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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

CRIME DOLLS

作者: 鉈の蛇

 「それでは裁判を始めます」


 待ちに待った瞬間。思わず頬がにやけてしまう。


 「裁判長は私。よろしくお願いします」


 頭を下げる。

 礼儀は大事だとパパが言っていた。私のパパは少し厳しくって声が大きい。けれど本当は優しくて私のことを愛しているの。そのパパが言うんだから礼儀は大事にしなくちゃいけない。


 「裁判員はこちらのみなさん。どうぞよろしくお願いします」


 もう一度頭を下げる。

 今日の裁判員は家族のみんな。だけど礼儀は大切。きちんとしないとパパに怒られちゃう。


 さて、私たちには大切な仕事がある。目の前にいる罪人を裁かなきゃいけない。これは誰にでもできることじゃなくて、私たち家族の問題。私たち家族で終わらせる必要がある。

 大丈夫。私には家族がいるから。みんなで力を合わせれば決められる。わからないことはみんなが教えてくれるもの。何も心配はいらない。


 勇気が必要だった。私は勇気を振り絞った。

 みんなの顔を見回すと、それだけで勇気がもらえる。私は恐れてはいなかった。


 「それじゃあみんなで決めましょう。こいつらは、死刑?」


 罪人はうーうーとうるさい。でも危険はなかった。両手と両足を縛って猿ぐつわを噛ませているから、喋ることはできないし、暴れることもできない。本人の意見を聞くことはできないけれど判決を下すには私たち家族がいれば十分。証拠は十分に揃っているし、こいつらの意見を聞く必要性が感じられない。


 そろそろ議論を始めなきゃいけない。

 私は家族一人ずつに意見を聞いて行くことにした。


 「まず、パパはどう思う?」


 私のパパは兵隊さん。強くて優しくて力持ちで、教育にはちょっと厳しいところもあるけど、私を殴ったりしない。いつも一緒に遊んでくれる。何かあるといつでも私を守ってくれる。頼りになって大好きなパパ。

 パパはいつもにこにこしていて、私が話しかけると笑顔を見せてくれる。

 私はパパの意見を聞いて頷いた。


 「うんうん。私もそう思う。ママは?」


 私のママはドレスを着たお姫様。ブロンドの髪がきれいで、私が櫛で梳いてあげると喜んでくれる。きれいで優しくてにこにこしていて、いつもおいしいお料理を作ってくれる。私はママのお料理が大好き。毎日食事の時間が楽しみで楽しみで仕方ないくらい。


 私が質問すると、ママもパパと同じ意見だったみたい。

 私はその意見が間違っているとは思わない。私も同じことを思っていた。他のみんなもそうだといいなと思いながら、他のみんなを見てみる。


 「そうだよね。ねぇピーター、あなたは?」


 ピーターは子供だから難しい話かもしれない。だけど聡いからきっとわかる。

 私たちが直面している問題は全員で対処しなければならない。誰一人欠けたとしてもそれは全員の総意ではないからだ。

 その点、ピーターは子供で、優し過ぎるくらい優しいけれど、自分自身の正義に従って判断することはできるはずだ。


 私が質問すると、ピーターは困った顔で、今にも泣き出しそうだった。泣き虫な子だから仕方ない。でも今はそんなことも言っていられない。

 結局、優し過ぎるあの子は、私たちとは違った考えだったみたいだ。


 私は小さく溜息をつく。できればみんな同じ考えでいたかったけど仕方ない。あの子が悪いわけじゃない。みんなで考えてみんなで決めないと。だから違っていてもいい。あの子は家族の一員だから、どんな発言をしたって、考え方が違ったって私たちが認めてあげなきゃ。


 「ララ、あなたは?」


 ララは女の子だけど強い意思を持っている。私なんかよりよっぽど強い。女の子だけど強くって、男の子にだって負けない。私の方がお姉ちゃんなのに、立場は逆のようにも見えるはず。泣き虫で臆病なピーターとは正反対で、あの子のことは私が守ってあげなきゃって思うけど、いつも私が頼りにしている。

 今もピーターは怯えているけれど、ララは毅然として自分の意見を言う。

 やっぱり頼りになる。でもララはいつもスカートを履いていて、性格とは裏腹に見た目は可愛い女の子。そんなギャップも憧れる。


 ララの言葉にはいつも説得力と力がある。

 私と同じ意見だったことにほっとして、ララが同意してくれたからほっとした。こんなことを言うと失礼なのはわかってる。だけどパパやママが言うよりもララが言ってくれた方が私の自信になった。


 「うん。最後に、ジェームズ」


 ジェームズは熊。可愛くってふわふわで、小さい頃からずっと一緒にいる。一番長く一緒にいる、私の一番大事な子かもしれない。順序をつけるなんてよくないんだけどそれくらいの絆がある。

 身長が私くらいあって、抱きしめて寝ないと落ち着かない。目の前で転がってる女の罪人のせいで手足が取れたりもしたけど、頑張って私がお裁縫をして、なんとか繋げることができた。今でも痛々しい姿。でもそれは私を守ってくれたからで、私はちっとも醜い姿だとは思わない。ジェームズは今でも私の大切な家族。


 「ジェームズはどう思う? 私と同じ気持ちだよね?」


 ジェームズは話すことができない。熊だから。人間じゃないから。

 ひょっとしたら熊とは話すことができるのかもしれないけど、私とは言葉で話せたことはない。でも気持ちは誰よりも通じ合ってる。人間の言葉を話すことはできないけどジェームズは賢くて、いつだって私の味方。素直で優しいこの子が私を裏切るはずがない。


 「うんうん、そうよね。罪はきちんと裁かなきゃ」


 みんなの意見は出揃った。

 これでもう話し合う必要はない。


 「それじゃあ最後にみなさんに聞きます。この二人は、死刑にすべき?」


 私が尋ねるとみんなが声を揃えて言った。「死刑!」と大きな声で。

 思わず嬉しくなって頬が緩む。

 裁判の決定は絶対。だから罪人は死刑にならなければならない。


 「わかったわ。みんなありがとう。ありがとう。死刑にしましょう。今すぐ」


 私は、庭にあった斧を事前に準備していて、それを手に取った。とても重い。だけど今はその重さが頼りになると感じる。これなら確実に命を断てるはずだ。

 首か、頭か、どちらが確実なのだろう? 少し迷ったけれど、最終的にはどちらでもいいかと思った。一度でだめなら何度か叩けばいいだけだ。


 裁判の結果は絶対。

 私はこれから罪人を死刑にする。


 男の罪人の前に立った。

 禿げていて太っていて酒の匂いがする気色の悪い男。私の家に勝手に入ってきて好き勝手するのはうんざりだ。これでもう二度と怒鳴りながら殴ったり蹴ったりできない。家の中で喧嘩する声が聞こえなくなると静かになる。窓を割ったり椅子を倒したりテーブルをひっくり返すこともなくなる。

 ここで死ぬべきだ。死ぬべきなんだ。


 私は斧を頭の上で振り上げた。

 あまりにも重くてよろけたけど構わなかった。振り下ろして当たればそれでいいから困らない。一度でだめでも、何度もやればいい。


 「死刑執行よ」


 みんなに言ってから、斧を振り下ろす。罪人の頭に突き刺さって、だけど中途半端な刺さり方な気がして、納得がいかない。


 「死ね」


 もう一度振り上げてから、振り下ろす。

 叩き割った方がいいに決まってる。跡形も残らないくらいぐちゃぐちゃにしてやればいい。この世に生きていた証拠を残さないくらい、誰なのかわからないくらいバラバラにすればいい。そう思って何度も何度も振り下ろす。


 「死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね――」


 非力な私だけど、何度も振っていると少しずつ肉が割れて、骨が砕けて、脳みそが外へこぼれ出してきた。

 隣の女がうるさい。だけどなぜか気にならなかった。


 男の罪人の処刑が終わった。

 頭はぐちゃぐちゃになって動かなくなった。私は満足してる。


 女の罪人の前に立つ。

 女は泣いていた。だけど私は何も感じなかった。

 声が甲高くてやせっぽちで、私を睨む目付きが気に入らない。私を殴る細長い腕が気に入らない。私に料理を食べさせない精神が、私のことを生まれてきてはいけなかったと言う口が、泣きじゃくる私を見る顔が気に入らない。

 罪は償わなければならない。こいつに与えられたのは死刑だ。


 斧を振り下ろす。一度目はやっぱり深く刺さらない。中途半端に頭を割る。

 持ち上げては振り下ろす。何度も何度も頭を割る。

 二人目だと流石に少しの慣れがあった。力がないのはわかってるけど、同じ場所に何度も当てているとやっぱり壊れていくものだ。


 意外にもあっさり処刑は終わった。

 二人とも声を出さなくなっていた。元々人だったんだけど、今は頭が潰れて体だけ残っている。だけどこれでいいと思ってる。


 こんなのはもういらない。私には家族がいる。大切な私の理解者が。

 パパは兵隊。

 ママはお姫様。

 弟はピーターで。

 妹はララ。

 それに一番の友達の熊のジェームズ。

 みんながいれば私は何も怖くない。ここに家族がいるから、一人じゃない。あんなのがいなくなったところで寂しくなんかなかった。


 なんだか晴れやかな気分だった。まるで手足を縛る鎖が解かれたみたいに。何年も体にのしかかっていた重圧から解放されたみたいに。私は今、自由なんだと心から笑える。


 「ふぅ。裁判も死刑ももう終わり。ねぇみんな、何して遊ぶ?」


 私の心はとても澄んでいた。迷いなんて一つもなかった。

 今なら何をしても自由で、みんなと何をしようかと考えるだけでわくわくする。早く家を飛び出して遊びに行きたくて仕方ない。


 その前に、殺した罪人の死体を片付けなくちゃいけなくて、せっかくの気分が台無しなんだけど先に処分することにする。そうしないと臭くなるし時間が経てば経つほど面倒になることを知っていた。

 大丈夫。事前に準備は済ませていたから。

 処理の仕方は近所のおじいさんが教えてくれたの。

 大きな穴をいくつか掘っておいたし、運ぶのが大変だから斧で細かく切って運ぶことに決めている。私は作業を始めた。罪人の体を部分ごとに細かく刻んで何度かに分けて運ぶつもりだ。じゃないと重くて運べない。


 この作業が終わった後、私はようやく解放される。楽しみで仕方ない。

 まずこの家にある食べ物をお腹いっぱい食べて、その後みんなと遊ぶんだ。これからのことはみんなで決めるから心配ない。

 私には家族がいる。手伝えないけど、家族を連れて、死体を運び始めた。

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