03-02-07 旅の皆と妹召喚
妹ちゃんの召喚に時間がかかるというので手持ち無沙汰にして待っている。
ヘルに完了時間をAR表示して貰っているがその完了時間が増えたり減ったりしている。これも昔から変わってないねぇ。
まだまだ時間がかかりそうだがヘルは移植するために剣型宝玉から離れられないし俺も大して行くところがないしでぼうっとしている。
ちょっとうつらうつらしてきた。
今日も色々あって疲れていたのか瞼が落ちてきた。
皆さんさようなら。また逢う日まで。すや~。
~ ~ ~ ~ ~
ヘルさんの体が手に入ったとロックが言うので興味深く見守っていたらヘルさんに抱き着かれたロックがアホな事を言ってきた。
こいつは昔から朴念仁の毛があったがここまでだとは思わなかった。
人の愛する気持ちというのが分からんのか。
だからサーラにも今だにぞんざいな扱いをしているのか。
こいつの事は結構気に入ってるがここだけは我慢ならん。
一言文句でも言ってやろうと意気込んだが俺よりも女性陣の鼻息の方が荒い。
俺の出る幕などまるで存在しない。
ちょっと口を挟もうと思ったがそれも出来そうにない。
俺は黙ってロックを見ているしか出来なかった。
しばらくして女性陣も言いたいことを言って満足したのか落ち着いたようで今度はヘルさんの強さを確かめに外へ行くみたいだ。
俺たちも当然ついていく。
魔獣狩りは全然飽きないぜ!
外に出たらヘルさんはもう縦横無尽に駆け抜けて魔獣を次から次へとバンバン倒していく。
こりゃこの辺の魔獣が全滅しかねんぞと思っていたらもう満足したといってあとは俺たちに譲ってくれた。
この辺の気遣いが絶妙なんだよな。他の人には真似できない。
続けて俺たちが魔獣狩りを堪能しているとロックの奴が何やら手持ち無沙汰にしている。
そこでやっと気が付いたがロックの奴は今大した攻撃力を持っていない。
今までヘルさんの杖を頼りにしてきたのだから当然だ。
なにか声をかけようとしたが先に街に帰るといってきた。
ヘルさんも護衛として一緒に帰るというので気をつけろと言って見送った。
ロックの奴はヘルさんの杖を失ってこれからどうやって戦っていくのだろうか。
そんな事を考えていると次の魔獣が襲ってきた。
~ ~ ~ ~ ~
ロッくんはホントにろくでなしだね。ろくでなしロッくんだね。
ヘルさんにいつもつらく当たってて今日も体を得たヘルさんに対して変な意地悪を言ってきた。
もうなんでそんな風になっちゃったの?
昔はもっと周りの人皆に優しかったのにどこからそんな風になってしまったのかと思う。
変な意味の分からない言葉を言うしこっちをなんか見下しているような感じもする。
ヘルさんが来てから変わったのかな。
ヘルさんは最初は杖の宝玉の中にいる精霊のような存在だとロッくんが言ってたけど最近はなんか普通の女の人のように感じることが多い。
それが体が出来て余計にそう感じられる。
ロッくんはヘルさんの事が好きなの?
ヘルさんの体を得るのに大金をポンと差し出してなんとも感じてない様子だし。
私になんか碌なプレゼントもくれないくせに。
街の外に出てヘルさんが魔獣を倒しているのを見ていたらロッくんの様子がおかしい。
一人で街に帰るといってヘルさんが心配して一緒に帰って行った。
急にどうしたのかな。
心配しているとまた魔獣が襲ってきた。
ホントここは魔獣が多いところだよね。
でも魔獣をたくさん倒して魔石をたくさん持って帰ったらロッくんは喜んでくれるかな。
~ ~ ~ ~ ~
最近仲間になった私でも今の言葉は捨て置けないわ。
昔からの気の置けない仲間だからこそ大事にしなくてはならない事があると思うの。
私たちが文句を言ってると彼は意味が分からないと首をかしげている。
こっちの方が首を傾げたいわよ。
なんでこいつと一緒に旅に出てしまったんだろう。
色々あるが結局はこいつが私に対して色目を使ってこなかったというのが大きかったんだと思う。
今まで王都にいて男性に声をかけられなかった日はなくいやらしい目で見てくる奴もたくさんいた。
なので最初に会った時にびっくりしていたくらいで後はそんなに気にしていないような感じだったから騙されたわ。
そう! こいつは変態よ! 間違いないわ!
私の勘がそう呟いているのよ!
今まで私の勘が外れたことはそんなに多くないわ。
これでも今までこの勘に頼って王都においても何事もなく過ごせていたんだから折り紙付きよ!
さあとっとと白状しなさい!
えっ? 街の外で魔獣狩りをする?
そんなことでは騙されないわよ!
もちろん一緒に行くけれどもそれとこれとは全く関係ないわ。
ええ、全然。早く行きましょう。なにやってるの、もう!
街の外に出てヘルさんの強さをまざまざと見せつけられた。
あの目から迸る光りに貫かれた魔獣は全て即死している。
なんという眼力なのかしら。到底真似などできない。
うちの父さんの眼力も結構すごかったけれどこれと比べると春の日のお日様のようね。
しばらくするとハーロック君は先に帰るようね。
まあ後の事は私たちに全部任せなさい。
悪いようにはしないわ。
さあ次の魔獣はどうやって倒そうかしら。
~ ~ ~ ~ ~
はっと気が付くと俺は寝ていたようだ。
なんだか皆の事を夢で見ていたような気がするがまあ気のせいだろう。
AR表示の方はもう十パーセントを切っているようでもうすぐ妹ちゃんに会えるという事でテンションが上がってきた。
早く終わらないかな。そわそわ。
そんな時に皆が宿屋に帰ってきた。
あれからも結構な数の魔獣を狩ってきたようで魔石をたくさん渡された。
君たちはいつもすごいね。特に魔獣を狩ることに飽きない事がすごいよ。尊敬するね。これからも宜しくね。
そんな風にいい加減なほめ殺しをしていると妹ちゃんのインストールが完了したみたいでヘルが声をかけてきた。
「皆さん、今度私たちと一緒に旅をすることになった私の妹です。
よろしくお願いします。名前はまだありません。
ほら、あなたからもご挨拶しなさい。」
ヘルが短剣型宝玉をささげるように持ちながらそういうとその赤暗い短剣の刃の部分がピカピカと明るい赤色に光りながら言葉を発してきた。
「こんにちは! お兄さん! お姉さん! 今度ヘルお姉ちゃんの後を引き継いでハーロックお兄さんのサポートをすることになりました! 頑張りますのでよろしくお願いします! 」
「「「ええぇ―――――――――――っ?! 」」」
「おう、分かったぞ! じゃあ名前をどうするか。
よし! 君の名前は[ヘルガイルMk-Ⅱ]、通称ヘルツーちゃんだ! 」
「「「ええええぇ――――――――――――っ?! 」」」
「素敵なお名前を付けてくださって有難うございます!
これから一緒に頑張っていきましょう! 」
「おう、よろしくな! 」
「「「ええええええぇ――――――――――――――――っ?! 」」」
そんなこんなでヘルツーちゃんが仲間に加わったのだった。