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緑子 色々なものに出会う

渡来緑子(とらいみどりこ)は、このウィンドシティで働く、ごく普通のOLである。


 どのくらい普通なのかというと、顔つきは平凡、中肉中背で人ごみの中に紛れてしまえば彼女の家族ですら探せない、それってもうステルス能力保持者なんじゃ?と思うくらい普通の女性である。

 

 そんな彼女も1つだけ人には話せない秘密を持っていた。

実は彼女の祖先は外宇宙からやってきた宇宙人だったのだ。


 もう何百年も昔の話であるしご先祖の姿かたちも地球人とそれほど変わらなかったという、精々肌の色が緑色だった程度らしい。 


 ご先祖様の民族は代々戦闘種族であり、それぞれの部族最強の者はその証である『戦女神の仮面』というものを身に着け闘いに(おもむ)いたのだという。


 その戦闘能力の高さを売りに外宇宙で『仮面をかぶる傭兵』として荒稼ぎしていたご先祖様は、ある時乗っていた外洋型宇宙船の故障により船が暴走したせいで、次元の壁がなんやかんやあったのが原因でこの地球にたどり着いたらしい。(その辺を緑子も詳しく聞いてみたのだがおじいちゃんもよく分からないと言われた)

 

 そんなご先祖様ではあるが、この地球ではまず勝てない敵などいるわけもなく、かと言って理由なき殺戮は掟に反するのでおとなしく山奥で暮らしていた所、ある時獣に襲われた娘を助けたのがきっかけでその娘と所帯を持つことになったのが渡来家の始まりだという。


 それでも今では大分その血も薄まり、見かけも特に変わらないのであるが、たった一つ先祖伝来の『戦女神の仮面』を被るとその姿が変わってしまうのだ。


 その姿が伝説の『魔法少女』のような姿だったら緑子も歓喜して仮面と契約したであろう。

だが現実とは非情なものである、その姿は緑子にとってはおぞましくとても耐えがたいものであった。


 しかしその仮面をつけると戦闘能力が覚醒し、とてつもない力を発揮できるようになるのは間違いない事実である、普通のOLならばそんな力は必要ないはずではあるのだが今の地球はもう平和な世界ではなくなってしまったのだ。



 …あれは5年ほど前だっただろうか。

突然このウィンドシティの空に亀裂が入り、そこから空を覆いつくすかのように大きな異形の『空に浮かぶ船』が降りてきた。


 亀裂自体はすぐに消えたものの、船はそのまま消えずに残り浮かんでいる、一体あれは何なのかと街はパニックに陥ったが、異形の船はそこから微動だにせずなんの反応も見せなかった。


 政府は対策会議に明け暮れ、街の人たちは不安な日々を過ごしていたある日、異形の船から通信のようなものが発せられているのを政府は傍受した。 その通信内容によればあの船は自らのことを『襲来者』と自称し、異世界とか並行世界などと呼ばれる所から来たものらしい。


 その襲来者はこの世界に住む生き物すべてに自ら手を下し、怒りや悲しみ苦しみなど強い負の感情からエネルギーを奪うためにやってきたのだという。


 政府は襲来者を受け入れる訳にはいかないと、敵対勢力とみなし攻撃を開始した。

だが現代兵器の粋を集めた全力の攻撃をもってしても襲来者の乗る船に傷1つつけることは叶わなかった。


そんな絶望の中、1つの企業が政府に協力を持ち掛けた。

その企業がもつ最先端の技術『魂合金(こんごうきん)』を用いた兵器開発に成功し、魂合金をつかったミサイルにより船を退けることに成功した。


だが打撃を受けた襲来者の船は地球から月の裏側へと逃れていたのだ。

襲来者はエネルギーを奪うため少人数で地球へとやってくるようになった。

移動手段はかつて空に現れた亀裂と同じものが忽然と街中に現れるため防ぐのは難しい、襲い来る襲来者を撃退するために政府は協力企業とともに対策機関を作り上げた、それが協力企業マッドブレイン社の中にある『特務対策課』であった。


 特務対策課では様々な兵器開発をしており、最近では少数精鋭での襲撃に備えて特殊戦闘スーツの開発にも成功していた。今までも汎用型の戦闘スーツは開発されていたのだが、より戦闘に特化した戦闘スーツの開発は難航を極めた、しかしある人物を採用したことにより個人としての戦闘性能を限界まで高めることに成功した。


 個人名はトップシークレットとされコードネームである『メタルバン』という名前だけが知れ渡っていた。

 

 …そういう世界の話はともかくとして緑子である。

彼女はマッドブレイン社で事務方として働いている普通のOLだが、このご時世何が起こるかわからない。


 たとえ警察や特務対策課が日々平和を守る活動をしていたとしても、危険な目にあわないとはかぎらないのである。


「きゃあああ 誰か! 誰か助けてぇぇぇ」

今日もつつがなく仕事が終わり、帰り道を急いでいた緑子の耳に女性の悲鳴が聞こえてくる。


「えっ!? なに? どこから聞こえた?」

と、緑子はキョロキョロとあたりを見回す、すると通りの向うに何人かの人影が見える。


 駆け寄ってみると、女性が襲来者の送り込んでくる『汎用戦闘人形』と呼ばれる警棒のような物を手にした、色とりどりの全身タイツを着ているようにしか見えない人型にからまれていた。


「だ、大丈夫ですか! いま通報しますからっ!」

と緑子はスマホを取り出し通報ボタンを押した、それを見た人形が緑子にも襲い掛かろうと手を伸ばしてくる。


「ちょっと!さわんないでよ!」

と人形の手を払いのけながら周囲を見回すと、あまりの恐怖に気絶してしまったのか襲われていた女性は気絶してしまったようでそのままズルズルと人形に引きずられながらどこかへ運ばれようとしている。


「このままじゃマズいわね…。」

通報はしたがいまだに誰も駆け付ける気配はない。


「しかたないか…」

そう言いながら緑子は首から下げていた細い鎖の付いたペンダントへ手を伸ばし、ペンダントトップへと口づけた。


 するとそのペンダントトップがみるみるうちに、顔をピッタリと覆い隠しまるで皮膚のように変わっていく、その色に合わせて緑子の皮膚の色も濃い緑色に変わっていき体格も大きく逞しくなってゆく。


「さぁ…蹂躙される覚悟はいいかしら?」

変身にあわせて声も変わったようだ、低く野太い声で人形を挑発する。


 戦闘人形に感情があるのかは分からないが、なにかを感じ取ったのか気絶した女性を放り投げて人形どもが緑子に殴りかかる。


人形による攻撃を微動だにせず首を振るだけで躱す緑子、人形に足払いをかけて転がしその腹を踏み潰す。


 別の人形の持っていた警棒を、殴りかかってきた勢いのまま手首を握りつぶし取り落とさせ奪い逆に殴りつける、そうやって人型をあしらっていくうちに気が付くと、動く人形はいなくなり緑子の足元には人形の残骸(詳しく描写するとご飯がおいしく食べられなくなるので割愛)が飛び散っていた。


「あーやりすぎた…この姿慣れてないから手加減が難しいわね…万が一の為に着替え持っててよかったぁ」

などとノンキに自分の服装チェックなどしていると、遠くからサイレンの音が聞こえてきた。


「あー…変身といてもこの恰好じゃ怪しまれるし逃げるか…」

と、踵を返そうとした時


「待て!そこの怪物!」

とどこからか男の声が聞こえる。


「え?怪物? まだなんかいたの?」

とキョロキョロとあたりを見回す緑子。


「そこの緑色した雌オーク!おまえのことだよ!」


「は……? オイ コラ テメー イマナンテイッタ…」

怒りのあまり完全に緑子の瞳孔が開いている


「他にお前みたいな雌オークなんているかよ! そこの女性になにをしようとしてたんだ!」

その声とともに姿を現したのは若い男。


「お前みたいなオークのことだ!どうせその女性にいやらしい事でもしようとしたんだろう!エ〇同人みたいになっ!」

と世のオークの皆さんに大変失礼な、風評被害をまねくようなとんでもないことを言い出した。


「いきなり現れて一体なんなのあんた…」

こみ上げる怒りを抑えながら男に問いただす。


男は得意げに

「俺はこの世界の平和を守るために選ばれた男だ!」

と胸を張る。


「意味が分からない…」

呆れながら男をみていると


「問答無用だ覚悟しろ! 『変わり身!』」

そう叫んだ男が眩しく光り出す。


「きゃあ 眩しいっ」

目がくらんだ緑子だったが、すぐ持ち直し男を見た瞬間すべてを理解した。 


男は銀色の戦闘スーツに身を包み

「メタルバン到着!」

となにやらポーズをとっている。


「ねぇ…そのポーズ恥ずかしくないの…?」

おもわず聞いてしまう緑子。


「これやらないと契約違反で給料もらえねーんだよ」

と、ちょっとションボリしたメタルバン


「そ…そう…あんたも大変なのね…」

とちょっと同情してしまう。


「う…うるせぇ! 敵に情けをかけられてたまるかよっ! 覚悟しろ!」

とメタルバンが剣を抜き、襲い掛かろうとしたその瞬間緑子は


ゾ ワ リ と何か恐ろしい気配が近くに現れたのを察知した。


「なっ! 何か来た!」

気配の正体を探ろうと目を凝らしてみる、するとそこにはフードの付いた黒いローブのようなものを着た人影がひっそりと立っている。


メタルバンもすぐその気配に気が付き警戒しながら

「なんだお前? この雌オークの仲間かっ?」

とローブを着た人影に言い放つ。


「ちょっと! いい加減その雌オーク呼ばわりはやめてよ!失礼だと思わないわけ?!」

いい加減頭にきた緑子はメタルバンに怒鳴る。


「雌オークは雌オークだろうが、 なんだお前雄なのか?」


「ふざけないで!そんなわけないでしょ!」


「じゃあ別にいいだろ」

と、人影を警戒しつつも怒鳴りあう2人。


「ククク…この世界では類を見ぬほどの上質な怒りのオーラをたどってみればこれはこれは素晴らしい…其方、名はなんという…?」


緑子のほうへ徐々に近寄りながらローブの人影は話しかけてくる、その声からして男のようだ。


「名前って…雌オークは雌オークだろうが」


空気を読む力と戦闘能力は比例しないようで、メタルバンは無神経な発言を繰り返す。


「ほう…メスウォークと言うのか…美しい怒りのオーラを持つ其方にふさわしい名前だな…」


ローブをきた男の声が少しはずんでいるように聞こえる。


「メスウォーク…私の元へ来い…其方こそ私のそばにふさわしい。 私のそばでずっとその美しい怒りのオーラのエネルギーを喰わせてくれ」


警戒を解かない緑子の前に立ちその手を差し伸べながら男はいう


「え…あなたまさか襲来者!」


即座に男から距離を取る。


「如何にも、私は襲来者の王と呼ばれる者だ」


嬉しそうに男は肯定する。 その言葉をきいたメタルバンは


「なに! お前が襲来者の王だと! ならばここでお前を倒してすべてを終わらせてやる!」

とローブの男に剣を振りかぶった。


その剣を素手で軽々と受け止める王、軽くその剣を握ると粉々に砕け散った。


「なんだと!魂合金製の剣を素手で握りつぶすのかよ!」


一端距離をとり銃を取り出す


「無駄なことはやめたほうが良いのではないか?」


王は微動だにせずメタルバンを見ている。


「黙れ!この世界の平和を守るために俺は負けるわけにはいかないんだよ!」


「その志は素晴らしいが、実力が伴わぬ者に何が守れるのだ?」


「うるせぇ!」


メタルバンは銃を王に向け全弾撃ち尽くしたが、王に対しダメージを与えたようには全く見られなかった。


「やれやれ…其方のせいで私のメスウォークに逃げられてしまったではないか…」


ローブについたほこりを払うかのように手で払いながら王は言う


「なんだと…」


茫然としていたメタルバンは辺りを見回したが確かに気絶した女性しかいなかった。


「仕方あるまい…次に会えるのを楽しみにしていようぞ…」


ローブから見える口元をかすかに緩ませながら王は亀裂の中へ消えていった。


1人残されたメタルバンは絶望にうちひしがれながら悔し涙を流す。


「勝てなかった…くそっ…おれは…俺はもっと強くなるっ!」


そう誓いながら気絶した女性を救助するために戻っていった…。


* * *


「はぁ…疲れた…」


一度に色々な事態が起こりすぎ、脳が理解することを拒否したためさっさと逃げ出した緑子は、無事


家に戻り湯舟につかりながら今日起きたことを思い出していた。


「しかしあのメタルバンの中の男めちゃくちゃ失礼だったわね…絶対許さん!」

と怒りがまたこみ上げてきたが、はっと思い直す


「あ、ヤメヤメ怒ってまたあの変な襲来者に襲われたくないしもう忘れよう…」


とさっさと布団に入り夢の中へと旅に出るのだった。


この先の自分の運命も知らずに…


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