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ノクターン連載がちょっとスランプ気味なので気分転換に投稿します。
一応一章の終わりまでは毎日投稿予定です
呼びかける、己の声に応える魂を。本来肉体を持つ者には触れる事はおろか、存在を知覚する事すら不可能、しかしすべての生き物が遍く宿す魂。
この世で唯一神聖不可侵なる魂に呼びかけ、見て、触れて、変質させることを可能とする彼女は探す。誰よりも生きたいと願う魂を、死してなお生を渇望する身勝手で強靭なエゴの塊を。
呼びかける、さぁ生きたいのだろう? ならば輪廻の輪から跳ねて見せよ。我が命をくれてやろう。我が新たな肉体を与えよう。だから我もモノになれ。
彼女から見て遥か頭上では煌めく無数の星々が、濁流の如く輪を描いている。星々の一つ一つが魂、生き物は死して輪廻の輪に戻り、生の穢れを死によって洗い流し、再び現世へと還るのが世界の理。
何度も何度も呼びかける、やはり無理なのだろうか? どれほど強く願っても世界の理を抜け出す奇跡には届かないのか? 頭上にある数億、数兆、数京、数亥、そんなちゃちな数でなく、もはや無限に等しい魂達の中に世界の理を打ち破る魂は……いた。
微かに輪廻の輪から外れ、引き戻され。また少しだけ輪から外れ、引き戻され。また輪から外れ、引き戻す力を振り解き。無数の魂の濁流を突っ切って彼女の許へと堕ちてきた魂。
彼女は奇跡を起こし辿り着いたその輝きを宝物のように胸に抱き。己の血を混ぜると青白いそれは瞬く間に深紅に染まり、同族へと変質させた。
「ふふっ、あははははは! よくぞ我が呼びかけに応えてくれた。さぁ共に生きよう、お前が現世で過ごす肉体は既に用意してあるぞ」
深紅に煌めく宝物を抱きしめるように、彼女は現世へと戻る。