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ダンジョンズガーディアン  作者: イチアナゴニトロ
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7話

 ダンジョンとは地上と魔界に通じた穴を開け、太陽の恩恵を受けた地上でのみ生成される生命力、即ち生き物全てが持つ精気を魔界に流れ込むようにする為の重要な施設だ。


 地上とつながった魔界の穴周辺は、不毛の荒れ地が広がる魔界にあっても生命が実を結ぶ土地となる。それ故にその穴を守る城を持つ者は貴族として絶大な権力を得られる。何故ならば魔界に恩恵を齎してくれる悪魔の英雄ともいえる存在なのだから。


 そしてその貴族を絶対的な戦力で束ねるのが、魔王と呼ばれる規格外の悪魔だ。お館様の父上は6柱存在する魔王の一柱で当然自身も地上と繋がるダンジョンを持っている。


 ただ単純に穴を開けると言っても簡単ではなく、相当魔法的な儀式のアレコレや諸々のコストがかかる。なので、地上にやって来たダンジョンを持つ魔将は、先ず自分で精気を稼いで魔界に送ったうえで城の階層を深くしていくのだ。


 穴が無くても精気を送れるならそれで良いんじゃないかと思ったが、要するにポリタンクに入れて一個ずつ送るか水道管を繋げるかの違いらしい。


 さて、今回聖杖を魔王様に贈った見返りとして、城の階層を増やす貢献度を肩代わりして貰い、一気に城の階層が増えた。


 まず今俺がいる最下層が地下十階であり、地下一階から九階までは階段で繋がっただけの大広間となった、また地表部分の城を囲むようにもう一層の城壁が出現した。


 これらはダンジョンの主、魔将としての権限で、お館様が自由にカスタマイズできる。後俺たち眷属であっても魔将の信任を得る形で指定された階層のみだが自由にできる。但し予算内な。


「お、おお! 凄いぞ一気に城が広くなったな! お姉様でさえ地下五階で失敗したと言うのにいきなり地下十階だ!」


 ん? なんか今聞き捨てならない事言ったなお館様。尋ねるとお館様の姉君は200年前に独立したのは良いけど、結局地下五階までダンジョンの階層を深くしたら人間の侵攻によってダンジョンは陥落。


 魔界に逃げ帰る事も出来ず、地上に取り残される羽目になったそうだ。魔王様とかの繋がってるダンジョンを訪ねてはどうかとも思ったが、そもそも辿り着くだけでも困難な上に、失敗した者ははぐれ悪魔として家族の縁とか切られるらしい。


「うむ、魔界と地上を繋げる城を持つのは悪魔にとって栄達への道だが、当然その難易度は高い。強欲な人間は勿論あまりに目立つ者には、天使の尖兵が襲ってくるとも言われているからな」


 ……ヤバい、目立ってるよ、お館様めっちゃ目立ってるよ! 誰だよこんなクソ立地に城を立てたの! 推薦した奴ぶっ殺したい! お館様の姉だから手は出せないがな!


「安心するが良い、お前と黒天姫はお父様の血を飲むことで、今や上位の悪魔にも比肩する程の力を得ている。まぁまだ自覚は無いだろうがな」


 ちなみに現在簡易水晶では測定の上限であるレベル50を超えてるので、あまり意味が無くなってる。後でもっといい奴買っておこう。


「最下層以外はお前たちに一任する、自由にせよ」


 揺れが止まったので落ち着きを取り戻したお館様は、水晶の間に戻ろうとして、思い出したように気絶している黒天姫の髪の毛を抜き、俺と同じように身代わり人形の中に埋め込む。


「お前たちが致命傷を負うような事態になれば我が動く、それまでは精気を集めるのに注力する。任せたぞ」


 騎士団がやって来る時に全部戻そうとした分身の一部だけは戻し、聖女だったクロの血を飲むことで、ちびっ子のままだがある程度身を守れるようになった。その為集結させようとした分身は再び周辺国に散らばらせてる。


 分身を通じて精気を集めるのは相当の集中が必要で、言うならば左右の手で別々の作業をしながら会話するようなモノで、分身が多ければ多いほど神経をすり減らすのだ。


 それを補佐するのが水晶の間の『城主の証(ダンジョンコア)』であり、これが奪われるともはや城を放棄するしかない。しかもこれがまた人間にとってとんでもない価値があるものだから、誰からも狙われるのだ。


 水晶の間に籠ったお館様を見送り……さて、怯え切って震えてる妹ちゃんをどうするかな?


「自己紹介がまだだったな、俺は紅雪鬼と呼ばれる悪魔だ、お前の姉の同僚に当たる。お前は?」


「……アルファスト王国第三王女、メルリーシャ・アルファスト・ヴェルウッドと申します」


 マジか、黒天姫の奴、姫とか言われてたけど本当にお姫様だったのか。


「ではメルと呼ぶ、連れて来た以上帰すわけにもいかないが、無体な真似はしない。まぁ多少窮屈かも知れんが、俺や黒天姫の話し相手でもしてればいいし、やりたいことがあるなら好きにしろ。必要なものや欲しい物があれば用意する」


「は、はい。あ……あの生き血を啜ったり乱暴な事をしたりは……」


「お前の姉同様、俺も元はと言えば人間として暮らしていた。お前くらいの歳の娘にそういうことをする気はないし、血を吸うとしてももう少し大人になったらな。ああそうだ紅雪鬼だと長いな、俺の事は……そうだなセツとでも呼べ」


 黒天姫め、この子すっかり怯えてるぞ、攫ってくるのは兎も角何を吹き込んだんだ?


 大量の資金はあるから城は自由に弄れる、俺たちのプライベートな空間を作ってもまぁ問題はあるまい。最下層以外は好きにして良いそうだから……そうだな、地表の城に俺たちが普段生活するスペースを造ると……メルが凍死するな。


 地表部分を俺の紅い雪で埋めるのは防衛上必須だから外せないし、既にかなり積もってるから今から除去とか面倒臭い。まぁ俺一人で決めないで黒天姫と相談しながら決めるか、あいつ空飛ぶの好きだし地表部分に住みたがるかもしれないからな。


 まだ寝てるし、起きるまでは自分のプライベート空間でも作ってみるか。少し悩んだ末に最下層に降りる階段の近く、死角になって隠れた場所に俺が寝る場所を確保する事にした、まぁ敵を最下層に行かせないのが俺の役目だし、最期の階段の近くで寝泊まりするのが良いだろう。


 一応そこにメルも住まわせる事にした、黒天姫からするとメルは俺へのプレゼントだ。アイツに返すような真似するとへそ曲げる可能性があるからな。


 日本の一軒家程度の広さを確保して生活必需品を買い揃え、後は家事ゴーレムなる物を購入する、お姫様だし必要だろう。


 話してるうちに少しは打ち解けたようで、話してて笑顔が増えた気がする、あくまで気がする程度で些細な事で全身を硬直させるけどな。そうして部屋の準備をし、女の子の生活に必要なものを揃えてるうちに黒天姫が目を覚ました。


 魔王の血の影響か、二対だった黒い翼は三対に増え、こめかみから血の様に紅い角が生えていた。そういや俺も見てないけど山羊の角が大きくなった気がするな。


 それを指摘すると嬉しそうにするので理由を聞いてみると、翼が増えたからさらに速く飛べそう、との事だ。お前本当に空飛ぶの好きだな。今すぐにでも試し飛びに向かいそうなのを止めて、今後の話し合いをする。


「先ず地表部分の護りだが、城が広くなり城壁が二重になった。城の部分を第一城壁内、その外側を第二城壁内と便宜上呼ぶぞ。第一城壁内は俺の紅い雪が積もってるので、そのままゴーレムに護らせるとして。第二城壁内はお前に任せていいか?」


「お任せください紅雪鬼様、空が飛べるなら私が賊を一歩も城内に立ち入らせませんわ」


「俺が守る第一城壁内部と、お前が担当する第二城壁内部を隔てる壁は一応寒気が漏れないようにするから、お前の好きな魔物を用意して良いぞ、魔王様から大量の資金を頂いてるから、余程高い物でなければ好きにして良い」


「ではワンちゃんを沢山飼っても?」


「好きにして良い、あまり弱いのばっかりでも警護の役に立たないからそれなりに強い魔獣にしろよ?」


「勿論ですわ、ちょっと高いけどケルベロスちゃんとか良いですわ。あっヘルハウンドちゃんが群れで購入すると割引ですわ! 悩みますわね、紅雪鬼様はどうでしょう?」


「その前にお前も俺の事はセツで良い、これから付き合いが長いんだ敬語もいらない。それでどうでしょうかと言われても、俺はどっちかと言うと犬よりも猫が好きなんだが」


「成程ワンちゃんだけでなく猫ちゃんもですわね。ではセツ様の意見も取り入れてサーベルタイガーちゃんも購入いたしま……しますね。ははは、どうにも話しにくいのでおいおい慣れていきますわ、それと私の事も愛称で呼んでくださいませ」


「それじゃクロで良いか? クロの担当する区域だから気に入ったのを買えばいいさ。それと第一城壁に入る門の近くに、お前のプライベート空間と言うか普段寝泊まりする拠点を造るか?」


 本当は第二眷属のクロは俺の一階層上に待機してるべきなんだろうけど、空飛ぶの好きな奴だし地表部分に寝泊まりした方が良いと思うんだ。


「そうね、気が向いたときに星空を飛ぶなんて素敵だと思いますわ……ふふふ愛称で呼び合うなんて初めてだから嬉しいですわ」


「紅い雪が積もってる場所の上空だと落ちるから、横着して飛び越えないで、ちゃんと門を潜るように気をつけろよ。さて、地表部分はこんなもので良いとして後は地下一階から九階だが……」


 話し合った結果、基本的に全階層迷路にして、偶数の階層は気温を高くする仕掛けを施し、徘徊させる魔物もそれぞれの階層ごとに属性を別に用意する。奇数の階層は紅い雪で覆いつくし多様なゴーレムを徘徊させることにした。


 大量の資金があるので魔物をケチるのは無しだ、ダンジョンのそこかしこに罠も充実させ、今日の所はここまでにして、メルがいるであろう個室で休むとするか。

ちなみにエクセルで作っためっちゃ雑い補足用地図


ダンジョン周辺の四ヵ国

挿絵(By みてみん)



地表の城

挿絵(By みてみん)



最下層

挿絵(By みてみん)

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