2話
「勇者?先日亡くなったとニュースであってましたよ。」
「それは6代目勇者、神崎ネネ様のことだと思います。魔王討伐の際に命を落とされたと聞いています。ですので、あなたは7代目勇者ということになりますね、神代緋色さん。」
そういってほほ笑むアイリーンの話をどうしても理解することができない。いや、完全に緋色の脳は理解を拒絶していた。
「ちょ、ちょっと待ってください。勇者?7代目?意味が分かりません。今は冒険者としてパーティーに入れていただけるかの面接だと聞いています。勇者とかいきなり言われても身に覚えもないし、人違いではないですか?」
伯爵ともなれば王国内でも中々に力を持つだろう。そのパーティーといえば他のパーティーからスカウトしたほうが戦力の補充になるはずだ。
わざわざルーキーをスカウトする意味がわからない。
緋色はそう考え、もしかすると自分は人違いで呼ばれたのではないかと思うようになっていた。
「いいえ、あなたをスカウトしに来たのは間違いありません。勇者ということも、確証があるわけではありませんがほとんど|当たり≪・・・≫だと思っています。おそらく勇者紋の場所が問題ですね。」
話を聞き、人違いでないことにホッと胸を撫で下ろした。さすがに異世界で就職難民はまずいと緋色もわかっていた。
「私たちグレイ家は今現在人材不足の状態です。ですので一刻も早くパーティー入り、そして任務をこなしていただけると助かります。」
アイリーンが少しではあるが余裕を無くしているように感じられた緋色は、少しいじわるをすることにした。
「わかりました。パーティーへ参加しましょう。勇者というのはひとまず置いておいて、自分も伯爵家への就職は非常にありがたいですし。」
「ただ、一つ条件があります。これを飲んでいただきたいです。」
「条件?」
アイリーンの顔に少しばかり警戒心が浮かぶ。
「ずうずうしいと思わないでください。ただ、もし自分が勇者でなかったとしても、雇用していただきたいということです。人違いだったのでクビというのはちょっと・・・。」
「そんなことしませんよ。安心してください。」
そう言ったアイリーンは表面上警戒心を解いたように見えた。
そこへ、緋色が更なる条件、本命を告げる。
「次いでと言ってはなんですが、さきほどお話されたように勇者紋とやらが自分の体のどこかにあるかもしれないんですよね。」
「え、ええそうですね。腕だったり胸だったりと人によって場所は変わると聞いていますが身体のどっかに5センチくらいの大きさであるそうです。」
「だったら。」
会議室に入ってから初めての満面の笑みで緋色は告げる。
「いまから自室に戻るので身体の紋章を一緒に探してももらえませんか。」
外を見るともう夜になっていた。
伯爵令嬢は一瞬息を飲んだ。まさかと思ったのだろう。
しかし緋色はさらにダメ押しをする。
「どうか一緒にさがしてください。俺の部屋で。」
「・・・はい。」
アイリーンは小さくうなずいた。