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マセキ・コントローール!  ~せっかく異世界に転生したのになんか捻くれた性格に育っちゃったみたいです~  作者: さんご
第三転生期編  第七章  異世界戦闘倶楽部の物語

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03-07-04 本戦二回戦第一試合

 本戦一回戦の試合も全て終わり続けて二回戦が始まった。

 俺はその前に係員に棄権したいんだがどうすれば良いのか聞いてみたら出来れば棄権するのは止めて欲しいと懇願された。

 なんでなんだと理由を聞いたら掛け金の払い戻しの作業が別に発生して事務作業が大変になるからだそうだ。

 まあそうか。俺も大会関係者に迷惑を掛けるのは本意ではないので一応試合をしましたという風に形だけでも装うことに同意した。

 まあ別に大勢の前で試合に負ける事に対しては思うことはないので良いんだがどういう風に負けるかねえ。

 ただ舞台の上で負けましたと言うのもなんか味気ないよね。


 ここは一丁一芝居を打って場の温度を少しでも下げないようにしよう。

 その為にはベスが面白く立ち回れるような内容にしないとな。

 なんかこんな下らない事を考えるのも結構楽しいよな。

 俺は試合開始までの短い時間でどんな面白い話をでっち上げられるかに全能力を傾けてなんとかシナリオを思いついた。

 これを叩き台に後は臨機応変に対処しよう。


 本当はベスにも話を通した方が確実なのは分かってはいるがそれだと彼女の素の反応が見られないのでそっちを優先した形だ。

 後はベスの対応力次第で話が面白くなるか下らなくなるか決まるだろう。

 まあ彼女は期待通りの反応を返してくれると俺は信じているがね。

 これで賭けをしている奴等が納得するかは分からんがそんな事は知った事じゃないね。

 あんな奴等に忖度する義理はない。


 そうこうしている内に時間が来たようで俺とベスは揃って控室から舞台に向かって歩き出した。

 それを見て観衆も次の試合は仲間同士の戦いだと分かっただろう。

 そして仲間同士で本気で戦うのか馴れ合っていい加減に取り繕うのかどっちに転ぶかに興味をそそられているに違いない。

 まあ俺達の三文芝居をとくと御覧じろだ。


 舞台の中央に登った俺達は向かい合い審判員の始めの合図を待っていた。

 特に構えもしない俺に合わせてかベスも突っ立っているだけだ。

 戦う前に俺からなにか言われるのを待っているのかもしれないな。

 審判員が俺達の様子を確認した後特に動きがないので試合の開始を宣言した。

 それを待ってから俺はベスに話しかけた。


「ベス。その剣はいつから使っているんだ?

 もう結構使いこんでいるんだろ? 」


 ベスはそら来たという風な顔をした後俺の質問に答えてきた。


「えっ、この剣ですか?

 これは領地から王都に向かう時に母さんに貰った物です。

 母さんの予備の剣の内の一本ですね。

 ラムドもその時に一緒に貰っていました。」


「ほう、そうなのか。ちょっと見せてくれないか? 」


「良いですよ。はい。」


 そう言ってベスは素直に剣を渡してくれた。

 その顔はしょうがないなあと言った感じだ。


「ふーん。良い剣のようだが手入れが余りされてない様だな。なんでだ? 」


「はあ。ずっと旅をしてきていて落ち着いて修理に出せなかったからですね。

 この大会の後に少し時間を貰えませんか?

 他にも色々直して置きたい物もあるので。」


「おう。分かった。

 じゃあ二週間ぐらい休暇にするか。

 この剣は修理に出さないと危ないから俺が預かっておくぞ。良いな? 」


「えっ。それじゃあ私達はこの試合を素手で戦うって事ですか? 」


「うん? そんな事ないぞ。

 俺はこの杖を使うぞ。

 これは作ったばかりで手入れする必要はないからな。」


「そんな?! じゃあ私だけ素手ですか? 」


「まあそうなるな。

 これはいつも使っている武器をちゃんと管理していなかったベスの所為でもあるし素手で頑張って貰うしかないな。」


「じゃあそういう事で良いですけど私は予備の剣を使いますね。」


「ああ。予備の剣を使ってもいいけど今持ってるのか?

 そんな風には見えないが。」


「ええ。控室に有りますので取ってきますね。」


「取りに行くのは良いけどそうするとこの試合は負けになるぞ?

 それで良いんだな? 」


「えっ? そうなんですか? 」


 ベスが審判員に確認すると今まで成り行きを黙って見ていた彼がそれに答えた。


「はい。もう試合開始の合図を出した後なのでそうなりますね。

 その前だったらいくらでも替えられたんですが。」


「狡いですよ! ハーロック様!

 だから試合開始を待ってから話し掛けてきたんですね! 」


「ああ、そうだ。

 この剣を返して欲しいか?

 後名前言うな。」


「済みません。

 そりゃ返して欲しいに決まってます。」


「フフン。そうか。

 だったら一つ言う事を聞いてくれたら返してやらん事もないぞ。どうだ? 」


「エエ~?! そ、そんな?!

 そんなに私の身体が欲しいんですか?!

 まあ身体を差し上げるのは問題ないんですがこういう場所で言われるとは思ってなかったです。」


 ベスが身体云々と言った瞬間に二ヶ所から強烈な殺気が飛んできた。

 一ヶ所は直ぐ傍の審判員のおっちゃんからだ。

 彼も審判なんかをやっているんだから強いとは思っていたがこんな強い殺気を飛ばせる程だとは思っていなかったからちょっとびっくりだ。

 もう一ヶ所は俺達の控室の方からで多分サーラだろう。

 だがあんなに遠くの方から良くここでの話が分かるよな。

 いわゆる地獄耳という奴だろうか。まあいい。


「はあ? お前はなにを言ってるんだ?

 そんな事は一言も言ってないだろ?

 ねえ、審判員の人? 」


 急に話を振られた彼は少し驚いていたが無難に返事をしてきた。


「ええ、そうですね。

 紛らわしい言い方でしたがそんな事は言ってませんね。」


「ほら見ろ。俺を陥れようとは恐ろしい奴だな。」


「はあ、そうですか。残念です。

 だったらなにを私にさせたいんですか?

 エッチな事ですか? 」


「だからそういう事を言うな!

 話が進まないからもう無視していくぞ。

 やって貰いたいのは今から剣を返すからそれで俺の皮鎧のこの部分を突いて欲しいだけだ。」


 そう言って人差し指で胸の辺りをつつく。


「そんな事で良いんですか?

 だったら普通に言ってくれたら直ぐにやりましたよ?

 剣を取り上げる必要なんて無かったと思うんですが。」


「剣を取り上げたのはいくら仲間だといっても戦闘中に武器を手放すなという事を言いたかっただけだ。

 これからはそう言う事にも気を配れよ。」


 そう言ってベスに剣を返した。


「はい。分かりました。

 それでこの辺りを突けばいいんですか? 」


「おう、その辺だ。

 だがもうちょっとカッコつけた感じで頼む。

 良し来い! 」


 ベスは剣で演舞っぽい動きを少しした後流れでそのまま俺の胸をチョンと突いてきた。


「グワアァーーッ! 」


 俺は突かれた所為で吹っ飛んだ様に後ろに飛び退りそのまま後ろにゴロゴロと転がって舞台から転げ落ちた。

 審判員のおっちゃんはなにが起こるか大体予想が付いていたのか騒がずに冷静に俺の負けを宣言した。


「勝負あり!

 勝者、エリザベス・パンドーラ! 」


「「「エエエェーーーッ?!」」」


「ふざけんなーー!」 「金返せーー! 」 「詰まんねえぞーー! 」


 その瞬間観客から驚きの声が上がった。

 次いで俺の負け方が気に食わないのか文句を言う声が飛んできた。

 おまけで飲み物が入ったままのコップ等も飛んできた。

 俺は舞台に這い上がるとヘルツーに舞台に届きそうな物を全て撃ち落とすように頼んだ。

 そしてそれを投げた奴を特定して置くようにも言っておいた。


『分かったよー。お兄ちゃん。』


 次の瞬間から飛んで来ていた物が直ぐ様撃ち落とされていき舞台周辺に落下していった。

 物を投げていた観客も異変に気づき次第に物が飛ぶこともなくなってきた。

 ベスは観客から怒声をいきなり浴びせられてついでに物まで飛んできた事に酷く動揺しているようで舞台中央で一人縮こまっていた。

 俺はベスに近寄りながら彼女に声を掛けた。


「おい、ベス。大丈夫か?

 こんな事で動揺しているようじゃあバンドナみたいには成れないぞ。」


「え? は、はあ。そうですか。

 あ、いえ。私は別に母さんみたいに成りたい訳じゃないので良いんですけど。」


「なんだ、そうなのか。

 バンドナに憧れているのはラムドだけなのか。

 まあそんな事は今は良いか。

 それよりもこの場の雰囲気をどうにかしないとな。」


 俺はヘルツーに宝玉を集音マイクと大音量スピーカーになるようにして貰い観客席全体に話し掛けた。


「オイッ、お前らっ、よくも神聖な舞台に向かって物を投げてくれたなっ!

 今物を投げた奴らの額には赤い光の印が付いているのが周りの奴に確認して貰えば分かるだろう!

 だがその事より先に俺がワザとらしく負けた事に怒っている奴らに物事のどおりと言う物を教えてやろう!


 お前ら俺の強さをどんなもんだと思っている?!

 言ってはなんだが俺の強さはこの大会に出ている全ての者が一斉に向かって来ても一瞬で皆殺しに出来るくらいだ!

 お前らは魔術師の事を良く知らないだろうから親切に教えてやるがルールに対戦相手を殺したら失格だというのが無かったら開始一秒で相手は死んでいる!

 証拠は目で見た方が早いだろう!

 ベス、採取用のナイフを俺に向けて山なりで投げてくれ。

 低いと観客に流れ弾が当たるかもしれんからな。」


 ベスは魔石の採取にいつも使っているナイフを腰から抜いてそのまま山なりで投げてきた。

 俺はヘルツーに高出力で目で見える位に明るいレーザーでそれを撃ち落として貰った。

 バチュン! と良い音をさせてレーザーに真っ二つにされたナイフはカチャンと地面に落ちて転がった。

 それをベスに観客にも分かり易いように掲げて持ってもらい俺は話を続ける事にした。


「見たか! なんの動作もなく一瞬で光の魔術によってナイフは真っ二つだ!

 これを対戦相手の頭に食らわせれば一瞬で即死だ! 」


「嘘をつけーーっ! 」


 俺の背後の方から見えないだろうと高をくくった奴が物を投げてきたようだがヘルツーの火器管制システムに隙はない。

 直ぐ様杖のレーザーで撃ち落としてそいつの額にも赤い印のマークが現れた。


「今見たように俺に死角はない!

 どこからの攻撃でも撃ち落とす事が出来る!

 今物を投げた奴! お前の額にも印が付いたぞ!

 さて、俺がさっき試合に負けてしまったのはお前等も見ただろう?!

 詰まりもう失格する事を気にする必要は無くなった訳だ!

 頭にマークがある奴は残念だったな!

 お前達の命はこれまでだ!

 三、二、一、発射ーーっ! 」


「止めろーーっ?! 」


 審判員のおっちゃんが冗談だと思わずに俺に襲い掛かってきたがこんな事もあろうかと体の向きを変えてヘルツーの宝剣の柄頭からのフラッシュの準備をすでに終えていたので彼に向けて範囲を狭めて発動して無害化して置いた。


「グワアァーーッ?! 」


 彼は慌てていた所為かフラッシュ対策を仕損ねていて至近距離でもろに食らってしまった為喚きながら俺の横をすっ飛んでいった。

 悪いね。急な事で手加減出来なかったんだよ。


 一方で観客の方はパニック状態になっていた。

 俺に物を投げていた奴に向けて無害な位出力を抑えていながら明るいレーザー光を発射していたからな。

 食らった奴は自分が射貫かれたと思って大袈裟に避けたり飛びのいたり走って逃げ出そうとしたりとてんやわんやだ。


「アーーッハッハッハッハ! 冗談だよ! バーカ!

 こんな事で本当に殺す訳ないだろ! アーーッハッハッハッハ!! 」


 大声を出して笑っているとベスが横から要らん事を言ってきた。


「いつも思うんですがハーロック様って手加減って言葉を知らないですよね。」


 うるさいよ!

 特に手を出してないんだから手加減してるうちに入るだろう? なあ、ヘル。

 後なんども言うが名前言うなよ。


 そうこうしていると呻いていた審判員のおっちゃんも回復してきた。

 そしてアホ毛姫もアナウンスの仕事を思い出したのか観客を鎮めようと放送を流してきた。


「落ち着いてください! 今のは冗談です!

 実際に殺人は行われていません!

 繰り返します! 今のは冗談です!

 皆さん、落ち着いてください! 」


 館内放送で繰り返し安全だとアホ毛姫が言っている。

 俺は舞台上でこの後どうなるのかと様子を見ていたんだが急にアホ毛姫が俺に文句を言ってきた。


「こらっ! ロック・ザフリーダム!

 貴方が原因なんだからどうにかしなさい! 」


 オイオイ、俺にそんな事頼んで大丈夫か?

 もっと酷い事になっても知らんぞ?

 まあこのまま騒ぎが収まらないのも後がつかえているし困るか。

 俺は杖を上に掲げて耳の片方を手の平でもう片方を二の腕の内側で抑えてベスに注意を促した。


「ベス! 耳を塞いでおけ! うるさいぞ! 」


 そしてヘルツーに音響兵器の効果のある音を発してもらった。


 ドオーーンッ!!


 会場全体を揺さぶる程の大音響を発すると辺りはシーンと静まり返った。

 観客はなにが起こったのかとキョロキョロと周りを窺っているのでアホ毛姫になにか言えよと顎をしゃくって促した。


「今のは冗談です! 落ち着いて席に戻ってください!

 誰も殺されていません! 落ち着いてください! 」


 会場も鎮まったので俺は控室に戻る事にした。

 ベスも試合が終わっていたのを思い出したのか俺の後に付いて戻ってきた。

 今回の試合は思ったよりも意味があったな。

 俺を舐めていた奴等に魔術の恐ろしさについて僅かでも気が付いてもらえたのなら言う事は無い。

 奴等脳筋共はいつも魔術を下に見る傾向がある。


 本当の魔術は科学技術の集大成で人の持つ最強の力だ。

 ちょっとスキルが使えるとしても到底歯なんか立つ物ではない。

 だがこの世界にはスキルという似非魔術が蔓延っていて人々は魔術なんか大した事はないと誤解してしまっている。

 この誤解を少しでも解消できればいいなあと俺は思っているんだけどどうも上手く行っていない。


 だけども俺の考えもいつの間にか変わってきたなあ。

 前は魔術の事でこんなに苛つく程入れ込んではいなかったと思うんだがいつ頃から変わってきたんだろうか。

 そしてこれは俺にとって果たして良い変化なんだろうか。


 そんな事をつらつらと考えながら控室の扉を開いて中に入っていった。





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