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マセキ・コントローール!  ~せっかく異世界に転生したのになんか捻くれた性格に育っちゃったみたいです~  作者: さんご
第三転生期編  第六章  新活動写真天国の物語

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03-06-04 宝島

 俺達は倉庫の中を探索しだした。

 といってもまんま倉庫そのままなんだけども。

 こりゃ普通の倉庫としか言えんな。

 出入り口は俺達が入って来た搬入口と奥の壁に左右一つずつ扉があるようだ。

 奥の扉は一方が少し開いているようでここから魔獣が出入りしているんだろう。


 倉庫の中には簡単な板で区切られた部屋っぽいのが隅にあっていわゆる事務所としか見えない。

 なんだこれ? これはどう見ても前世のどっかの倉庫じゃねえか。

 ここはいつから異世界じゃあ無くなったんだ?

 俺は取り敢えず奥の扉に気を付けて近づいて中を見ずにそっと閉めた。

 これで魔獣に襲われる心配をしないで済むだろう。


 扉には簡単な引っ掛けるだけの鍵が付いていたのでそれもかけておいた。

 倉庫には今は魔獣がいないようなので外にいる女性陣と馬車も中にいれてしまおうと考えてヘルに連絡した。

 搬入口をいっぱいに開けて馬車を中にいれても倉庫は広々としていて全然余裕だな。

 皆が中に入ったので扉を閉めて全員で中の物資の確認を始めた。


 うん。どう見てもただの商売用の物資だな。

 中身は工業製品が多い様だ。

 鉱山街で見たような商品が沢山の木箱にいっぱいに詰まっていた。

 だがどれも最近のものではなさそうではあったが使用するのには問題はないみたいだ。

 これをそのまま店に持っていっても普通に売れるだろう。


 ちょっとヘルを近くに呼んで倉庫の端っこに行ってから話し始めた。

 まあそんなことをする必要は本当はないんだが皆に相談しているところを見せるようにしただけだ。


 なあヘル。これってどう見てもこの抜け道を使って隣国と商売をしていたってことだろう?

 総合ネットワークは全然そのことに気が付いていなかったのか?


『はい。その様です。

 ここに置いてある物資は私の体が売っていた鉱山街の物が殆どのようです。

 木箱にしるされている印があの街の商店のものが多数見られましたから間違いないでしょう。

 あの街はこの国の中でも総合ネットワークの管理が長年されていなかった街なのであそこを経由されるとどこと取引しているとかは定かでは無くなってしまってました。』


 それで結局これって密輸って事なのか?

 政府の方では全然関知して無かったんだろう?


『いえ。そういうことではないでしょう。

 商品を作った工房や出荷した商店では多分普通に扱っている筈です。

 木箱に商店の印があるのがその証拠です。

 密輸ならそんな事はしないでしょう。』


 ああ、そうか。

 向こうで受け取った方も商店の印があるって事は密輸だという認識はないのかもな。

 でも実質は密輸だろう?


『いえ。違います。

 木箱に印がある商品には普通目録が付いています。

 それがないと中身が抜き取られていても分からないでしょう?

 ですから目録がない木箱は通常ありませんし商人は誰も取り扱わないでしょう。

 もし取り扱ったのならそれこそ密輸に加担したことになってしまいます。

 ですからこれは秘密の運搬方法で運ばれた普通の商品ということになります。』


 なんだか良く分からないが兎に角これはただの出荷待ちの商品が保管されているって認識でいいんだな?

 それでこれらの所有権はどうなっていると思う?

 元の持ち主は多分とっくに死んでるだろうしここは誰の土地なんだ?

 そんなことはどっかに登録されているもんなのか?


『いえ。検索しましたがここは誰の土地でもありません。

 もちろん国の物でもありませんね。

 普通は誰の土地でもないところを開拓したらその人のものになります。

 もちろんそのことを然るべき場所に届け出ないと意味がありませんし税金を毎年納付しないといけませんが。

 ですからここはこの倉庫を立てた人のものですが役所に届け出をされていないので今役所に所有権を主張した人のものになると思います。

 つまり私が総合ネットワークにこの事を連絡したらこの場にいるみんなに権利があるということになりますね。

 まあ来年にそれなりの税金を納めなくてはなりませんが。』


 おうふ。そうなのか。

 なあ。ここにある物資っていくらくらいになると思う?

 いや聞くのはやめておこう。

 なんだか怖くなってきたからな。

 でもガッシュが言っていたがこれって大した冒険もしていないのに古代の財宝を見つけたようなもんだよなあ。

 ホントどうするよ、これ。


 俺が今後のことで考え込んでいるとガッシュが探索で分かった事を伝えに来た。

 なんか倉庫の隅に魔獣に食われたような死体の痕跡があったらしい。

 ははあ。なるほどね。

 そいつがこの倉庫を見つけて不用意に扉を開けたことによって魔獣がこちらに現れて来るようになったということか。


 扉を開けた本人はその場で襲われて死んでしまったと。

 なんか悲しい事故だねえ。

 俺達の礎になってくれるとはとても良い奴だったなあ。

 しっかりと拝んでおこう。南無阿弥陀仏。ってなんだそれ?

 まあいい。


 それでこれからどうしようか。

 ここをこのまま放って置いて旅に出ていたら知らないうちに誰かに物資を持っていかれていたなんてことになったら目も当てられない。

 しょうがない。ここは一時旅を中断するしかないだろう。

 皆にもそう伝えて渋々納得してもらった。

 というか物資を売って大金が手に入ると知ったら大喜びしていたんだけどもその変わり身の早さにドン引きだわ。


  + + + + +


 それから俺は鉱山街のシアターさんに連絡して物資を買い取ってもらえないかと相談した。

 彼は結局二つ返事で了承してくれた。

 まあ下手なところに自分のところの商品を安く卸されたりしたら商品価値が暴落して街全体が困ることになるしな。

 俺は別にそれでもよかったんだから結構親切だよね。

 数日倉庫で宿泊してシアターさんが依頼した運搬業者に物資を引き渡してその代金を受け取った。


 俺達が大金持ちになって近くの街の豪華な宿屋に泊まるようになってもう一週間になる。

 俺は毎日ベッドでゴロゴロして優雅な時を過ごしている。

 もう旅なんかやめても良いかもしれんな。

 そんなことを考えていたらガッシュ達がいつ旅に出るんだと聞いてきた。

 ええ~? まだいいだろう~?

 ああもう。五月蠅いなあ。分かったよ。

 俺は渋々みんなと相談することになった。


「それでまだ隣国に行くって事でいいんだよな?

 だったらあの倉庫から繋がっている抜け道を使ってみるか?

 だけどあそこは魔獣が出るだろうし抜け道を通って向こうに着いてみたら外に出られなくて最悪は戻ってこなければならないかもしれないがどうする? 」


「えっ? ああそうか。

 その抜け道を使って隣国と商売をしていた物資があれなんだよな。

 そうだな。その道を他の誰も使ってないのなら面白そうだな。」


「もともとその道を探しにあそこに行ったんじゃないの?

 だったら最初に考えていた方法で行きましょうよ。」


「その道を使うとなにか良いことでもあるの? ロッくん? 」


「うーん、そうだな。

 先ずは俺達が南に回り込むルートを選ぶよりも大分早く隣国に行けると思うよ。

 次には隣国に行く道が新しく見つかるということで他の人にも使って貰って商売とかが上手く行くようになるとかかなあ。

 まあ他にもあるがそんなところが主だろうね。」


「その道って誰のものになるんでしょうか?

 見つけた私達が通行料とか取れるんじゃないですか? 」


「どうなんだ、ヘル? 」


「そうですね。うーん。難しい問題ですね。

 もしこれが普通の街道を通したとかならその道を作った事に掛かった金額を国が補填するとかなんですがその場合は作った人も自分が使用する目的で作ったんですから全額は出ません。

 あそこは既にあった道を見つけただけですのでお金は殆ど掛かっていませんよね。

 ですから補填金は期待できないでしょう。

 通行料に関しては普通の道は途中から出たり入ったりが自由にできますからそんな物は元々取れませんが抜け道は多分途中で出入りは自由に出来ないでしょうから取る事は可能でしょう。

 ですが通行料金に関しては安くするようにと国が口を挟んでくるでしょうね。

 指示に従わないとあそこ迄行く途中の道を通行禁止とかにされるんじゃないですか。」


「まあそうなるか。

 だが一回の通行料金が少額でも利用者数が増えればその金額は莫大になるんじゃないか?

 まあ隣国に用がある奴がそんなにいるとも思えんが。

 だけど元手はただなんだから俺たちにとっては損は出ないだろうな。」


「うわー。ボク達もっとお金持ちになっちゃうんですか?

 もう結構貰ってるんですけど。」


「まあな。だがそれは取り敢えず俺たちが一度通って問題が無かったらの話だな。

 それまでは捕らぬ狸の皮算用って奴だ。」


「取らぬ狸って何? ロッくん? 」


 おうふ。この世界には狸っていないのか。


『似たような魔獣はいますよ、マスター。』


「ああ、そりゃ小型魔獣の一種の事だ。

 まだ狩ってない魔獣の皮の話をしてもしょうがないって事だよ。

 それじゃあ皆は賛成って事でいいんだな?

 出発は明後日という事で明日中に準備を完了しよう。

 じゃあ今日はこれで解散だ。」


 皆が思い思いに散っていったのでちょっとヘルと話し合うことにした。


 なあヘル。あの抜け道ってどういう感じだと思う?

 総合ネットワークにとってはあそこは鉄道だったという認識でいいんだよな?

 だがあそこを再利用していた奴は鉄道を直して使っていたということなのか?

 だがそんな事が出来るなら鉄道を表立って公にした方がもっと儲かると思うんだが。

 儲けたいのかそうではないのか良く分からんな。


『そうですね。

 なにかちぐはぐな感じがしますね。

 中途半端に秘密にするのなら密輸した方がいいような気もします。

 まあ今は今度の探索で詳しく分かることに期待しましょう。』


 はあ。そうだな。それまでの我慢か。


 こうして俺達は最寄りの街からあの倉庫に再び向かうことになった。


  + + + + +


 しばらくぶりにやって来た倉庫は別段変わったところはなかった。

 倉庫の中を住処にしていたらしい魔獣が外をうろついていたような痕跡があったが中に入れなかったからなのかここにはもう近づいては来ないようになったみたいだ。

 ヘルのレーダーには全然魔獣の反応がないらしい。

 まあ魔獣の脅威がないのは嬉しい安心材料だな。


 また倉庫の中に馬車ごと入って扉を閉めておいた。

 倉庫の中にあった物資はもう全て持ち出されているのでガランとしており声が良く響いて面白い状態だ。

 皆でワーとかアーとか大声を出してしばらく楽しんだ。

 さて、それじゃあ腰を落ち着けて探索に掛かるとしましょうかねえ。


 その前に倉庫の中は凄く広いのでディスを放して好きに動ける様にしておくか。

 俺達がいない間の餌と水もついでに用意してきていたのを置いておく。

 これで数日は大丈夫だろう。

 探索でこの近辺を調べてから馬車で抜け道が通れるかも確認するつもりだ。


 最初に来た時に閉めた扉の前に皆で移動して隊列を組んでからゆっくりと扉を開けた。

 すると開くのを待っていたのか魔獣がいきなり襲ってきた。

 まあそう来るだろうと待機していたのでなんと言う事もなく直ぐに皆に殲滅されていたが。

 倒した魔獣は取り敢えず倉庫の端に置いといて後で処理することにした。


 扉を通って奥に進むとなだらかなスロープ状の広い通路だった。

 これなら馬車でも余裕で通れるだろう。

 そのまま進んだがかなりの長さがあるようだ。

 漸く平らなところに着いたがそこはまるで前世の駅にあるようなプラットホームといった感じのところだった。

 壁から少し離れると一段低くなっているところがあってそこが鉄道が走っていたところだろう。

 そこから真っ暗な通路に繋がっているのが見える。


 通路は二本あるようで向こうの通路の奥にはこちらと同じようなプラットホームが見える。

 もうここ迄見たら前世の駅そのままだということが分かった俺は下の段に降りてみた。

 レールがあったと思われるところには今はなにもないが以前はレールや配線等が固定されていたような跡がある。


 これはどういう事なんだろうか。

 レールをそのまま使えばトロッコのようなものでも楽に移動できると思うんだがなんでレールがないんだ?

 レールのない線路の先をじっと見てしばらく考えてみた。

 その間皆は周囲の探索をしているようだ。

 そういえば逆の方向も同じかと振り返って見てみるとなんと電車だと思われる残骸が置いてあった。


 俺は走ってそれに近づいて見てみると暗くて良く見えていなかった全体が確認できた。

 それは骨組みだけになったような感じで中身はスカスカになっていた。

 窓のガラスは勿論車体の金属の板も剥がされて殆ど残っていなかった。

 ここ迄見て俺は大体のことに理解ができた。


 そうだよな。

 文明が崩壊した世界にとってこいつらは貴重な金属やガラスやプラスチックの宝庫だよな。

 それらを全部剥がされて新たな製品の材料になったのだろう。

 レールや配線も同じ理由だ。

 ここから運び出されて剣や鎧になったんだろうな。

 だが全部のレールを運び出したんだとしたら総数は凄い量になるんじゃないか?


 ヘル。総合ネットワークの方で金属が大量に出回った記録とかはあるのか?


『いえ。そんな記録は残っていませんね。』


 だろうな。どうやらここのレールとかを持ちだしたのは文明崩壊直後だったということだな。

 そしてここに物資を集めていた奴はただこの抜け道を使っていただけでその時にはもうここには碌なものが残ってなかったんだろう。

 そいつは鋼材とかを期待してここを探り当てたんだとしたらさぞかし落胆しただろうな。

 ご愁傷様でしたって感じかね。


 さて、俺たちの抜け道として使えるかという期待は果たして叶うんだろうかね。

 余り期待しないでおいた方が良いかもな。





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