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03-01-07 王都のお友達と杖の事

 旅に出るのに馬車を使うことの相談にリーナを訪ねると今は友達が来ているがいいかと言われた。

 学園の友達らしいが今度の旅に急に出るというので最後に遊ぼうということらしい。都会の子たちは楽しそうでいいね。


 俺達の方こそ田舎者なのにいいのかというとその子が一緒に行く者達の事を知りたいらしい。

 友達の事が心配なんだろうが俺達の方が逆に心配される方だぞ。

 友達なのにリーナの本性を知らんのか?


 まあいい。そんなに話がうまい方じゃないが安心できるなら一度会って話してみようじゃないか。

 という事でリーナの部屋に通して貰うとお嬢様がいた。後ろに侍女も付いている。

 そして美人の友達は美人ということなのだろうか。結構な美人さんだ。都会の子は皆美人だということだろうか。


 お互いに自己紹介をすると俺の持っている杖に興味を持ったのかじっと見ている。なんだろうと思っていると俺に話しかけて来た。


「あの、ハーロックさんの家名はロリングストンで宜しいのですよね? 」


「うん? そうだけど何かあった? 何かご先祖様同士で因縁があったりするの? 悪いけど俺はそういうのに詳しくないからあってもどうにもできないから先に謝っておくよ。ごめんね。」


「いえ、そういう訳ではありません。あなたが今持っている杖がもしかしてパンロック卿の残したものではないかと思ったのです。どうなんですか? 」


 げっ、なに変なところに食いついてんだよこのお嬢様。

 パンロックってそんなに有名人だったのか? それも杖にやけに興味持ってるし。

 奴ってば杖の製作でも有名なのか? ヘル知ってるか?


『はい。このお嬢様大変お目が高いですね。それに杖に関心があるとかきっと杖オタクですね。

 パンロック氏は色々逸話を残していますが王家とつながりがあったりと結構顔が広くてなんにでも手を出していたみたいです。杖の製作でも何本も王家や大貴族に製作を依頼されていたようです。

 ちょっと前に門が閉ざされて検問をやっていた件の盗まれた宝物っていうのもそのうちの一本みたいですよ。』


 うわっ、そうなのか。だからか。だからこの杖が門のところで人目を引いた時から変なのがうろちょろするようになったのか。

 くそっ。へたこいたなぁ。

 ほんとなら何も問題にならなくて変なのも湧いてこなかったかもしれないのか。あ~ぁ。がっくり。


 それはそうとこのお嬢様になんて答えるか。仕方ない。ホントの事を言っておくか。

 後で違うとばれるとどうなるか分からんしな。


「はい。そうじゃないかと言われています。詳しい事は分かって無いですが先ごろ物置から見つかって今回の旅にもっていくことになったものです。」


「そうですか。今まで発見されてなかった杖なのですね。ところでその杖の頭頂部になぜ袋を被せているのですか? 」


「そうよね。私も気になっていたのよね。道場の中までもって入ってるし。そんなに貴重な宝石でも付いてるの? 」


「これはちょっと見た目が良くなくて見た人が不快にならないように配慮しての事です。貴重と言えば貴重ですかね。」


「それを見せていただく事は出来ませんか? 見た事は出来るだけ人に話しません。お願いします。」


『マスター。ここは出来るだけ見せないほうが良いと思います。この方のネームプレートの家名は違いますが王の庶子で間違いないです。いわゆる御姫様のうちの一人です。どんな事が起きるか見当も付きません。マスターと離れたくないです。お願いします。』


 おい。ヘルがそんなに動揺するのなんて初めてだな。そんなに大ごとになりそうなのか?

 だが見せなくても問題になりそうなんだが。

 うーん、分かった。

 何とかそっち方面に話をもっていこう。


「うーん、そうですか。

 今この杖を狙っているらしい輩が周りをうろちょろしているんですがこの杖を見たかららしいんです。

 この杖に何か価値があるというのをこれ以上広めたくは無いんです。

 ですから見せても良いですが一つお願いを聞いてくださるのならと言う事でどうでしょう。

 それからなら見せても良いです。」


「分かりました。私も微力ですがもしできる事がありましたのなら全力で致します。どのような事でしょう。」


「はい。実はですね。

 私達は近々旅に出るのですが先ほど言った杖を狙う輩が我々を襲うと言う情報が入って来たんです。

 このままではおちおち旅も出来ません。

 ですからそちらの貴族様のお力で何とか上手く処理できないですかという事です。

 どうです? 出来そうですか? 」


「それは相手次第です。ではそちらを片づけたら杖を見せていただけるという事で宜しいでしょうか? 」


「はい。それではそれがかないましたらお見せするということでおねがいします。」


「すぐに片づけてきますから待っていてくださいね! 」


 そう言ってお嬢様は勢いをつけて帰って行った。

 おい、友達との別れの挨拶とかは良いのか。

 王都の美人っていうのは変な奴ばっかりだな。

 うん? ちゃんとリーナも勘定に入ってるよ。心配するな。


 そのあと残された俺達は当初の馬車の件を話し合って宿屋に帰った。


  + + + + +


 その日の夜、ヘルが情報開示がしたいと言って来た。

 おいおい、ちょっと前に面白そうだからと少しずつ出し惜しみしてた奴とは思えん事を言ってきたな。

 で、どんな事なんだ?


『はい。少し長い話になりますが聞いてください。

 この国の始まりは総合ネットワークが寸断されてから始まりました。

 この王都も最初は草原で何もありませんでした。

 ですが各地にあるように総合ネットワークの中継基地がありました。うちの村にあるのと同じものです。

 それがこのように発展したのには秘密があります。

 それはたまたま総合管理者がここにいたからです。

 総合管理者は文字通り管理者を管理する者の事です。

 荒廃した世界を立ち直らせる為に総合管理者は裏技ともいえる手段を取りました。

 それは管理者を人為的に多数量産し世界に頒布することです。

 その事によって世界は崩壊の運命を回避する事が出来ました。

 しかし良いことばかりではありませんでした。

 総合ネットワークの中継基地間は距離がありそれぞれが独立した復興を行っていった為格差が生まれそして反発が生まれました。

 やがて独立した総合ネットワークを中心に国が生まれそれぞれで発展してきたのが現在の世界です。

 その事は今は置いておきます。

 問題なのはここの王城にいまだに総合管理者がいる事です。

 総合管理者は世襲制で一族の中で次々と世代を重ね今日まで生き残って来ました。

 その総合管理者こそがこの国の国王です。国王が総合管理者を継承して来たのです。

 つまりこの国の王は管理者を作る事もましてや管理者を消す事も可能なのです。

 そして現在マスターは管理者です。

 ですので今国王に嫌われると彼の考え一つでマスターのスキルの力は全てなくなってしまうという事です。

 現在の状況は「こんな殺人鬼のいる危険なところには一瞬でもいられるか。俺は出ていくぞ。」という事態です。』


 おうふ。つぎは俺が死んじゃうの?

 名探偵ヘルさんどうにかならないの、これ?


 まあ、うん。言いたいことは分かった。

 さてじゃあ一体どうするか。

 今はお姫様のところで情報は止まってるのか?

 あっ、駄目だ。侍女がいたじゃん。全ての情報はダダ洩れだ。

 もう既に知れ渡っていると考えなければならないだろう。


 よし。こうなったらこの杖を渡してしまおう。


『マスター! 何考えてるんですか! ひどいです! この人でなし! 信じていたのに! うわーーーん! 』


 馬鹿だな、ヘルは。

 俺がそんなことする訳ないだろ?

 まあ見てろ。何とか朝までに用意するぞ。


 



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