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03-03-06 魔石武器と王女の行方

 集合予定の街に皆がそろったので今後の予定を確認する。

 襲撃がある前は隣国との境界の街に行くつもりだったがそこで貴族の兵士に追いつめられると結果として隣国に逃げるしかなくなるような気がする。

 なんか相手もその方が良いと思ってるんじゃないかな。

 王女が国内から一時的に出ているうちに体制を整えるつもりだとかがあり得るだろう。


 うーん。どうするか。

 ここで相手側の思惑に乗って俺たちが隣国に出ていけば本物の王女が動きやすくなるかもしれない。

 でもなあ。

 俺たちがそこまでする必要が本当にあるのか?

 リーナはもちろん王女を助けたいだろうからこれに賛成するだろうけど向こうがこっちの行動を知らないんじゃうまく立ち回れないんじゃないか?


 こっちが隣国に出た後に逃避行を始められればいいがその前に動いてしまえば俺たちの行動は意味をなさなくなる。

 俺たちが境界の街で騒動を起こすのが早ければいいのだろうがその街まではまだ結構距離が有り日数がかかりそうだ。

 やっと街に着いたと思ったら王女の方がもうなんらかのアクションを起こしている可能性が高くないか?


 ここで問題になっているのは王女と連絡が取れないってことなんだがこれはなんとかできないのか? ヘル?


『そうですね。

 彼女が杖をまだ持っているのならもしかしたら場所の特定や連絡手段を確保できるかもしれませんが良いんですか?

 そうするとマスターが管理者であることや魔石操作のスキルを持っていることが知られてしまうかもしれませんよ? 』


 そうなんだよなあ。

 ここで大見得を切って舞台に上がれるんなら苦労はないんだよなあ。

 俺は出来るだけ体制側に俺の個人情報を知られたくない。

 パンロックのように飼い殺しにされるのは真っ平ご免だ。

 俺の好きなように生きる為にはやっぱり隠しておくに越したことはないだろう。


 なあヘル。

 位置情報を得るだけなら何とかこちらの事を明かさなくても出来るんじゃないか?

 どうなんだ?


『そうですね。

 総合ネットワークの通信範囲にもしいるのならあの宝玉の管理No.とかは分かっているので検索で見つけられると思いますがそれからどうするのですか?

 皆に場所が分かったというのですか?

 私はそれはお勧めできませんね。』


 俺も皆に明かすつもりはないよ。

 明かしたとたんに飛び出していくアホが最低一人はいるからな。

 だが情報だけでも手に入れておかないとどんな波及効果が起きて俺たちに降りかかってくるか分からんぞ。

 だから取り敢えず位置だけでも把握しておこう。


『はあ。分かりました。

 もう検索済みです。

 王女たちは私たちの目的地の境界の街に既にいます。

 宝玉を通して映像も確認できますが見ますか? 』


 おう、そうなのか。

 なんか失敗したみたいだなあ。

 わざわざこっちに注目させてしまったみたいだし。

 いや。元々ここら辺が怪しいと向こうも思っていたから色々俺たちに仕掛けていたのか。

 ヘルは大分前から知ってたみたいだな。


『はい。マスター。

 特に聞かれなかったので黙ってました。えへへ。

 でも言わなければこの後の目的地は別の場所に代わっていたでしょう?

 その方が自然な感じがしたのでそれを優先しました。』


 そうだよな。

 居場所を聞いてしまった今では境界の街に助けに行かないといけないような強迫観念が出来てしまった。

 でも助けに行くと俺たちの手の内をさらすことになってしまう可能性が高い。

 それに皆にどう説明して助けるかにもよるな。


 ただ境界の街にいるよと言ったら皆全力で突っ走っていくのは目に見えている。

 いることを言わずに向かうと多分また襲撃を何回か受けるだろうし隣国へ逃げ出さざるを得なくなるだろう。

 俺たちの素性を隠して仮面の冒険者とか言って助けられたのなら一番いいと思うんだがなあ。

 王女たちから見たら一目瞭然だろうし王女は騙せたとしても侍女の人は騙せないだろうし。


 あ、そうか!

 ヘルは王女たちにまだ身バレしてないし存在も認識されてないよな?

 だったらここで王女を助けに登場しても俺たちとは関連付けられないで済むんじゃないか?

 どう思う? ヘル。


『そうですね。

 ここでマスターたちが待機している間に私だけが先行して王女を助け出すというのは良い案かもしれないですね。

 ですがその間マスターたちの戦力は大分落ちることになりますが良いのですか? 』


 ああ、取り敢えずこの宿屋にしばらく滞在している間にヘルには調べに出て貰っているということにしておこう。

 宿屋には別々のグループで部屋を取ってあるので問題ないだろう。

 いや、三バカには別の宿に移って貰って新人冒険者ムーブを続けてもらった方が良いな。

 魔石が足らないとか何とか言ってこの街の周辺で魔獣狩りでもしてもらおう。

 幸いこの辺りは魔獣が多いらしいからあいつらにとっては良いことだらけだろう。


 よし、それなら善は急げだ。

 ヘルは夜のうちにこの街を抜け出して境界の街にいる王女の所へ向かってくれ。

 後ドローンも持って行ってくれな。

 状況を見ていたいしなにか助言できることもあるかもしれん。


『はい。分かりました。

 ウフフ。一人で好きなようにしていいなんて夢のようですね。

 どんな活躍をすればいいかしら。胸が高鳴りますね。

 マスター。』


 程々に頼むぞ。

 あ、あとガッシュに予備の剣を借りていってくれ。

 武装もなしだと格好がつかないだろうしな。

 それと出来るだけレーザー攻撃は控えろよ。

 するとしても王女たちには分からんようにしろよ。

 じゃあヘル頼んだぞ。

 やられることは万が一にもないだろうが気をつけてな。


『はい。それではちょっと行ってきますね。

 私の活躍をドローンで見逃さないようにしてくださいね。

 ツー。後の事は頼みましたよ。』


『了解でーす。お姉ちゃん頑張ってねー。』


 そうしてヘルは出陣していった。

 一陣の風となって。

 ホントドローンで追いかけるのが精いっぱいの速さで夜の間道を突っ走っていった。

 こりゃ朝には境界の街に着いてるな。

 それまで俺も寝とこう。おやすみ。すや~。


  + + + + +


 境界の街にヘルが着いた。

 やっぱり朝にはついていたが街の門がまだ開いてなかったのでそんなに高くもない外壁を乗り越えて街に入ったみたいだ。

 王女のいるところは大体分かっていたようなのでそこへ一直線に向かうと宿屋だった。

 宿になんか泊まっていたらすぐに居場所がばれるんじゃないかと思っていたらなんと宿屋の従業員になっていた。


 いくらお忍びが得意だといっても宿屋で働けるほど市井に溶け込めるとはなんとも言い難い。

 ヘルは鎧姿という人目を惹く姿なのでそこらを歩いていると大変目立ってしまう。

 仕方ないので宿屋の裏に回って王女たちの誰かが出てくるまで物陰に隠れていることにした。


 ドローンで観察していると色々分かってきた。

 彼女たちは姉妹という設定のようだ。

 髪の色が同じ金髪だったので違和感がなく受け入れられている。

 というかもしかして彼女たちは親戚なんじゃないか?

 顔の作りがなんか似ている気がする。

 侍女を付けるというとき親戚から選べばその分危険度が下がるし。


 宿屋の女亭主に侍女の方がおばさんと呼んでいたからこっちも親戚か知り合いか?

 それならここにかくまわれていても不思議じゃないな。

 うん。上手い隠れ方だ。

 王女を探しに宿に人が来ても泊り客しか調べないだろう。

 従業員に似たような人がいても見た感じ王女っぽくもないしな。


 これなら当分隠れていることが出来るだろう。

 王女の顔を知っている奴が来なければだが。

 うーん。どうするか。

 とりあえず王女の方はそんなに危険ってわけじゃなさそうだし。

 ここから逃げ出そうとしたら余計に危なくなりそうだし。


 ちょっと考えてみよう。

 まず王女たちにとって一番いい事は無事に王都に帰るってことだよな。

 方法はどうだっていいだろう。

 堂々とでもコソコソとでもどっちだって良いはずだ。

 今困っているのは身の危険度が高まっているってことだよな。

 誘拐した相手側につかまると最悪口封じに殺されてしまう可能性がある。


 誘拐したのとは別の人に保護されるっていうのはどうなんだろう?

 ここにもし近衛の人たちがいればなにも困ることなく護衛されて王都へ帰れるだろう。

 そうだよな。元々近衛の人に護衛されて港町に来たんだよな。

 なあヘルツー。一緒に来ていた近衛の人たちはどうしたんだ?

 分かるか?


『うん。分かるよー。

 えっとねー。なんかまだ港町にいるみたいだよー。

 王女様の身代金の受け渡しに着いていく予定みたい。』


 そうか。なら王女の居場所を伝えたら迎えに来てくれるかもしれんな。

 ヘルツー。総合ネットワークの方から近衛に情報が伝わるように出来るか?


『うん。多分出来ると思うよー。

 港町の領主を経由してだけどそれでもいい~? 』


 おう、それでもいいから早速連絡してくれ。

 後は近衛が迎えに来るまで王女を守ればいいだけだな。

 ヘル。そう言うことになったからそれまで王女の身辺警護を任せたぞ。


『なんだかあんまり活躍できそうにないですね。ガッカリです。

 ですが分かりました。

 でも緊急事態が起きれば大暴れしても良いんですよね? 』


 まあそういう事態になったのなら暴れても良いが程々にな。


『お兄ちゃん。近衛の人たちにうまく伝わったみたいだよー。今から大急ぎで助けに向かうみたい。』


 そうか。ヘル、それじゃあそれまで頼むな。

 俺たちはこの街で待機しているからなんか有ったら教えてくれ。


『はあ。なんだか慌てて来たのがバカみたいですね。

 なにかあったら連絡します。』


 こうして俺たちはしばらくこの街で時間を潰すことになった。

 喜んでいたのは三バカくらいだったけど。


  + + + + +


 あれから一週間が過ぎた。

 近衛の人たちももうすぐこの街まで到達するところまで来たらしい。

 明後日には境界の街に着くだろう。

 そうしたらやっと俺たちの旅も再開だ。

 三バカは今日も元気に魔獣狩りだろう。

 毎日とれた魔石を持ってくるがそろそろこの街の近くには魔獣がいなくなってきておりもう少し遠出するかと言っていた。


 そんな時に事態が動き出したようだ。

 近衛の人たちが強行軍で境界の街まで向かっているということはその準備に領主に支援要請が出ているだろうからここらの領主で黒幕っぽい人にも伝わったのだろう。

 なので境界の街では近衛が来る前にどうしても見つけようと王女の捜索が一段と激しくなっていたようだ。


 王女の働いている宿屋にも何回も人が来て宿泊客の確認をしていた。

 そしてついに王女の顔を知っている奴が宿屋に来たらしい。

 宿泊客の中に王女らしきものがいないのを確認したそいつはふと従業員の女性に目を向けるとびっくりした顔をして声を上げそうになっていたが無理やり我慢した様子でそそくさと宿を出て行った。

 そして路地に入り込むと大喜びで叫びながら猛スピードで走っていった。

 たぶん褒美がたんまりと出るんだろう。


 ヘルは王女が見つかったと分かってすぐに宿屋に駆け込み宿泊客と女亭主を外に連れ出した。

 王女も一緒に逃げるように言ったが言うことを聞かずここに残ると言い張った。

 頑として動かない王女は放っておいてヘルは一応バリケードっぽい物を入り口の前に作っておいた。

 こうしておけばいきなり突入を仕掛けてはこないだろう。

 取り敢えずの時間稼ぎだ。

 程なくして良からぬ事しかしてないよと言うような奴らが大挙してやって来て宿屋を包囲した。


 さてこれからどうするどうなる?

 現場と離れて画面で見ていると良い映画のクライマックスを見ているような感じでポップコーンとジュースが欲しくなってきた。

 ワクワクドキドキが止まらないぜ!





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