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マセキ・コントローール!  ~せっかく異世界に転生したのになんか捻くれた性格に育っちゃったみたいです~  作者: さんご
第三転生期編  第六章  新活動写真天国の物語

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03-06-05 大脱走

 電車の残骸を眺めながら感慨にふけっていると辺りの探索を終えたらしい皆が俺のところに集まってきた。


「これが昔の移動手段なのか?

 スカスカじゃないか。」


「ああ。これは昔の人が使えるところを持っていったからだよ。

 元はちゃんと周りを板が覆っていたんだ。」


「ふーん。どういう物だったの? 」


「ここの床に鉄の棒を繋げて置いてそれにそうようにこの荷車のような物の車輪が嵌る形で前後に動かしていたんだ。

 車輪は魔道具みたいなもので回していたようだね。

 まあ見た通りもうここには残っていないようだけど。」


「昔はそんなに鉄が余っていたんですね。

 今ではそんな無駄はとても考えられませんよね。」


「そうだな。昔はなんでも一杯あったんだろうな。

 羨ましいことだよね。

 さて、ここら辺には特になにもなかったのか? 」


「うん。魔獣もさっきのしかいないみたいだよ。ロッくん。」


「じゃあさっきの魔獣の処理をしてから馬車を下におろそう。

 そしていよいよ隣国に向けて出発だ! 」


「おう! 」「はい! 」


  + + + + +


 それから俺達は馬車を降ろして真っ暗な通路となった文明崩壊以前の鉄道のトンネルを進みだした。

 明かりは馬車についているパトランプから全周囲に向けて照射した。

 特に前方には明かりの強さを上げて照射するようにして置いた。

 こういったただ明かりを点けるだけなら消費エネルギーはそんなに掛からないので数日間は点けっ放しでも大丈夫だろう。

 使う傍からマイクロマシンからエネルギーを補充しているらしいからな。


 そういえばプラットホームの辺りだけが明るかったのはなにか照明が点いていたからだったようだ。

 天井全体が自然な光で上から日が当たっているようにしか見えないような感じで明るかったから錯覚していたがあそこの真上は岩山のど真ん中だ。

 日が当たる訳などなかったんだが光が白っぽくなく自然な温かみのあるものだったので騙された。

 夜に外から入っていれば不自然さに直ぐ気付けただろうが外は昼間で晴れていたからな。

 一体どんな仕組みなのか興味があるがまた暇な時にでも調べよう。


 トンネル内は本当になにも残っていないようで馬車で進むのになんの障害もない。

 商売していた奴も馬車を使っていたんだろうし特に気を付けることもないだろう。

 後は商売を辞めた理由がトンネルの崩落とかで無ければ良いんだがな。


 隣国側に着くまでにどの位時間が掛かるのかヘルに聞いてみたら多分丸一日は掛からないだろうと予測していた。

 そういえばトンネルの中は日も当たらなくて時刻の見当がつかないのでヘルに数時間ごとに教えてくれるようにも頼んでおいた。

 ピ、ピ、ピ、ポーンと一回目の時報がパトランプから発したので皆にちょっと休憩しようと声を掛けた。

 皆も一見すると夜の馬車移動と変わらない状態だからか変に体に力が入ってしまっていていつもより疲れているようだ。


 一か所に集まってヘルが淹れたお茶を飲んで一服しながら皆の顔を見回すとどれも冴えない表情をしている。

 こりゃ不味いなと考えを巡らせてみた。

 そして気が付いたんだがこれ皆して馬車の警護なんかしなくてもいいんじゃないか?

 そうだよな。こんなトンネルの中には盗賊も出ないし魔獣も滅多に出ない。

 魔獣は出たとしても前後どちらかにしか出ないだろうしそんな感じならパトランプのレーザーで対処できるだろう。


 そう皆に説明して御者席に二人もいれば間に合うだろうから他の人は馬車か荷車に乗って休んでもらうことにした。

 ヘルには悪いが一人だけ歩いてもらおう。

 まあヘルには疲労とかは関係ないだろうしね。

 暇なら俺やヘルツーと喋っていればいいしな。

 休憩後は皆馬車とかに乗ってそれぞれ好きな事をして過ごしていた。


 移動途中でヘルと話している時にちょっと疑問に思っていたことを聞いてみた。

 なあヘル。こっちから送っていた物資は工業製品が多かったようなんだが向こうからは何を送ってきていたんだろう?

 同じ工業製品って訳はないだろうし金銭を貰ってもあまり意味がないだろう?

 なにかを代わりに持って帰って来た方がどちらにとっても効率がいいんじゃないか?


『そうですね。多分ですが食糧じゃないですか?

 若しくは鉱物とかの原料という可能性もありますね。』


 ああ、そうか。

 製品を作るには原料がいるもんな。


『両方というのが有力じゃないでしょうか。

 昔はこの国は森が多くて農地が少なかったそうですから木を切ってそれを使って鍛冶をして木を切った後の土地を農地に開墾していたとかじゃないでしょうか。

 その方が一挙両得ですからね。』


 成る程なあ。だとしたら商売を辞める時にトンネルが崩れるとかの物理的要因がなかったとしたらどんな事が理由として考えられる?


『そうですね。

 まず一つ目はこちらの責任者が亡くなったとか歳を取ってか病気になってかして体が動かなくなったとかですね。

 あまり人に知られないように商売をしていたらありそうな事です。


 二つ目は向こう側の責任者がそうなったということですね。

 ですがどちらも代理や別の人を探して続けるというのが普通の対応でしょうか。


 三つめは商売をする理由がなくなったか出来なくなったという可能性です。

 もうお金を稼ぐ必要がなくなったとか物資の必要性が下がったとかですね。

 どちらかでなんらかの理由で商品が売れなくなれば取引は終了でしょう。


 四つ目はかなり可能性は低いですが戦争が起きて相手と取引が出来なくなるとかクーデターでも起きて政治が混乱して商売どころでは無くなったとかですが総合ネットワークではどちらの国でもそういった事が起きたという情報は掴んでいません。


 五つ目を挙げるとしたら商品が作れなくなったというのもあるかもしれません。

 洪水でもあって作物が不作になって他所にまで食糧を回せなくなったとか燃料の木を全部切ってしまってなくなって鍛冶が出来なくなって製品が作れなくなったとかです。

 ですが向こうの国は分かりませんがこちらでは木はまだまだ幾らでも生えていますから当て嵌らないですか。


 まあ他にもあるかもしれないですがこんなところでしょうか。』


 おう。長々とありがとさんでした。

 詰まるところどんな事が起きていても不思議ではないって事なんだな。

 ちょっと頭に留めておこう。

 他にもくだらない話なんかをヘル達として時間を潰した。


 結果的に何回か休憩したがその間魔獣は一匹も出なかった。

 そうこうしていたらヘル時計によると夕飯の時間になったがどうするかと相談された。

 そうだな。どうするか。

 皆は今日はそう疲れてはいないだろうがこのまま出口についたらなにか問題が待っているかもしれない。

 腹が減った状態で事に対処するよりもここで飯を食っておいた方が良いかもな。


 馬車を止めて飯を食うことにしたがもうここで一泊してもいいかもしれないと思えてきた。

 もう野営の気分になってしまったようで動きたく無くなった。

 もしかしたらすぐそこに出口があってなにも問題が無いのかもしれないがもう考えるのも億劫だ。

 そうだな。面倒なことは明日に延期だ!

 飯を食ったらもう寝よう!


 皆もそれでいいよな?

 飯を食いながら皆にそう聞くと全員それでいいと返ってきた。

 皆も慣れないことをやって疲れていたのかもな。

 警戒をヘル姉妹に頼んで皆揃ってお休みだ。すや~。


  + + + + +


 翌朝っていっても明るくないんで全然実感は無いが朝になったよとヘルに起こされた。

 寝ている間は弱くしていた照明を強くしていよいよ今日は出口に到着するぞと勢い込んで出発した。

 皆もいきなり体を動かすことになるかもしれないのは嫌なようで運動がてら歩いて向かうようだ。

 もうそろそろ一回目の時報が鳴るかなという頃に前方に明るいところがあるのが見えてきた。

 近付いて行くとどうやら俺達が出発したのと同じようなプラットホームに見える。


 そのまま進んでプラットホームについたが特に問題があるようには見えない。

 ここで馬車をどういった状態にしておくかで悩むことになった。

 問題無ければそのままで良いがなにかあったら引き返して逃げなければならないだろう。

 その時前方を向いたままでは直ぐには逃げられない。

 ここは念の為今来た道を少し戻って向きを変えておくことにした。


 こんな事もあろうかとの精神は大事だよな。

 引き返す準備を整えてから皆でプラットホームの探索を始めた。

 取り敢えず魔獣がいないかと外からの通路を確認してみたが問題ない様だ。

 俺たちの国の方にいた魔獣は随分前に渡って来た奴らだったということか。

 通路の出口を見に行ったがこちら側の扉は開いていないようだ。

 必然反対側が開いている可能性が高いがここから外に出てから反対側を閉めに行くか引き返してもう一方の通路から行くかちょっと悩んだが結局引き返すことにした。


 安全策を選ぶのは俺の信念だからな。

 これだけは曲げない方が絶対に後悔しないだろう。

 もう一方の通路を進むと今度は扉が開いていた。

 慎重に扉に近づいてそっと外の様子を探ってみたら思ってもいない情景だった。

 倉庫のような建物の中なのは想像通りだがその建物がなんと廃墟になっていた。


 廃墟といってもただ中身がない建物という訳では無く半端なく完全に朽ち果てた廃墟だった。

 倉庫内だと思われる範囲には木箱だったと思われる残骸が所狭しといった感じで崩れて積まれていて足の踏み場もない様子だ。

 こりゃ馬車を通そうとするならかなり片付けないと無理っぽいぞ。

 倉庫の外壁は所々穴が開いているのが見え外に生えている木の枝が中に入り込んでいるようだ。


 この倉庫自体は俺たちの国にあったものと作りは全く同じなようだし部材も同じだと思うんだがなんでこう迄崩壊しているんだ?

 同じ時間放置されていてこう迄結果が異なってくるものなのか?

 天井を見てみると大穴が開いているのが分かった。

 これってもしかして木箱の中身が食糧だったからこんなことになってしまったのか?


 もし中身が食糧だったとしたら放置されて直ぐに腐敗しだして強烈な匂いを発して魔獣や虫なんかが寄ってきただろう。

 扉が閉ざされていたのなら無理矢理壁を破壊して入って来た魔獣がいてもおかしくないだろう。

 腐敗臭が充満して天井を汚染して鋼材が腐食して天井が落ちたというのも頷ける結果だ。

 後は時間が経てばこうなるということか。


 成る程ね。木箱の中身が違うだけでこんな差が出来るとは勉強になるなあ。

 まあ勉強になったのは良いんだがこれを俺達が奇麗に片付けないといけないのか?

 はあ。嫌になるね。

 取り敢えず馬車が通れるようにするだけでもえらい時間が掛かりそうだな。

 もうこれヘルのレーザーとかで燃やせないかな?

 まあ無理か。はあぁ。


 取り敢えずヘルには馬車を取りに行ってもらうことにした。

 その間俺たちは倉庫の搬入口から外の様子を確認することにした。

 倉庫の中の残骸を外に出さないといけないからな。

 扉はしっかりと閉まっていて動かすのにも問題はない様だ。

 扉を少しだけ開けて外を覗いて見るとそこは植物だらけだった。

 扉の前は小さな広場になっていてそこには草が生えているだけだったがその周りは大木が覆っているのが見える。


 いや、俺たちの国にもあった鉄道の道らしき物が真っ直ぐ伸びているのが確認できたが道幅がすごく狭いようだ。

 道の左右から木の枝が張り出していてなんとか馬車が通れるくらいの隙間しかない。

 これは倉庫を片付けてもそう簡単には旅に出ることができないかもしれないな。

 それから俺たちは広場の草を刈って倉庫の残骸を移動する場所を作って片づけを始めることになった。


  + + + + +


 結局倉庫の残骸を片付けるのに十日以上掛かってしまった。

 その間は野営をしたんだが場所をプラットホームにしたので魔獣に襲われる心配もなくてぐっすりと寝られて体の疲れは特になかったが精神的な疲労というものは馬鹿にならないものだった。

 人は終わらない仕事をするというのには耐性がないようで段々と口数が減っていき雰囲気が悪くなっていった。


 だから漸く片づけが終わって旅が再開できるとなった時の皆のはっちゃけぶりも仕方なかったのかもしれない。

 こんなことを言っても後の祭りでしかないがね。






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