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マセキ・コントローール!  ~せっかく異世界に転生したのになんか捻くれた性格に育っちゃったみたいです~  作者: さんご
第三転生期編  第三章  魔石武器の物語

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03-03-03 魔石武器の料理と行き先変更

 旅立ちの朝は良い天気だった。

 まあ悪ければ普通延期するよね。

 久々に馬車の手綱を握るとなんか新鮮な感じがするね。

 まあディスメイタルことディスが優秀で特に操作はしてないけども。


 三人組は今のところ大人しく付いて来ているがまたそのうち退屈になってなにか文句でも言ってくるだろう。

 それまではこの静寂の有難さを感じておきますかね。

 馬車をゆっくりと進ませながらそんな事を思っていた。


 ヘルは体を得てからは初めての旅なので今まで見てはいたが興味があっても触れられなかった物全てに関心をもって近づき触っていた。

 手には触覚センサーらしきものまで付加されているようで手触りを感じて歓喜していた。

 どんだけ高性能な機体なんだよ。

 これじゃあヘルツーにも同じような機体を上げたいが他には無さそうな感じで無理っぽいかな。


 ちょっと残念な気持ちになりながらヘルを見ているとこっちに振り返って手を振ってきた。

 お返しにこっちも手を振るとヘルが馬車のパトランプを通じて警告してきた。


「皆さん。魔獣が数頭接近して来ています。こちらで対処しますか? 」


「ヘルさん! 俺たちにやらせてくれ! 方角はどっちだ?! 」


「馬車の左方向に二頭です。動きが速いです。あと数秒で接敵します。……来ました! 」


「イヤッハーーッ! お前の血は何色だーーっ! 」


「ちょっとリーナ! 私が一発撃ってから突っ込んでよ! 危なくてもう撃てないじゃない! 」


「俺が左の奴担当か! サーラ! 魔獣が俺たちを抜けた時に備えてくれ! 」


 やれやれ、もっと連携や約束事を事前に決めておけよ。

 気を付けないと今に同士討ちとかするぞ。

 三バカの行動にあきれつつ俺は魔獣が出ても怯えないディスをこいつ自分でもやる気なのかと疑いながら馬車を進めた。


  + + + + +


 そんな感じで街道を進んでもう何日か過ぎた。

 今は街道沿いにあった飯屋の店外のテーブルで昼飯を食べた後で一服をしているところだ。

 一服と言ってもタバコを吸うってわけじゃなくただのお茶を飲んでの休憩だ。

 そろそろ行こうかねぇと立ち上がりかけた時街道を勢いよく走り抜けていく騎馬が二頭現れた。


 向かって来たのは俺達が行こうとしている方角で目的地は王都の方角だ。

 騎馬をよく見ると軍隊らしき服装の伝令兵のようで顔が強張っているのが遠目でも分かった。


 うわー。やだなあもう。

 これ俺たちが向かっている方向で絶対国絡みの事件かなんかが起こっているよね。

 最悪戦争が起きたのかもしれん。

 そりゃ世界の動きを確かめたくて俺はこの旅を計画したんだけれども好き好んで戦争のど真ん中に突っ込みたい訳じゃない。


 そんな危ない事は死んでもやりたくない。

 異世界転生して俺tueeee!! がやれたらそりゃ良かったんだろうがこの世界ではそこまで人の革新は進んでいなかった。

 精々が他の人の二倍のパワーが出せれば良い方で魔法もらしき物は有っても杖などがなければ絶対に使えない。

 人間一人にできる事はどうやってもやっぱり変わらないんだよ。


 俺は魔石操作のスキルを得たが俺よりも前にそれを持っていたパンロックの奴が一生を賭けても世界をどうこう出来なかった事を知って身の程をわきまえた。

 だから俺は自身の強さを求めなかったし魔石操作で有名になることも避けた。

 二度目の人生だからとはっちゃけて早死になんてしたら転生した意味がどこに有るっていうんだ。


 俺がここに存在する意味は本当に世界を変革することなのか?

 違うだろ!

 俺が好きなように生き大好きな家族に囲まれて幸せに暮らすことこそが一番大切な事だ。

 だからもしそれを壊すという奴らが現れれば俺は全力で抗うだろう。


 だが今はその時ではないしその必要もないしそんな力も無いただの若造だ。

 もう少し大人になっていたら違っていたかもしれんね。

 ちょっと熱く語ってしまったがつまり簡単に言うととっととここから逃げようってことだ。


 俺はまだ椅子に座っている皆を見回してから言った。


「なんか南の方は危ないみたいなんで行き先を変えよう。どっちにする? 」


「オイオイ、なんで行き先を変えるんだ? 今のままで良いんじゃないか? なあ皆。」


「うーん、そうねえ。なんだかきな臭くは私の勘でも感じるのよねえ。できたら近づきたくは無いわね。」


「ロッくん。なんで南は危ないの? なんか有ったの? 」


「うーん。なんか有ったという確信は無いが有りそうだという確信はあるな。ヘルの方では何か情報を掴んでないか? 」


「はい。今本部に確認しています。……来ました。

 なんだかうちの国の民間の商船がどこかの船団に襲われたらしいですね。

 その商船にだれか国の重鎮でも乗っていたのか身代金の要求が有ったらしいです。

 要求額は分からないですね。

 捕まったのが誰かも不明です。

 港町は今封鎖状態らしいです。」


「ほらな。今行っても街にさえ入れんぞ。

 解決にどれだけ時間がかかるか分らんし街に入れるのかどうかだって同じだろう。

 やっぱり行き先を変えるのが無難だな。

 ヘル。ここから方向を変えるとしたらどうしたらいいと思う? テーブルに地図も出してくれ。」


「クソ。陸地で起きたことならいくらでも対処できると思うんだが海の上じゃな。仕方ないか。」


「はい。地図を出します。」


 ガッシュがまだなんか言っていたが無視してヘルに地図を外部映写機でテーブルの上に映し出してもらうと皆で顔を寄せ合ってそれを見る。

 現在地をヘルに示して貰うと結構港町に近づいていたみたいだ。

 街の封鎖がなければ一度行ってみても良かったかもしれんが入れないんじゃ仕方ない。

 それより行ってから入れないとわかるよりよっぽど良かったと思おう。


 地図を見るとここから他の大きな街へ行くにはやっぱり街道を結構戻らないといけないみたいだ。

 うーん。ここは結構考えどころだぞ。

 もし街道を引き返して他の街に向かうとしたら他の街に着いた時にはこの騒動が終わっている可能性が高いんじゃないか?

 だとしたら俺たちは無駄に時間をかけて歩いただけって感じになるだろう。

 だけど港町に行っても入れないんじゃ宿にも泊まれないだろうしこの辺ではもう宿屋は一杯だろう。


 後は街道間を結ぶ細い間道だが俺たちは今までそんな道を通ったことがない。

 理由は誰も料理が出来ず飯をまともに作れないから野営した時に非常に困るからだ。

 だから飯屋が点在する主街道を旅しているんだ。

 そうでなければ魔獣の遭遇頻度が低い主街道なんか通るもんか。

 今までの旅を思うとなんの武者修行だよって感じだった。


 俺はなんで誰も料理が作れないんだよと皆の顔を一人ずつ見ていくとヘルの顔で目が留まった。いや顔は無いんだけども。

 俺はヘルにすがる思いで聞いてみた。


「なあヘル。お前料理は出来ないのか? 」


「えっ、料理ですか?

 今まで考えたことも無かったですがいつかはやってみたいですね。

 えっ、もしかして今ですか?!

 まあレシピは総合ネットワークから引っ張ってこれますから出来ないことは無いとは思うんですが私は味見が出来ませんよ? それでも大丈夫でしょうか? 」


「いや。多分その方が料理には向いていると思う。

 料理はちゃんとしたレシピがあるのならその通りに作った方が美味く出来るらしい。

 変に気を使って余計な味を追加する方が不味くなるのが定番だ。

 料理は科学だという言葉もあるくらいだ。いや化学だったかな。まあこの際どっちでも良い。

 とにかく重要なのはこの中で一番料理に向いているのはヘルだってことだ。

 試しになんか簡単なものを作ってみてくれないか。

 話はそれからだ。」


「はあ、分かりました。頑張ります。」


  + + + + +


 飯屋に料理の材料を売って貰って馬車留めの近くで簡単なかまどを作り大事にしまっておいた鍋などの料理道具を床下収納から出してヘルに料理を作って貰った。

 材料を切ったりは俺たちも手伝えるのでヘルには基本の朝食を作って貰った。


 肉などを焼くのにフライパンを使ったが温度センサーの機能があるヘルは焦がす様子は見られない。

 煮物も材料に火が通ったかが同じように大体わかるので生ってことはなさそうだ。

 どうやらレシピ通りやればそれなりに出来そうだと分かった。

 味も見たがそんなに変と言う訳でもなく個人の好みの範囲だろう。


 これで今後街道を外れて間道も使えるようになった。

 ヘルも料理美味しいよって言ったらもっと頑張ると張り切っていた。

 今までは魔獣を倒しても肉は確保していなかったがその日に使う分ぐらいは取っておいても良いだろう。

 事によっては干し肉などの保存食が作れるかもしれない。

 旅の醍醐味の夢が広がるねぇ。


 俺たちの旅の不安材料が一気に解決したので食料を買いに近くの村によって確保した。

 明日からは間道を通って別の街に向かって出発だ。

 村のそばで野営をしたがヘルの料理は結構美味かった。

 それよりも食器や調味料などがちょっと足りないようだ。

 早急にどこかの街で手に入れたい。

 俺の美食探求の旅はまだ始まったばかりだ!


  + + + + +


 村のそばに置いた馬車の中に女性陣を寝かせ俺とガッシュとヘルで火の番をしながら寝る。

 ヘルが体を得てからの旅の負担は格段に軽くなった。

 その一つが誰かが起きてなくていいということだ。

 これまでは魔獣が襲って来た時のために体を動かせるものが一人は必要だったからだ。

 襲って来た魔獣はこれまでもヘルが倒してきたが倒した魔獣がそのままではまた他の魔獣が寄って来てしまう。

 それを一か所にまとめておいて魔獣の嫌がる匂いの薬を撒いておくのにどうしても人手が必要だったのだが起きているのがヘル一人でよくなった。


 ヘルが倒しヘルが片付ける。

 ヘルに丸投げだが熟睡には代えられない。

 頑張って貰うしかない。

 たまに夜更かししてヘルたち姉妹と話したりもするが基本皆で熟睡である。

 こんな野営は野営とは言えないかもしれないがこれが俺たちの野営だとしか言えんな。


 前に寝てる途中でちょっと目を覚ました時ヘルが小さな音で子守唄を歌っていたような気がするがその所為かまた直ぐ寝てしまったので定かではない。

 ヘルも野営を楽しんでくれていればいいのだがそんなことは図々しくて聞けていない。


  + + + + +


 朝になりヘルの用意してくれた朝食をとったら元気よく出発だ!

 さあ次の街はどんなところだろう?

 すごく楽しみだ。





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