03-01-09 王都のお姫様の驚愕
さて、杖を狙っていた奴らは退場していったがつぎには王族のお姫様が出待ちをしている状態だ。
今日も元気に道場に来るだろう。いやリーナの家か。
でもなんでそんなに杖に固執してるんだろう? ヘルその辺はどうなの? 何か知ってるの?
『はい。調べましたよ。
王家は総合管理者の家系でスキルの使用に関して杖のサポートを必要としています。杖は一種のリモコンとかスマホとかいうのと同じような役割ですね。これで総合ネットワークとやり取りしたりしてます。今のヘルと同じ状態ですね。
そして代々受け継がされてきている杖はあるのでしょうが子孫が増えてくるとそれぞれが自分専用の杖を持つと杖が足りなくなってきているといった現状です。
そこで昔にパンロック氏が現れてその時点でもう既に足りなくなってきていた杖を供給して彼は自分の価値を上げ盤石な体制を作ったようです。その事では上手くやりましたね。
ですが一見上手くやったように見えますが実際には彼はその後行動を制限されて自由に動き回る事が出来なくなったようです。有効な杖を作る事が出来る者が他国などに流れる事を恐れた王家などが彼を縛ったようですね。
彼はその後領地に引っ込んで領地を発展させたりしてましたがたまに趣味で杖を作ったり魔道具を作ったりしていたようです。それがいま私がいるこの杖「エンド オブ ワールド」とかですね。
他にも私の兄妹杖がいるようです。まあでもいくらなんでもAIが搭載されている物は多分いないのでしょうが。
とにかく現在も王家は杖を出来るだけ多く必要としていて色々手を尽くして探しているといったところです。』
そうか。そんな事になっていたのか。
やばかったな。もう少しの所で引っかかる寸前だったのか。
俺も金がなくなったりした時いざとなったら杖とか魔道具とか作って売れば良いかとか考えてたから下手するとパンロックの二の舞を演じる所だったんだな。危なかった。
おいヘルさんよ。
こんな事になるのを防ぐために事前情報が欲しいんだが?
今後どういった対応を取るつもりなんですかね?
はっきりとお答えください、総理! どうなんですか! 総理!
『はい。総理じゃありません。ヘルです。
ヘルですが今後どういった対処をするかといいますと大局的、俯瞰的に物事を見極め全集中の呼吸でもって対応していきたいと思っております。
今後ともご指導ご鞭撻のほどをお願いいたします。』
おい、それ今一番やっちゃいけない対応じゃね?
大丈夫か? ホントに。
まあいい。
それより今は姫さんに見せる杖の事だがあれで上手くいくと思うか? 何だか今の話を聞くと杖の鑑定士張りの目利きで見破ってきそうなんだが大丈夫か?
『はい。お姫様に限って言えば大丈夫だと言えますが他の王族の人に見られると分かりませんね。現在生きている王族の中にどんなスキル持ちがいるのかというのが相手の管理者権限の方が高くて検索できません。やっぱり杖を渡すのはやめませんか? 』
そうしたいんだが多分流れで渡す事になるんじゃないかと思っている。
ここまで隠してきた王族カードをタイミングよく切って来るんじゃないか?
それをされたら一領主の嫡男程度には拒否出来んだろう。
いちおう渡す杖には精一杯の手を尽くしたんだから通用するのを祈るしかない。
あとはばれても良いようにとっとと王都を出るしかないな。
『それじゃあもう準備は出来た事にしてすぐに出発しましょう。それがいいです。』
ハイハイ。分かりましたよ。その様に皆に言っておくか。
それから俺達は旅の準備を先に整えていつでも出られるようにしてからリーナの家に行く事にした。
旅には王都で見繕った小さな馬車を引いて行く事になった。
これは前から考えていた事だがリーナが一緒に行く事になった事で正式に可決されて決まった。
理由は女子の性的な意味での危険を少しでも下げることを考えてだ。
サーラなら多少のポロリくらいなら昔から見慣れているから大丈夫だがリーナは俺たちもそうだが彼女自身が俺達のポロリに耐えることができそうにないみたいだ。
別に恥ずかしいからとかじゃなくもし見たら過剰に反応して手や足が出る可能性があるからだそうだ。おおコワ。
そして今宿屋の裏に馬車がおいてあるので俺達の荷物をすべて載せている最中だ。
まあ元々そんなに荷物なんかは持ってないのだが皆王都で買った物なんかが色々と有るようでそれなりに載せている。
馬車は小さいので引いている馬も一頭で済んでいる。馬車の利用方法は乗るためではなく野営なんかの時に女子を中で寝かせる為だ。だから中は簡単な二段ベッドに少しの棚がある程度だ。
荷物は床下収納に入れてあり見た感じサッパリと纏まっている。
この床下収納を初めて見たときは素直に感心したもんだ。
馬車の重心も低くなって更に物が仕舞えるなんて言うことがない。
なんで田舎にこれが伝わって無いのか不思議でならん。
どっかの誰かが特許でも取っているのか? もっと広めろよ。
その床下収納に四角い箱を厳重にしまう。一番下に荷物の陰になるように。
箱をポンとたたくとヘルが何ですかと聞いてきたが何でもないと言っておいた。
さて、お姫様との会談に行きましょうか。
+ + + + +
リーナの家に行くともう既にお姫様が今か今かと待ち構えていた。
おう、すごい鼻息だ。これ表に出して大丈夫なのか? 色々と問題にならないか? 嫁の貰い手がなくなるレベルだぞこれ。
チラッと侍女の人の方を見ると諦めたような表情をしている。苦労しているようだ。体を大切にして下さい。
リーナの家の居間を借りて杖のお披露目をする。まあ俺達は既に知ってるが。いや、今は違うか。
杖の頭頂部を覆っていた布袋を外すとそこに赤い宝玉が現れた。
宝玉は見た感じ人間の脳のように見えるが少し大きさが小さいようだ。表面には皺もありよく似ている。
色は赤黒く暗い感じで半透明だ。魔石から作られているのが分かる。
お姫様はそれを見ると歓喜の表情を隠さず杖に肉薄して来た。
杖を奪わんばかりに近づくと持ってみたいと言い出した。
ほら来た。ここからなし崩しに杖を取っていくつもりだろう。
だがそう易々と奪われてはあとで不自然だと思われる。
ここは拒絶一択だ。異論は認めん。
「なぜですか? ちょっと持ってみたいだけですのに。いいじゃないですか! 」
「お約束は見せるだけだった筈ですよね。約束が違いますよ。」
俺が咎めるとお姫様は侍女の方をチラッと見ると顔をにやつかせながら胸を張って来た。
俺が「何だ? 」と頭を傾げていると侍女の人がお姫様の身分をついに明かして来た。
「今まで隠しており申し訳ありません。こちらの方はオウディーエンス王の五女ビジターナ王女様です。こちらが王族の身分証です。ご覧ください。」
俺の方に示されたカードには国王の家紋と印字更にサインがされていた。こんなのもあるのね。でもこれ知ってる人じゃないと意味ないんじゃね?
俺が示されたカードを見ながら「それで? 」と聞くとびっくりしたような顔をして「えっ?! 」といった後しばらく愕然としていた。
「あなた私の正体を知っても驚きませんのね。既に知っていたということかしら。どうなんです? 」
「ええまあ、最初に会った時から知っていましたよ。」
彼女はさらに驚愕した顔になっていた。
さて、ここから畳みかけるとしますかね。




