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マセキ・コントローール!  ~せっかく異世界に転生したのになんか捻くれた性格に育っちゃったみたいです~  作者: さんご
第三転生期編  第四章  境界の物語

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03-04-03 幸運と不運の境界

 その日境界の街では不法滞在者の一斉検挙が行われていた。

 仕事もなく働いていない者はこの街を出ていくように一週間前から告知されていたが本当に行政側が執行するとは誰も考えていなかった。

 飯の種を追い出すとはふつうは考えないだろう。

 だが住民の中には治安が悪化してきている事を分かっていた者もいておおむね受け入れられていた。


 追い出された者の中には本当に行き場所がない者もいたがそういう者は役所が世話した馬車で隣の街に移動するしかなかった。

 残りの最近集まってきていた傭兵達は野営の準備がない者も多くいて街の外にバラックを掘っ建ててどうにか雨露をしのぐしかなかった。

 食料も満足に集められなくて皆で分け合って食べていた。


 住民たちは不審がった。

 なんでそこまでしてこの街にこだわるのか?

 食うに困っているのならどこか別のところに仕事を探しに行けばいいのにと。

 ここまで来て住民の中にも異常に気が付く人が増えてきた。

 これはただ事ではないのではと。


 行政側に調査を望む声が増えて来て街の外に居る者たちの中から素行の悪い者を別件逮捕して連行してきて拷問という名のお話し合いをしてようやく事の真相にたどり着いた。

 これは戦争の前触れだと。

 ここで行政側は思わぬ奇策に出た。

 境界の街を狙って戦争を仕掛けてくる者がいると国の内外に向かって大声で騒ぎ出したのだ。

 数日でこの件は国民全員が知ることになり外国でも多くの者が知る事になった。


 だがここで問題なのはどこの誰が戦争を仕掛けてくるのかと言う事を明かさなかったことだ。

 そのため興味を持った全員の目が境界の街に向くことになり誰が攻めてくるのかと話に上らない日はなかった。

 そうこうする内に境界の街の外にいた傭兵達はいつの間にかいなくなっていた。

 そして戦争はいつしか只のホラ話となっていた。


 と言う作戦を立ててみた。

 どうよと言うドヤ顔を見せられた皆はあきれたような顔をしていたが作戦自体には文句はないようだ。

 ただ本当にそんなに上手くいくのかと言ってきたがそれはこの街の人たちのやる気次第だろうと言っておいた。

 そう、俺はこの戦争に関することで策は授けるがあとの面倒は見ないと決めた。

 それが俺の境界線だ。文句は受け付けん。


 俺はヘルを通してこの街の代官に作戦を授けるともう後は自分でやってくれと丸投げした。

 あとの事は代官が国の偉いさんと相談して決めてくれ。

 あとは知らん。好きにしろ。


  + + + + +


 あのあと数日で境界の街を出て旅に戻ったが代官がどういう行動をとったのかは分からない。

 今のところ何事も起きてはいないようだ。

 ともかく戦争が起こらないことを祈ろう。


 さて境界の街を出た俺たちは今度は北に向かって進むことにした。

 本当は港町にも行っておきたかったが今回は諦めた。

 道を戻る事になるしね。

 まあ次の機会に譲ろう。

 今度のルートは国境沿いを北に進んでいくものだが通り道には大きな街はなくあっても村が良いところだ。


 なぜそんなルートにしたかというとこの間道に最近強い魔獣が出没するという噂が立っていてそれを三バカが仕入れて来てこの道を行くことを強く希望したからだ。

 なんで噂程度でそんなにやる気を出しているのかと聞いたら噂になっている原因はその道を通った人が何事もなく通った人と行方不明になった人の二通りしかいないからだという。


 なるほどね。

 つまり魔獣に襲われた人は誰一人生還したものがいないので噂にしかならないということか。

 よくこいつらにそんなことが分かったなあと感心しているとこれも噂で聞いたことなんだと。あ、そう。


 まあそんな感じで危険そうな道を通る事になった訳だけども今のところそんな危なそうな魔獣は出てきていない。

 これは俺たちも無事に間道を通り抜けた側かなあと思っていたら小さな山の峠っぽいところで魔獣の群れの襲撃を受けた。


 三バカは大層喜んで前に出て行ったのでこっちは馬車の迎撃システムやヘルがいるから気にせずに好きに戦ってもいいよといって観戦することにした。

 襲ってきた魔獣の種類は犬型かなあ。

 狼なのかもしれんが大きさは中型くらいだ。

 そんなに大きくはないが数が多い。


 馬車の側面や後ろのほうはヘルたちにレーザーでけん制してもらい近づけないようにして皆の戦いを見ていた。

 なんか前よりも連携が良くなっている気がする。

 特にリーナが以前よりも前に出ることが少なくなって皆の位置を気にするように戦っていた。

 なんかこいつも命の危険にあって考えを改めたのかと感心して見ているとこちらをちらっと見てなんだか睨んだように感じた。


 なんだあいつ。戦っている最中にそんな余裕があるのかと思っていたら案の定そこから連携が崩れていってちょっと危なくなってきた。

 ヘルたちには他のところを守ってもらっているのでここは俺がやるかと新人君をホルスターから抜いて構えた。

 そういえばこれが新人君の初陣だなあと別なことを考えながらもリーナの死角から襲ってきていた魔獣をレーザー銃で撃ち殺した。


 ヘルツーにつけて貰っている火器管制システムで楽々と魔獣を倒せた。

 攻撃対象の魔獣を見てトリガーを引こうと思えば勝手に魔獣の急所に当たるようになっている。

 なんて楽なシステムだろう。ヘルツーには感謝しかない。


 そんなことを考えているとふとリーナが動きを止めていることに気が付いた。

 おいおいまだ魔獣がたくさんいるのに何やってんだとリーナを見るとなんだかこちらを見てすごく驚いている様子だ。

 なんだよ。俺が魔獣を倒すのがそんなに珍しいのかよ。

 と思ったがよく考えると俺がリーナの前で魔獣を倒したのは魔石武器のお披露目の時くらいしかなかったわ。

 そりゃ珍しいと思っても仕方ないね。


 俺もリーナと会う前は結構魔獣狩りに付き合わされて野山を駆けまわさせられたもんだ。

 当時はヘルがまだ杖の状態だったので重たい杖を持っての行動は体力作りに結構貢献していた。

 それが今では自分で動き回ってくれるので俺は何も持たなくていいなんて本当に楽になったなあ。


 昔と比べて今の幸せを噛みしめていると魔獣の襲撃は向こうが撤退するということで終わりを迎えた。

 今の魔獣の襲撃がこの間道の噂の元凶だと思われる。

 皆ちょっとした峠を登り切って気を抜いたところを魔獣に襲われて殺されたんだろう。

 魔獣の方はここでの襲撃が一度上手く行ったことでこの場所でしか襲わなくなって他での目撃情報がなかったんだろう。


 まあ今回の失敗で襲撃場所を変えるかも知れないが近くの村にでもこの情報を広めるように言っておけば被害は減るだろうな。

 事によっては討伐隊でも出るかもしれん。

 まあそんな訳で「間道に強い魔獣出没の噂」事件は解決だ。

 これでもういいだろ?


 そんな感じで俺たちは北へと旅を進めていった。


  + + + + +


 もう夏を越えて秋も終盤で冬がいつ来るかという段階になって俺たちは今後どうするかという話になった。

 俺たちが今いるのは北にある結構大きな街だ。

 ここら辺にはこの街しか大きいところはない。


 もう冬に突入するので雪がいつ降ってきてもおかしくない。

 まごまごしているとひと冬この街に閉じ込められてしまうということもあり得る。

 この辺りに多くいた大型の魔獣を皆は狙っていたようだがそれも冬眠かなんかで数が減ってきているらしい。

 もうここを離れてもよさそうだ。

 そんな話を夕飯を食べながらしていると急に俺たちに話しかけてくる人がいた。


 その人は数日前から同じ宿に泊まっていた人で俺も飯時に何度か見た覚えがある人だった。

 見た目はちょっと小太りな感じの商人丸出しで自分もこの街を離れるので良ければ一緒に行かないかという。

 馬車も大きめなのを一台持っていてこちらの速度に合わせるからどうだという。


 うーん。どうするかなあ。

 ヘルが体を得てから馬車の旅自体には別段何が起ころうともどうとでも対処できるようになったから他の馬車隊との同行もやってもいいとも思うんだがこいつらはどう思ってるんだろうか。

 その事をちょっと皆で話し合ってから返事をするということで商人のおっさんには態度を一時保留させてもらった。


 食堂を出て取り敢えず俺の部屋に皆で集合して話し合うことにした。


「で? 皆はどう思う? 今回の同行について。

 俺はそろそろやっても良い頃合いかもしれんと思っている。

 別にあの商人じゃなくても良い。他から探してきても構わん。どうだ? 」


「そうだなあ。一度護衛の経験を積むというのもいいかもな。

 ロック、もっと大きなキャラバンでもいいんじゃないか? 」


「そうだな。それも視野に入れておこう。」


「私は別にいいけど少ないのから始めたほうがいいんじゃないの? 」


「いや。こういうのは大きなのから始めるほうがいいんだよ。

 分からないことは周りの人を見れば大体わかるしね。

 最初に変なことを覚えてしまうと後で困ったり恥をかくことになるよ。

 あと負担が分散されるので魔獣などの襲撃による被害が出にくい。

 まあこれは俺たちには当てはまらないか。」


「そうね。私たち的には襲撃が多いほうが嬉しいわね。

 あと護衛をやるなら報酬をもらうべきよ。」


「そうだよなあ。でもさっきの商人はその護衛の報酬を余りかけない為に俺たちに声をかけてきたみたいなんだよな。

 俺たちの戦力は言っては何だが熟練の護衛隊よりも遥かに上だろうが見た目はまだまだ駆け出しの若者にしか見えないだろ?

 だから護衛の練習をさせてあげるから安く護衛をしてよって感じなんだよ。」


「そうなの? 私たちって結構強いの? 」


「ああ、サーラ。ヘルたちのレーザー攻撃はいうに及ばずだがお前たちの物理的攻撃力も結構なもんだと思うぞ。

 最近は後ろから見ていていつも思うが連携が良くなってきていて王都を出た直後から比べると雲泥の差だ。」


「エヘヘ。そうなんだあ。嬉しいなあ。」


「フン。まあ俺の剣裁きの冴えはどんどん良くなってるからな。」


「あらそう。あなたにも分かってしまったようね。」


「で最初に戻るがどうする? 別に今回無理してやる必要は全然ないぞ。」


「そうだな。俺は受けてもいいと思う。

 だが共同行動ということで護衛としての責任は負わないってことならな。」


「そうね。報酬が出ないのなら結果に対しての責任も取らないっていうのは当然ね。

 襲撃には積極的に関与していくっていうスタンスも譲れないわね。」


「私もみんなの意見でいいと思うけど向こうの人員とかそういうのは聞かなくてもいいの? 」


「ああ。じゃあ基本的に次に話すときにそれを聞いて問題ないようだったら受けるということで良いな?

 明日の朝に会ったときにその話をすると思うから旅に出る用意を始めておいてくれ。

 じゃあ解散だ。」


 そういうと皆は旅の準備に部屋に戻っていった。

 さてヘルさんや。あの商人さんの身元はどうだったの?

 なんか分かったの?


『はい。マスター。

 商人歴は結構長いみたいですがあまりいい情報がありませんね。

 裏で何かしらの悪事を働いている可能性が高いと思われます。』


 そうか。今回はちょっとした小遣い稼ぎのつもりで俺たちに粉をかけてきたのかもしれんな。

 なんといっても見た目だけなら絶世の美人さんが一人いるからな。

 あいつ一人でも奴隷かなんかとして売りさばけば結構な金になるんだろうしな。


 だがまあ今回はそんな上手くはいかないだろうよ。

 さてどんな手を使ってくるんだろうな。

 結構楽しみだな。


『そんなことを楽しんでるのはマスターくらいですよ。』


 いいじゃないか。

 最近やることがなくて退屈してたんだからな。

 ああ、早く旅に出たいよ。





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