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マセキ・コントローール!  ~せっかく異世界に転生したのになんか捻くれた性格に育っちゃったみたいです~  作者: さんご
第三転生期編  第四章  境界の物語

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03-04-05 王族と平民の境界

 護衛を頼まれた商人の馬車にはかわいらしいお姫様が乗っていた。

 お忍びらしくフルネームは言わなかったが名前はフリオペラというらしい。

 これはなんだか本名なんじゃないか?

 略してフリオかリオと呼んでくれと言っていたからな。

 略称で呼んで欲しいのなら偽名を略してというより最初から略した名前を名乗ってそれで呼んでくれと言った方が早いだろ。


 ヘルに該当する王族の情報があるかと聞いたが他国の姫なら情報はまず出ないということだった。使えんなあ。

 それにこの姫様は元々総合ネットワークに登録されていなくてこの国に来た時に初めて正式に認識されたようだ。

 そんな事が有るのかとヘルに聞いたんだがまれには有るらしい。

 そういえばこの国でもちょっと前まで鉱山街でそういう状態だったな。


 でも王族だぞ?

 王族って普通は総合ネットワークの支部や本部の管理者を代々やってるんじゃないのか?

 だがヘルによるとその総合ネットワークのシステムが故障してしまっても修理が出来なくて機能不全になったりしたと考えれば有るかも知れないという事だった。

 特にこの国の総合ネットワークと何百年も繋がっていない隣国での事だとすれば可能性は高いという。

 そうだな。この国の姫じゃないという時点で隣国の姫様だと考えるのが普通だよな。


 その姫様が騎馬隊に追われている。

 それもそんなに切羽詰まった感じがしない。

 こりゃ姫様の家出かなんかじゃね?

 良かったあ。騎馬隊の人たちを無闇に殺さなくて。

 危ないところだったわ。

 もう少しで俺たちが姫様誘拐事件の犯人になるところだった。


 一安心だがこれからどうするかだよな。

 バリセローは俺たちがまだ姫様だと気づいていないと思ってるんだよな。

 だがこのまま姫様を隠して護衛していると見つかった時とか最終的に俺たちに責任が回ってくるんじゃね?

 知らなかったでは通らないんじゃないか?

 こいつ俺たちが犯罪者になろうがそんな事はどうでもいいとでも思っているんじゃないか?


 やっぱりこの商人は信用の置けない裏のある奴だったという事だな。

 あいつが俺たちに国の騎士団に追われているという重大な事実を隠していたという時点でもう契約不履行だと言って護衛の仕事を放棄しても良いんだがこのことを皆に周知しないでそれを行うと多分皆反発するよな。

 俺たちの間に要らん波風が起こっても困るだけだしちょっと皆と話す時間が欲しいな。

 そんな訳でヘル。大分早いが昼飯の用意だ。


『はい。分かりました。マスター。

 ですが本当に困った案件を押し付けられましたね。

 こんなの百害あって一利なしですよ。』


 ホント。俺もそう思うよ。

 向こうは俺たちの事を扱いやすいボンクラだと思ってるんだろうな。

 まあここまではそう取られても仕方ないがこれからは俺たちのターンだ。押していくぞ!


『はい。それでこそマスターですね。

 お手並み拝見です。』


 任せておけヘル。絶対にギャフンと言わせてやる!


『ギャフンってショウワですか。ん? ショウワってなんでしょう? 』


  + + + + +


 俺たちはここで昼飯を食っておこうとバリセローを説得して昼食の用意を始めた。

 俺はそこからちょっと離れて化学のお時間だ。

 今までほとんど使ってこなかった魔石操作のスキルの一つをここで使う為だ。

 それはいわゆる薬物生成だ。


 この世界で普通の人は総合ネットワークからスキルを与えられる。

 そのスキルには剣術や体術などの身体操作系のものと怪力や疾走などの身体能力自体を上げるものが有る。

 この身体能力を上げるというのは簡単に言うとドーピングだ。

 薬物の力を借りて二倍の力を出し二倍の速さで走る。


 その薬物をどうやって用意するのかというとこれが魔石の凄いところで人体を構成している物質からどんな薬物でも化学合成して作ってしまう事が出来る化学プラントといっても良い機能を持っている。

 その機能を使って脳内麻薬を作ったり麻痺して痛みを感じなくなる物質を作ったりして身体のリミッターを外し超人を作り出すことも出来る。


 俺は魔石を一つ取り出すとこの化学プラントの機能で睡眠導入剤を作り出した。

 あとはこの薬をあいつらにおすそ分けだと言って飯に混ぜて飲ませてしまえばいいだけだ。

 ククク、今に見ていろよ。


  + + + + +


 あのあと俺が盛った薬で眠ったバリセローたちの馬車をヘルに移動してもらって今朝出てきた街の代官に密輸の証拠品だと言って差し押さえて貰った。

 ヘルにはついでにバリセローたちに着せる普通の服と剣を買ってきてもらい奴らをそれに着替えさせた。

 姫様も町娘姿だ。

 そして安い剣と手紙を置いてそこを離れた。


 今姫様はまだ眠っているが俺たちと一緒だ。

 サーラが可哀想だと言って聞かなかったからだ。甘いなあ。

 ちょっと離れた場所でドローン壱号機からの映像を皆で見る。

 そこには手紙を読んで茫然としているバリセローと御者が映っている。


 手紙にはこう書いておいた。


「バリセローさん。おはようございます。

 皆さんとても気持ち良さそうに寝ていらっしゃったので俺たちは先に行って待っています。

 馬車も誰かに取られたらいけないと思い移動して置きました。

 フリオペラさんは俺たちと一緒が良いというので同行していますので心配しないでください。

 魔獣が出て危険かもしれないので剣を置いていきますので使ってください。

 それでは待ってますのでお急ぎください。

 ハーロック・ロリングストンからバリセローさんへ。」


 俺たちの馬車はバリセローたちから間道を少し進んだ場所に留めてある。

 今はみんなで映像を見ているがあいつらが動き出したらこちらも移動するつもりだ。

 つまり永久に追いつけないだろう。

 この後無一文になった事にも気が付くだろうが自業自得だと思って頑張って王都まで来てほしいもんだ。

 一応ドローン壱号機を護衛用に付けて置いたのでまあ死ぬことはないんじゃないかな。


 本当は姫様も置いてくる予定だったんだがサーラに言われて止めてしまったから残りはおっさんたちだけになってしまったので全然興味がなくなった。

 もうどうでも良いよ。好きにしてね。


 俺たちは俺たちで普通に王都を目指すことにした。

 途中で俺ん家にも寄ってしばらく休憩しようかとも思っている。

 しばらく会ってない家族と会うというのはこんなにも楽しみに思うことなんだと旅に出て気が付けて良かったよ。


  + + + + +


 俺たちがバリセローと別れてもう結構立つ。

 ドローンも遠隔操作ができなくなる距離まで離れてしまったのでやむなく帰還させた。

 バリセローも今では中堅の傭兵っぽく見えるくらいに鍛えられていたので無事に王都まで来られるだろう。


 姫様は今は御者をしている俺の隣に座って楽しそうにしている。

 バリセローがいなくなってしまった当初はちょっと心細いといった雰囲気だったのだが女性陣が色々構ってやっていたら直ぐになついていた。

 特に王都の学園に通っていたというリーナには学園の話が聞きたいのか色々聞いていたようだ。


 姫様捜索隊は俺たちがドローンを使って監視してことごとく追跡を躱していたらいつの間にかいなくなっていた。

 多分王都の入り口で手ぐすね引いて待っているんだろう。


 南への旅路もかなり進んで俺ん家の領地が近づいてきた。

 そこで俺は忘れていたことを思い出した。

 そう。ママンたちに黙って旅に出てきてしまったことをだ。

 やべー。完全に忘れてたよ。

 どうする? ママンたちへのお土産も買ってないよ。

 ここは知らんぷり作戦しかないか。


 ああー。こんなこと気が付かなければ良かったよ。

 そうすれば家に付くまでは平穏でいられたのに要らんことに気が付いたせいでこれからずっと俺の気分はブルーを通り越してブラックだよ。

 もう知らん。なるようになれだ。


 ふと気が付くと俺の目の前を機嫌が良さそうなヘルが歩いている。

 あ、ヘルの事はどうする? うちに連れてくのか?

 まあ連れてくしかないか。なんて言って連れて行こうか。

 杖だったヘルが鎧になって帰ってきたよー!

 って言って誤魔化すか? いや全然誤魔化せてないけども。


 つらつらと色々なことを考えながら旅は続き俺ん家の村にたどり着いた。


  + + + + +


 俺は村の門のところに一応立って居る衛兵に声をかけた。


「おう。ご苦労さん。最近はどうだ? 変な事とか起こってないか? 」


「ん? なんだ? って坊ちゃんじゃないですか。お帰りなさいませ。旅から帰ってきたんですか? 」


「おう。ただいま。っていうか坊ちゃんは止めてくれよ。

 いや旅の途中でちょっと寄っただけだよ。」


「そうですか。こっちは魔獣事件の後は特に変化はありませんね。

 あ、中央政府の軍隊が来ましたけどあれは直ぐにどっかに行っちゃいました。」


「ほう。ちゃんと約束は守ってくれたようだな。」


「それより坊ちゃんじゃなくてハーロック様。覚悟して帰ったほうが良いですよ。」


「え? なにが? なにが有るの? ちょっと怖いこと言うのは止めてくれよ? 」


「まあ分かっているとは思いますが大分怒っていらっしゃる様子でしたからね。」


「ああーー。やっぱりかーー。もう泣きたくなってきたよ。

 じゃあもう行くわ。」


「はい。ご苦労様です。」


 そうして頭を項垂れたまま門を離れて馬車を村の中心に向かわせる。

 こんな門の衛兵にまで知れ渡っているほどママンたちが怒っているなんてもう死にたいよ。

 俺の心も知らずディスは元気に進んでとうとう家に着いてしまった。


 みんなも一緒に俺の親父に一度会う事になったのでそのまま玄関まで馬車で行くとバンドナが扉を開けて出てきて綺麗なお辞儀をして俺たちを出迎えた。


「お帰りなさいませ。ハーロック様とご友人様方。

 領主であるバズロック様がお待ちになっておりますのでこちらにおいで下さい。」


「ああ、ただいま。

 もう親父も帰ってきたのを知ってるの? 」


「はい。ご主人様以外の皆様も既にご存知です。

 ではこちらへどうぞ。

 馬車の方はラムドが世話を行いますのでご心配なく。」


「へえ。ラムドも家で働いてるのか。いつからだい? 」


「この夏からです。ベスも同時にお世話になっています。」


「ベスもか。」


 ラムドとベスはバンドナの子供たちだ。

 ラムドはスクラムドでベスはエリザベスが正式な名前だ。

 歳は俺たちより一つ下だったような気がする。

 バンドナと他愛も無い話をしながら歩き親父の執務室に着いた。

 さて親父との話はどうなるかな。





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