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03-01-01 王都への途中で

 今俺は荷馬車の上にいる。

 荷馬車の荷台で寝転んでうつらうつらしている所だ。

 眠りそうになると荷馬車がガタンと揺れるのでなかなか寝られない。

 もうちょっと道をどうにかしてくれないかしらとつくづく思う。


 あれから村を離れる準備をしようとしていたらバズから馬車隊の護衛をしてくれないかと頼まれた。

 別に良いよと返事をすると事の経緯を教えてくれた。


 魔獣戦の後に魔獣を操っていた奴らを捕らえて隣国の関与が判明したので中央政府に対処を求めるべく早馬を走らせた。

 その返事がさっき来たがそれが「そいつらを連れて来い。話はそれからだ。」という意味の物だった。

 なんじゃそりゃ。早急に対処して貰いたいのにそりゃないよな。

 がっくり来たが捕虜を連れて行かないと嘘つき呼ばわりされるので仕方なく護送隊を組むことにしたという事だった。


 その護送隊に今回は義勇兵に志願した奴らから若い者らを中心に経験を積ませる意味も込めて任せる事にしたらしい。

 その中に俺も含めると言う事だった。

 皆にも若い内に一度王都を見て来いという意味も有るようだ。

 何だか王都に行った後は俺の好きにしても良いみたいな感じだったのでこれはバズからの餞別みたいな物かも知れない。

 ママン達に変に言い訳をしなくて済むならと有り難く戴いて置いた。


 そんな訳で今は馬車隊の護衛をしている。

 サーラやガッシュも近くにいて、サーラは同じ護衛の女の子と楽しく会話をしていてガッシュは自分の装備の手入れに余念が無い様子だ。

 ヘルは馬車に備え付けの旗立に立てられていて周囲の警戒をしながら歌を歌っている、いや流している?


「はるの~ うららかな~ ひざしの~なかで~ わたしは~ ひとり~ うたって~いる~ ららら~ 」


 昔の歌なのか即興曲なのか分からんが俺の知らない歌だ。伴奏も付いている。オーケストラっぽい。これ自前みたいだ。マジか。

 それを全周囲に向けて隊内放送している。

 一緒に護衛している奴らにもヘルの事はもう知れ渡っていて皆その事に付いて何も感じていない。

 良いのかそれで? まあいい。問題無ければ。


 荷馬車が行くこの王都へと続く街道の現在の状況は余りよろしくない。

 魔獣騒ぎの影響で周囲の魔獣の活動も活発になって来ていて危険度が増している。

 それに加えて他の国境地帯で起こっている小競り合いや他国内での戦争で負けた敗残兵やらが流れて来ていて治安も悪化してきている。


 今回の護送隊も傭兵に任せるかという案もあったが余り信用が置けないという事で自前でやる事に成ったという経緯もある。

 それに今回の護送に関して何だが、どうも戦争をやりたい奴逆にやりたくない奴双方が裏でこそこそと企んでいそうな感じだ。

 いくら田舎の村の事だって普通もうちょっと気を遣うよね。

 最悪護送隊の襲撃も有るかもしれんと考えている。

 まあ多分襲ってきても大丈夫だとは思うが。


 俺は荷馬車の荷台の上に敷物を厚めに敷いてゴロゴロしながらそんな平和なひと時を満喫していた。

 知らない人が見たら俺のだらけた様子を見て大丈夫かと思うのかも知れんが全く大丈夫だ。問題ない。

 ヘルの隊内放送は今はゲストとの雑談コーナーをやっていて王都で流行りの美味しいお菓子の話で盛り上がっている。

 そんなの聞かすなよ。皆が行きたくなるだろ。ステマか? ステマなのか? それとも広告料でも貰っているのか?


 皆が涎を流しそうな顔で隊内放送を聞いていると不意に「ピコンピコン、ピコンピコン」と軽快な機械音が鳴った。次いで放送が中断しヘルの警告が流された。


「緊急警報緊急警報。ただ今魔獣の接近を確認しました。全員直ちに持ち場に就き次の支持があるまで警戒してお待ちください。繰り返します。ただ今魔獣の接近を確認しました。全員直ちに持ち場に就き次の支持があるまで警戒してお待ちください。」


「おっと、今度はどっちだ?」


『はい。右側面。やや前方です。数は三頭、中型です。どう対処しますか? 』


 そっち方面の担当は未だ魔獣との戦闘はやって無かったか?


『はい。未だですね。』


 そうか、それじゃあヘルの方で数を一頭まで減らしてついでに少し負傷させてからそいつらにやらせるか。

 うまく奴らに感づかれない様に誘導してくれよ。


『はい。了解しました。』


「右前方に魔獣一頭発見。こちらに向かって来ます。その方面の第二隊で応戦して下さい。」


「「おう!」」


 威勢のいい声を上げながら第二隊の奴らが前に出て魔獣と戦いだした。

 奴らは初めてだと言うのに結構奮戦し危なげなく勝利した。

 その顔は結構誇らしげだ。まあ良かったな。

 ちなみに他二頭はヘルさんが直ぐにレーザーで美味しく頂きました。

 皆気が付いてないようです。


 こんな甘やかしてばかりいては本当は奴らの為に成らないのは分かっているがこいつらマジで暢気すぎて直ぐ全滅しそうだから少しづつ慣らしていかなくてはならない。ホントマジ疲れる。

 バズの奴村を出る俺に対しての当て付けにこいつらの訓練を押し付けたんじゃね? 有り得る。


 だがまだまだ王都まで二十日以上掛かる。

 それまでにこいつらだけで村まで帰れるようにしなくちゃならん。先は長いね。


  + + + + +


 そんな感じで皆を訓練しながら進んできたが後二日ほどで王都に着くかという所で何だか怪しい雰囲気に成って来た。

 急に街道を通る人たちが少なくなってきている。

 ホントにどうした? なんで減っているんだ?

 全然通らないとかなら何らかの工作かとも思うが減っている人種に区別が無く満遍なくただ減っている。


 これ本当に俺達に関係なく何か良くない事が王都で起こっているのか?

 総合ネットワークにも確認したいがここら辺は通信ができない空白地帯らしい。

 王都まで行けばまた繋がるそうだがそれまではこっちで情報収集しないといけないみたいだ。


 仕方なく普段はやらない、いや出来ない情報収集を宿屋や酒場でする羽目に成った。

 こう言う所で人に何か聞くというのはあからさまに田舎者臭がするのでやりたくないんだがなぁ。

 変な連中が来なくてもいいのに引っ掛かって来ないだろうな?

 頼むよホントに。


 そして俺の願いもかなわず酒場に調べに行っていた連中が何かトラブルを起こしたらしい。

 酒など普段あまり飲んだ事のない奴らが加減を間違え泥酔して喧嘩したらしい。

 酒代を自分で出さなくても良いというのを勘違いしてひたすらに飲みまくったのが原因みたいだ。アホか。

 お前らの給金からその分減らすぞ。


 よけいな喧嘩で怪我した奴らの所為で宿屋に宿泊するのが二日ほど伸びた。

 だがそれが何故か良い方に転んだみたいだ。

 通行人が減った原因はどこかの貴族が盗賊に入られて宝物を盗まれそれが王都から持ち出されるのを防ぐ為に門をふさぎ検問していたからだそうだ。

 幸いその盗賊は捕まり門も開け放たれ通常営業に戻ったらしい。人騒がせな。


 まあこれでようやく王都に入れるなと俺はちょっと油断していた。



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