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マセキ・コントローール!  ~せっかく異世界に転生したのになんか捻くれた性格に育っちゃったみたいです~  作者: さんご
第三転生期編  第二章  旅の物語

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03-02-05 旅の途中の威力確認

 同時に聞こえてきた声にびっくりして訳が分からなくなったのでヘルに聞いてみた。

 おい、どっちのヘルが本物なんだよ?


『どちらも本物ですよ。マスター。』

「どちらも本物ですよ。マスター。」


 うわっ! 頭の中と耳の両方で同時に同じことを言われた。

 何だこれ? さっきよりも違和感がすごい。下手なステレオよりも頭に響いた。

 おい、それはもう止めてくれ。頭がおかしくなりそうだ。


「はい、分かりました。マスター。ちょっと機体の操作に慣れるためにこちらの外部通話用の集音機とスピーカーを使って話しますね。」


「そうか。じゃあこっちも喋るか。それでもう動かす事ができるようになったのか? 出来るならちょっと動いてみてくれ。」


「はい。まだ操作系の完熟が終わってないのでフルパワーは出せませんが日常生活レベルの動作は出来ますよ。どんな動作をしますか? 」


「ヘルが体を持ったら一番最初にしたかった動作で頼むよ。どんな動作がしたかったんだ? 」


 するとヘルはメンテナンス状態の時から椅子に座ったままだった姿勢からゆっくりと立ち上がると両手を広げて俺に近づきそのまま俺を抱きしめた。

 俺は何が起きたのかよく分からずしばらく呆然としていたが動甲冑が動き出したことに気が付いた皆がよってきていてその中のガッシュがヒューッと口笛を吹いたことで意識を取り戻した。


 な、なんだ? ヘルはずっとこんな事がしたいと思っていたのか?

 ごつごつとした金属の手で抱きしめられ冷たい感触の胴体部分に押し付けられてそんなに良い気持ちではない。

 むしろどう対処したら良いのか分からず困惑しかない。

 不審げな顔で動甲冑のどこを見ていいか分からずキョロキョロと辺りを見まわし取り敢えず頭部を見上げるとヘルが話しかけて来た。


「これが一番最初にしたかったんですよ、マスター。」


「そ、そうか。で? これにはどんな意味があるんだ?

 意味がないという訳じゃないんだろ? 」


 俺がそう聞くと周りのやじ馬がブーブー言い出した。特に女性陣が。


「な、なんで? なんで怒っているんだ? ヘルはAIだぞ?

 人間じゃないんだからその反応はおかしいだろ?

 俺だって人間の女の子にもし抱き着かれたらそりゃ好意を持たれているってのはもちろん気づくが相手はヘルなんだぞ?

 もしかして君たちはAIというものを理解できてないんじゃないか?

 ヘルを宝玉に閉じ込められたお姫様か何かだとでも思っているんじゃないか?

 そして念願が遂にかなって自分の本当の体を取り戻したとか思ってるのか? 」


 そこでハッと気が付いた。

 だからこいつらはヘルの事をやけに素直に受け入れられたのか?!


「アホか! お前ら皆ゲーム脳か!

 そんなファンタジーな事が現実にあってたまるか!

 いや、この世界は一見ファンタジーっぽくはあるが本来は未来SF物の世界だろ?

 えっ! そこから説明しないといけないのか?!

 だって超科学の古代遺跡が出てきて総合ネットワークとか管理社会の弊害とか世界が核の暴発とかで一度滅んだとかどう考えても近未来か超未来の話だろ?

 でなければ何も説明がつかんだろ?

 なんだ? そのやれやれといった顔は?

 俺がなんか変なことを言ってるとでもいうのか? 」


 だめだこりゃ。

 こいつらには転生者の言う事が理解できる頭がないようだ。

 それもそうか。

 なんで俺はむきになってこいつらの理解できない話をしていたんだ?

 俺はため息をつきながら今の俺の行動に対してあきれるしかなかった。

 俺の言う事が理解できる奴がヘルぐらいしかいないことに相当ストレスが溜まっていたのか。


 どっと疲れた。

 少し休みたくなった。

 だがまだヘルは俺の事を抱きしめたままだ。


 君もやる事がぶれないねぇ。

 ま、そりゃそうか。

 機械脳がする事がぶれたらその方が怖いわ。


「はい。マスターのために尽くすというヘルの行動理念は昔からぶれません。これからもずっと同じです。」


 はいはい、分かったからそろそろ離してくれよ。


「まだもう少しこのままでお願いします。」


 そうしてしばらくその体制で過ごした。


  + + + + +


 十分ほどそのままでいるとヘルはようやく満足したのか俺の事を抱きしめていた腕を離してくれた。

 所でヘルはなんで俺を抱きしめていたんだ?

 いや、今は言わなくて良い。後でな。


「それで体を動かせるようになったのは分かったが基本的にどんな事が出来るんだ?

 ただ人間のように動けるだけなのか?

 なんか必殺技とか特殊装備とかその機体にはないのか? 」


「そうですね。自分でもどんな事が出来るのか分からないので実際に動かして確かめるしかないですね。

 それじゃあまだ時間はたっぷりとありますので外に出て確認しましょう。さあ、行きますよ、マスター。」


「はぁ、分かったよ。おい、お前らも一緒に行くか? 」


「おう。」


「はい。」


「ついでに魔獣をジャンジャン狩りましょう。」


 俺は三バカと鎧ヘルを引き連れて街の外に向かう。

 戦争でもないのに一見して鎧のフル装備のヘルの勇姿に当然のように視線が集まるが当の本人は意に介さずキョロキョロと周りを見まわしながらガシャガシャと音をさせてどんどん歩いていく。


 この事態をヘルは喜んでいるようだがはたから見るとそんなに良い境遇ではないと思う。

 それはどんな時も鎧姿でいなければならないし人間のように飲食は出来ないし夜に寝る事も必要ない。

 人のように見えるので本当のことを知らない人たちに人扱いされるとその好意をむげに断らざるを得ない。

 それでは本当の意味で世界の人たちとは馴染めないだろう。


 その姿はやはり仮初めの物なのだろう。

 そしてすごく残酷のように思う。

 その事にヘルはもう気が付いているのだろうか。

 それでもこれで良いというのだろうか。

 俺には聞く事が出来ない。そんな勇気はない。

 ただの意気地なしだ。


 街の外へと向かって歩いている集団の最後尾をヘルの凛とした後姿を視界に捉えつつそんな事を考えながら付いて行った。


 街の外にはいまだに魔獣が多くいるようで外に出るという俺たちに止めるように忠告してくれる衛兵のおっちゃんもいたが自己責任だから気にするなといって礼を言って門をくぐった。

 ヘルは機体に乗っていても今までの機能は阻害されるどころかまるで強化されているようだと言っている。


 索敵レーダーは範囲が倍ぐらいに広がっているしソナーも強化されて小型の魔獣の気配もよく分かるみたいだ。

 通信機能も同様に範囲が広がっているしレーザーの出力も上がっているという。

 この機体は宝玉の機能のブースターの役割を担っているようだ。


 早速魔獣を索敵で探し出したヘルは喜び勇んでそちらに駆けていきレーザーの有効範囲に入ったものからバンバンと撃ち殺していた。

 今までは遮蔽物があったりしても俺が有効に動けていなかったのでワンテンポ以上遅れていた射撃が自分で射線を確保できるようになったことで敵即射といった感じで行えている。


 見敵必殺を地で行くヘルに皆は口がふさがらない状態だ。

 魔石の確保が非常にはかどる。というか採取が追いつかない。

 そろそろ皆から不満が噴出するという頃合いでヘルは満足したようであとは皆を援護するといって後ろに下がった。

 この辺は相変わらず抜け目がないな。よく周りが見えている。


 それでこいつのレーザー攻撃の仕方がちょっとカッコイイ。

 敵のいる方に向かいながら走り射程距離に入ったら頭部の目の部分を覆っているバイザーがカシャンと跳ね上がり目からビームを彷彿とさせる光線がピシュンピシュンと発射される。

 ゴン太レーザーも前以上の威力だ。当たれば跡形も残らない。なにも言うことはない。


 ちょっと、俺この中で一番弱いんじゃね?

 今までヘルを使っていたから誤魔化せていたが俺自体の強さはそんなに高くない。

 サーラにもなんか負けてる気がする。

 俺ってなんかいらない子のようだな。

 なんか泣けてきた。


 もう家に帰りたい。ママーン! 皆にいじめられたよー!




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