03-03-01 魔石武器達と三人組
数日間大人しくしていた奴らはまたぞろ悪だくみをし始めたみたいだ。
今度は何をやらかすつもりだと思っていたら俺の武装完成記念に何かしてくれるようだ。ホントかよ?
またいい気にさせといてそこから落とすとかいうんじゃないだろうな?
あっ、分かった! あれだよ。試射会に行こうと誘って来て結局自分たちだけが楽しむとかそういう落ちだよ。
前にもそんな事が有ったなぁ。
あれは確かなんかの事でケンカしてサーラが仲立ちして仲直りするっていう事だったと思うんだけどそれが何故か途中から更にむきになって競い合って余計にこじれたってのが。
最近はどちらも大人になったのかそんな事は滅多に起きてないがそれは取りも直さず俺の方が引いているからなんだけど分かってるのかね?
まあいい。
奴らの事は放っておいて俺の武装の事だ。
俺の武装のレーザー銃が今日にも出来上がるはずだ。
ちょっと前にヘルが独り立ちしてしまってから俺の戦闘力がたったの五のゴミになって久しい。
その為誰でもできる戦闘力アップ法の雑誌の裏の広告に頼りムキムキのマッチョになろうかとも思ったがこの世界にそんなのは無かった。
しょうがなく自分で楽々武器錬成をする事になったがレーザー銃の機関部は魔石操作のスキルを使って自分で作ることは出来ても持ち手や握りの部分や一応他人にも使えるように取り付けるトリガーなどの細かい部品は職人に頼るしかない。
部品の設計や製図などはヘルプのヘルさんにやって貰えるので全然困らないがそれを現実に形にするのが非常に面倒だ。
俺も機関部の整作にもちろん図面が必要だったからそれを用意してもらったんだが異様にこだわって設計されているので細かい指示を何度も受けて作り上げた。
そこまでこだわるかと言うくらいなんだが出来てみるとやっぱりこうでないとなと言う出来上がりでとても感心したもんだ。
これが魔石だけで作れる宝玉とかならそれこそ俺の好きな形にできるのだがなぁ。
まあもう俺の出来ることは終わっているので後は寝てまての精神で寝ていたら例の奴らがやらかした事件が起きて一日歩き詰めだ。もう嫌になるね。
でも自分がそうなるように仕向けたのでしょうがなく後始末を付けたんだが思っていたより奴らには効いたようでしばらくは素直になっていた。
いつもこうであったのなら良いんだがこいつらの根幹ははっちゃける事と決まっているのでもう諦めている。
事件の後も奴らは近場で魔獣狩りを楽しんでいたらしい。
ここの魔獣も段々減って行くだろうし今のうちに美味しい所を貰っておくと言うつもりなんだそうだ。
俺も寝て待ってるとまた奴らがなんかした時に出遅れると不味いのでのんびりだけどなんかする事にした。
そこで今作って貰っている大型の装備ではなく中型もしくは小型の物を考えてみた。
大きなのは移動時は肩や背に吊るようにするつもりなので小さいのはホルスターのようなもので腰にでも装備しておいて狭い場所でなどで威力を発揮するという使い方かな。
こいつはもう他の人には使わせるつもりは無いのでヘルツーちゃんのように全体を魔石で作る事にした。
求めているのは片手で持て人からは武器に見える外見でレーザーが撃てることくらいだ。
後はヘルツーちゃんとは腰の反対側に着けてヘルツーちゃんの視界の補助だな。
ホルスターに仕舞った時にそこから出っ張る拳銃で言うと握り部分のマガジン部の底の所に外部監視用のカメラ機能を付けておけばいいだろう。
大きさもそこまで大きなものではなく軽くして置いた。
あまり重いと俺が疲れちゃうからね。俺に優しく。
後はこれに合ったホルスターを作ってもらえばいいだけだがないならないで腰のベルトにでも取り敢えず挟んでおけばいいだろう。
小さいとこういう事も出来る。
小型拳銃型レーザー銃の名前を考えているとヘルが話しかけてきた。
「マスター。なんだかその小さい奴がことのほかお気に入りのようですね。羨ましいです。」
「はあ? お前こんなのに嫉妬してるの?
こいつは別にヘルツーみたいにAIとかが載っている訳じゃなくてただの武器なだけだぞ。
まあすっぽりと手に収まる感じがいいんで手慰みに弄っているだけだしな。
それ以上でもそれ以下でもない。」
「それでもです。
今の私は自分から進んで鎧を着こんでしまっているのでもう滅多に触っては貰えないでしょうし。」
「そういうもんか? 」
「そういうもんです。」
「そういうもんだよー。」
「おう、ヘルツーもか。ってヘルツーは結構触ってるだろ? 」
「それが最近その新入りの所為で全然触って貰えてないよっ、お兄ちゃん! もっと可愛がってよ! 」
「可愛がれって言ったって刃物なんだからそうそう抜く事も出来ないし下手に触ったらケガするだろ。」
「ウフフン。下手に触ったらケガするなんて大人の女っぽくていいね! 」
「いやそれは火傷だろ。ケガするなんてそれこそ尖ったナイフとかの事じゃないか。いや短剣だからそれで良いのか。」
なんて馬鹿なやり取りをして時間を潰していた。
+ + + + +
そうこうしているうちに昼飯も食べ終わったのでそろそろ武器をもらいに行こうかね。
他の皆はまた魔獣狩りにでも行ってるのか不在だったのでヘル姉妹と一緒に道具屋へGOだ。
ヘルと二人で歩くというのも随分慣れてきたな。
最初はいつも持っていた杖がないので随分と頼りない感じがしてついヘルの手を取ってしまいそうになったもんだがもしそうしたら鎧姿の女性に縋り付く若者って感じで情けないことこの上ない。
何とか踏みとどまってそうしなかった俺を誉めてやりたいくらいだ。
そんなアホな事を考えているうちに道具屋に到着だ。
さあ俺の最強武器はかっこよくできたかな。
店に入ると品物の受け取りカウンターっぽい所に向かった。
すると何故か三バカの奴らが顔を揃えていた。
なんだ? こいつらも何か注文でもしていたのか?
この場所に不似合いな顔を見てちょっと不審に思っているとガッシュが話しかけてきた。
「オイオイ、ロックさんよ。来るのが遅いじゃないか。
もっと早く来るのかと思って昼前から待ってたから昼抜きになったぞ。」
「はあ? いや別にお前らとは待ち合わせとか特にしてないだろ? そうだよなヘル? 」
「そうですね。特にはしていませんね。」
「ああいや、別に責めている訳じゃない。単なる現状報告だよ。それよりほら、待望の物を早く受け取りなよ。」
「はぁ、まあいい。
すいません、ハーロックと言うものですが注文していたものを受け取りに来ました。
もう出来てますか? 」
「おう、出来てるぞ。
こっちの兄ちゃんたちがもう既に確認していたから直ぐに受け取りに来るのかと待ってたが思ったよりゆっくりなんで驚いてるよ。あははは。」
「ぷふっ。すいません。長い事大勢でお邪魔しちゃって。
もうホントにバカなもんですから。
おい、一緒に受け取って祝ってくれようとしたんだろ? 有難うな。」
「おう、まあな。でもそれだけじゃないぞ。
まずは出来たものを確認しなくていいのか? 」
「うん? もちろん確認するけれども。なに? なんかあるの? 」
「さあな。」
そんな事を言って照れる三人組を見てやっぱりなんかあるのかと確信した。
三人組が待っていたのでもしやとは思っていたがさてどんなビックリ仰天が待っているのやら。
ヘルの方を見ると小さく頷いている。
こいつもなんか知っていたな。
そりゃそうか。作った武器の事を詳しく知らなければそれに合ったプレゼントは出来ないだろう。
大きな期待をするとショボかった時にガッカリ感が凄いのでそんなに期待せずに店員がカウンターに載せてきた木箱を開けると俺が思っていた通りの武器が姿を現した。
しかし銃身の先端を隠すカバーや吊りバンドなどの付属品が付いている。
俺はこんなものを注文してはいないし店員もサービスしてくれるとは聞いていない。
ハハ~ン。これだなと当たりを付けてちょっと突いてみた。
「あれっ? こんなもの頼んでませんよね。余計なものにお金は出せませんよ。」
「ははは。そりゃそうだ。
その代金は別に貰ってあるから大丈夫だよ。なあ兄ちゃんたち。」
そう言って店員がガッシュたちに話を向けると三人が一斉に頭を下げてきた。
うおっ! びっくりした。
これまで皆が俺に謝ってきたことはあったがここまで真剣に謝ってきたことは無かった。
そんなにも反省したのか? なら俺もこいつらへの当たりを緩めてやるか。
でもまだ完全には気を抜かないぞ。
「すまん。ロック。
今回の事は俺がうまく皆をまとめられなかった事が原因だ。
深く反省している。
だからという訳じゃないが今までのお礼も兼ねて武器完成の記念品を皆でお金を出し合って送る事にした。
良ければ使ってくれ。」
「ごめんね、ロッくん。今までありがとね。
そしてこれからももっと迷惑をかけてしまうかもしれないけど変わらずに宜しくね。
そのカバーは私が考えたんだよ。」
「私は仲間になってまだ日が浅いけど皆のように信頼し合えるような関係になりたいと思っているわ。
今回の事を教訓にして頑張るから見捨てないでね。
あなたたちとはそのバンドのようにしっかりとした絆を結びたいわ。」
「マスター。彼らも真剣に反省しているようですのでもう意地悪は止めてあげたらどうですか? 私からも謝りますので。」
そう言ってヘルも頭を下げてきた。
ここまでされて許さないとかどんな冷血漢だよって感じを醸成されたら許さない訳にもゆくまい。
クソ。全部ヘルの入れ知恵だなこれは。
数日前までにはこいつらにはただ謝ればいいやと言う感じしかなかったからな。
俺は長ーい溜息を吐くと謝罪を受け入れた。
これからは気をつけろよと付け加えて。
だがこいつらは依然として頭を下げ続けている。
俺がもういいよと言っても頭を上げない。
そこで俺はハッと気づいた。
こいつらまさか又なんかやっちまったのか?
ジトーッとした目で奴らを見た後ヘルを見たがヘルは分かってないらしく首を傾げていた。
こいつら三人はホントに目を離すと碌な事をしないな。
ごほんと咳を一つ入れて聞いてみた。
「で、なんなの? 」
「すまん! 金を貸してくれ!
もうほとんど残ってないんだ!
今回の事で全部使ってしまった!
石碑を売った金があるんだろ?
ハーロック銀行様お願いします! 」
「「お願いします! 」」
三人の殊勝な行いに感心していた俺のこの気持ちを返してくれ。
そしてやっぱり俺の思った通りに上げて落としてきたな。定番さまいつもご苦労様です。




