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マセキ・コントローール!  ~せっかく異世界に転生したのになんか捻くれた性格に育っちゃったみたいです~  作者: さんご
第三転生期編  第五章  オウディーエンス王国の物語

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03-05-10 オウディーエンス王国の黄昏




 姉さんの結婚式も無事に終わったのでそろそろ旅に戻ろうかとガッシュたちと話し合っていたところに彼の父親のドッシュさんとリーナの父親のマッシュさんが二人で爺さんちに訪ねてきた。

 理由は言わずもがな。

 ガッシュとリーナの結婚式を行うために二人を連れていくためだ。


 おいおい。急に事態が進展したな。

 でもなんで爺さんちにいる事がばれたんだ?

 二人は極力外に出ないようにしていたからそんなに簡単にはばれないと思ったんだがなあ。

 あっ、あれかな。王国祭の時に祭り見物をしていたのを門下生の誰かに見られていたのかもしれんな。


 あとドッシュさんはいつの間に王都に来ていたんだ?

 知っているとしたらバズだけだろうとそっちを見るとサッと顔をそらした。

 そういえばこいつは結婚式の最中も存在感ゼロでいたのかどうかも覚えてないなあ。

 まあそんな事は後でママンにでも聞こう。

 バズにドッシュさんの事を聞こうとしたらママンが代わりに答えてくれた。

 それによるとママン達が王都に来る時に一緒に来ていたらしい。


 えっ? 初耳なんですけど。

 という事はもう一か月近くも前から来ていたのかよ。

 その間ずっとマッシュさんちにいたって事か?

 ママンたちは姉さんの結婚式も終わったのでそろそろ村に帰るのでドッシュさんに一緒に帰るかとマッシュさんちに昨日確認しに行ったらしい。

 そこでリーナとガッシュが王都に来ていて爺さんちにいるという事をバズがポロっとこぼしてしまったというのが今回の訪問のきっかけだという事だった。


 なんだ。そういう事だったのか。

 でもドッシュさんも暇だなあ。

 結婚の話をする為だけに王都に来て一月もなにをしていたんだ?

 まあそんな事はどうでも良いか。


 爺さんちに来た二人はリーナ達を連れていって結婚式を挙げるつもりらしい。

 リーナ達は急にそんなことを言われて猛烈に反発している。

 だから前から家に帰った方が良いって言っていただろう?

 こういう事になってしまったのも自業自得だと思ってもう観念したらどうだ?


 ガッシュは父親には頭が上がらないようで結果的には言いくるめられていた。

 問題はリーナの方でかたくなに結婚を拒否している。

 こうなるとなんだかガッシュに断られる原因がなにかあるみたいに見えて可哀そうになってきた。

 そんなに拒否されるような嫌な奴だと思われていると他の人の目には見えるからな。


 もうこうなったら俺が出張っていくかと立ち上がりかけたら急にリーナが大人しくなってきた。

 あれ? 急にどうしたんだと思ったがこういう事が最近あったなと気が付いた。

 そう。ママンのスキルが発動したようだ。

 それでリーナは大人しくマッシュさんと話し合いを始めた。

 なんか話し合いは時間がかかりそうなので俺達はその場を離れることにした。

 しっかり話し合ってちゃんと決着を付けて来いよ。


 ところで最近いつも世話になっているママンたちの香学士というスキルの実体をここでちょっと説明しておくか。

 まあ簡単に言うと体内にある魔石の化学薬品製造プラントの機能を利用して催眠効果のある物質を作りだして血液を利用して肺に送り呼吸に伴って体外に排出して相手にそれを吸わせて作用させている。

 いきなりすごい暗示とかに掛かる訳ではなくだんだんと意識がなくなってきていつの間にか相手の言うことを聞くように催眠状態にさせられてしまう。

 そうなってから相手にさせたいことを命令する。

 そして最後に記憶をなくすように暗示を掛けられれば自分では今までの事は無かった事になって急に気が変わったというような事態になる。


 このスキルは一見物凄く万能なように思えるがこういった使い方しか出来ないから急な事態には対処できないという欠点がある。

 誰かが走ってきて急に襲い掛かってきたらこのスキルではどうにもならないだろう。

 屋内での話し合いとかが一番効果がある使い方だ。

 結婚式の時の侵入者に対しては裏口から入ってすぐの部屋にあらかじめ香りを充満させておいて扉を開けたときに中の空気を吸わせるという方法を使った。


 俺もこのスキルに似たことは魔石操作のスキルを使えば出来るとは思うがどんな事でもそうだが世の中は経験がものを言う様になっている。

 つまり人が吸って気分がいい香りとか嫌いな匂いとかを知らないと相手になにか異変が起こっていると瞬時に判断されてしまうという事だ。

 それに薬品の濃度というものは少し間違えれば人を簡単に殺してしまう。

 死ぬのが他人だけならまだ良いが自分も死んでしまったら全く意味がない。

 薬師という職業に需要があるのも頷けるというものだ。


 このスキルが発現するのは普段から花の香りとかを色々吸っている人だけだという。

 今の世の中だと花なんかを色々育てているのは貴族だけだろうから貴族にこのスキル持ちが多くいても良さそうだが貴族の令嬢なんかはわざわざスキルを貰いになんかいかないからか実際にはそんなにはいないみたいだ。

 それにこのスキルの有用性がなぜか世間に広まっていない。

 この事は今までに存在した香学士がこのスキルの実体を隠そうとした結果なのだろう。


 後はそうだな。自分で作った香りで自分が暗示に掛からないというのもいつもそれを使っているおかげで耐性が出来ているという事なんだろう。

 だからこのスキルを使われれば使われるほど耐性が出来て段々効かなくなってくるのであまり多用はしない方がいざという時に効かなくて困るということにはならないで済む。

 何事も程々が良いという事だ。


 さて、リーナ達の話し合いが終わったみたいだ。

 話し合いの結果は婚約はするが結婚はあと二年は先にするということだった。

 二年後の王国祭までに王都に帰ってきて祭りが終わった後に式を挙げるという事にしたらしい。


 へえ。結構時間を稼いだな。

 それだけの猶予があれば外国にも修行の旅に行って来る事が出来るだろう。

 そうだな。今度の旅は取り敢えず隣国へ行ってみるか。

 隣国といってもフリオペラのいた方じゃなくて西側で国境を隔てている国だ。

 東側の国とは今後は一切関わり合いになるのは嫌だ。


 そういえば次はどっちに旅に出るかという話し合いをしていたんだったな。

 でもリーナたちは婚約の儀式を自分ちでやると言って連れていかれてしまった。

 旅の行き先も決まってないんだけどどうするんだよ。

 はあ、また何日か暇になるな。

 まあいい。旅に出たら碌に休息も取れなくなってしまうんだから今のうちにたっぷり休んで体力を回復させておくか。


  ~ ~ ~ ~ ~


 私たちはハーロック君のお爺さんのお屋敷に潜んでいたんだけどなぜか父さんたちに居場所がばれてしまって今説教をされている最中だ。

 なんで私達が怒られなきゃなんないのよ。

 別に王都に帰ってきたからって家に帰らないといけないなんて決まってないじゃない。

 それに婚約するとは言ったけどいつするとは言ってないし。


 そう父さんに反論したら余計に怒鳴られた。

 もう! そんな頭ごなしに色々言われても知らないわよ!

 頭に来たので今まで溜め込んできた諸々の事を次いでとばかりにぶつけてやったらちょっとビビっていた。

 おっ? これは畳み掛けるチャンス到来とばかりに言い負かしてやろうとしたらなぜか急に気分が落ち着いてきてしまってそんな感じでは無くなってきた。


 父さんの方も真っ赤になっていた顔が元に戻ってきていて釣り上がっていた目も穏やかなものに変わっていた。

 話し方も落ち着いたものになったのでこれで普通に話せるわ。

 私たちがもう取っ組み合いの喧嘩でも始めるかという状態になっていたので皆を心配させてしまっていたみたい。

 皆に謝ってこれからは落ち着いて話し合うので大丈夫といって席を外してもらった。


 父さんと落ち着いて話しだすと急に頭を下げてきた。

 なんか自分が生きているうちに孫を見たくなってドッシュ叔父さんとの話し合いで盛り上がってしまっていたところに私たちが隠れていることを知って抑えが効かなくなってしまったらしい。

 まあ、私たちも隠れていたのは悪かったと思うので謝っておいた。


 それから今後の事を色々話し合った。

 私は直ぐには結婚したくはないって事と別にガッシュ君のことは嫌いではないという事をちゃんと言っておいた。

 そうしとかないと誰か別の人を見つけてきてそいつと結婚しろとか言われるかもしれないからね。


 それで結局婚約を正式に行って二年後くらいに結婚式を挙げるということに決まった。

 まあその位あれば修行や旅の中での色々な経験を積めているだろうと思うしそれでも良いか。

 でも出来れば私は知らない街で新しい道場を自分で開いて好きなようにやりたいっていうのが本音なのよね。


 道場を開く資金はハーロック君にでも出して貰えば良いし。

 彼ならお金がどこかから湧いてくるかのように用意できるみたいだしちょっと胸でも触らせてあげればホイホイと出してくれるに違いないわ。

 むっつりスケベなのはもう分かってるしね。

 だからその二年の猶予のうちにどこか暮らしやすくていい街を旅の間にでも探して置こうと思う。


 フフフ。確かに結婚の約束はしたけれどうちの道場を継ぐとは一言も言ってないからね。

 私は新しい街で出来れば外国で父さんの言うことなんか聞かなくてもいい生活を送るのよ。

 まあこれはまだ誰にも言わないでおかなくっちゃね。

 どこから父さんたちの耳に入って邪魔されるか分からないわ。


 はあ。でもこれから婚約の儀式をやらなくちゃいけないの?

 そんなのどうでも良いから早くまた旅に出て行きたいわ。


  ~ ~ ~ ~ ~


 なんか俺の婚約が決まったらしい。

 俺になんの断りもなくな。

 どうしてこうなった?

 俺はただ旅に出て修行がしたかっただけなのに。


 今まで誰にも言っていなかったが俺は本当はサーラのことが気になっていたんだ。

 小さいころから一緒にいて良く知っていたし村でも一番可愛かったからな。

 でもサーラはロックのことが好きみたいだったから半ば諦めていたんだ。

 それでももしかしたらロックは他所の貴族の娘と結婚しなければいけなくなってサーラが振られてしまった時に彼女に結婚を申し込めたらいいなと思ってもいた。

 まあ可能性はかなり低いだろうけどな。


 それが従妹のリーナと知り合って一年も経たないうちにこんな事になってしまうなんて人生っていうのは分からないもんだな。

 でもリーナとは初めて会った時から確かに気が合っていたというのは事実なんだけどそれってただ修行仲間というくくりでってだけの事だったんだけどな。


 まあこれでサーラの事はキッパリと諦めが付いた。

 彼女の事はロックにしっかりと責任を取ってもらおう。

 俺の勝手な思い込みだがその位いいだろう?

 俺の結婚への餞別だとでも思って快く受け取ってくれ。


  ~ ~ ~ ~ ~


 ロッくんのお姉さんのアメリアさんが結婚式を挙げたと思ったら今度はガッシュ君とリーナちゃんが婚約を正式に交わす儀式を執り行うんだって。

 いいなあ。わたしも早くロッくんと結婚とまでは言わなくても婚約ぐらいはして置きたいんだけど一体その辺の事はどうなってるの?

 いつまで経っても言い出して来ないのはわたしの事は放って置いても良いとでも思ってるって事なの?


 そんな態度だと私もその辺の誰かとサッサと結婚しちゃうぞ!

 あっ、嘘だからね? 本気にしないでね?

 もう、すぐそんな目で見るんだから。

 わたしはロッくん一筋十六年で有名なんだからそんなに心配しなくても大丈夫だからね。


 でも出来れば早く告白して欲しいなあ。

 もう待ち草臥れて私もどうにかなっちゃいそうだよぉ。

 残り時間はあまりないみたいだからねえ。

 早くしてねえ。待ってるよぉ、ロッくん~? うフフフ。


  ~ ~ ~ ~ ~


 ハッ?! なんだ? 夢か?

 なんか嫌な夢を見たみたいなんだがその内容は起きた瞬間に忘れてしまったようだ。

 最近こんなことが良くある気がする。

 なんだ? 俺ってば自分で思ったよりもかなり疲れているのか?

 もう結構暇を持て余していて体力も回復したと思っていたんだがなんかの病気にでも掛かっているのか?

 こりゃ一度サーラ先生にでも診てもらわないと駄目か?


 あっ、そうだ。

 俺の魔石操作のスキルで他人の持っているスキルを模倣することができるんなら医術も出来るのか?

 ヘル。どうなんだ?


『はい。マスター。

 そうですねえ。普通の人がスキルを授かるというのはその人の電脳空間の空き領域にそのスキルに必要な情報を常駐させるということなんですがマスターはパンロック氏の記憶が移された影響で殆ど空き領域がありません。

 ですので使いたいスキルの使い方をその都度総合ネットワークに検索を掛けてその使い方に合わせて細かく分割された情報を読み込んで使うという事しか出来ません。

 つまり限られた局所的な治療とかは出来ると思いますが全体を見て病気を特定すると言うような事は出来ないでしょう。

 病気がある程度どんなものか最初から分かっていればそれに合わせた治療はなんとか出来るかもといったところですね。』


 なんだ。それじゃあ治療は出来るが診察は出来ないって事か。

 あんまり意味がないなあ。

 いや、違うか。見ただけで分かる外科的な事には対処は可能か。

 それなら多少は使い道があるな。

 なんかの事故とかが起きてケガ人が大勢出た時とかなら役に立ちそうだな。


 まあそんな事故は滅多に起きないしそんな場面に出くわしたりもしないだろうがな。

 まあ俺自身の診察には使えないって事が分かっただけでも聞いた意味があったな。


 まあ次の旅の間にそんな事が起きなければ良いがね。

 ヘル。今度の旅は西に向かうんだろうけどそっち方面はなにも問題は起きてないか?


『はい。今のところそんな情報は上がってませんね。』


 そうか。そろそろガッシュ達程ではないが旅に行きたくなってきたなあ。

 今度はどんな事に出くわすのかねえ。





 

第五章 オウディーエンス王国の物語 end






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