03-01-03 王都の厄介な奴ら
図書館から宿屋への帰り道の途中でちょうどあった道具屋に寄ってみた。
結構綺麗な外見の建物だ。まあ王都ではそうじゃないと客が来ないか。田舎とは違うのだよ、田舎とは!
中に入ってみると通路は広くすっきりとしている。田舎だと狭い通路に物がすし詰めってのが定番だからやっぱり都会は違うねぇ。
変な所に感心していると近くにいた店員が話し掛けて来た。こういう所も都会らしい。
「お客様、本日はどういったご用件でしょうか? 」
「うん? ああ、これといった要は無いがここには魔石とかおいて有るのかい? 有ったらどんなものか見てみたいんだけど。」
「はい、御座いますよ。どの位ご入用ですか? 」
「それはどんなものか見てから考えるよ。どこに有るの? 」
『マスター。私達の後を付けていた者の一人がこの建物の裏から入ってきたようです。』
おう、まだ後を付けているのがいたのか。他にもまだいるのか?
『いいえ。ここに入ってから離れていきました。マーカーを付けておきましたからどこに行ったかは後でわかりますよ。』
そうか。ならいい。取り敢えず放っておけ。
それよりこの建物に入った奴はどうなった?
ヘルと話している間に俺は店員に案内されて魔石の置いて有る所に移動していた。
『はい。ちょうどここの壁の向こう側に来ていて誰かと会っています。』
そうか。なら何か接触してくるかな。お手並み拝見と行こうかね。
俺がガラスケースの中の魔石を物色しているとケースの向こう側から声をかけられた。
「魔石に興味がお有りですか? うちのは決まった農場の同じ種類の家畜から取った物で品質はそろってますよ。」
「へえ。そういう物ですか。大きさとかが違う物はおいて無いんですか? 」
「そうですね。大きさとかが違っても機能的にはほとんど違わないので大きさがより小さい物とか形が同じものの方が選ばれています。」
「ここではそういう物ですか。そうか。うーん。」
「失礼ですがどういった用途でお使いに成られますか? 」
「ん? ああ、私がほしい訳じゃないんですよ。知り合いに頼まれて王都で流通している魔石がどういった物か見て来てくれと言われてきてみたんです。ですから用途と言われても良く分からないんです。すいません。」
「いえいえ。とんでも有りません。こちらこそぶしつけで申し訳ありませんでした。ごゆっくりご覧ください。」
「はい。どうも。ところでここの魔石の値段は形が違っても全部同じなんですか? 」
「そうですね。もともとここの魔石はそれが目当てで作られたという物ではなくついでに得られたという副産物扱いなのでそれほどこだわりがある訳でも無いので値段も一律ですね。」
ヘル。魔石は今のところどの位必要なんだ?
『はい。大体百個ほどあれば予備も含めて足りると思います。』
「それじゃあ、この大きさの物を百個、こちらのを五十個ください。取り敢えずそのくらいあれば文句は言われないでしょう。」
こう言っておけば向こうで勝手に考えて杖を作った奴は此処にはいないと思い繋がりがある俺達の不興を買わない様に下手なちょっかいはされないだろう。
まあされても一向に構わないが。その時は覚悟をしてもらう必要があるがね。
取り敢えずいま必要な魔石は手に入ったので宿屋に帰ろう。
そう思って店を出て近道の角を曲がろうかという時にヘルが声をかけて来た。
『マスター。そこを曲がると他の後を付けて来ていた者達の仲間が待ち構えていますがどうしますか? 』
おうふ。まだやってたのね。もう終わったと思っていたよ。
もうめんどくさいな。どうしようか。ここで暴れても良いと思うか?
『どうでしょうね。それをすると何だか粘着されそうな感じでも有りますね。ここは今後一切かかわりを待たない様にしますか? もう相手の同定は出来ましたのでいくらでも避ける事は可能です。』
そうするか。まあ宿や他の皆に押しかけたりしなければ放っておくか。
俺は素知らぬ顔をして角を曲がらず大通りを通って宿に帰った。
数日奴らを回避し続けていたらそのうちに現れなくなっていた。これ一番最後で奴らが出てくる流れじゃ無いよな? やめてくれよな。ホントに。
+ + + + +
そうして休暇の一週間がすぎ皆が村に帰る日が来た。
俺達三人はまだしばらく王都にいる予定なので宿の前でお見送りだ。
こうしないと村に帰る皆が襲われるかもしれないとヘルが心配していたからな。めんどくさいけど仕方ない。
俺は出発する皆にこれ見よがしに杖を大きく振り存在感を見せつけた後宿屋に入りサーラとガッシュの二人とこれからどうするか話し合った。
二人はこの際変なちょっかいをかけて来ていた奴らを叩きたいみたいな事を言って来た。
おいおい、こいつら一体何を考えてやがる。何時からこんな野蛮な奴らになったんだ? ヘル知ってるか?
『もうだいぶ前からこんな感じでしたよ。マスター、気が付いてなかったんですか? これは私達が無双をやり過ぎた結果ですね。自分たちが凄く強くなったと錯覚しているようです。』
はぁ。他の護衛隊の皆がそうなるかと心配していたらこっちがもうなってたのか。
これどうしよう。放っておいたらそのうち大怪我しそうだがこいつらこれでも結構それなりに強い部類に入るからなぁ。
早々変な奴らにやられる事はないだろうし俺やヘルが近くにいたらもっとそんな事にはならない。
うーん。他の事とかを話し合おうと思っていたら変な事に気が付いてしまった。ホントどうしよう。
ここで一つ高くなった鼻っ柱をへし折って上には上がいると分からせておきたいがちょっかいをかけて来ている奴らにそれを期待してもなぁ。
奴らが弱くて簡単にやられたら意味ないし強くても俺達が助けないという訳にもいかない。そうしたら本末転倒でよけいにつけあがるかも知れん。
よし。ここは道場かどこかの達人様の世話になろう。
ヘル、誰か都合のよさそうな人知らない?
『そうですね。検索に引っかかった人が近くにいますね。道場の館長みたいです。そこに見学という形で行ってみますか? 』
そうだな。そうしよう。善は急げだ。館長は道場にいるか?
『はい。居ます。』
「良し。分かった。奴らはボコボコにしよう。その前にヘルが近くに道場があってそこで体を慣らした方が良いと言ってるがどうする? 」
「おっ、そうなのか? そんなのが近くに有ったのなら早く言ってくれ。最近身体がなまってるんじゃないかと思っていた所だったんだ。さっそく行こう。」
「そうね。王都の剣術とかがどんなのか一度見てみたいと思ってたからちょうどいいわ。」
二人も乗り気になったので揃って出かける。
外にいた監視っぽい奴も後を付けて来ているみたいだ。
あっ、これなんかのフラグっぽい奴を立ててないか? 大丈夫か? ヘル?
『大丈夫、大丈夫。まーかせて。』
ホントかよ。……ホントかよ!




