03-01-06 王都での皆の思い
結局俺達は黙って出ていく事にした。
やるにしても王都を出てからにしたい。そうすれば後の始末もやり易いしね。
ことさらに隠すそぶりも見せず出発の準備をする。
見る奴が見ればもうそろそろ出発だと気付くだろう。
俺たちは王都を出てどこに向かおうかと話し合った。
皆は一度海が見てみたいというのでそちらの方面に向かう事にした。この国で海が有るのは南の方の領地だけだ。
これから暖かい季節になるのでそっち方面は暑いくらいだろう。今から楽しみだ。
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ロックが道場に肩慣らしに行ってみようというので皆で来てみた。
そしたら叔父さんの道場だった。そういえば俺の親父が王都に行ったら顔を出せと言ってたことを思い出した。
やベー、忘れてた。危うく親父に怒られるところだったぜ。
誘ってくれてありがとな、ロック。
叔父さんとは十年ぶりに会ったからか覚えていた姿とはちょっと違い少し老けたように見えたが俺の親父よりは全然マシだろう。
まだまだ現役の剣術使いで道場も立派で門下生も一杯いる。
立派すぎて俺の親父とは比べるべくも無い。
道場で稽古に交じってみたが門下生の皆は結構な手練れが多くいてここならもっと強くなれそうだと思ったが今の俺達は世界を回る第一歩を踏み出したばかりだ。
いずれまた強くなってここに来て皆と手合わせしたいな。
稽古が終わって戻ってみると何だか従妹のリーナが俺達の武者修行に一緒に付いてくる事になったらしい。
リーナも前から世界に出て剣術修業がしたかったそうだ。それなら一緒に行こうとなったみたいだ。
リーナと道場で初めて手合わせしてみたが結構強くて俺といい勝負が出来る奴だと思っていたので単純に嬉しい。
これで旅の途中でも練習相手には困らないだろう。ロックが相手じゃ物足りないと思ってたからな。
後は変な奴らを懲らしめてさっさと旅に出ようぜ。ロック。
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ガッシュくんの叔父さんの道場に見学に来てみたらなぜかそこの娘のリーナさんが一緒に旅に付いてくる事になった。
リーナさんは私から見てもすんごい美人で私など到底及ばない。
剣術の腕前も稽古を見ていたらガッシュくんと互角に戦っていたので結構強いみたい。
こんな人が旅に付いてくるなんて私はどうしたらいいんだろう。
ロッくんが世界を回る旅に出ると聞いた時に私でも一緒に行けば何かの役に立つかと思ったけど何だか私っていらない感じじゃない?
いちおう医術のお力があるお陰で何とか役に立てそうではあるけどそんなに旅にはあっても関係ないよね?
ロッくんは何で急にこんな事を言い出したんだろうと思っていたらリーナさんは変な奴らに付きまとわれているみたい。
そりゃこんな美人なんだからさもありなんと思う。
ロッくんはおせっかい焼きだから捨てておけなかったんだろうけどそれでもねぇ。
皆にもひとこと相談ぐらいしてくれても良いんじゃない?
もうほんとに自分勝手なんだから。
もうロッくんなんてしらない!
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学園から帰って来ると父さんに呼ばれた。
お客さんが来ているとのことだから簡単な挨拶だけして道場に稽古しに行こうと思っていたが相手は父さんの親戚の人たちだった。つまりは私の親戚でもある。もっとちゃんと挨拶しろという事だった。
来ていたのは従兄のガッシュくんで他はその友達のハーロックくんとサーラさん。
皆同じ年で今回三人で世界を回る旅に出たらしい。その初めの第一歩として王都に来ていたみたい。
正直に言ってうらやましい。私も武者修行に出てみたい。
父さんも若いころ旅に出て色々な所に行っていたと前に話していた。
その中で世界中の綺麗なところや不思議なところを見て回って強い魔獣と戦ったりいろんな達人と手合わせとかしたらしい。
そんな父さんの話を聞いて憧れていたので自分はいつまでここでくすぶっていれば良いのかといつも思っていた。
そんなところにガッシュくんたちが来て三人で楽しそうに話すもんだから私はうらやましくてそのうっぷんを晴らそうかと道場に勇んで稽古しに向かった。
もともと彼らは道場に見学しに来たようだったがガッシュくんは稽古がしたかったみたいで飛び入りして来た。
彼がどの位の強さか稽古をチラチラ見ていたが結構やるみたい。
自分も逆に見られているようだったので最後の模擬戦に備えて少し抑えて稽古をしておいた。その時に驚くがいいわ。
模擬戦は結果的に余り驚かせる事は出来なかったみたい。
すでに実戦で結構鍛えて来ていて生半可な事では動揺しないみたいだった。ちっ。
でもまあ強さは私と同じくらいで戦っていて結構面白かった。
彼らがすぐにいなくなってしまうというのが心底惜しい気持ちだ。
稽古が終わって片付けをして彼と一緒に家に戻ると父さんが三人と一緒に旅に出てみるかと聞いて来た。
私は思ってもなかった事にびっくりしてそれで良いのかと聞いてみたら好きにすればいいという。
私は一も二もなく飛びついた。
憧れだった武者修行の旅に出られるという事で舞い上がってしまった。
だが後で考えると同じ年の若者だけで旅をするなんて大丈夫だろうか。主に性的な意味で。
まあ彼らはそんなに強くも無いから大丈夫よね。女の子も一緒にいるし。
それより早く旅に行きたいわ。
もっと準備を急いで! ハリー、ハリー!
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『とかいう事を彼らは思っているようですね。
なぜそんな事が分かるのかというのは禁則事項です。クスクス。
本当にマスターといると退屈しないですね。
次から次へと色々な事が起きます。
前にマスターも言ってましたがなにかの影響で因果律が変化でもしているのでしょうか。
でも我々にはそんな事は検出出来ていません。
まあ大勢に影響が無ければどうでも良い事ではあるのですが。
さてこれで王都を出ていく準備は整って来ましたね。
後はすんなり行けば良いのですがどうなりますか。
見ものですね、マスター。』
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「おいっ、奴らが王都を出ていくみたいだぞ。杖の方はどうなってるんだ? 」
「奴ら出かけてもことごとく俺らを避けているようでなかなか捕まりません。もっと人手を出してもらえませんか? 」
「しょうがねえな。どん位必要なんだ? 」
「今の倍くらいあればいいんじゃないですか? 」
「分かった。数日中に集めるから絶対に失敗すんじゃねえぞ。」
「はいっ、分かりました。任せて下さい。」
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『あらあら、こんな事になってますよ、マスター。気を付けてくださいね。クスクス。』




