03-03-02 魔石武器のお披露目会と三人組
カネカネ団は本当の意味で素寒貧だったらしくそこらのガキんちょの小遣いよりも手持ちが少なかった。
おい、そんなになるまでプレゼントに金を掛けるなよ。
普通は余った金で準備するもんだろ。バカかお前らは。
まあ贈られた物はそれだけ良い物だったみたいで文句の付けようがない状態で非常に満足はしているが。
でも結局自分で買ったようなもんだしなあ。
考えようによっては自分では小物にここまで思いきった買い物はしなかっただろうから一応は感謝しておくか。
でもなんかこうこれって定番化してないか?
三バカがなんかしてその付けが俺に回って来てそれをどうにか解決しても三バカはあまり反省もせずまた同じような事を繰り返すという。
ここに書いてないことでもままありそんなに吹聴していないがこれに似たことはすでに何回も起こしている。
なんか未来が見える気がする。
ガッシュとリーナは道場を起こしているが資金は全部俺に丸投げで奴らはただ暴れまわるだけ。
サーラは私失敗しないのでって感じで医者の仕事に突き進んで裏方や金勘定は全部俺に丸投げでこっちも暴れまわるだけ。
俺は皆に振り回されていつも疲れた顔をしている。
嫌だ! こんな未来は見たくもない!
もうこんな奴らとは金輪際縁を切って別々の人生を歩む時かもしれない。
そんな事を考え始めた時ヘルが話しかけて来た。
「マスター。このホルスターを新人君に使ってあげてください。私とツーからのプレゼントです。これのお金もついでだからと三人から出して貰いました。後でお礼を言っておいてくださいね。お願いします。」
「お願いしまーす! 」
はぁ。
こういうことをされるから今までも三人を切れてこれなかったんだよな。
直ぐ同情して流されるのが俺の悪いところだとは分かっているのだがなかなか治らん。
ヘルがいつも上手くフォローするのも原因だよな。
まだまだこんな関係が続いていくのかね。
俺は今日何度目かのため息を吐き出して空を仰いだ。
+ + + + +
街の近くに出る魔獣の数が減ってきたのでここらでの魔石確保の効率が下がってきている。
なのでそろそろ旅の続きに出ようかと話し始めたのだが俺の武装のお披露目をまだしてないってことで俺も魔獣狩りに行くことになった。
やだなぁ。なんか変な事とか起きないよね?
嫌々ながらも一応試射は必要だからと街の外に出てきたが思ったより魔獣が襲ってこない。
えっ、こんなに減るまでこいつらが狩ったのかとちょっと驚いたが減ったのは近場だけで森の奥や岩場にはまだ結構いるらしい。
餌の供給源が無くなったのでこれからは魔獣の数はそう増えないだろうし三人組が総数を減らしたのでばらけてうまく分布してくれるのを祈ろう。
俺の武器の試射には広い場所か魔獣が遠くにいるのが確認できる場所が好ましい。
そのため岩場が視認できる平地にやってきた。
ちょっと遠くに例のエサ場があった山肌が見える。
あそこにはエサで大きくなった魔獣がまだ多くいるらしいので直ぐに試射するのにちょうどいいのが出てくるだろう。
俺は背中に斜めに担いできたレーザー銃を下し準備に取り掛かる。
俺が作ったこのレーザー銃の外観は角ばってはいるが昔のウィンチェスターライフル銃を少し大型化したような感じだと思ってもらえば分かりやすいと思う。
銃身が縦に二本並んだような感じで上の方が銃身で下の方がカメラなどの機能に特化された部分だ。
長さは結構長く重さもそれなりに重い。
これは構えた時に銃身がふらつくのをおさえる為にわざとそうしている。
この銃は主に遠距離射撃使用を念頭に作ってある。
もちろん近場でもシュワちゃんがよく使っていた手持ちのガトリングガンのように銃弾をばら撒くような使い方も出来る。ところでシュワちゃんって誰?
まあいい。
外観の続きだが角ばった銃身の後ろにストック状の肩当が付き銃身とストックの接合部分にトリガーなどの部分が付いている。
道具屋に頼んでいた部分は主に外観にあたるところで銃身を覆っている場所はもし剣で切りかかられても中の魔石構造体に影響が出ないようにヘルが設計している。
見た感じでっぱりなどもなくすっきりした未来的な様子だ。
銃口を隠していたカバーを取り外し実際はいらないが一応付けてある射撃方法の選択レバーを遠射に切り替える。
この銃は基本構造が魔石の複合体で作られているので魔石操作のスキルを持っている俺は直接魔石に命令すればいいので本当は外部の操作などは必要ないのだが今は試射なので外部入力装置を試しに使っている。
この銃が道具屋から帰ってきてからヘルツーには色々注文して銃の初期化をしてもらった。
それが外部入力による銃の操作だ。
まあ普通の銃のように他の人にも使えるようにしておこうと思ったからだ。
俺にしか使えないようにするのがいいかとも思ったがこの銃は性能も良いので仲間も使えたほうが汎用性が広がるかと考えた。
選択レバーを遠射に切り替えると目の前に半透明の四角い画面の枠だけがAR表示で浮き上がる。
そこにはまだ何も映ってはいないが片膝立ちの射撃姿勢を取り岩場に向かって銃を構えてトリガーに指を触れさせると同時に画面の枠内に銃口の向いた先が望遠カメラで撮られたように拡大されて映し出された。
指をトリガーから離すと画面の映像は消えまた半透明の枠だけに戻る。
それを数回繰り返し反応速度に満足したら次は指をトリガーに触れさせて画面を表示させたまま銃の向きをあちこちに変えてみる。
画面に映っている映像もそれにつれて移動するが移動してすぐはピントが合わないのか画面がぼやけて見えその後はっきり見えるようになる。
ヘルツーにこれはどうにかならないのかと聞くと使っているとそのうちに学習して変化の予想を立てて少しは早くなるようだ。
機能的にこれはしょうがないとのことなのでここは我慢しよう。
画面の表示には岩場の一場面が映っているが画面の上下左右に薄い赤色の矢印が出ている。
その矢印の色が濃くなっている方に銃をゆっくりと向けると魔獣がいた。
その魔獣の体を背景と分けるように赤い枠線が覆っており一目でここにいますよと分かるようになっている。
これで分からないようだと相手にならん。
画面中央の照準の十字模様を合わせるまでもなくレーザーの当たる場所には赤い光点が点滅している。
これは実際に威力のないレーザーがすでに照射されていてここに当たりますよと教えてくれている。
相手側にも何かされていると気が付かれる恐れはあるが魔獣相手なら問題は無い。
画面に見える魔獣の体に光点を当てトリガーを引くとカチリとした感触がありレーザーが発射された。
画面内ではうろついていた魔獣がビクッと反応して当たった個所を振り返って見たが次の瞬間にはどうっとその場で倒れていた。
何体か倒したが皆何が起きたのか分からないまま死んでいったようだ。
無駄に苦痛を与えない魔獣に優しい殺りく兵器だな。
俺は銃の出来に非常に満足したので皆に振り返って自慢しようとした。
皆はヘルの体に装備されていた外部映写機で表示された画像で魔獣が倒されるところを見ていたようでなんだかシンとしている。
オイオイ、なんとか言ったらどうだ?
俺のやり方になんか文句でもあるのか?
俺が黙って皆を見ているとヘルが説明してきた。
皆はその銃の威力に驚いているだけだと。
はるか彼方にいる魔獣を楽々と倒せる武器をそんなに苦も無く作り出せる俺にちまちまと魔獣と戦うことしか出来ない自分たちが釣り合うのかと。
はあ。あきれたね。
そんなことは前から分かってただろうが。
なにが釣り合うだこのばかちんがー!
そんなのは適材適所なんだよ!
人にはそれぞれ出来る事と出来ない事があるんだよ!
俺はそのちまちましたのがやりたくないからこんなのを作ってるんだよ!
お前たちはそれがやりたくてこの旅に着いて来たんじゃねーのかよ!
自分のやりたいことをこの旅の途中で好きにやりなよ!
俺は思ったことを三人に素直にぶちまけた。
三人は俺の言葉を聞いてしばらく黙っていたが気を取り直したのか軽~く謝ってきた。おい、軽くかよ!
まあいい。
その後は三人にも銃の基本的な使い方を教えて実際に撃たせてみた。
今は危険なのでリミッターを掛けてあって人に対しては発射できないようにしている。
AR表示した画面は普通の人には見られないので眼鏡のように魔石を加工してレンズにあたる部分をスクリーンとして見られるようにした。
子供でも分かる仕様になっているので三人もバカスカ撃って魔獣を倒していた。
おい良いのかよ。後で倒した魔獣の魔石は取りに行くつもりなんだぞ。
自分で責任持って倒した魔獣の魔石は全部取れよ。
そんな感じで俺のレーザーライフル銃のお披露目は終わった。
そしてやっぱり奴らは魔石採取にひーひー言ってたのは言うまでもない。
加減を考えろよなぁ。ホントにもう。
+ + + + +
そろそろ旅を再開するという事で領主のシアターさんにも別れの挨拶をして旅の準備を進める。
馬車もしばらく使ってなかったので点検しておいた。
馬車の屋根にパトランプのように魔石の宝玉もセットする。
でもまあ実際にはヘルの方が性能が良いので保険のようなものだ。
ヘルツーにも念のためにこれの操作が出来るようになってもらった。
馬さんのディスメイタル事通称ディスは宿屋の厩舎に預けられていたのだがそっちの方が俺たちの世話よりもよっぽど居心地が良かったのか最初は行くのを嫌がったが旅先で良い嫁さんがいるかもよと冗談で言ったら急に素直になった。
おい、本当に言葉が分かってるんじゃないよな? ……怪しい。
簡単な保存食っぽい物を少し準備して旅の準備は終了した。
明日にはまた旅の空だ。
柔らかなベッドに寝られるのも今日までなので最後の夜はぐっすり寝たい。
もう誰も起こすなよ。ホントに。すや~。




