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マセキ・コントローール!  ~せっかく異世界に転生したのになんか捻くれた性格に育っちゃったみたいです~  作者: さんご
第三転生期編  第四章  境界の物語

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03-04-01 成功と失敗の境界

 境界の街へ向かって旅立ち早数日が過ぎた。

 明日にはもうその街へ着くだろう。

 でもなんだか初めていく街だと全然思えない。

 ドローン壱号機から送られていた監視映像をAR表示の画面で何日も見ていた所為だと思うんだけどなんだか損した気分だ。

 俺の新鮮な気持ちを返してくれ。


 俺のガッカリ感を気にした風もないヘルは今日も楽しそうでいいね。

 三バカたちも通常営業で魔獣と楽しくお遊戯だ。

 ヘルツーはドローン弐号機の操作に夢中で今はアクロバット飛行をさせて遊んでいる。


『ギューーン。グイーーーン。クククッ。ここでグイッ! キイィーーーン。』


 飛行機の宙返りとかを見ているとなんだかそれだけでも楽しいよね。

 そういえばドローンの事は簡単に流していたけど詳しい仕組みをちょっと話しておこうかな。


 ドローンの推進力はマイクロマシンクラフトによって得ている。

 このマイクロマシンクラフトを簡単に説明するとこうなる。

 まずマイクロマシンは空中に散布されていると前に言ったよね。

 今もどこかの総合ネットワークの支部で散布が続けられているおかげで空気中に一定の濃度でマイクロマシンが存在し普通の人がスキルを使うときや魔道具を使う時のエネルギー源となっていると。


 俺は魔石操作のスキルでドローンの機体を構成している魔石に命令して機体の近くに存在するマイクロマシンに電荷を纏わせる。

 後は簡単だ。

 電荷したマイクロマシンを電磁誘導によって吸入し加速させて排出すると必然的に周りの空気も引きずられて移動することになりそれによって推力が生まれる。

 これがマイクロマシンクラフトと呼ばれる仕組みだ。


 次は形態も説明しておくか。

 ドローン壱号機は円盤型の本体の端に六本の長い足が等間隔に付いたようになっている。

 見た感じ昆虫や足の長いカニのようにも見えるな。実際そういう使い方も出来る。

 六本の足は筒状になっていて中を空気が通るようになっている。

 足の先からさっき説明した加速された空気を噴出し足の向きなどを自在に動かして空中に停滞したり飛行したりしている。

 足の長さを半分くらいまで縮めることもできてその足を使って歩くことも可能だ。

 今は改造して電撃とレーザーの武装も装備している。

 大きさはそんなに大きくない。ウエイトレスが持つようなトレイより少し小さいくらいだといえば分かりやすいか。

 こいつが空中をフワフワと飛んでいるのを見るとなんだか海中を漂うクラゲのようにも見えるな。


 ドローン弐号機はあんまり説明することはないな。

 翼は横にまっすぐに伸びていて低速での飛行を可能にしている。まあグライダーのような感じだ。

 機体の左右に推進器がついており高速飛行が可能となっている。

 武装は前に説明したのと変わっていない。

 大きさは両手を広げたのと同じくらいで結構デカいが翼とかの厚みがないので思ったよりも軽くできている。

 こいつが高空をクルクルとゆったり旋回しているのを見ても普通の人は鳥が飛んでるなあくらいにしか思わんだろう。


 まあ説明といってもこんな所かねえ。

 ディスが俺の事は説明しないのかとこっちを振り向いて見てきたが特にそんな予定はないよ。

 まあディスの事を一言でいうとしたら「黒王号」。これしかない。

 なんでこいつが残っていたのか。何回も言うが本当に不思議だ。


 まあ何事もないっていうのはいいことだ。

 のんびり行こうよ。


  + + + + +


 次の日の昼には境界の街に着いた。

 ここまで来るのに長かったねえ。

 この街は国境付近にあるからなのか結構ちゃんとした街壁に囲われているようで門もかなりがっしりとした感じの立派な門だった。

 門に居る衛兵もなんだかいかつい感じの人で俺んちとはだいぶ違うねえ。


 門をくぐったらいつもは宿屋探しなんだが今回はもう既に決まっている。

 例の王女が隠れていた宿屋だ。

 あそこの宿屋をモニター越しに見ていたらなんだか泊まりたくなっていたんだよね。

 小さな夢が叶うっていうのは人生における癒しだよね。


 宿屋に着いてみるとなんだか様子がおかしい。

 なんか営業していないみたいだ。

 えっ? もしかしてヘルが暴れたのが原因でなんかあったのか? 女店主が衛兵に逮捕されたとかか?

 気になったので近所の人に話を聞くとあの女店主がケガをして今は休んでいるということらしいがなんか答えた人の態度が変だ。

 しつこく聞くとヘルが暴れて散らかした後片付けをしている時になんか腰をやっちゃったみたいだ。

 俺の横にヘルが立ってたので気まずくて言いづらかったらしい。気を使わせて悪いね。


 そうだよな。

 ヘルが作ったバリケードや殺したゴロツキの死体なんかをこの辺の人たちで片づけたんだよな。

 なんかそんなことも知らずに気楽に泊まろうなんて考えてやってきてしまって申し訳ない気持ちになってきた。

 俺のガッカリ感は倍増してしまって皆でとぼとぼと来た道を戻って街の中央当たりの宿をとった。


 俺はなんだか疲れたので宿で休むことにして皆には自由行動を許可した。

 俺は柔らかなベッドに寝転がり今回のことを色々考えてみた。

 俺は事件が解決したと喜んでいたが周りの人から見れば全然解決などしていないということを思い知らされた。


 まず王女誘拐の件だ。

 王女を誘拐した実行犯はまだ捕まっていない。

 誰かも分かっていない。

 多分存在する協力した共犯者もだ。

 王家側は王女が無事に逃げてきたので犯人を絶対に捕まえようとするだろう。

 しかし実行犯は捕まるかもしれないが首謀者の影の黒幕はもう死んでいるし関係者によって証拠隠滅が既にされていて事件は迷宮入り確実だろう。


 間道をゴミな奴らが徘徊し俺たちみたいに関係ない人たちを王女と間違って大勢襲っていただろう。

 俺たちが結構な数を始末したがそんなのは氷山の一角で知らないところで被害者を出していた奴らもまだまだいるに違いない。

 こいつらの事は依頼人が役人の更に上の立場の奴らだったこともあり捜査とかはちゃんとされないと思う。

 被害者は泣き寝入りするしかないだろう。


 俺たちに関係ないところで起きた事件は俺たちにはどうにもできない。当たり前だ。

 そんなことの責任は俺たちにはないしそもそも考える必要もない。

 だったら俺たちはどうすればいいのだろう?

 周りで起こった事の全てに首を突っ込んで大暴れすればいいのか?


 そうじゃないだろう。

 境界だ。

 俺たちが首を突っ込む事を判断するのに必要なのは境界を決めることだ。

 なにに関与してなにを捨て置くのか。

 これを曖昧にして置いたのでは未練が残り後悔が生まれる。


 今の俺たちは最初の頃とはかなり変わって強くなった。

 なんでも出来て誰でも倒せると思い上がっている。

 だが実際はそうではないのだろう。

 ここで一度自分たちに出来る事をしっかりと見極めて覚悟を決めなくてはならない。

 そんな気がする。


  ~ ~ ~ ~ ~


 私は武者修行の旅の事をなにか勘違いしていたのかもしれない。

 これは只の稽古の続きなんだと。

 でも実際にここまで旅をしてきて色々体験すると全然違うものだったんだと気が付いた。


 まず相手はこちらの事などお構いなしに襲ってくる。

 こちらの都合が良い時悪い時関係なく。

 だからちょっと違っていたら死んでいたという事が何度もあった。

 ただちょっとだけ運が良かっただけの事だ。その連続だ。実力ではないと思う。


 そしてそんな事が続くと自分の実力が段々分からなくなってきた。

 自分は強いのか。ただ運が良いだけなのか。

 今まで自分が行ってきた修業は正しいのか。もしかして間違っていたのか。

 自分の強さを形作っていた確固としたものがここでは通用しないようなのだ。


 なんという不安定感。

 自分の立っているところがいつ無くなってもおかしくない心細さ。

 もしここに自分一人だけだったのならとっくに心が折れていただろう。

 だが今自分の横には頼れる仲間がいる。

 そのなんと心強いことか。

 背中を預けられるという事の本当の意味を知った気がする。


 だがあいつは駄目だ。

 全然真剣ではない事が伝わってくる。

 いつも一人でいて人を近づけさせない。

 この旅で仲間になれる奴とそうではない奴とがはっきりと分かった。

 奴とは絶対に仲間にはなれない。


 ~ ~ ~ ~ ~


 ベッドの上に寝転んでいることに気が付いた。

 俺はいつのまにか寝ていたようだ。

 ぼーっとした頭でなにを考えていたのか思い出そうとしたがなんだか分からなくなった。

 もう夕方になっているようだ。

 下の食堂からなのか良い匂いが漂ってくる。

 ここの食事は当たりのようだ。

 ガッシュを誘って早速食べに行こう。


 だがガッシュはまだ外出から帰っていないようだった。

 しょうがなく一人で食べに行ったが結構美味かった。

 ガッシュはどこか他所で食べてくるようだ。

 部屋に戻るとヘルが帰っていた。

 なにをしていたのか聞くと総合ネットワークの支部に行っていたようだ。


 ここも街の外に支部の建物があるらしくちょっとした森の中にあるという事だった。

 ヘルはそこで情報交換をしていたようなんだがなんだか不審な事に気が付いたという。

 また厄介ごとの種を拾ってきたのかと警戒したが一見なんという事もないようにも思えることだった。


 それはこの街の人口が急激に増加しているという事だった。

 それ自体は歓迎すべきことなんだと思うがこの街の主な産業というのは隣国との貿易だ。

 急激な人口増加が起こるような環境ではないだろう。

 それに増えているのは男性が殆どだという。


 …………。

 ヘルに隣国の総合ネットワークとは情報交換できないのかと聞いたがこの何百年か繋がっていないという。

 ではこの国の出身者ではない住人の割合はと聞くと最近増えて三割強になっているという。


 これは襲撃か戦争かなんかが起きる前兆じゃないか?

 もしくは隣国内で内紛でも起こっていて避難してきているのか。

 いやそのような時ならば女性や子供が先に増えるのが普通だろう。

 やはり戦争を仕掛けてくるという可能性が高いと思われる。


 だがここの役人はなぜこの急激な人口増加について何も感じていないのだろうか。

 しばらく類推してみた結果たどり着いたのは多分こんな事だろうと思われる。


 隣国は以前から戦争を仕掛けるタイミングを探っていた。

 そうしたら王女誘拐事件が起こった。

 その解決に中央政府の目がそちらを向き境界の街は警戒が緩むことだろう。

 そんな折境界の街を含む領主が王女捜索のために人材の募集をかけた。

 これに目を付けた隣国の首脳部は人材派遣の名目で傭兵として軍隊を潜り込ませるのに成功した。←今ここ。

 後は中央政府が王女誘拐犯たちを討伐するために軍や衛兵を集結したりして辺境の守りが緩んだ時に事を起こせば苦も無くいくつかの街や領地を奪えるだろう。


 まあその後反撃を受けても奪ったところを守れるかという問題は残るけどね。

 俺が思い浮かべられる流れはこんなもんだけどヘルはどう思う?


「そうですね。いい線行ってるんじゃないですか。

 マスターの類推力は歴戦の大将軍を思わせるものがあります。

 又はかのパンロック氏のような明晰な頭脳の持ち主のようですね。」


「止めろっ! 奴となんか比べるなっ!! 」


 俺はヘルの指摘になぜか背筋がぞっとした。

 だからか考えてはならない事が思い浮かんでくるのを抑え込むように大声を上げてしまった。

 ハァハァと荒い息をしながら冷や汗をかいている事に驚きながらイスに深く座り込んだ。

 しばらく頭を深く下げて気分が落ち着くのを待ってからヘルにさっきの事は二度と言うなと命令してから顔を上げた。


 すると部屋のドアのところに三バカが驚いた顔をして突っ立っている事にようやく気付いた。





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