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ダンジョンズガーディアン  作者: イチアナゴニトロ
19/49

9話・裏

 交易路から少し外れた草原につい先日、唐突に出現した謎の城の存在は、調査に赴いた勇者と聖女が騎士団を率いていながらも、勇者以外が全滅した。


 騎士団、しかも名将と名高いバルドス将軍直々の依頼を請けた冒険者の面々は、いずれも口が堅く、アルファスト出身者で徒党を組んでる者たちだけ。


 その衝撃的な内容が国民に知れ渡るより先に、可能な限り情報が流れるのを防ぎつつ、悪魔の城を攻略する為の偵察であると、将軍に頼まれては嫌とは言えなかった。


 依頼を聞いた全員が出来れば逃げたかったが、機密ともいえる情報を聞かされたからには、逃げれば今後故郷で仕事ができなくなると脅されてるのも同然。誰も嫌とは言えなかったのだ。


 草原にポツンと建つ巨大な城壁を眺めながら、冒険者ロビンは改めて逃げたくなった。


「あ~あ、貧乏くじ引いたなこりゃ。城持ち悪魔は大抵とんでもなく強くて、ウジャウジャ化け物飼ってるって話だぜ」


「お伽話の英雄様みてーに悪魔倒して財宝ガッポガッポってのは、俺らみてーなのを犠牲にして情報集めた成果だって、村の長老言ってたけどホントだったんだな……はぁ逃げてぇ」


 せめて城壁内部の構造だけでも調べれば最低限仕事は果たしたことになるが、そうすると今度は内部の城に侵入する任務が与えられる(押し付けられる)だろう。


 ロビンの仲間たちは報告したら、夜逃げ同然にシーガルかオルザインに逃げようと決めていた、監視用の使い魔が憑りついてるので、会話で相談は出来ないが。今の愚痴も聞かれてるがこの程度は見逃して欲しいものだ。


「城門は空いてるがあそこから入るのは危険だな……」


「かと言って城壁を登れるか? 継ぎ目が一切ないし、この高さは無理だ」


 数組協力して城の周囲を一回りしてみても、南側にだけ門があり、そこからしか入る事は出来ない。空を飛べたり、特殊な技能で城壁を超える事ができる冒険者徒党以外は、覚悟を決めて城門から悪魔の城へと侵入する。


 門を潜るとその先はまばらに木の生い茂る雑木林のようなもの。視界は悪くないが、魔物が隠れる場所にも不自由は無さそうだ。そして雑木林を抜けた先にまた城壁が遠くに見える。


「気をつけろ、いるぞ。魔獣の類だ」


 仲間の警告に気を引き締め城壁を目指す。恐らくあの壁の向こう側が悪魔の城、入り口を見つければ最低限は仕事を果たしたと言えるだろう。


 四人で木々の陰に隠れながら進む、どういう訳かそこかしこに魔獣の痕跡が見えても肝心の魔獣は見たらない。


 内側の壁の南側に到着したが、門の類は見つからなかった。当然だ、ダンジョンは住む者の利便性など考えず、ただ侵入者を拒むだけのものなのだから。


「単純に北側にある可能性が高いか」


「多分な、俺たちに気付き魔獣を一ヶ所に集めてるのかもしれない」


 壁伝いに城壁の北側を目指し進むロビンたち。ここに来るまでに一切魔獣を見ない事を、運が良いのだと思うほど楽観視はしていない。せめて、壁の向こうへの入り口を見つけなければと更に進む。


 耳を澄ますと何も聞こえない、完全な静寂に包まれた雑木林……瞬間ロビンは気付いた、魔獣の声どころか、葉擦れの音すら聞こえない! 仲間の呼吸する音すらない!


「~~~~~っ!」


 逃げるぞ! 声が出ない、警告したつもりが自分の耳にすら届かない。異常を察した仲間たちは声がなくとも頷き合い、距離を取って逃げ出す。纏まってたら死ぬ、せめて誰か一人でも悪魔の城から逃げ出さなくては!


 仲間と距離を取り南の城門へロビンは駆ける、走る。途中で目に入った血だまりの中にある見覚えのある防寒具から目を逸らし、その先には……三対の漆黒の翼を持つ悪魔が……上空から彼に手を向けて……抗いようのない暴威の前に命の灯は掻き消された。


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