その7
時間がかかってしまいまして、申し訳ありませんでした。
それでは続きを、お楽しみ下さいませ
(こちらのお話はフィクションです。)
『敵陣地と敵装甲車破壊のため、155mm榴弾砲FH-70と10式戦車が砲撃を行います。発射の際、大きな音が出ますので、ご注意下さい』
その場内アナウンスが終わるとFH-70の回りにいる隊員達は準備を終えたようで、耳を塞ぐ隊員や、射撃指揮官のいる球技体育館側を向いている隊員も見える。
『特科、効力射!撃てー!』
(なるほど、陸自君達は『撃てー!』なんだねぇ?僕達は『撃てー!』って・・・うわあ!)
このアナウンス終了とほぼ同時にFH-70が空砲で発砲すると、砲口から火を噴き、同時に腹の底に響くような発砲音が響き渡る。
白川は砲撃の迫力に、思わず耳を塞いで強く目をつむり、体を縮めてしまう。
(び、びっくりしたねぇ!こんなに体に響くような音がするとは!・・・霧島君達の127mm速射砲もこんな感じなのかねぇ?今日誘えたら、霧島君達からも色んな話が聞けたのかもしれなかったねぇ?)
白川はY2の“きりしま”と、現在出港作業中であろう“てるづき”を思い浮かべ、来年にもチャンスがあれば、“こんごう型”や“あきづき型”、そして今年配属されたばかりの“あさひ型”の護衛艦達等とも開校祭の訓練展示を一緒に見て、意見交換をしてみたいと思った白川は、戻ったら直ぐに自分の手帳に書き込んでおこうと心に決める。
ただ、白川の表情を良く見てみると、『楽しい』という思い以外の感情も混じっているような所も、透けて見えてしまっている風でもある。
そんな白川を置いていくように、訓練展示は進んでいく。
『効力射!弾着、今!』
少し間を空け再び場内アナウンスが響くと同時に、強い破裂音と共に白い煙が上がる。
『戦車、こちら中隊長!赤旗の台、敵装甲車を撃破せよ!』
『こちら戦車!中隊長、了解!』
続けざまの場内アナウンス後、10式は砲身を敵装甲車に見立てた軽装甲機動車に、砲塔を少し分かりやすく左右に砲身を動かしてから照準を合わせて、最初に主砲と同軸の74式車載7.62mm機関銃の空砲発砲に続き、主砲を2発発砲すると、LAVの近くで白煙が焚かれる。
『中隊長、こちら戦車!赤旗の台、装甲車、撃破しました!』
白川は漂う白煙を眺めながら、そのアナウンスを胸中に複雑な思いを抱えながら聞いていた。
新町は時々耳を塞ぎながらも、的確に、主に通信に関してだが小谷達に丁寧に説明をする。
他の部隊に関して説明は薄いのではあるが、とは言えそこは新町も防大卒業生でもあるので、基礎的な部分であれば小谷達にも説明は出来るのである。
そして1度10式戦車が後進すると、高機動車2台が陸上競技場に進入してきて、直ぐに左右へ別れると少し離れて停車し、突撃する小隊を降ろして直ぐに戻っていった。
そして、10式戦車は先程の位置に戻り、赤旗の台に狙いを定め直す。
『特科、こちら中隊長!小隊の配置準備支援の効力射を撃て!』
『特科、中隊長了解!』
『戦車、小隊配置準備の支援射撃せよ!』
『戦車、了解!』
この直後、配置についていた支援分隊と10式戦車が、小銃や機関銃の射撃を開始して、攻撃小隊である第1分隊から第3分隊の配置の後方支援を開始した。
その間にFH-70も、効力射を1発射撃して支援をする。
攻撃小隊が全員地面に伏せた状態で、グラウンドのフィールド内体育館側に配置が完了すると、一旦射撃が中断する。
(陣地奪還作戦が、いよいよ大詰め・・・だねぇ)
白川は眉間に皺を寄せ、握って拳を作っている両手に力を込めると、目を細め不動の姿勢をとっているように背筋を伸ばす。
『小隊長、こちら中隊長!攻撃を開始する!小隊は赤旗の台を攻撃せよ!』
『小隊長、了解!』
新町は森と小谷に解説しながら、時々白川の様子を伺っていたのだが、白川の表情が厳しいものになっているのに気付き、小声で話かける。
「緑ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫。僕は、大丈夫だよ?」
眉間の皺はいつの間にか見間違いだったように消えていて、新町は気にしながらも追及はそれ以上しなかった。
『分隊長、こちら小隊長!小隊は赤旗の台を攻撃奪取する!事後の前進は分隊前進!当初1、2分隊射撃支援の元、3分隊前進せよ!』
『分隊長、了解!』
訓練展示はいよいよ最終段階に入り、会場も固唾を飲むような雰囲気に変わり、説明を聞いていた森と小谷もフィールドに展開している分隊に対して緊張感を持って注目している。
会場のアナウンスは、FH-70や10式戦車の砲撃音に注意を促している。
そして、白川が会場の奥に見えるFH-70を見据えている中、フィールドでは突撃の開始を待つ。
『特科、効力射!撃てー!』
同時にFH-70は射撃音を響かせると、数秒後、弾着をしらせるアナウンスが聞こえてきたのだが、白川の耳には緊張感がこもった雰囲気に下唇を軽く噛んでしまう。
アナウンスから間髪入れずに破裂音が聞こえると、一拍の間を開けて第1、第2分隊の小銃からの3点射と、10式戦車の機関銃の射撃音が聞こえる。
第3分隊も敵に応戦するように射撃しながら、2~30m程前進して、体を伏せる。
断続的に10式の主砲とFH-70も支援砲撃を加えている。
次いで第1、第2分隊が第3分隊達の支援射撃の元、前進を開始した。
(艦長はどういう・・・あっ!)
分隊が数m進んだ時、艦長がこの訓練展示を見せたかった意図を考えていた白川は、突然の出来事を目撃してしまう。
前進中の分隊の1人が転倒してしまったようで、白川は単純にこういう事もあるのかと考える。
(珍しい事もあるんだねぇ?)
しかし、普通に転倒したにしては中々立ち上がらず、何らかのハプニングが起きたのかと白川は訝しむ。
すると、転倒した彼の後方から2名と、先に前進していた2名が倒れた学生の元に駆け寄り、1名が学生を作られた草むらに一旦隠すように引きずって行くと姿勢を低くし、3名が立て膝をつきながら、それぞれが予め決めていたように、学生舎と左右の3方向に89式小銃を向けて周囲を警戒、時折赤旗の台方向に射撃を行っている。
白川が心配そうな表情でその様子を見ていると、そこに無線のアナウンスが入る。
『中隊長、こちら小隊長!第2分隊の1名が負傷!』
白川は少し表情を強張らせて身構えてしまうのだが、冷静に考えてアナウンスが入っているという事は状況のシナリオ通りだと思い直して、小さく安堵のため息をつく。
負傷者役の学生が別の学生に肩を組まれ、他の3人に護衛されながら白川達と反対の体育館側へと、半分引き摺られるように、幌が外された高機動車に向かって行くのを視線で追っていると、腕に2回何かが当たる感覚がある。
意図時に感じてそちらを向くと、森が運動場を見ながら小声で喋りかけてくる。
「白瀬1尉、ちゃんと見てらっしゃいますか?」
森の心配そうな声に、白川は運動場の方を向いて小さく縦に頷く。
2人の横では新町が小谷に対して説明を続けているようで、高機動車を指差したりしていたり、小谷が質問したのか耳を寄せる素振りを見せたりしている。
「森君。ちょっと聞いても良いかねぇ?」
訓練展示が続くグラウンドに視線を向けたままで、白川が森に小声で聞くと、森は白川の方へ視線を向ける。
「これを、防衛大学校の陸上要員の学生君達は、学習しているんだよねぇ?」
森は首肯して白川に答えたのだが、質問された意味が分からず、白川もそれ以降沈黙してしまったため、森は白川の横顔を見つめるしかなかった。
一方で同時刻、球技体育館側の観覧場所では大江山達4人も同じように訓練展示を見ているのだが、大社は“5人目”を肩車していた。
一見、5~6歳位の男の子のように見えるのだが、時折FH-70や赤旗の台方向を指差しながら、まるで状況説明をしているように振る舞っている。
「あと2発だけ発砲したら、訓練展示は終了しますよ。」
この男の子の服装は、どこにでも販売されているような子供服なのだが、彼が被っている帽子は第1特科隊の部隊識別帽である。
「あなたはとても詳しいですね。教えていただきありがとうございます。」
丁寧にお礼を言っている大社は、子供の様子や口調等から陸上自衛隊の子供である事は見当をつけている。
実を言うと大社だけでなく、他の3人も同じ理由から見当をつけているのだが、子供の方は隠せていると思っているようで、逆に言うと大社達も自分達から切り出すこともないと、彼に対して黙っているのである。
さて、陸自のFH-70らしき子供が、何故大社に肩車をされているのか説明をするために、訓練展示が始まる前まで時間を戻すことにする。
体育館側で位置取りをしていた大社達の近くで、必死に見物客の隙間を見つけようと背伸びしたりあちこちを見回しているこの子供を、偶然黒川が発見したのである。
黒川の発見に続いて、藤原、大社、大江山も視認するのだが、大社と大江山は酷く驚いている。
大江山にとっては初めての経験であるが、大社については数度経験している事ではあった。
しかし、大社はSH-60達との邂逅以外で、ここまで近寄られて気付かなかった事は無く、大社は警戒と困惑で胸中は一杯になってしまった。
そんな大社ではあったが、彼に興味を抱いたのもあって、話しかけてみることにした。
彼からは、訓練展示を観たいだけだとの返答を得るが、大社とそばで聞いていた大江山は違和感を同時に感じてしまう。
大社は無言で手を耳に当てた後、肩車をする事を彼に提案すると、彼はとても喜んで笑みを見せながら大社にお礼を述べてくる。
黒川はその様子を見て慌てて彼に対して、本当は迷子なのではないか等質問していて、それを聞いた藤原も、本部へ行って両親を呼び出した方が良いのではないかと黒川と大社に提案する。
それを聞いた子供はというと、かなり慌てた様子を見せながら決して迷子ではなく保護者もすぐ近くにいて許可も得ていると訴えてくる。
藤原の提案に対して酷く狼狽する様子の子供に、大江山はしゃがみこんで目線を合わせると、努めて優しい口調で話しかける。
「この訓練展示は時間がかかるようですけども、待ち合わせの時間等は保護者の方と決めていらして?」
「はい。勿論、決めていますよ?」
彼ははっきりと返答をして、不審な点は黒川達には感じられていないようだが、大江山には何か勘のようなものが働いているのか質問を続ける
「何時に、どこで、なのかしら?それに答えられないのなら、本部にお願いしてご両親を呼び出さないといけなくなってしまいますわよ?」
口調こそ柔和な雰囲気で聞いているのだが、視線は黒川と藤原に気づかれないようにしながら、大江山は彼を射抜くような鋭い視線を向ける。
開校祭本部に連行される事に何らかの不都合が生じるらしい彼にとって、黒川と藤原は気付いていないようだが、相当な圧力を橋立から受けていると思われ、渋々といった様子で質問に答えざるを得なくなったようである。
「えっと、あの・・・時刻1200、場所は球技体育館入り口前にて会合予定・・・です。」
大江山は彼からそれを聞くと、大人しく待っているように言って3人に内緒話で周囲に聞かれないように配慮する。
「どうやら彼は、陸上自衛隊の装備さんのようですわね・・・。」
「ちょっとびっくりしましたけど、あの言い方ですから、私でもすぐに分かりました。」
「でも橋立1尉?黒川3曹?それから出雲1佐?このまま放ってても良いんでしょうか?」
「無線で橋立さんと話してましたが、1人でいるというのは彼と陸自との間に何か問題があったと考えるのが自然です。陸自が彼を1人だけにするのはとても考えられません。それに、問題があると推測出来た以上、見て見ぬふりも出来なくなりましたね。」
「じゃ、じゃあ、出雲1佐?どうするんですか?」
「このメンバーで1番背の高い私が、当初提案していた肩車をすれば、陸自の隊員さんも遠くからでも、多分彼を見つけてくれるでしょう。」
出雲はすぐに子供の方を向くと有無を言わさず肩車して、すでに訓練展示の始まった陸上競技場の方を向いて見学を始め、今に至るのである。
訓練展示も終了し、午後からの装備品展示に向けて、体育館前に移動して停車している10式戦車の周りに赤いカラーコーンと黄色と黒のコーンバーを使って区分けをしたりしている隊員達に混じって、数名の隊員が誰かを探すように人混みに目を向けている。
その中の1人が別の2人の隊員と話をした後、1人は体育館奥側の駐車場の方に、2人は大社達の方に向かってくる。
大社に肩車をされていた子供は、彼等に気付いたのか少し顔色を青ざめさせ、それを見た大江山は、最初の推測が当たったことと、面倒な事になりそうだというもう1つの推測も当たりそうな事に、ため息をつく事しか出来なかった。
大社達に近付いてきた陸自の隊員は第3射撃中隊所属で、その子供は大社から見て右側にいる2曹の甥っ子だと説明を受ける。
だが、彼は大社から降りる素振り見せず、しまいには駄々をこね始める。
その場の全員が困ってしまうのだが、大社は2人だけにして自分に説得させて欲しいと願い出る。
2陸曹達は渋るも、大社から離れたがらない彼の様子にお願いをせざるを得ない。
そこで大社は2陸曹達から見える範囲で人の少ない場所に移動し、彼を肩から降ろして目線を合わせるために片膝を地面につける。
「どうしてこんな事になったのか、教えてもらえますか?」
大社の質問にも答えず、うつ向いて地面を見てしまう。
何度か違う言い方で質問しても反応は一緒で、大社は無線で大江山に相談すると、その無線を繋いだまま、彼にこう切り出した。
「あなたは第3射撃中隊のFH-70さんで、間違いありませんね?」
大社の言葉に、先程隊員達に見つかった時よりも青ざめた顔をゆっくりと向ける。
「どう、して・・・?あ!もしかして、僕のしゃべり方が子供っぽくないからですか!?」
彼は驚いた表情のまま固まっていると、大社は首肯する。
「子供らしくありませんでした。それに、足元にいたあなたの存在を、黒川さんに指摘されるまで、私も大江山さんも気付かなかった事もそうです。私達はあなたに会った時から、人間ではないと気付いていました。」
大社は言葉に気を付けているのか、ゆっくりと言葉を選ぶように彼と話をする。
「あの・・・、貴女の事・・・聞いてもよろしいでしょうか?」
警戒してるような彼の言葉を聞き、少し悩みながら左手を耳に当てる。
少し離れた所にいる、出雲と同じように耳に手を当てている橋立はFH-70の彼と似たように青ざめさせているが、黒川達や2陸曹達がいるからなのか、大きく行動をするような事はしていない。
「あなたの事を言い当てて、自分の事を隠すのは・・・よくないですね。ですが、我々にも決まりがありますので全部お教えする事は出来ません。そこは了承願いたいです。」
大社はそう言うと、左手を降ろして深呼吸を数回して、FH-70に対して自分の正体をただ一言で明かした。
海自の自衛艦である、と。
例え出雲であってもこれが限界であろうと思われ、しかも艦魂たちの守則からは逸脱していると思われる。
出雲は自分の信義と艦魂の守則の狭間にあって、このような際どい選択をして実行したのである。
「何故こんな事になっているのか私には分かりませんが、仲間を心配させるような事は、止めておきましょう。」
そう言って2陸曹の方へ向いた大社につられ、FH-70も同じように2陸曹を見ると、心配そうな表情で彼等を見ている。
一緒にいた別の隊員は、既に別の場所へと離れたようである。
「あなたも知っていると思いますが、隊員の皆さんは、配置替えがあったり、術科学校に戻って学習しなおしたり、昇進や退職等があったりして、いつまでも一緒にいられる訳ではありません。心配していらっしゃる、あの2等陸曹の方ともいつ別れが来てしまうか、分からないんです。」
大社はFH-70に視線を戻すと、彼は2陸曹を見たまま、微かに肩を振るわせている。
「ごめんなさい・・・。僕、心配させるつもりは無かったんです。僕、少し前から、皆さんの役にたっているのかな?って疑問に思ってたんです・・・。だから、ここに来るって聞いた時、他の人達とFH-70が一緒に訓練しているのを、別の場所から見たら、役にたってるか、分かるんじゃないかな?って・・・。でも、分からなくて・・・。そう思ったら、自分は皆さんと一緒にいて良いのか分からなくなって・・・戻りたくなくなって・・・それで・・・駄々をこねてしまって・・・」
少し涙声になりながら、FH-70は大社の方へ向きなおる。
その目は潤み、彼の表情には不安な様子も表れている。
FH-70の言葉に思う所があったのか、大社は悩む素振りを見せたあと、わざと表情を引き締めて真剣さを醸し出す。
「焦る必要はありません。それに、自分を俯瞰して見てみようするのは、悪い事ではありません。けれど、黙ってやったのは良くないですね。」
「申し訳ありませんでした・・・。」
FH-70の素直な謝罪を聞いて、大社は笑顔を見せる。
その様子を2陸曹と同じくらいの距離にいる黒川は、大社の説得が成功するのか不安に思いながらも、それとは別に、大社とFH-70が親子のように見えて、微笑ましくも思ってしまう。
「2等陸曹さん達にちゃんと謝って、お互いによく話し合ってください。役にたててるかどうか、だけではなくて色々と、ですよ?」
大社は立ち上がると、FH-70の肩に手を添えて2陸曹の方へ回れ右をさせる。
「FH-70さん、最後に私からお願いがあります」
大社は右手を差し出して見下ろしながら言うと、FH-70は疑問を浮かべた表情で大社を見上げる。
「申し訳ありませんが、私の事は民間人としておいて下さい。勿論、あなたの事は言い触らさないように、あの3人にもきつく言っておきます。」
「分かりました、お約束します。それから・・・ありがとうございます。」
彼は左手を差し出して大社と繋ぐと、2陸曹の元へと歩いていった。
「甥がご迷惑おかけして、申し訳ありませんでした。」
到着して大社がFH-70と繋いでいた手を離すと同時に、2陸曹から謝罪を受ける。
「いえ、特に迷惑などかかっていませんので、ご安心下さい。ただ・・・。」
「何か、気になりましたか?」
大社の言葉に、2等陸曹は無意識に緊張した様子を見せる。
恐らく2陸曹は、彼の正体を聞かれるのでは、と思っての事であろうと思われる。
「彼と保護者さん達との間で、コミュニケーションが不足しているように感じました。」
「コミュニケーション不足?ですか?」
所が予想に反して思ってもいない事を言われてしまい、2陸曹は頭に疑問を浮かべながら、大社に聞き返す。
「ええ。これは私の想像ですから、間違っているかもしれませんが、やや気になったので。」
「そう・・・でしたか・・・。」
「よく、話し合ってあげてください。」
彼等との別れ際、大社はFH-70から横に肘をはる、所謂“陸空式”の挙手敬礼を受け、それに対して大社は無帽ではあったのだが、コンパクトな形式の、所謂“海自式”敬礼で答礼を行った。
大社がその場を離れる陸自の2人を見送っていると、大江山が心配そうに話しかけてくる。
「霧島海将補へ御自分の事を報告なさるのなら、私、庇いますわよ?」
大社は礼を述べるものの、しかしその必要はないと答えて、黒川達と共に大隊学生舎へと見学と休憩のために歩いていったのである。
お楽しみ頂けましたでしょうか?
次の投稿予定は3月23日(金)となってますので、次回も是非お楽しみに!!
(^^)ノシ




