表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/100

03-05-06 オウディーエンス王国の聖人

 俺たちは今は王国祭の日になにか事件が起きるかもしれないと警戒している最中だ。

 そんな感じであと数日で王国祭だという段になってバズとママンが王都に到着した。

 姉さんの結婚に関しての話し合いに来たんだと思うが王国祭に間に合うように日程を合わせて来たんじゃないよな?

 なんか祭りに遊びに行きたいというようなことをバズが言っている。


 おい、姉さんの結婚の話し合いをしに来たんじゃないのかよ。

 まあ相手側も急に来てもらっても都合がつかないだろうし今は王国祭の準備で更に忙しいだろうから祭りが終わるまでは話し合いなど到底出来ないだろう。

 そういう事でそれまでは自由にしても問題は無いと分かると姉さんとファンロックを連れてママンと王都見物に出かけていった。


 俺は忙しいからと遠慮しておいた。

 バズとママンは久しぶりに姉さんたちと会って嬉しそうにしていたしもう直ぐ姉さんも結婚してしまいそんなに簡単に会えなくなると思うので二人に譲った形だ。

 俺が一緒には行かないと言ってもそんなに気にした風でも無かった事は別になんとも思ってなんかいないんだからね?!

 勘違いしないでよね!


 まあ俺抜きでの最後の家族団欒を楽しんで来て欲しいもんだ。

 バンドナ達も連れて皆で一緒に出掛けるのを見送って俺はヘルと王都の門に出かけて何者か不審者がいないかを見張ることにした。

 俺達なら普通の人のネームプレートの詳細を見ることができるので念の為にだ。

 俺達の格好はヘルはいつもの鎧姿だが俺は普通の服だ。

 二人して変な恰好をしていたらどっちが不審者だよって感じだしな。


 この門を見張るという事も既に何日か行っているけれど今のところ奴らだと分かるような者は見つかっていない。

 これはもう事件は起きないかもしれないなと思い始めてきている。


 ところで奴等は一体なにをするつもりでいてなにが目的なんだろうか。

 ただ王国に嫌がらせをする為という事なら既に目的は達成していると言ってもいいだろうしな。

 わざわざ国中に散らばった奴等を集結させてまで騒動を起こすという事はなにか大きな目的があるという事なんだろうがそれはなんなのか。


 今まではその理由をあまり気にしていなかったのでここで少し考えてみるか。

 まず奴等の方でいま問題になっている事はなんだろうか。

 例えば去年起こした戦争騒ぎの終結だろうか。

 ああ、後それに関係して実質人質になっているフリオペラの事もあるな。

 そういえばなぜ戦争を起こそうとしたのかという元々の疑問は解消していないな。

 問題の根本が分かればなにか対処する方策が見つかって全てが丸く収まるということが起きても不思議ではないだろう。


 そこで最近世界でなにか問題が起きていないかという事をヘルに聞いてみた。


『はい。マスター。

 そうですねえ。最近うちの国でも問題になってきましたが魔獣の被害が多くなってきているという事があります。

 うちの国では最近になって起きている事なんですが他国では以前から問題になっているところもありましたね。

 理由に関しては良く分かってはいませんが魔獣が狂暴化しているという情報も上がってきています。』


 ああ、そういえば以前そんな事を聞いた覚えがあるな。

 俺が旅に出て確かめたいと思った事の中にも入っていたな。

 旅の最中にはそんな事を考えている余裕はあったりなかったりですっかり忘れていたよ。

 そうか。周辺の国では魔獣が激増していて困っているのか。

 そしてうちの国では魔獣の被害が今までそれ程問題になっていなかったと。


 これはあれだな。各国は魔獣が増えているのはうちの国がなにか企んで行っている事が原因だとか思ってそうだな。

 あるいはそこ迄は思っていなくても被害が少ないうちの国を羨ましく感じていて妬んでいても不思議じゃない。

 もしかしてうちの国に戦争を仕掛けて来た理由は魔獣のいない土地が欲しかったからとかか?

 若しくはうちの国の政府が他国の事情をよく調べずに支援とかをしなかったから事態がひっ迫して起こした事なのかもな。

 なあヘル。政府の他国への対応はどういう物だったんだ?


『はい。マスター。

 マスターの言う通り我が国の政府は他国の救援要請に自己責任を主張して特に支援などは行っていなかったみたいですね。』


 そうか。やっぱりな。

 そりゃ周辺国に恨まれても仕方ないな。

 最近うちの国でも魔獣が増加してきているのはもしかすると周辺国から追われた魔獣がうちの国の領地に入ってきているのが原因なんじゃないか?

 まあそこ迄行かなくても普通に周辺国から溢れて来たのが原因なのかもしれんがな。


 でもそうなると今更支援するよと言っても受け入れてくれないかもしれないしそもそもうちでも被害が増えて来たんだから他所に回す余裕があるかどうか分からんな。

 こりゃもう根本からどうこうするというのは無理そうだ。

 魔獣が増えている原因も元々の発生地点が他所の国じゃあ俺たちに調べようがないしなあ。

 今は素直に隣国の思惑を考えた方が早いか。


 奴らがわざわざ大事を起こす理由は一体どういう事だろうか。

 それは俺達の目をそこに引き付ける事や事案に対処する為に人員を割かざるを得ないようにする事だろうな。

 という事は狙っている場所には元は人員が割かれていて警戒されている所という事になる。

 わざわざ王国祭の日に合わせる必要があるというのはどういう事だろうか。

 その方が向こうにとって都合が良いからに他ならない。

 それじゃあどんな都合が良いことがあるんだ?

 いつもは王城に引っ込んでいる王族が全員表に出て来て襲う相手を選び放題になる。


 まあそうなるか。やっぱりパレードを狙うつもりだという事だろうな。

 パレードに何人の王族が出てくるのかは知らないが全員を同じ陣容で守るというような訳には行かないだろう。

 必然的に重要では無い者の警備が薄くなるのは仕方がない。

 王族を襲ってどうするのか?

 もし王族を殺そうと考えているのなら逆に人質になっていると思われている姫の命も危うくなるからそれはないだろうな。

 やっぱり王族をさらって姫と交換だというのが普通だろうな。


 まあそれでも命を狙ってくるという訳でもなさそうだというのは一つの安心材料ではあるな。

 まあ警備をしている者の命はそんなに安全そうでもないが。

 俺の予想ではこういう事になったがさて当日はどうなる事やら。


  ~ ~ ~ ~ ~


「ああ~。なんか今年の王国祭の準備はいつもより疲れるなあ。なんでだ。」


「そりゃ例の襲撃に対処する為に警備の場所を変更したりしたのが多かったからですよ。ご苦労様ですね。」


「ちっ、そうだったのか。

 なあ。本当なら俺達の方が守られる側なんだからこんな事しなくてもいいはずだろう?

 どうして俺達が自分でやらなきゃいけないんだよ。おかしいだろ。」


「そんな事を言ってても仕方ないですよ。

 あなたの妹達の為だと思えばそんな疲れなんか吹き飛びますよ。

 わたしも妻になる人の為に頑張っているんですから。」


「おう。そうか。

 まあそう思えば少しは気が紛れるか。

 そういえばその妻になるっていう話はまだまだ先のことか?

 いや。俺にも都合があるから早めに日取りとかを教えておいてくれよ。」


「その事ですが彼女の両親がやっと王都に着いたそうです。

 今は王国祭の準備とかで忙しいのでこれが終わったら俺は遂に結婚式を挙げますよ。

 ですので予定を空けておいてくださいね。お願いします。」


「おい! そんな事をいま言って大丈夫か?

 それっていわゆるフラグって奴じゃないのか?

 お前結婚式の前に死ぬんじゃないだろうな? 」


「ば、馬鹿なこと言わないでください!

 もし自分になにかあったら残された彼女は一体どうなると思ってるんですか! 」


「えっ? 多分別の奴と結婚するんじゃないか?

 お前の他にも大勢結婚を申し込みに来てたんだろ?

 その中から選り取り見取りだろうな。多分。」


「うわーー! そんな事言ってるとなんか本当にそうなりそうですから止めてください!

 もうこの話はこれまでです。仕事を続けますよ! 」


「はいはい。分かりましたよ。

 でも本当に無事に王国祭が終わってくれればいいよなあ。」


  ~ ~ ~ ~ ~


 数日が何事もなく過ぎて今日はもう王国祭の日だ。

 俺たちは今日も朝から門の近くで不審人物が通らないかと見張っているところだ。

 俺とヘルは王国祭の日に起きるかもしれない事件に備えて色々準備をしてきた。

 ガッシュ達には一応事件かなにかが起きるかもしれないので気を付けるようにと言っておいた。

 後は自己責任で自分で考えて行動してくれ。

 俺たちはそっちに構っていられないかもしれないからな。


 バズ達はお祭りには出店を回るくらいにしておいてパレード見物はやめて爺さんの屋敷に帰ると言っていた。

 俺もその方が良いよと言っておいたのでなにかの騒動に巻き込まれるという事はないだろう。

 まあバンドナ達も一緒に行くので安心だろう。

 俺は忙しくて出店を回れないかもしれないので俺の分もなにか食い物でも買ってきておいてくれとお願いしておいた。


 俺たちは二人で昼まで見張っていたが結局不審者が門を通ることはなかった。

 これはもう大分前から奴らは王都に入り込んでいたと思った方がよさそうだな。

 それか王都に入れる抜け道があるとかかね。

 昼になって腹もすいてきたので近くの出店でなにか買おうと向かう途中で偶然ガッシュたちに会った。


 よう、と互いに挨拶を交わして皆の様子を見ると祭りを十分に堪能しているようだ。

 女性陣は奇麗に着飾っていてちょっと化粧もしているようだしガッシュはその二人の荷物持ちをやっているようで両手がふさがっている。

 一応全員とも簡単な武器も持っているようだがその状態では満足に扱えないんじゃないか?

 俺の呆れた目を避けるように皆は顔を背けたがまあ祭りを楽しめているようなので結構なことじゃないか。


 俺は皆にパレードも見るのかと聞くとちょっとだけ見て混む前に早めに帰ると言っていた。

 気を付けろよと言って皆と別れ近くの出店の食い物を買って食べたがあまり美味くも無いのに値段だけは高かった。

 ぼったくりかよ。これいつもの倍以上の値段じゃないか。

 味ぐらいは値段分良くしてくれよと思いながらヘルのところに戻ると誰かと立ち話をしている。


 おっと。ヘルを知っている奴ということは特別監察官に会いに来た奴かもしれんな。

 そこに俺が素顔で出ていったら関係者だとバレバレだろう。

 一応偽装仮面と薄手のマントを持ってきておいてよかったな。

 他人の顔をしてそそくさとそこを離れて角を曲がった先にある路地でササっと変装する。

 ふはははは! 仮面の紳士颯爽と参上!


 道を戻ってヘルに声を掛けると警備責任者が今後の行動を確認しに来たということだった。

 昼からは遂にパレードが始まるそうなので居場所を知って置きたいという事らしい。

 俺が考えるにもし襲撃するとしたならパレードが終わる直前がありそうな気がするのでその周辺にいると言っておいた。


 俺とヘルはそのままパレードの終わるところへと衛兵の案内で移動した。

 こんな恰好をしていたらこっちの方が不審者と間違われるからな。仕方ないね。

 配置場所に着いた頃に遠くの方から大きな歓声が聞こえてきた。

 遂にパレードが始まったな。


 俺は周囲の人垣の中で変な行動をしている奴がいないか観察した。

 ヘルにマップをAR表示してもらって変に移動する奴がいないかも確認した。

 だが今のところ目立つことをする奴はいないみたいだ。

 後はパレードが近付いてきてからだな。

 などと思っていたら遠くの方から歓声と悲鳴の両方がさっきより大きな声で聞こえてきた。


 えっ? パレードが始まってすぐに襲撃があったの?

 ヘルに総合ネットワークに確認してもらうとやっぱり始まってすぐに襲撃があったらしい。

 王族の乗った馬車が全部通りに出たところで襲撃が始まったらしくて馬車は行き場がないので速度を上げてこっちに向かっているという事だった。

 襲撃自体はその場にいた衛兵が襲撃者を食い止めている間に王族たちは全員避難する事が出来て無事だという。


 うん? なんだ? なんか変だな?

 あっ、そうか! なんで馬車が移動できないように襲撃しなかったんだ?

 馬車が通りに出た直後に前を塞がれたらそれこそ王族全員を拘束する事も出来たかもしれないのに。


 ああ、そうか。これは最後尾の馬車だけを襲うつもりだな。

 今高速で馬車を走らせているが事故ったら危険なので車間距離を大分開けているだろう。

 最後尾の馬車なんかどれだけ遅れているか分からんぞ。

 護衛もばらけていて一台に付けている最少人数しかいないだろうな。

 これを襲うのは凄く簡単そうだ。

 それももう逃げ切ったと思った瞬間なんかには特にな。


 つまりは襲うのはここだ! この場所で最後の襲撃が起こるぞ!

 ヘル! 全武装開放だ! あらゆる手段でもって全ての敵を討ち倒せ!!


『アイアイサー!! 』





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ