誰も居ない場所
学校の放課後、下駄箱に誰も居ない、なんてことは無いだろうか。
大抵は友達と一緒に帰るんだけど、例えば、帰りのホームルームが他のクラスより早く終わった時とか、何かの居残りで帰りが遅くなってしまった時とか、そういう状況に出くわす事があるんじゃないかな。
そういう時、私は何だか言いようのない孤独感にとらわれてしまう。
このえもいわれぬ孤独感が、私は嫌いだった。
今日は、来週に控えた文化祭のしおり作りで、一人教室に残っていた。終わったのは、六時を回ってから。
それから帰り支度を整えて、教室を出る。もう日は落ちかけていて辺りは薄暗い。
生徒会委員というのは損な役回りで、こうして学校の行事ごとが有る度に、しばしば居残りをさせられる。
他の生徒会委員の皆は、もう部活に行ったり帰ったりしている。もう部活も終わってる時間だし、進路相談中の生徒以外はもう残ってないだろう。
ぺたん、ぺたんと、廊下を歩くスリッパの音だけが静かな空間に響いた。
ああ、嫌だ。この孤独感。まるで、学校の中に自分ひとりしか居ないみたいだ。
ちょっと考えれば、先生や居残り生徒が居る事は分かる。でも、分かっていても妙な不安が胸を押し潰すのだ。
教室は二階。会談を急いで駆け下り、下駄箱に向かう。勿論もう誰も居ない。
スリッパ達が無機質に整列している。私の下駄箱にだけ小さな運動靴が入っている。誰かが校内に居るのは分かってる。だけど、まるでこの光景が私が一人である事を告げているような気がして、怖くなった。
無意味に恐怖と不安を感じつつも、早くこの光景を消し去りたいと急いで靴を取り出し、代わりにスリッパを投げ込む。慌てたように靴を履き、ガラス戸をくぐって外に出た。
校門をくぐるまで、誰とも会わなかった。部活帰りも先生も。
いや、校門をくぐってからも。
道行く人も誰も居ない。
居残りの疲れも有るけど、何だか家までの道のりがとても長いもののように思えた。
国道沿いを通っていけば、車が走ってるだろう。勿論、誰かが居るってことだ。
でも、もし誰も居なかったら。車が一台も道を走っていなかったら。そんなことは無いんだけど、そう考えると何だか怖くなって、裏道を通ってしまう。
黄金の稲穂が占める田畑に沿う道を、私は歩いた。金色の稲穂は降り始めた宵の帳に色を奪われて、酷く無機質な物に見える。
立ち並ぶ家々も現実味の無い色でそこに鎮座していて、言葉の無い恐怖を送ってくる。
ゴーストタウンって、きっとこんな感じなんだろうな。
誰も居ない町。声無き重圧が包む空間。
考えちゃいけない。そう考えるのは、つまりは考えてるわけで。心のどこかで馬鹿馬鹿しく思いながらも、私はそんな事を考えながら家路を歩いた。
長い家路の末に、私は我が家に帰りついた。
私の家も、何だか廃屋みたいに見える。白い壁、白い屋根の家。白さは宵に掛かって奇妙な灰色をしていた。それが更に圧迫感と恐怖感を増している。
自分の家に入るのに、何を躊躇っているのか。何とも滑稽な情景。
ドアノブに手をかけて、回す。それだけの動作が、何だかとても長いもののように感じられた。
そして。
「ただいま〜。」
ドアをくぐる。玄関には私のブーツと、お母さんの靴とサンダル、お父さんの革靴が揃って並んでいた。
「おかえりなさい、今日は遅かったわね。ご飯、もう出来てるわよ。」
台所から、お母さんの声が聞こえてきた。
良かった。
私は無意味に胸を撫で下ろした。
えーと、朝早くにそこらへんを歩いた時に考え付きましたので、さくさくっと書いてみた所存。
とにかくもう、ぐわぁッ!って感じの文章になってますが、まぁいつもの事なので……精進するです(汗)
たまに、こういう時って無いですかね?小説ってことでモリモリ脚色してますが、似たような経験ある方居るかなーと。
下駄箱に一人しか居なくて、「あれ?さっきホームルーム終わったよね?俺、帰っていいんだよね?」とか考えた事が有るモンで……え、俺だけ?(笑)
あーあー、あるある!って方は、読みながら「あーあー、あるある!」とか思っていただけると幸いです(←?)