▼おとも の しょうかい !!
「じゃ、紹介するよ、勇者さん」
そういってビビは六人の少女を前にしてやっとレンを放したのであった。
「勇者…さん…?」
「んー?だってレンって呼ぶのは何か地味だし、戦士っていうのも役職だし、どうせならゲーム風に勇者って呼べばカッコいいかなーって」
ビビは相変わらずあっけらかんとした態度でにっこりと笑う。
「いやいや、ゲーム風とかメタいって。ここいちおう中世風っていう設定だから」
「えっ、中性?」
「お前の耳はどうなっているんだ」
中性的なのはお前だろうが。
「じゃーただのレンでいいや。みんな、紹介するよ。こいつがただのレン。ただのレン・アルディラート」
「『ただの』までが名前みたくなってんぞおい!」
彼女とならいい漫才が出来そうな気がする。
そう思いながらも六人の女子達に視線を向ける。と、その中の一人、レンより2、3歳ばかり年上だろう、腰までの黒髪の少女が一歩歩み出た。
銀色に輝く鎧がよく似合っている。腰には二本の剣を刺している。
彼女は藍色のキリリとした瞳をレンに向けた。
「今回の旅の共をさせてもらう。剣士のシーナ・ターコイズマインゴーシュだ。この中では一応最年長だが、シーナと呼んでくれて構わない」
さっぱりとした男の様な口調。それでいてなぜか気品にあふれた少女。
「よろしくな、ただのレン」
「レンです。レンですシーナ」
その次に歩み出たのは、ほわほわとした雰囲気の愛らしい少女。修道服を着ている。肩にかかるほどの長さの金髪から覗く尖った耳を見るに、彼女はいわゆる『エルフ』なのだと分かった。
「マリィはね~、マリィ・ホワイトヒーラー。僧侶やってるよ~。回復魔法ならお手の物だよ~。クォーターエルフだよ~。よろしく~」
ゆったりとした口調だった。話していると疲れそうである。
その次に自己紹介したのは、茶髪を短く切りそろえ、口元に小枝を咥えた少女だ。タンクトップにジーンズという地味な格好をしている。
「シルク・ブラウンアバター。召喚士。ご飯とお菓子さえくれれば僕は何でもするよ。たとえそれが召喚士業界で禁止されている、禁断の魔物を呼び出すことでも」
「いいのかそれ。ばれたら破門ものだぞ」
どうやら僕っ子らしい。関係ないけど。
と、レンがシルクの隣にいる少女に視線を向けた。綺麗な赤毛を一本の三つ編みにし、シックな雰囲気のワンピースを身にまとっている。彼女はレンと目が合うと、さっとシルクの背後に隠れた。
「あー、この子はエミリー。エミリー・スカーレッドフェアリー。妖精使い。僕の3つ年下の幼馴染だよ。内気であんま人と話すのが得意じゃないから、強引に話しかけたりしないでね」
シルクはそういい、エミリーに視線を向けた。
「エミリー、このお兄ちゃんに何か変な事されそうになったら大声で助けを呼べよ」
「なんもしねぇよ!!」
お次は紫色の髪を高い位置でツインテールにした少女。高貴な雰囲気のシックなドレスを着ている。
「お初にお目にかかります。エルシャール・パープルダンサー、長いのでエルと呼んでくださいな。職業は踊り子。敵の目をくらますことも、仲間を鼓舞することも可能ですわ。よろしくお願いいたします」
彼女はそういってフフッ、と笑った。
最後の一人。深緑色のゆるくパーマの掛かった髪を高い位置でポニーテールにし、オレンジの瞳である。淡い水色のアオザイを見にまとい、緑色の大きなリュックサックを背負っている。
「最後は私か…。うん。ユリイカ・ビリジアンガンナー。狙撃手をしているよ。何かすごい濃いメンバーだけど…、まあ、頑張ろう」
そういって軽く微笑む。何となくよろしく出来そうな雰囲気だ。
「んじゃ、出発すっぞー!!乗れ乗れーーー!」
そんなビビの声と共に、レンの視界が反転した。