03-01-10 王都での話し合いの行方
今、リーナの家の居間で俺とお姫様達との熱き戦いが火ぶたを切ろうとしている!
ここではその模様を皆様に余すことなくお伝えしたいと思います!
それでは両者張り切ってまいりましょう!
では、ご覧下さい!!
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「私にも王都に知り合いが結構いますので王女様の事は前からうかがっていました。ですから最初に会った時お聞きしましたでしょう? なにか因縁がありますかと。そちらはないとおっしゃっていましたよね? そして私は既に謝っていますので無礼はお許しください。」
「そ、そうですわね。既に謝っていますわ。まあそれは宜しいでしょう。
それで王女の私が杖を持ってみたいと言っているのですがどうなんですか? 持たせては頂けないのですか?」
「うん? 持つだけですか? それだけで本当に宜しいんですね。お約束ですよ。絶対の。」
「え、ええまあ。取り敢えずそれで宜しいですわ。それでは渡してください。」
「待って下さい。自分が持っていますのでその状態で持ってみて下さい。いいですよね? 」
「なぜですか? ちゃんともって振り回してみたいのですが。駄目なんですか? 」
「うん? ですからお聞きしましたでしょう? 持つだけで宜しいんですかと。違うのですか? 」
「きいいっ。もうっ、良いじゃないですか! 私の好きにしても! 」
「姫様。もう宜しいでしょう? こちらの方の方が一枚上手のようですのでこれ以上わがままを言ってはいけません。
大変ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
ですが宜しいんですか? 王都にはなにかのご用事でいらしたんでしょう? ご実家の方に何かご迷惑がかかりませんか?」
「おっと。そうでしたね。でも何だかもとより国の方は誠実に動いてはくれないようですのであまり関係ないみたいですよ? 」
「なんですか? 国の政策になにか異議でもあるのですか? それでわたくしに意地悪しているんですの? なんだか心の狭いお方ですのね! 」
「姫様。ちょっと横から口を挟まないでください。
すみません。今の言葉は取り消させてください。お願いします。」
「いえいえ、お構いなく。好きにおっしゃってくださって結構ですよ。どちらにしても多分結果は変わりませんでしょう? 」
「いえ、そうでもないかもしれませんよ? どうですか? 一度持ち帰って検討して来ても宜しいですか? 」
「ああ。
残念ですがこの後すぐに王都を出る予定になってましてそれを待っていることは出来ません。
今回はご縁がなかったということでまた次回お会いした時にでもお見せするということでご了承いただけると助かります。」
「……。分かりました。それではもう後がないようですので単刀直入に言います。
その杖を言い値で買い取らせて頂きます。ですのでお好きなお値段をご提示して下さい。すぐにでもご用意いたします。」
「ちょっと! なんで私を放っておいて商談を始めるのよ! 商談するにしても私にやらせなさいよ! お父様から権限は既に頂いているんですから! 」
「やっぱりそちらはそういうつもりでしたか。
杖の事を回りに話さないとお約束してくれていたのは嘘だったのですね。
はぁ。
でしたら初めからそうおっしゃってくれればいいのに。
分かりました。
これ以上ごねて国といさかいになって実家の方になにかあっても困りますのでそのお話をお受けします。
ですがお約束を守っていただけなかったことの謝罪として一つ条件を飲んで貰っても宜しいでしょうか? 」
「はい。出来ますことでしたらこの場で契約を結びましょう。姫様もそれで宜しいですね? 」
「うん、いいけれど。
その条件ってのを先に聞かなくて宜しいんですの? 」
「はい。その条件とは多分隣国との紛争の解決ということで宜しいんですよね? 」
「はい。それでいいです。至急対応をお願いします。大分待たされているようですので。
あと、杖は王家での今までの買い取り実績を参考に適正価格であるのならその金額で宜しいですよ。
それでは契約書にサインして締結しましょうか。」
「ありがとうございます。これで姫様もやっと杖が持てます。
長く待ちましたがその分良い物が手に入りましたね。
良かったですね、姫様。」
「ええ! これでわたくしもようやく杖持ちですわ! これからも精一杯努力していきますのでこれまで同様一緒に頑張りましょう! 」
「はい! 姫様! 」
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そう言って二人は抱き合って喜んでいる。
うんうん、良いもんだね。麗しい女性たちの主従愛というのは。
ヘルもそう思うだろ?
『良い訳あるか!
はぁ、でもやっぱり売る事になっちゃいましたね。残念です。
結構杖部分も気にいっていたのに。
でも。もう過ぎた事は良いです。
早く新しい杖を用意して下さい! マスター! 』
ハイハイ。分かりましたよ。
既にもう分かっていたと思うけど杖の先に付いていた宝玉は俺が急ごしらえしたものと取り換えてある。
ちゃんと宝玉の名前やパンロックの但し書きも同じにしてある。これでそう簡単には見抜けないだろう。
ヘルは今は馬車の収納の中だ。
そして今話せているのは俺が作った通信の中継器を使っているからだ。
さて、今回の事はうまくいっただろう。
彼女たちは杖にヘルが付いていたのを知らないようだったので上手く誤魔化せたが王家の人の中には杖の性能に疑問を持つ者がいるかもしれない。
それが分かる前に早いとこトンずらしよう。
次は港町か。海の魚を食べるのは久しぶりだから楽しみだ。
途中の旅もみんなで行けばそれなりに面白いだろう。
ヘルの杖も早く用意してやらないとな。今のままじゃ大幅な戦力ダウンだ。
まあでもゆっくり行こう。
俺の旅はまだ始まったばかりだ。
第一章 王都の物語 end




