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マセキ・コントローール!  ~せっかく異世界に転生したのになんか捻くれた性格に育っちゃったみたいです~  作者: さんご
第三転生期編  第五章  オウディーエンス王国の物語

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03-05-07 オウディーエンス王国の惨劇

 ヘルに襲撃に備えるように言ってすぐに最初の馬車が逃げてきた。

 結構な勢いで通りを走り抜けていった。

 フルオープンの馬車なので誰が乗っているのかが丸分かりで中年の夫婦とあの王太子が乗っていた。

 という事はあれが国王と王妃という事なんだろうな。

 あまり威厳があるようには感じなかった。

 ともすれば王太子の方がキリっとしていて頼りがいがありそうに見える。


 まあそんなことは今は良いだろう。

 馬車は次々と通りを走り抜けていくが今のところ襲撃があるようには感じられない。

 次が最後の馬車っぽいなと思っていたら急に道の向こう側から小さい子供が飛び出してきた。


「ママ~? ママ~? わーーん!! 」

 

 子供は周りを気にした風も見せず真っ直ぐにこちら側へと走ってくる。

 馬車の御者も子供に気づいたのか手綱を引いて馬を止めようとしたが間に合わずに曳いてしまいそうだ。

 事故が起こりそうになるのを見て周りの人達から大きな悲鳴が上がったがその時ヘルが猛スピードで道に走り出て子供をサッと拾って素晴らしい前回り受け身を披露した。

 周りの人達からワッと歓声が上がったと同時に急停止した馬車に向かって大勢の男たちが群がっていった。


 ということはこの子供が飛び出したというのは奴らが仕組んだ事なんだろうな。

 多分子供をお菓子かなんかで誘い出し親とはぐれさせてから親は道の向こうにいるよとでも言えばそのまま突っ走っていくだろう。

 大人が道に飛び出して馬車を止めようとすればすわ襲撃かと思われて衛兵が集まってくるだろうが今は子供を助けたところに大人達が集まっているように見えない事も無い。


 上手いことを考えたなあ。

 これなら馬車に取り付いてもあまり不自然には見えないので衛兵も手荒なことはできないだろう。

 まあ俺たちにとっては全く関係なく手荒に対処させてもらうがね。


 ヘルは助けた子供を沿道の大人に投げつけて受け止めさせて身軽になると急いで馬車に群がる男たちに突っ込んでいった。

 俺がヘルに全武装の開放を指示したのでヘルは腕に装備されているスタンガンの機能を全開にしてバチバチと火花を飛ばしながら当たるを幸いに男たちを失神させていく。

 ヘルに触られるとなぜかバタバタと倒れていくのを見た残りの男たちは最初の目的を忘れたのかヘルから逃げ惑い馬車の周りをグルグルと回りだした。


 オイオイ、これはコントかなんかなのか?

 馬車の周りを皆で二周、三周と回りながらギャーギャーと喚いているのを見ているとなんかおかしく思えてきた。


 おいヘル! 奴等との戯れ事を止めろ!

 とっとと始末を付けるんだ!

 まだ襲撃は終わってなんかいないぞ!


 俺がヘルに警告を発したのと殆ど同時に馬車の後方から騎馬隊が現場に突っ込んできた。

 あっ、こいつらって王女を捜索していた奴らじゃないか?

 地面に倒れている仲間のことなんか全然気にした風もないそいつらはそのまま馬で次々に人を踏み潰しながら馬車に取り付こうとしてきた。

 もう現場は多数の死者や負傷者が出ていてしっちゃかめっちゃかになってきている。

 まあそれは全部襲撃してきた奴らだけだけども。


 ヘルは混乱のさなか馬車に乗り込むことに成功したようで乗っていた王族の警護に回っていて近付いてくる奴らを牽制している。

 このまま放って置いてもそのうちに衛兵が大勢駆け付けてきて事態は収まるとは思うがそれだと俺達が解決した事にはならないだろう。

 だからしょうがなく俺も事態の収拾を手伝うことにした。


 謎の仮面紳士【ロック=ザフリーダム】の華々しいデビューに相応しいものにしないとな。

 俺は悠然と通りに歩き出て少し進んでからマントを大袈裟に捲り上げた。

 バサァッと音を立ててマントを翻すと腰に下げていた新入り君をホルスターからゆっくりと引き抜いた。

 そしてそれを構えてから仮面の機能で声を大きくさせて名乗りあげた。


「おい! 貴様ら! 王都のど真ん中でよくも好き勝手してくれたな!

 だが今からはこの俺【ロック=ザフリーダム】様が相手だ!

 覚悟するんだな! ワーッハッハッハッハ!! 」


 ちょっとダサかったかな?

 まあ取り敢えず名乗りが出来たからいいか。

 ヘルツー。いつもの火器管制をお願いね。

 ヘルはそのまま王族を守っててくれ。


『かしこまりー。』


『はい。分かりました、マスター。

 ここが一番の見せ場ですから頑張って下手こかないで下さいね。』


 おいちょっとプレッシャーを掛けないでくれよ。

 まあこんな簡単な事をヘマする訳ないだろうがね。

 俺は新入り君を馬車の方に向けてレーザーを連射した。

 レーザーは狙い違わず騎馬隊の奴らの太ももと腕にバンバン当たっていく。

 いや、俺は狙ってないよ。銃が自動で狙って勝手に当たるんだよ。


 レーザーで撃たれた奴は落馬するか馬上で丸くなって呻くかになっている。

 もうここにいる奴らは脅威にはならないだろう。

 俺は油断してないぞという風に銃を構えたまま悠然と歩いて馬車に近づいて馬車の王族に声を掛けた。


「私は政府の特別監察官の【ロック=ザフリーダム】です。

 襲撃者は撃退しましたのでもう安心です。

 どこかお怪我とかはないですか。

 なければこの馬車を降りて避難しましょう。」


「ええ。大丈夫です。

 怪我とかはしてないですわ。」


 オウ、シット。

 馬車の床に伏せて隠れていた王族が姿を現すとその人は知っている人だった。というかビジターナだった。

 なんだよ、ヘル!

 お前先に分かってたんなら教えてくれたってもいいだろ?


『えっ? ええまあ私も見て驚いていたのでマスターにもこの驚きを感じてもらおうかと思いまして黙っていました。

 マスターのやる気スイッチがオフになってしまっても困りますしね。

 それでどうでしたか? 驚きましたか? 』


 ああ。驚いたよ。

 だが驚きはしたがそれは別のことにだがな。

 なんでまたこいつなんだよ?

 王族って人手不足かなんかで同じやつの使い回ししか出来ないのかよ!


『奇遇ですね。マスター。

 私も分かった時にそう思いました。』


 そんな馬鹿な事考えているうちに周りから衛兵が集まってきた。

 やばいな。この中に奴らが変装して紛れていたら見分けがつかんぞ。

 ヘル。急いで移動するぞ。


『はい。分かりました。マスター。』


 それから俺たちはビジターナを連れて他の王族がいるところにさっさと移動した。

 もうこの王女と関わりたくないからな。

 王族の避難場所にいた衛兵に王女を任せると俺たちは急いでそこを離れた。

 ただでさえ俺たちと付き合いのある王女と長く一緒にいるとなにかの拍子で俺の素性がばれないとも限らんからな。

 謎の仮面紳士は謎のままでいないといけないのだよ。うん。


 なんとか無事に奴らの襲撃を撃退できたがなんだか物足りない気がする。

 あっ、そうか。

 奴らの襲撃が陽動の可能性があるかもしれないと考えていたからその所為か。

 ヘル。今の時間にどこか他所でなにか事件とかは起こってなかったか?


『はい。マスター。

 今のところそういう報告は上がっていませんね。

 フリオペラ嬢もまだ学園の寮にいることが知られていないのか特に学園でも事件は起きていません。』


 そうか。俺の思い過ごしか。

 まあ事件がないのならそれはそれでいいしな。


  ~ ~ ~ ~ ~


「うおー。やばい、やばいぞ!

 予測通り襲撃が本当に起こったぞ!

 俺は眉唾ものだと思っていたからマジでびっくりしたぞ! 」


「そうですね。起きると信じている自分ですらも驚きましたからね。

 元から信じていなければもっと驚きでしょうね。」


「なんだよ、嫌みか?

 だって当日まで奴らの影も形も見つけられてなかったんだぞ。

 もう襲撃なんかないだろうと思うのも仕方がないだろう? 」


「そうですね。そこが不思議ですよね。

 なぜ今まで見つからなかったんでしょう?

 もしかして誰か内部のものが内通でもしていたんでしょうか。

 そうでもなければ説明が付きませんね。」


「やっぱり誰かが裏切っているのか?

 前にビジターナが誘拐された時も地方貴族が関与していたから全く驚きはないな。」


「ですが今回の襲撃にどんな得があるのでしょう?

 やっぱり単純に金銭ですかね? 」


「そうかもな。

 最近は魔獣が増えて商売が上手く行かなくなったという奴が多いから足元を見られて上手く使われたとかもありそうだな。」


「珍しく周りが良く見えてますね。」


「うるさいよ!

 最近商人の謁見依頼が多くてうんざりしていたんだよ。」


「あなたが商人の嘆願をちゃんと聞かないからこんな事に手を貸しているんじゃないですか? 」


「おい、冤罪だ!

 こんな事が起きたのは絶対に俺のせいじゃないぞ! 」


「分かりませんよ?

 捕まった奴に良く聞いてみませんとね。」


 コンコン! ガチャッ!


「失礼します! 報告します!

 最後尾の馬車が再度襲撃にあったという報告が入りました!

 馬車に乗車していたのはビジターナ王女様です!

 幸い賊は特別監察官の方々によって撃退されて王女様は無傷でこちらに避難されました!

 現在はここにいる衛兵で賊の捕縛を行っている最中です!

 以上です! 失礼します! 」


 バタン!


「くそっ!

 俺たちへの襲撃は陽動だったという事か?! 」


「なんだかその様だったみたいですね。

 これはやられましたね。

 先の襲撃を無事に避けられたと油断しているところを突かれたという事でしょうね。

 ですがまた特別監察官が活躍したんですか。

 まるで未来に起こることを見透かしているかのように感じますねえ。」


「いや、それは無いだろう?

 もしそうなら普通は事件が起こる前にその事件が起きないように行動しているだろう?

 わざわざ事件が起きるのを見逃してでもいるっていうのか? 」


「そうですね。

 良く考えたら事件が起きそうですよと忠告してくれていたんですからそれを阻止出来なかったのは自分たちがたるんでいたという事ですね。

 猛省しないといけません。」


「そうだな。

 さてと。じゃあ今度は俺たちが頑張って奴らを取り調べないとな。」


「はい。私たちも負けてられませんからね。」


  ~ ~ ~ ~ ~


 パレードの襲撃を無事に防いだ俺たちはどこにも寄らずに爺さんちに帰ってきた。

 バズ達は予定通りにパレードが始まる前に帰ってきていたので俺が襲撃があった事を教えると凄く驚いていた。

 まあ普通は王族のパレードを潰されるというのは国の威信が傷つけられたということなので結構な大事だしな。

 皆は特に被害が出なかったというと安心していたようだった。


 俺たちが帰って来てしばらくしてからガッシュたちも帰って来た。

 だが恰好がよれよれだったけれども。

 理由を聞くとガッシュたちはパレードが始まって直ぐのところで見物してさっさと帰るつもりだったんだけどそこで襲撃が起こってしまった。

 そして襲撃が起こった事で民衆がパニックになってその辺りから逃げ惑って大混乱になったそうだ。


 ガッシュたちはそれに巻き込まれてグチャグチャになってしまったという。

 買い物した物も混乱の中でどこかになくしてしまって騒ぎが収まってから探したがとうとう見つけられなかったんだと。

 まあ残念でしたねと言うしかないね。

 でも俺が以前から襲撃があるよと言っていたのにその忠告をちゃんと聞かなかったんだから自業自得だとも言えるな。

 俺達の被害はまあそんなところだった。


+ + + + +


 襲撃事件の事はしばらくの間は民衆の話題になっていたが一週間もすると忘れられていった。

 その間衛兵が襲撃者たちのことを調べていたようだが大した収穫も無かったからか続報が出なかった事が原因だろうな。

 本当になにも情報が得られなかったのかは俺には分からん。

 その時の俺はそんな事に構っていられなかったからだ。


 とうとう姉さんの結婚に向けた話し合いが行われることになってその準備を手伝わされていたからだ。

 なにをそんなに準備することがあるのかと思っていたが会談場所を爺さんちにしたかららしい。

 まあ今は襲撃があってまだ時間もそんなに経っていないので王族の屋敷での会談は避けたんだろうな。


 姉さんやママンは会談の時に着る服に掛かりっきりになっていて大忙しだ。

 俺も服を新調したがこんなヒラヒラした服を着るのは初めてだぞ。

 ファンロックも同じような服だったんだけどこいつは結構気に入ったようで喜んでいた。


 まあそんな感じで俺も襲撃のことなんかすっかり頭から消えてしまっていた。

 だが事件はまだ終わってなんかいなかったようだ。





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