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マセキ・コントローール!  ~せっかく異世界に転生したのになんか捻くれた性格に育っちゃったみたいです~  作者: さんご
第三転生期編  第六章  新活動写真天国の物語

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03-06-01 愛と青春の旅立ち

「よう。二人とも婚約おめでとう。」


「よう。どうもありがとさんよ。」


「別に特にめでたくはないわね。」


 ガッシュとリーナが婚約の儀式を無事に終えて爺さんちに帰って来た。

 疲れた顔の二人を祝福してあげたらそんな事はどうでもいいというような返事が返ってきた。

 まあ二人にとっては別にそんなに急いで婚約する必要はなかったのに親に言われて無理矢理させられた感の方が強いんだろうな。

 でももうこれで王都でのやるべきことは大方済んだのでやっと好きなように旅に出られるな。

 いつもの二人ほどでもないが俺ももう旅に出たくなってきたところだしさっさと旅の支度を終えて出発したいもんだ。


 姉さんの結婚式が終わったのでママンたちも村に帰るという。

 爺さんたちとファンロックが急に人がいなくなるのを寂しがっていたがアメリア姉さんは王都の旦那さんのところにいるんだから会おうと思えば会えるんだしそこまで寂しがることでもないだろうにね。

 ファンロックに寂しいなら村に帰ったらどうだと言ったらしばらく考えてから我慢すると言っていた。

 おっ。珍しく泣きついてこなかったな。

 ちょっとは精神的にも成長したのかね。まあ続けて頑張れよ。


 俺たちも四人での話し合いで旅の行く先を正式に西部方面へと決定した。

 そして出来たらそのまま隣国へと行ってみたいところだ。

 爺さんやママン達にも俺たちの考えを伝えておいた。

 これで俺たちが帰ってこなかったりしたらそっちの方で何かに巻き込まれた可能性が高いということが分かるだろう。

 まあそんな事は滅多に起きないだろうがね。


 爺さんちを出発するのを同じ日に決定して前日に家族を全員呼んでささやかなパーティを行った。

 嫁いだばかりの姉さんも旦那さんと一緒に駆け付けてきてくれた。

 ガッシュ達の父親も呼んで次の日についでに一緒に帰るそうだ。

 バンドナたちはどうするのかと思っていたらバンドナだけ村に帰るという。


 あれ? ベスとラムドはどうするつもりなんだろうと思っていたら良ければ俺たちの旅に連れていってくれないかという。

 おいおい。急にそんなことを言われても困るよなあと皆の顔を見回してみるとなんだかそんなに驚いていない。

 えっ? どういう事? 皆この事を知っていたの?

 どうやらすでに皆には根回しが済んでいたようで後は俺の判断次第ということらしい。

 なんでそういう事をするかなあ。もっと皆でよく話し合おうよ。

 別に俺の判断力を鍛えてくれなくてもいいんだってばよ。

 もう俺一人が反対してもしょうがないだろうし許可するしかないよね。


 でもこれってもしかして俺たちが隣国に行くって言ったからって訳じゃないよな?

 別にそんな過保護な事をしてほしくて隣国に行くって公表したんじゃないんだけどなあ。

 まあもう決めてしまった事なんで良いけれど準備とかはどうなってるの?


 二人に聞いてみると村に帰るための準備はしていたようなのでその荷物を移し替えればいいだけらしい。

 でも俺たちの馬車は小さめの奴なのでそんなに荷物は載せられないぞ?

 それに野営するときに女性陣は馬車の中で寝ると思うんだけど三人だと結構きついんじゃないの?

 そう聞いたらバンドナが荷馬車を後ろに連結すればいいと言ってきた。


 えっ? そんな事出来るの?

 バンドナに詳しく聞くと全ての馬車には後ろに荷馬車などを連結出来るような仕組みがあらかじめ付いているそうだ。

 自作の馬車ではなく店売りの物ならそういう規格になっている物しか売ってはいけないんだってさ。

 俺はそんなことは全然知らなかったよ。

 世界はまだまだ俺の知らない事でいっぱいだねえ。


 それに俺達の馬さんは規格外の強者で普通の馬車なら二台引いても全然大丈夫だとお墨付きをもらった。

 まああいつは見ただけでそう分かるよなあ。

 今までの馬車は軽すぎて運動にもなってないんだってよ。

 そんな事を言われてもねえ。

 なんであいつが俺たちに買われたのかいまだに謎なんだよなあ。


 まあそういう事なんでもう荷馬車は準備してあるそうだ。

 あ、そう。用意がいいねえ。もう決まっていたみたいだねえ。

 くそっ! なんでこういい様に扱われなきゃいけないんだよ!


『マスター。これには特に裏なんかありませんよ。

 ただ本心でマスターたちのことが心配だからこんな事を言いだしたんです。

 ですからそんなに腐らないでください。』


 ああ、そうだな。そんな事は大体分かっているけれど兎に角一言言いたいんだよ。

 もういい加減放っといてくれってな!


  + + + + +


 楽しかったパーティも最後にケチが付いてしまったがまあもうどうでも良いよ。

 ラムドとベスに明日からの予定を告げてから自分の部屋に戻ってベッドに寝転がった。

 一人で悶々としながらさっきの事を色々と考えた。

 そして俺は大事なことを二人に聞いていなかったことに気が付いた。

 それは自分自身が本当に旅に行きたいのかということだ。

 そうでないのなら後になって絶対に不満に思ってしまい結果的に皆に迷惑をかけることになるだろう。


 それと良く考えてみるとラムドとベスもいい迷惑だよな。

 親に行きたくもない旅について行けと言われて嫌々ついていかなくちゃならないなんて。

 俺ならとっくに逃げ出しているぞ。

 そんなことをつらつらと考えていると部屋に誰かが訪ねてきた。

 聞こえた声から今考えていた二人だと分かったので入っていいよといって招き入れた。


 二人だけかと思ったら三馬鹿も一緒にいた。

 なんだよ皆して。もしかしてあれか?

 もう俺には付いていけないから別れましょうとかそんな感じか?


「ロック。なんだか二人が旅に付いて行く事が嫌そうに見えたと言って来たんだが本当にそうなのか?

 二人が心配して俺たちに相談してきたから皆で聞いてみようと思ってここにきてみたんだけど。」


「えっ? 俺ってそんな風に見えてたのか?

 それなら悪い事をしたな。

 あの時確かに俺は怒っていたがそれは大人たちが既に決めたことを相談したように見せて無理矢理押し付けて来たからだよ。

 まあそれが二人を連れていくって話なんだからそう見えてもおかしくはないが本質はそこじゃあないんだ。

 俺は大人になにかを無理矢理させられるなんて事が我慢できない性質なんだよ。

 他の皆はもうしっかり分かってるよな?

 じゃないと泣けてくるよ。」


「ああ。そんな事は言われなくても分かっている。

 お前は理不尽な事を言う大人が大嫌いなんだってな。」


「そうだよね。ロッくんは威張ってる大人が一番嫌いだもんね。」


「ああ、その通りだ。

 だからさっきの事は恰好は相談したみたいにはなっていたが実際にはもうすでに決まっていてそれを押し付けようとしたことについて怒っていたんであって二人のことが嫌いだからとかじゃないよ。

 むしろこんな事に付き合わされて行きたくもない旅に出ることになって申し訳ないくらいだ。」


「いえ! とんでもないです!

 ボクは前から旅をしている坊ちゃんたちが羨ましいと思っていたくらいなんです!

 だから今回のことは凄くうれしいです! 」


「そうよね。ラムドはいつもハーロック様たちのことを羨望の眼差しで見てたわよね。」


「なんだよ。ベスだって似たような目で見てたじゃないか。」


 ギロッ!


「バ、バカ! そんなことは今は良いのよ! 」


「ええ~? いつもハーロッ、モガモガッ……。」


 ギロギロッ!!


「あははは! こいつってばなにを口走ってるんですかねえ?

 ホントに訳の分からない使えない奴ですねえ。あはははは! 」


 今なにか訳の分からない壮大な戦いの幕が上がったような気がしたが俺の気のせいだったか? まあいい。

 そのあと新しく加わる二人を交えて旅に関する事を色々話し合った。

 元々二人は村に帰ったら二人だけで修行の旅に出ることが決まっていたそうだ。

 だからちょうどいい時に話が出たと喜んでいた。

 やっぱり二人きりは少し不安だったみたいだな。

 でも俺が思うに王都に来る時の旅ではそんな感じは微塵もなかったようなんだけど?

 はあ。それはそれ、これはこれですか。そうですか。まあいい。


 普通はこういう話し合いを先にしてから旅の仲間に誘ったりするもんだと思うんだけどなあ。

 明日の朝の出発時間も早いのでそこそこの時間で切り上げて備えることにして皆と別れた。

 ヘルはずっと俺の斜め後ろに立っていたが話し合いでは特に発言しなかった。

 なんなの? 黙ってられるとなんか不気味なんですけど。


『別になにもありませんよ。マスター。

 また仲間が増えましたね。良いことです。』


 そうか? しがらみが増えただけじゃないか?


『それが仲間ができるということなんですからそれでいいんですよ。』


 そういうもんかねえ。

 それからしばらく話してから明日に備えて床についた。


  ~ ~ ~ ~ ~


 ボクは物心がつく前から既に一人きりだったみたいだ。

 どこで生まれて誰が親なのかも一切分からないらしい。

 いつの間にか孤児院にいてそこでバンドナ母さんに引き取ってもらった事が最初の記憶だ。

 だから結構長い間バンドナ母さんが本当の母さんだと思って過ごしていた。

 そして兄妹だと思っていたベスが本当の兄妹じゃなかったと知ってそっちの方が凄く驚いた。


 こいつが俺の兄妹じゃないのならだれが本当の兄妹だよって感じの付き合いだったからな。

 小さいころは兄ちゃん兄ちゃんと頼ってきて鬱陶しく感じていたし成長してからはクソ兄貴呼ばわりだった。

 それがいつの間に色気付いたのかお屋敷の坊ちゃんのことが気になりだして事あるごとにハーロック様ハーロック様と言うようになっていた。

 ボクはその時の身の振り方が真反対になったかのような代わり様に心底驚かされた。

 もはや別人かという変わり身の早さにね。

 まあそれは今は良いか。


 ボクは母さんが以前は騎士団長をやっていたと知ってからいつしか母さんのような強い騎士になりたいと思うようになっていた。

 その為に母さんに剣を教えて貰ったり体を鍛えたりしてもらっていた。

 でもなぜか片手間な感じのベスの方がボクよりも強くなってしまったけれど。

 一年前に坊ちゃんが旅に出たと聞いてボクも連れていってくれないかなあと思ったりもしたがそれは無理なことだと頭では分かっていた。

 ボクはまだまだ弱いしベスにも負けてばかりいるしね。


 しょうがなくベスと二人で近場での修行目的の旅っぽいのに出てみたいと母さんに言ってみたら思いがけずに許可が下りた。

 そして村に帰ったら早速修行の旅に出ようと思っていたんだけど急に坊ちゃんの旅について行くことになってしまったようだ。

 そんなちゃんとした旅についていってもいいのかと最初は思ったがこれもいい機会だと考えて甘えることにしよう。

 後は旅の途中で失敗しないように頑張らないとね。

 その為にも今日は早く寝ようっと。


  ~ ~ ~ ~ ~


 やったわ! 遂にハーロック様と一緒に旅に出ることができるわ!

 王都に来る時はお嬢様の護衛をしなくちゃいけなかったからあまり話すことができなかったけれど今度はずっと一緒にいられるから話し放題よね。

 うふふふ。顔がにやけてきて収まらないわ。

 ああ~。早く明日にならないかしら。


 あ、でもサーラさんになんか目を付けられたような気がしたんだけどその辺は大丈夫かしら?

 別にハーロック様を奪おうなんて気はちょっとくらいしかないんだけどなあ。

 まあ出来たら良いなくらいなんだけどなんだかマジに取られちゃわないかしら。

 私はハーロック様のハーレムの端っこにでもいられればいいんですってサーラさんに言っておこうかな。


 でもハーレムなんか絶対に認めないって言われたら夢も希望も無くなっちゃうから滅多なことでは言えないわよね。

 うん。ここはしばらく様子を見てから話すって事にしよう。

 それでなにかハーロック様と既成事実でも出来てからそれから引いて言った方が話が通りやすいわよね。

 よし! それじゃあその方向で明日から頑張っていきましょう!


 もう明日に備えてさっさと寝ようっと。

 ああ~。でも興奮して全然寝られないよ~。

 これじゃあ明日は寝不足でタダでさえ普通の顔がもっと情けない感じになっちゃうよ~。

 でもでも体の方は結構イケてると思うんだよね。

 この体を使ってハーロック様を虜にしちゃうんだから!

 ああ~。でもでも…………。

 …………。

 …………。


  ~ ~ ~ ~ ~


 ハッ?! なにか嫌な予感がする!

 なにか悪い事がロッくんの身に降りかかるようなそんな気がする!

 今度の旅はきっと荒れると思うよ。

 わたしの守護霊様もそう言ってるし絶対に間違いない!

 ロッくんも一緒に守護霊様に祈ればきっと回避できると思うんだけどなあ。

 なんでロッくんはこういうのを信じないんだろう?

 まあ私がロッくんの分も祈って置けばいいか。


 あとこのツボは良いツボだよね。

 不幸を吸いこんでくれるっていうし。艶々だし。

 明日からの旅にも忘れないようにしないと。

 今日もロッくんの夢が見られますようにお願いしますね、守護霊様。すや~。





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