03-03-08 魔石武器と消えた三人組
いつまで待っても三人組が来ないのであいつらの泊まっている宿屋に確認に行ってみたが朝に出たっきりでまだ帰ってはいないようだった。
これはなにかが起こったとみて間違いないだろう。
ヘルツーに今日あいつらが向かっただろう方角を聞いてみた。
『うーんとねー。
朝出た方角は分からないけど今検索をかけたらこの街と境界の街の間のどこかには居るみたいだよー。
詳しい居場所は分かんないみたーい。』
なんだと? そうか!
もしかするとあいつら近衛の人たちを見たのかもしれんな!
ヘルツー。今日近衛の人たちはこの街を通過して境界の街へ向かったんだろ?
『うん。お昼頃この街についてちょっと休憩してから領主が用意した変え馬に乗り換えて夕方前には街を出て行ったよー。』
やっぱりな。
だったら魔獣狩りで外に出ていたあいつらがそれに出くわしてもおかしくないな。
そして近衛の人たちの尋常じゃない様子を見て王女が見つかったと気づいたのかもしれん。
そうなると我慢できない奴が約一名いるしな。
でもだったらなんで俺に連絡をよこさないんだ?
あっ?! あいつら俺が王女の居場所を知っていて隠していた事にもしかして感づいたのか?!
そうだな、それは有るかもしれん。
だっていつも一緒にいたヘルが今一人でどこかに行っているというんだから違和感がバリバリだったろうからな。
ヘルを王女のところにやっていると思ったのか。まあその通りなんだけども。
でもあいつら野営の準備とかしてないだろう?
どうするつもりなんだ?
もしかして徹夜で移動するつもりなのか?
アホか?! あいつらは!
ただでさえこの辺は魔獣が多いと自分たちで言っておきながらそれも夜間の魔獣が活発になる時間に間道を移動するなんて自殺行為だぞ!
くそ! ヘル! 聞こえてるか?!
『はい。ツーから連絡が来てさっきから聞いてました。
これはちょっと不味いかもしれませんよ。
三人はまだ夜間戦闘訓練はしていません。
今までしたことのない事で余計に緊張して疲労度がすぐに一杯になってしまってミスが起こりやすくなります。
今までにない危険度です。』
そうだな。早急に助けに行かないとヤバイかもしれん。
この時間だと俺たちはもうこの街を出られそうにない。
ここはヘルに頼むしかなさそうだがいけるか?
『はい。なんとかしないといけませんね。』
それじゃあヘルの今の状況を教えてくれ。
今どこら辺まで来ているんだ?
『はい。マスターのいる街まであと三分の二ほどの距離ですかね。
今は街道脇で火を焚いて休憩してます。』
ヘルツー。近衛の人たちはヘルたちのいる間道を通って移動してるんだよな?
『うん。この街を出た時はその間道に向かってたよー。』
ヘル。今お前の直上にドローンが飛んでるんだよな?
『はい。上を飛んでます。これを飛ばして近衛の人たちがどこまで来ているのかを確認するんですね? マスター。』
そうだ。まずはそれからだ。そのあと続けてあいつらの捜索だな。
『はい。分かりました。それではそれが判明するまでお待ちください。』
頼むな。ヘル。
さて、それまで俺はどうするか。
そうだな。ドローン弐号機を作ってこちらからも飛ばすか。
それに弐号機には武装もつけておこう。
魔獣が襲ってきているかもしれんしな。
俺は三バカが取って来ていた魔石を集めてドローンを作り始めた。
まだ夜になったばかりの時刻だった。
+ + + + +
深夜になる前にはヘルから近衛の人たちの居場所が分かったと連絡が有った。
ヘルたちと同じ間道を夜間なので馬でゆっくりと進んでいて今大体街まであと半分の距離まで来ているらしい。
なら王女のところまで来るのにそんなに時間は掛からないだろう。
どうする?
ヘルにはもう王女の事は放っておいて三バカの方を助けに行ってもらうか?
王女と近衛は今日の朝までには多分余裕で合流できるだろうし。
問題はそれまで王女が無事でいられるかってことなんだがここで見捨てても大丈夫だろうか。
どう思うヘル?
『はい。ちょっと放っていくことは無理っぽいですね。
先ほどから何度もここを魔獣が襲ってきてます。
王女たちが不安になるといけないので索敵に引っかかると同時にレーザーで処理していますので今のところ大丈夫ですが私がいなくなるとどうなるか分かりませんね。』
やっぱりそっちのほうでも魔獣が多いのか。
だったら三バカの方も余計に心配だな。
わかった。ドローンで今も捜索中なんだよな?
『はい。間道をそちらに向かって捜索中です。』
じゃあ引き続き頼む。
こっちでも新たに作った武装ドローンを飛ばして捜索してみる。
ヘルは近衛の人たちが王女を見つける時まではそこにいて守っていて欲しいが出来るだけ彼らに存在を確認されないように出会う寸前に身を隠してくれ。
そしてすぐに三バカの方に向かってくれ。
『はい。分かりました。マスター。
大丈夫ですよ。皆さんも結構強くなっていましたからきっと無事ですよ。』
だと良いがな。
じゃあ後はよろしくな。
あいつらの居場所がわかったら連絡をくれ。
『はい。マスター。』
よし、それじゃあこっちもドローンを向かわせるぞ。
ヘルツー、準備は良いか?
『うん。良いよー。
ドローンの操作が出来るなんて嬉しいよー。
いつもお姉ちゃんがやってて私にはさせて貰えなかったからー。』
そうなのか? だったらこっちはヘルツー専用にでもするか?
今なら角付きに改造しても良いぞ。そんなのはすぐにできるし。
『それは後で良いよー。
それより早く飛ばしたーい。』
それじゃあという事で宿屋の窓から外に向けて勢いをつけてドローンを投げ出した。
新しく作ったドローンは定点観測用の機体ではなく飛行機型の機体だ。
素早く移動して敵を攻撃することを目的に作った。
武装はいつものレーザー発射用の半球型のドームを機体下部と機首につけてある。
こうしておけば戦闘機と爆撃機の両方の使い方ができるだろう。
欠点はといえば同じ場所に居続けるというのが難しいという点だがまあそれは使い分けていくしかないだろう。
今はスピードの方が重要だしな。
ヘルツーが操作するドローン弐号機の暗視カメラの映像をAR表示の画面で見ているが速い速い。
ドローン壱号機の何倍だという勢いで風景が過ぎ去っていく。
こりゃこっちを早く飛ばしていた方が良かったんじゃないか?
不味ったなあ。間に合うか?
ヘルツーはキャッキャキャッキャと大はしゃぎで弐号機を操作している。
おかげで画面があっちこっちにぶれて目が回りそうだ。
カメラ映像をぶれが少なくなるようにプログラム的に調整してもらったがそれでもまだ酔いそうだ。
ちゃんと捜索してるのかと聞くとちゃんとやってるよーと返事して来た。ホントかよ。
画面下に間道らしき開けた空間がまっすぐ伸びているのが見えている映像をしばらく見ていると何かが動いたのが見えた気がした。
ヘルツーも当然確認していたみたいで通り過ぎたその場所まで旋回して戻って見るとやっぱりあいつらだった。
映像で見た感じでは誰も大きなケガなどはしてないようで取り敢えずは安心した。
今見た感じでは数頭の魔獣と戦っている最中だと思われる。
ヘルツーにその場で出来るだけゆっくり旋回しながらあいつらのいる辺りが明るくなるように照明を当てて魔獣もついでに倒しておくように言った。
そしてヘルツーを介してスピーカーの大音声で奴らを怒鳴りつけた。
「このばかちん共がーーっ!! なにをやっとるんじゃーーっ!!
ホントに死んじまうぞくそったれがーーっ!! 」
あいつらは急に聞こえてきた俺の怒鳴り声にびっくりしたのか首を引込めてキョロキョロと辺りを見回していた。
~ ~ ~ ~ ~
なんでこんな事になったんだろう。
真っ暗な間道の真ん中で魔獣に囲まれている今なぜかそんな事を考えていた。
ガッシュ君とリーナちゃんの三人で魔獣狩りをしに街の外に出ていたんだけど帰り道で騎馬の集団とすれ違った。
私は知らなかったんだけどリーナちゃんが言うにはあれは近衛の人たちの服装だったらしい。
今この辺に居るのは多分王女様について来ていた人たちだけだと思うからこれはきっと王女様になにかあったに違いないとリーナちゃんが言った。例の勘がすると。
私もそう思う。
だからこのことを早くロッくんに伝えようと言ったらその必要はないと言われた。
なんでと聞くと今ヘルさんがいないのはその所為だという。
ああ、そういうことかと納得した。
そうよね。いつも一緒に居るはずのヘルさんがなんで別行動をしているのかと前から疑問に思っていたんだけどそう言うことだったのね。
でもだったらなんで余計に伝えないのかと聞いたら多分もう知っているだろうからだという。
近衛の人たちを呼んだのはロッくんたちで今まで来るのをこの街で待っていたんだって。
まあそうよね。王女様の居場所を知っていたのなら近衛の人たちを呼ぶのは当たり前だし詳しい事を伝えるのに会って話すのは普通だよね。
だから今更伝えに戻っても意味はないと言われればそうねとしか言えないんだけどだったら私たちはどうするの?
取り敢えずこのまま街に戻るしかないんじゃないの?
だってこの先の境界の街に行くにしても何日もかかるんだよ?
今の私たちは野営の準備もしていないし前みたいに魔獣を倒しながら行くんだとすると全然進めないよ?
いったん街に戻ってロッくんたちと一緒に馬車で向かわないと絶対に無理だよ。
そう言ったがリーナさんは頑なに一人でも境界の街に行くと言い張る。なんでだろう?
ガッシュ君もリーナちゃんを説得しようとしたが彼にはちょっと無理みたい。
上手く口が回らない感じだ。いつもの事よね。ロッくんとは違うし。
話し合っていたら街の門が閉まるまでに帰るにはギリギリの時間になっていた。
早く決断しないといけなくなって来て皆気が立ってきたみたい。
そしたらリーナちゃんがいきなり境界の街の方に全力で駆け出した。
私は急な事にびっくりしていたらガッシュ君はこのことをロッくんに伝えろと言って追いかけて走り出していった。
ああもう。
なんで二人はこうも考え無しなんだろう。
ロッくんは良く脳筋だとか言ってるけどホントにそうよね。
私も最近二人に影響を受けたのかそんな感じになって来ている気がする。
いやまだそんな感じじゃないわ!
絶対に違うと強く言いたいけどそんな事も無きにしも非ずといったような曖昧でフワフワした感じ?
まあ今はどっちでもいいわ。
私はため息をつきながら二人の後を追って駆け出した。
ごめんね、ロッくん。心配かけちゃうね。許してね。
+ + + + +
夜になって真っ暗になった間道をそこらで拾った木に火をつけて簡単なたいまつ代わりにして歩いている。
前に街につかないんじゃないかと慌てた時に魔道具で火をつけるものが欲しくなったのでロッくんにねだったらほいよと簡単に魔石で作ってくれた。
ライターという魔道具らしいけどこれは便利よね。
火を持っていても魔獣は平気で襲って来てこれで何度目になるかはもう分からなくなっちゃったわ。
私のクロスボウの矢も使いまわしていたけど使えるのはもう一本になってしまってここぞという時にしか撃てなくなっていた。
前衛の二人も最初の勢いはもうすでに無くなっていて騙し騙しっていう感じで魔獣と戦っている。
もう次に襲ってきたら耐えられないんじゃないかと思っていたら案の定直ぐに襲ってきた。
今度は前よりも数が多いわ。
これはほんとに不味いかもしれないと冷や汗が流れた瞬間に急に上の方からギューンという金属音が聞こえて来たと思ったらその音が私たちの周りを回りだしたみたい。
それから空から私たちに強い光が当てられたと思ったら魔獣たちは既にみんな倒されていた。
ああ、助かったぁ~。ロッくんが助けにきてくれたぁ~と思って嬉しくて涙を流しながら空を見上げたらロッくんの怒髪天を衝くような怒鳴り声が辺りに響き渡った。
私たちはこの後どれだけロッくんに怒られるんだろうと思うと最高にまで盛り上がっていた気分がズーンと地の底まで落ち込んだ。
でもロッくん、助けに来てくれてありがとね! 大好き!!




