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マセキ・コントローール!  ~せっかく異世界に転生したのになんか捻くれた性格に育っちゃったみたいです~  作者: さんご
第三転生期編  第五章  オウディーエンス王国の物語

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03-05-08 オウディーエンス王国の婚礼

 爺さんちで姉さんの結婚についての話し合いが両家の者を集めて行われた。

 俺たち兄弟もたまたま王都にいるという事で話し合いの場の隅っこに同席させられた。

 特に話し合いに参加とかはしないんだけどまあ賑やかしに呼ばれたんだろう。

 話し合いはつつがなく終わり姉さん達は正式に婚約を交わして婚約者になり結婚式は二週間後に行われることになった。


 普通の結婚式はもっと時間を取って周囲に告知をしたりするものだが俺んちは特に呼べるような知り合いや親せきもいないという事といつ迄も領地を空けている事も出来ないので急いでもらった形になる。

 相手側の招待客も偶然全員が王都にいるという事だったので出来たゴリ押しだ。


 話し合いの後簡単な夕食会が行われて相手側の人たちと色々と情報交換することができた。

 姉さんの結婚相手は王族の一員ではあるがそんなに偉くはない様だ。

 婚約者の祖父が当時の国王の弟で名ばかりの公爵になった様だが領地は授かっていないという事らしい。

 そこからその家系が始まったのでまだ歴史は浅く王宮の仕事なんかをやって食い繋いで来たということだった。

 それで婚約者の家は公爵の直系という訳でもなく今は王太子の従者をやっていて将来は側用人だろうと言っていた。


 それに反してうちの方は歴史だけは長くて建国当時から家が始まっている。

 事によるとその前から有ったという事も有り得るらしい。

 良くそこまで続いたなあと思ったが田舎の領主で身軽なのでその時々に繁栄している家と縁組をして家系を繋いできたという事なんだろう。


 まあそういう事だから結婚に際して特に家格を気にする必要もなく安心して嫁げるらしい。

 まあ姉さんが向こうの義母にいじめられるという事もなさそうなのでよかったと思おう。


 それから俺達の修行の旅については姉さんの結婚式が終わるまで皆には待ってもらうという事になった。

 ガッシュ達も結婚式に出てくれと頼んだが服とかが準備できないので残念だが出られないと断られた。

 服ぐらい爺さんちにあるのを借りれば良いと言ったんだが汚さないように気を遣わないといけないので落ち着いて参加できないから遠慮するという。

 まあしょうがないので今回は諦めよう。


 三人は旅に出るまでの間は爺さんちにある訓練場でそれぞれ鍛え直すと言っていた。

 それならリーナの家の道場の方が良いと思うんだがやっぱり結婚の話が進むのが嫌なようで当分はもうあっちには寄り付かないらしい。勿体ない。

 でも爺さんちにいる警備員たちの中にも強い人がそれなりにいるようなので相手には事欠かないと言っていた。


 俺は結婚式までの間は特にやる事はないだろうと思っていたんだが姉さんのスキルを皆に公開する件の段取りを考えることになってヘルと準備を始めた。

 結婚式の当日についでにやってしまおうと姉さんやママンたちと決めたからだ。

 ママンたちも姉さんが抱えているその危険性にようやく考えが及び積極的に手伝ってくれるようになった。

 まあ本番で上手く事が運ぶように祈るしかないな。


  + + + + +


 そんな感じで慌ただしい二週間が過ぎて今日は結婚式当日だ。

 今日は天気も良く結構な結婚式日和だ。

 姉さんたち家族の準備も万端で今は式の出席者の到着を待っているところだ。

 そして俺たちが次々と招待客が来るのを捌いているととんでもない人物が馬車に乗ってやって来た。

 それは姉さんと一緒に王都に向かう旅に同行したフリオペラ姫だった。


 しまった! 姉さんたちは彼女が隣国の姫だということを知らなかったんだった!

 俺も抜けてたな。出席者名簿を全然確認していなかったよ。

 ヘルも知らなかったのか?


『いえ。お嬢様から彼女に式に出席してもらえないかしらと相談されましたので以前から知っていました。

 彼女を招待してはいけなかったでしょうか。 マスター? 』


 うーん。どうだろう。

 彼女の正体を知っているのは俺たちだけだと思うか?

 確か王太子にフリオペラの事を聞かれた時に婚約者も一緒にいたんじゃなかったか?

 どうだったか覚えているか? ヘル。


『はい。確かにその時一緒にいましたね。

 婚約者の方はさすがに招待客名簿を見ていると思いますので来るのは事前に知っていた筈だと思うのですが特に質問とかはされなかったようですので問題はないと思いますよ。』


 バカ! そういう事じゃないよ!

 フリオペラがこの国に来たのは彼女が自主的に家出してやって来た事になっているのに王国政府の官僚の結婚式に出ていたと隣国の奴らに知られたら痛くもない腹を探られる事になるんだぞ!

 婚約者も来るのが分かっていたんならその位の事に気が回らなかったのか?

 とんだへっぽこ役人だな!


『ああ、その事ですか。

 すみません。マスター。

 以前から分かっていたのですが報告し損なっていました。

 王太子は姫を悪気なく我が国に招待して彼女が勝手に家出して来たとマスターに言っていましたが私が念の為に確認した結果それは嘘でした。

 初めから我が国にどうにかして連れてきて人質として隣国との交渉材料に使い有利に事を進めるつもりだったようです。

 ですがマスターがバリセロー氏から姫を引き離し王国側が知らないうちに学園に押し込めてしまったので計算が狂って上手く交渉に使う事は出来ませんでした。

 ちなみにバリセロー氏は王太子側に依頼されて姫を連れ出したらしいです。

 そんな訳で王太子の方はもう姫の事はどうでも良いと思っていて本当は隣国に返してもなにも問題は無いのですが学園内は治外法権で手出し出来なかったのでこの機会にでも保護して隣国に返そうとしているのかもしれませんね。』


 うおい! 無茶苦茶重要な情報じゃないか!

 なにしれっとなんでもない情報のように話してるんだよ!

 ということは式が終わったらフリオペラは当局に保護という形で捕まってしまうという事か?

 だがそれは見過ごせないぞ!

 もし婚約者の方が招待して式に出てきたのなら俺たちにはなにも言う権利はないが実際には彼女はうちの姉さんが招待したから結婚式を祝いに来てくれたんだ。

 だから学園に無事に帰ってもらわなければ姉さんが祝ってくれた彼女を騙して誘い出した事になってしまうし仁義にももとるだろうが!

 ヘル! お前は姉さんをそんな嘘つきの恩知らずにしたいというのか?!


『いえ。すみません。考えが足りませんでした。』


 ちっ、こうなったら式が終わっても彼女を爺さんちにかくまってなんとか学園に無事に送り届けるしかないか。


 ヘル。何度も言っているが最近特に報告されてないことが多くないか?

 ちょっとお前の思考形態に狂いが生じているようにも感じているんだが。

 なんだか段々馬鹿になってきているようにも思えるし人間ぽく感じることも多くなってきたよな。

 人間の思考形態に近づいたのは良いことなのかもしれないがこうも自己中心的な行動をされると付き合い方を変えなければならないぞ。


 それに前にも言ったがこの変化はお前がその体を得てから起き始めたように思える。

 子供の時に杖の宝玉に常駐個所を移動した時にはそんな目に見える程の変化は見られなかったのにその機体を得てからの変化は逆に目を見張る程だ。

 お前は自分の事をどう分析しているんだ?

 今までなにも感じていなかったのか?

 いや、感じるというのは違うか。


『マスター。申し訳ありませんでした。

 今後このような事は無いように致しますので付き合い方を変えるだなんて事は言わないでください。

 お願い致します。』


 いや、謝ってくれと言ってる訳じゃない。

 自分の状況が分かっているのか自己分析をしてみてくれと言ってるんだ。

 それでどうなんだ? なにか自分でも原因が分かるのか?


『すみません。特にこれといった原因は特定できません。

 ですが以前と違うところは判明しました。

 これが自分の変化の起因であるとは自分では判断出来ませんでした。』


 ほう。その変化とはなんだ?

 そんな勿体付けるような事か?


『はい。それは私自身のデータ量です。

 最初の私はマスターの脳に常駐する為に出来るだけデータ量が抑えられて起動していたのですが杖の宝玉に移動してからは空き容量が私のデータ量の五倍程もありました。

 ですので随時総合ネットワークにデータを送信し蓄積してもらいその都度消去していたデータがそのまま消去せずに済んでしまったんです。

 今もデータは蓄積したままでその為に処理速度が大幅に向上しているところです。

 ですが処理速度が上がっても得られる結果は同じ筈ですのでこれが原因とは考えられません。』


 そうか。頭の回転は速くなっているというのに馬鹿になって来ているというのはどういう事なんだろうな。

 これはあれか? 馬鹿の考え休むに似たりとか言うやつなんだろうか?


『それ絶対に言うと思いました! 』


 まあ今後は今回の事を忘れない様にしてくれれば良いよ。


『はい。分かりました。マスター。』


 ところでヘルツーはなんか変化はないのか?


『私も自分では全然分かんないよー。

 まあしいて言えば美貌~? 』


 そんな訳あるか!


  + + + + +


 結婚式の後にもやらなければいけない事が出来たが式自体は順調に進んでいる。

 爺さんちにある小さな聖堂で神父を呼んでの結婚の誓いの儀式も済んで今は披露宴パーティを開催中だ。

 俺は誓いの儀式で初めて相手の正式な名前を聞いた気がする。

 なんでだ? 今まで何回か知っていてもおかしくない機会があった筈なんだけども。


 まあいい。

 相手の名前は【ラクセス・デサント】と言うらしい。

 一応デサント公爵家と同じ家名だが分家筋という事だった。

 まあ家の歴史が短いのでそういう事もあるだろう。

 ということは姉さんは【アメリア・デサント】になったという事か。感慨深いねえ。


 披露宴パーティは天気も良いので一部は庭園に面したバルコニーっぽい場所のテーブルを使っているグループもある。

 そこに例の姫が他の招待客に混ざって会話を楽しんでいる。

 初めて会う人たちと楽しく話せるというのは凄いスキルだよなあと感心することしきりだ。

 さすがに一国の姫様なだけはあるな。

 俺には絶対に出来ないよ。


 そんなどうでも良い事を考えていると急にヘルが警告を発してきた。

 この屋敷の上空には一応ドローン壱号・弐号を警戒の為に飛ばしてあったんだがそれによると十人程の人間が隣の屋敷の敷地から侵入してきたのを発見したようだ。


 はあ? なんでうちの結婚式に押し入ってくるの?

 本当に押し入っているのか?

 あれじゃないか? 式に遅れたとかで慌てて近道しようと隣の敷地を抜けてきたとかじゃないのか?


『マスター。もう現実を見ましょう。』


 ああ、分かったよ。くそっ!

 ヘルツーにマップと実際の映像をAR表示で出してもらって確認すると確かに着飾った感じではない奴らが十人程屋敷の裏口の方にこっそりと移動している。

 おいおい、本当に押し入ってるよ。

 なんだこいつらは? 一体なにしに来たんだよ?


『マスター。これはあれじゃないですか?

 パレードを襲った者たちの生き残りとかじゃないでしょうか。』


 えっ? ああ、そうか。

 奴らももう直接フリオペラを奪還しようとしていたところでうちの結婚式に出席するということを知って碌な準備もせずに急遽ここを襲ってきたとかかね。

 だが甘く見られたもんだな。

 たった十人程で爺さんちの警備員を抜けられると本気で思っているのかね?


『不味いですよ、マスター。

 武力の高い警備員は表の方に回っていて裏の方には碌な警備員がいません。』


 あらまあ、そりゃそうか。こんな結婚式を襲おうなんて奴らが本当にいるとは到底思わないよな。

 仕方ない。ここは特別監察官の出番かね。

 と一度は思ったがこの事態は姉さんのスキルの披露に使えないか?

 それにここで捕り物を大袈裟にやると姉さんたちの結婚式にケチが付いてしまうかもしれないしな。


 うん、そうだな。そうするか。

 ヘル。裏口の方にいる人たちを一時移動して奴らの侵入を妨げないようにしてくれ。

 奴らのことはドッキリみたいな演出だといって誤魔化してくれ。

 それにママンと姉さんにも話を通しておいていつでもスキルが使えるように準備しておいてもらってくれ。


 さて、上手く血を見る事もなく事態を収める事が出来るかねえ。





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