プロローグ 03-17 試射回
さっそくバズに外出の許可を取りに行った。
杖の魔道具としての能力の確認だと言ったらすんなり許可がでた。
良いのかそれで。まあいい。
取りあえず許可が出たのでのんびりと村の外に向かった。
この村は一応村の外との壁があるが大した物ではない。
とって付けたような一応の壁しかないが大丈夫なのかと心配になってくるがヘルが言うにはそんなに魔獣が襲ってきたりはしないそうだ。
壁には出入り口の門があるがそこにはぼけっとした兵隊らしき人が立っていたが特に出入りをチェックするような事はなく素通りできた。これも大丈夫なのかとヘルに聞くと特に事件やらがなければこんな物だという。のんびりしてるなぁ。
一応の門を抜けると門の外にも家が立っている。ここは定番のスラムなのかと思ったが違うようだ。
普通の人達が住んでいるそうだ。スラムなどない村で良かった。
魔獣や盗賊などの被害が特に起こらないのでこんな感じだという。なんだかなぁ。
ここは本当にファンタジー世界なのかしらと疑問に思ってしまう。まあ古代文明の遺跡とやらが幅をきかせてはいるが。
他の村と繋がっている道をのんびり歩くと麦畑が広がっておりしばらく行くと幅のせまい川が見えてきた。
レーザーの試射という事で火事になってもまずいと川の近くで行う事にした。
川の堤防を越えて川岸に向かうと遠くの方で子供達がなにやら遊んでいるのが見える。
この堤防というのもあのパンロックの奴が作ったという。
こう言う事だけやってれば良かったのにとつくづく思う。
頭がおかしい変態はろくな事をしないよな。
子供達に変に興味を持たれても危険なので少しはなれて見られない所まで移動する。
ここまでヘルとなんという事もないムダ話をしながら歩いてきたがそろそろこの辺りで良いかと準備をする。
準備と言っても宝玉にかぶせてあったあみ目のあらい布を取るだけだが。
杖には見た目の気持ち悪さもそうだが変に興味をひかれても良くないという事で街中では布をかぶせる事にした。
ヘルが言うにはあみ目があらい布ならばこの状態でも外が見えるようだ。高性能だな。
所でこの杖今まで特に言ってなかったが結構でかい。
長さは俺の今の身長よりも頭一つ分ほど長いし重さも結構ある。
ここまで持って来るのにもひと苦労だった。
これでもし威力が大した事がなかったら涙目確実だ。
取りあえず準備完了である。
ちょっと離れた河原にある大き目の石に最低限の威力があると思われる一発を発射してみた。
「レーザー砲発射!」
『レーザー砲発射します!』
ふざけたかけ声をあげるとヘルも乗ってきた。
ヘルもかなり浮かれているようだ。
宝玉が一瞬光り赤い光のすじが一直線に石に届くと石からは「ジュッ」という音がした。
石に近づき威力を確認すると当たった所が煙を上げていてちょっとへこんでいる。
最低限の威力でこれではあかん奴じゃないだろうか。
これ生身にうったら絶対に貫通するだろ。
当たった個所は焼けるから出血は余りしないだろうが当たり所が悪ければ一発で即死する威力だ。
今うったのは出力の時間が結構あったのでもっと一瞬にしたのをうってみた。
それでも石には小さな跡が残った。
川を流されて来た流木が河原にあったのでそれにもうって確かめてみたが深い穴が開いてしまった。ついでに火も出た。当たり前か。
あわてて水をかけて火を消した。
思ったよりも威力があったのでとまどった。
これで消費エネルギーが大きければそれなりな時にしか使えなくて使い勝手が悪いのだろうがそんな事はなく何回も試しうちをしたのに減ったのは誤差の範囲だという。
色々試している内に他の事も分かってきた。
これ三百六十度どこへでも撃てる。ヘルが見る事が出来る方向とレーザーが撃てる方向ともにだ。
リンクしているらしい。
杖を高くかかげていれば文字通り死角はない。俺の後ろに立つな。いや立っても良いのか。
それと俺にもうてた。
ヘルが照準をAR表示してくれてうとうと思えば好きな時にレーザーを発射できた。目標をセンターに入れてスイッチ。狙いは絶対にはずれない。敵を狙いうつぜ!
威力とかはヘルに調節してもらわないとならないがそんな事はどうでも良い! 最高に楽しいぜ! ヒャッハー!
ヘルの視界にある物を平面レーダー風のAR表示画面にだしてマークした物にだけレーザーを発射するという事も出来た。
それも全くの同時に。
マークできる数はその時の方向や分布のかたよりによって多少変化するがかなりの数に対応する事が出来た。
これはあれか? これを使って大量虐殺をしたり戦争で大活躍しろってことか? きっきんに戦争も起こりそうだという事だし。
俺の時代が遂に来たか。ワクワクが止まらないぜ!
検証を続ける事にした。
今度は威力を出来るだけ高くして消費エネルギーや使い勝手を調べる事にした。
「レーザー砲発射準備、耐ショック、耐閃光防御。」
『耐ショック、耐閃光防御完了しました。』
「大岩に向けてレーザー砲、発射!」
『レーザー砲、発射します!』
またしても二人でノリノリでかけ声を発し試射を行う。
今度はこちらにもなにかしらの被害が出るかも知れないので岩の陰に隠れながら宝玉部分だけ陰から出してうってみた。
ゴン太レーザーが宝玉から発射され大岩に当たると大岩は大音響を上げて大爆発した。
ドッゴーンという音を上げ地面が地震の時のように揺れ地響きを立て大量の噴煙を空に巻き上げた。モクモクとしたキノコ雲だ。
大岩は大半が砕け散り跡形もない。結構大きな破片が空から降ってくる。
俺はしまったと思い一瞬で逃げ出した。
これは本格的にあかん奴だ。
こんな所を見つかったらなんて言われるか。
怒られるのは間違いない。
取りあえず逃げとこう。
まあ俺がやったという事は丸わかりなんだが。
あとの事はあとで考えよう。
俺は冷や汗をかきながら村へ急いで引き返した。
村には出て来た門ではなく別の門に遠回りして帰った。
まあ小細工なんだけども通用しないのは分かっている。気休めだ。
素知らぬ振りをして家に帰り自分の部屋に戻った。
その夜案の定ママン達にばれて危険な事はするなと怒られついでに夕飯抜きにされた。
バズの奴、魔法仗の威力を確かめに行くのを知ってたくせに土壇場で裏切りやがった。許せん。覚えとけよ。腹へった。