうだ! パーティに行こう!

 武闘大会が終了した。

 結果として俺達のチームから優勝者が出て他にも三位が二人も出た。

 大会側から優勝者を表彰するので舞台に上がってくれとアナウンスがあった。

 三位までの者もついでに表彰するみたいで呼ばれていた。

 ガッシュとリーナとベスはちょっと身なりを整えてから揃って舞台に向かって行った。


 そういえばこの大会は王家主催だった筈だが誰か王族の者が見に来ていたんだろうか?

 観客席には特にVIP席が有る様には見えなかったし物々しい警備兵もいなかったと思うんだが。

 まさかアホ毛姫が王家の代表で見に来ていたという訳でもないだろうしな。

 あの子は多分拡声の魔道具を効率良く動かす為に来ていたんだろう。

 アナウンスの仕事はオマケかね。


 こういうのってよく主催者が表彰するのが定番だと思っていたが今回は大会役員の爺さんがやるらしいな。

 アナウンスでアホ毛姫からそう説明があった。

 もしかしてあの子がやるのかと思っていたが違うのか。

 あの子のフィールデン王国での立ち位置が良く分からんな。

 今回のような公務っぽいのをさせられているという事はもう一人前として見られている証だと思うんだがなあ。


 そう言えばこういったフィールデン王国の内部情報を調べようとした矢先に総合ネットワークが使えなくなって大した情報が得られていないんだったな。

 ヘル。その後も変わりは無いんだよな?


『はい。残念ながら事態に変化は無いようです。

 あっ、これはもしかするとフィールデン王国側も総合ネットワークが使えなくなって首脳部が混乱してこの大会に出席出来る者がいなかったんじゃないでしょうか。

 ティアフォーラ様は元々仕事が無かったか大した役目ではなかったので急遽この大会に派遣されて来たとかじゃないですかね。』


 ああ、なるほどな。

 そう考えると色々納得できるな。

 あんな小さい子に政府の仕事をさせるなんてフィールデン王国の奴等はどうかしてると思っていたが仕方なくなのか。

 総合ネットワークがトラブって困ってるのは俺達だけではないと気が付いてちょっとは気が楽になったのは良いけれど問題がなにも解決していないのは変わっていない。

 どうでも良いが早く復旧して欲しいもんだよな。


 大会の表彰式も終わって皆が一度控室に戻ってきた。

 優勝賞品も一応は貰えるようでガッシュは勿論リーナとベスもそれなりの額の賞金を貰っていたが俺達の資産と比べるとお小遣い程度だな。

 まあ貰える物は貰って置けば良いんじゃないかね。

 本当の賞品は今後政府とコネが出来るという事だろうし俺達には関係ないだろうしな。


 いや、リーナはどこかの国で道場を開きたいとか前に言っていたような気がするな。

 その時に今回のコネが使えるかもしれん。

 大事に取って置けばいいと思うよ。

 さて今日の晩に大会優勝者を招いてのパーティがあるらしく必然俺達もチームごと出席しなければならなくなった。

 欠席は出来ないようだ。


 或いはしてもいいけど王国の面子を潰したという事で牢屋行きだろうな。

 俺達は大会関係者に連れられて王城のパーティ会場に移動する事になった。

 パーティに着る服は王城の貸衣装みたいな物を使うようだ。

 衣裳部屋っぽいところに連れていかれた俺達はそこの担当者の人達に次々と衣服を着せられて吐き出されていった。

 唯一ヘルだけが鎧を脱げないと言ってそれを免れていたが。


 着た事もない奇麗な服を着せられた女性陣はそのまま化粧部屋にも連行されていったが男連中は簡単な散髪程度で良いみたいで直ぐに暇になっていた。

【フィールデン パワーズ】の連中や他の本戦出場者も同じ待合室に押し込まれてパーティ開始まで待つ様にとの事だ。

 リックやビッグもいたので一応挨拶しとこうかと近付いて行ったら他の連中達が何事が起きるのかと騒然としだした。

 やだなあ。もう試合も終わったんだからそんな喧嘩腰にならなくても良いだろう?

 なに? まだ暴れ足りないとかなの?


「やあ、どうも。

 あれから体の調子はどうだ? 」


「ああ、ロックか。

 もうなんともないぞ。気を使って貰って悪いな。」


「いやまあ。元は俺の魔術の所為だからな。気にするな。

 それよりパーティってどんな感じなんだ?

 何度も出ていて良く知っているんだろう?

 教えてくれないか。」


「ああ、悪いな。俺は直ぐに酔っ払ってしまって良く覚えていないんだ。

 リックなら覚えているんじゃないか? 」


「この馬鹿! なに恥ずかしい事言ってるんだよ!

 もう変な事言うなよ。

 ええと、パーティの事だっけ。

 パーティは毎回国王が最初の挨拶をした後は無礼講といった感じで好きにして良いみたいだよ。

 帰るのもある程度時間が経ったら政府の方で用意した馬車で宿まで送ってくれるから安心だよ。」


「そうそう。俺はいつもなぜか宿に帰っているんで不思議だったんだよなあ。ガハハハ。」


「はぁ、まったく。まあそんな感じで特に俺達がする事は無いよ。

 だけど出席している貴族の人達から話を聞かせてくれとか言って接触してくる場合があるね。

 後は家で働かないかとか言って来ることもあるがこれは大体ソロの人が対象だね。

 チームに入ってる人にはそういう事はまず無いと思うよ。」


「ああ。そういう目的も含んでるのか。

 リック達がチームを組んでるのはそれ対策という感じか? 」


「ハハハ。分かっちゃったか。

 貴族の頼みを断るなんて普通の奴には難しいからな。」


「そうかあ? 俺はいつも普通に断っていたぞ。」


「そんな事が出来る度胸があるのはお前位だよ! 」


「アハハハ。そうか。そんな感じなんだな。

 ありがとう、参考になったよ。

 それじゃあまた後でな。」


 そう言って俺はその場を後にした。

 周りで俺達がなにか騒動でも起こすんじゃないかと気にしていた奴等は俺達が結構仲が良さそうなのを見て試合前のごたごたは話題作りのヤラセだったんだと思った様で咎めるような目を向けてきた。

 まあそう思って貰っていた方が都合が良いので俺は特に関心がない風を装っておいた。

 結構な時間待たされて置いてあったお菓子等もとっくに無くなって腹もすいて来た頃になって漸くパーティが始まるのでこちらに来てくれと使いの者が来た。

 待合室にいた全員でぞろぞろとパーティ会場に向かって歩いていると通路の角から同じく会場に向かう女性陣が姿を現した。


 一番に目を引いたのはやっぱりリーナの奴でビジターナ王女と比べてもよっぽどお姫様だという雰囲気バリバリだった。

 リーナは鍛えているだけあって立ち姿もしゃんとしていてヒールの高い靴を履いているのかいつもより背が高くなっているように見える。

 容姿に関してはもう見慣れていて特に言う事は無いな。

 だがそれは俺達同じチームの男だけの話で他の男達には違ったようで皆目を見開いて凝視していた。


 おいおい、お前ら大丈夫か? 相手はリーナだぞ?

 皆試合を見ていなかったのか? そんな訳ないよな。

 リーナの外見だけで惚れてるようじゃ全然相手にはならないぞ。

 それにもうちゃんと婚約者もいるしな。

 すると女性陣達もこっちに気づいて近づいてきた。


 男連中の何人かがリーナに声を掛けようと動き出そうとしたがそれに先んじてリーナの方がこっちに寄って来てガッシュにドレス姿を見せ付けてきた。


「どう? 結構似合うでしょ? ウフフ。」


「ああ、凄く綺麗だ。似合ってるよ。

 俺の婚約者様は世界一の美人だって再確認したよ。」


「まあ! 珍しい! 貴方がそんな事言って来るなんて初めてじゃない? 」


「いや、いつも美人だっていうのは思っているんだけど今日の君は格別だよ。

 俺は君の婚約者に成れて本当に幸せ者だ。」


「ガッシュ、貴方……。」


 見つめ合った二人はどちらともなく近付いて行き……。


「ゴホン! ゴホン!

 おい、お前達。ここをどこだと思っているんだ?

 いい加減にしろよ。

 終いには追い出されるぞ? 」


 俺が二人のバカップルぶりに呆れて待ったを掛けると周りの視線にようやく気が付いたのか二人は顔を真っ赤にさせながら隅の方に逃げていった。

 リーナに声を掛けようとしていた連中はもう婚約していてその二人が愛し合っているのを間近で見せつけられて酷くがっくりしていた。

 悪いね。変な期待を持たせてしまって。

 まああいつ等の様なリア充じゃない俺達には俺達に合った相手が現れるのを待とうよ。

 え、サーラ? それは誰の事なんでしょうか? 記憶にありませんね。


 まあそのサーラも着飾ってはいるがなんか田舎者っぽくてなんとも言えない感じだ。

 そんなサーラよりもベスの方に目が吸い寄せられる。

 ベスはリーナには負けるが結構立派な身体をしているのは知っていたが顔にはそばかすが有ってそれが目立って全体的な評価を落としてしまっていた。

 だが王城の化粧係に掛かるとそれが全く見えなくなって欠点が無くなった感じだ。

 リーナに言い寄る前に振られた感じの男達が次に目を付けたのはやっぱりベスだったがこんな子が大会に出ていたっけという風に戸惑っている内にベスは俺の傍に寄って来て俺の後ろに隠れてしまった。


 その所為でこの子は俺の相手だと思われたのかもう声を掛けられる事は無くなったみたいだ。

 ついでに言うとサーラに声を掛けようとする奴は現れなかったという事をここに記して置く。

 ベスに遅れてサーラも俺の傍に寄ってきたが君は隠れる必要がないだろう?

 それに俺の後ろには人が二人も隠れられる場所はないからね。

 二人は俺の後ろでぎゅうぎゅうと押しくらまんじゅうをしていたがそんな事をしていると折角のドレスが皺くちゃになってしまうぞ。


 後で王城の衣装係の人に叱られても知らんからな。

 特に着替える必要の無かったヘルも女性陣と一緒に行動していたようだがなんか鎧がちょっと奇麗になっている気がする。

 なんかキラキラと光が反射しているのを見ると油でも塗ってもらったのか?

 王城の武具整備の担当者にでも手入れして貰ったのかもしれんな。

 それに式典用のマントとタブレットを貸して貰ったのか武闘大会の時よりも凛々しい感じに仕上がっている。


 これでヘルもドレスアーマーっぽい見た目になりパーティに出ていてもそんなに違和感がないようになっていた。

 これはドレスが着られないと断ったヘルに対する王城の人達の心ばかりの優しさがなせる業なんだろうな。

 これにはヘル共々感謝しか感じられないよ。

 ヘルの事に感謝しつつも主に俺達のチームの奴等がアホな事をしている内にパーティ会場に着いたみたいだ。

 このままぞろぞろと入れば良いのかと戸惑っていると扉に付いている衛兵が会場に入る時に女性と腕を組んで入っても良いですよと余計な事を口走ったお陰で俺達に途轍もない衝撃が走った。


 おいっ! なに余計な事を言ってくれてるんだよ!

 その所為で俺達は二つのグループに分けられる事になった。

 それはエスコート出来る女性がいる奴といない奴とにだ。

 そしてそれまで和気藹々といった雰囲気だった俺達はギスギスとした感じになってパーティ会場に入っていった。

 特に俺は左右両方の腕に女性をぶら下げて入って行ったのでエスコート出来る女性のいない奴らの憎悪を一身に集めてしまっていた。泣けるぜ。


 パーティ会場に入っても両腕の戒めが解かれる事は無く俺は左右逆方向に引っ張られて大岡裁きの子供の気分を味わう事になった。

 どっちか手を離した方が本物の彼女だったりしないのかねえ。

 俺の希望は叶う事は無く国王が現れるまで続く事になった。

 さすがに国王の前では手を離してくれたのでこの僅かな時間内で食い物と飲み物を出来るだけ食らっておいた。

 この後どんな情勢になるか分からんからな。


 ガツガツと飯を食らっていると流れていた演奏が急に止んで静かになった。

 パーティ会場で一段高くなった舞台上に国王他数人が並んでいるのを確認した俺は飲み物で口の中に有った物を全部腹に流し込んでから舞台に向き直った。

 ギリギリ間に合っていたから怒られる事はないだろう。

 そうしていると国王らしき豪華な服を着たおっさんが話し始めた。

 内容は至って普通で特に問題発言も無く無難に終わった。


 一国の国王に間近で会うのは初めてだが見た感じこのおっさんは良い人のようだ。

 話し方も穏やかで皆に愛される国王を地で行っていると感じた。

 国王から少し下がって若い男とアホ毛姫が並んで立っている。

 あ、アホ毛姫が俺の方を見た。

 なんだか可哀そうな者を見る目でだ。


 おいおい、なんだよその目は?!

 この後なにか俺に良くない事が起こるのか?!

 あっ! そうだったわ。

 俺の使っていた杖が王家に掠め取られるんじゃないかという俺の予想が当たったんだろうな。

 アホ毛姫は俺の事を僅かばかりか知っていたのであんな目でこっちを見ていたんだろう。


 それに引き換え今気づいたが隣の男は俺の事を睨んでいるように見える。

 俺が魔法の杖を持っている事が気に食わないとかそんな所かねえ。

 あれは王家の力を笠に着て杖を二束三文で奪ってやろうとでも思ってるのかもしれんな。

 ああ、ヤダヤダ。普通に頼んできたのならアホ毛姫に免じて普通に売ってやっても良かったんだけどなあ。

 だがもう俺はお前には絶対に売ってやらんぞ。


 ヘル。そういう事だから最悪ここを突破してでも逃げるかもしれないからそのつもりでな。

 その時は皆に事前に連絡して置いてくれ。頼んだぞ。


『はあ。しょうがないマスターですねえ。

 分かりました。でも一応は話し合いでやり込められないか試してからでも遅くはないですよね。

 もう少し頑張りましょう。』


 はいはい、分かりましたよ。

 一応頑張ってはみるが相手のある事だからそんなに期待するなよ。

 国王の話が終わるとまた音楽が流れ始めた。

 そしてすかさず俺はまた両側から引っ張られはじめてどこへも行けなくなってしまった。

 出来れば奴の前から一旦身を隠してアホ毛姫に事態を確認しに行って置きたかったんだが無理な事だったな。あ~ぁ。


 俺はその後も右に左に引っ張られてもう服の袖がビロンビロンに伸びてしまっている。

 これは後で衣装係の人に絶対に怒られる案件である。

 俺は全然悪くないのに怒られるのは俺なんだろうな。

 最悪服を買い取らないといけないかもしれない。

 泣けてくるぜ。


 そんな風に黄昏ている俺に話しかけてくる男がいた。

 そーら御出でなすったぞ。





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