緑子 慟猛将軍と出会う
慟猛将軍はあて字なので誤字ってるわコイツーって笑わないでやってください!
ガラスが散乱しているショッピングモールの通路で、ガラスを突き破ってきたモノは静かに佇んでいた。
ダッシュで近寄っていきながら緑子はその存在を観察する。
上半身は普通の人間のようだ、ただし体格は筋骨隆々でありまさに偉丈夫といった感じだ、そして下半身は黒ヒョウを思わせる四つ足の獣の姿となっている。
つまりケンタウロスの馬の部分が黒ヒョウになっているといったほうが理解しやすいだろう。
悲鳴とともに一斉に避難していく人たちをかき分けて、緑子がドンドン近づいていくと異形の怪人物は緑子へと視線を向けた。
「貴方……襲来者ね」
「いかにも……我は慟猛将軍アーニマールという。 其方の名を問おう」
とアーニマールは静かな様子で問いかけてきた。
「私は渡来緑子、特務対策課の者よ」
「特務対策課……それが我らの食事を阻む者たちの名か?」
「ええそうよ! このウィンドシティを、そして地球の平和を守るための組織よ」
「ほう……ならば其方は魅惑将軍に傷をつけた者を知っておるな?」
「魅惑将軍……ああ、あの……ええ知っているわ」
「ならば今ここに呼ぶがよい、我はその者に用があるだけだ。 他のものは傷つけたりもせぬ」
「ならば貴方は場所を変えるべきだわ、ここは貴方には狭いでしょう? それに戦えば他の人間が傷つく可能性が高い。 本気で戦いたいのなら場所は選ぶべきよ」
と、緑子はなるべく人気のない場所へ誘導しようと説得を始める。
「ならばいかにする?」
「私を連れて指定する場所へむかってくれるかしら?」
「良かろう、案内せよ」
とアーニマールは頷き緑子を両手でそっとつかみ緑子が指定した場所へ駆け出す。
「……私が言うのもなんだけど簡単に私のいう事信じていいの? 罠が待ってるかもしれないのに」
と少し困惑気味に言う緑子、それにアーニマールは
「そなたは戦士であろう? しかも相当な腕を持っていると見た。 そんな者がつまらん罠など使う必要もなかろう」
と、まっすぐ前を向いて駆けているアーニマール。
「貴方……一体何が目的で出てきたの? 食事をしに来たようにも見えないし……」
「その通りだ、我は食事に来た」
「え? だって貴方ショッピングモールの人達に見向きもしなかったじゃない」
「我は負のエネルギーなど喰わぬ、我が食すのは純粋な闘気そのものだ」
「え!? 襲来者は負のエネルギーを食べるんじゃ……」
「そういう者も確かにいるが全員がそうではない」
「そうなの……」
と会話をしていたがなにごともなく目的地へ到着した。
「で、其方が我の相手をしてくれるのか?」
心なしか嬉しそうにアーニマールは言う。
「殺し合いがお望みな訳ではないようね?」
「少なくとも今のところは……な」
戦いの興奮が高まればどうなるかは分からないというわけだ、緑子にも覚えのある事なので察しがついた。
「あの……。 一つお願いがあるんだけど……」
「なんだ?」
「貴方たちの王に気づかれないように戦う事ってできないかしら……」
緑子は少し困ったようにアーニマールへ問いかける。
「其方、我らの王をご存知なのか?」
意外そうに聞き返す。
「ええ、ちょっとよく分からない執着されてるみたいで……王が飛んで来たら戦いどころじゃなくなると思うのよね……何とかならない?」
とダメもとで聞いてみる。
「……よくはわからぬが気配を気取られねば良いのだろう? では我のフィールドを作ろうではないか」
と、いうとアーニマールは凄まじい咆哮を上げた、すると景色そのものは変わらないのにあたりの気配がまったく変わっていく。
「これでここには誰も近づかぬ。 では始めようぞ」
とグルルルという声とともに濃厚な殺気を叩きつけた。
「ちょっと! 乙女の準備くらい待ちなさいよね!」
とストップをかける緑子。
「準備?得物でも用意するのか?」
「ええそうよ」
と緑子は首のペンダントに手をかけ口づけるといつもの変身を遂げた。
「これは……なるほど、相手に不足などないな」
と、歓喜に震えたアーニマールは緑子へ一気に距離を詰めて胴体へ向けて拳を叩き込む。
ドガアアァァン! と凄まじい音が響き緑子は後ろへ吹き飛んだが、その体勢からくるりと一回転して立て直し、その反動と共に地を蹴上げそのままアーニマールへ蹴りを放つ。
神速の攻防はこうしてはじまりを告げるのであった。
また短くてすいません、次回から戦闘入ります。