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第24話(ジェス視点)

 いつものように戦場に立った瞬間、違和感を感じた。

 今日は戦場に配置される魔道師の数が多い。

 最初の時よりも多すぎる……。


 魔道師はたいていローブを着ていることが多いので判断しやすい。

 補助魔法をローブの繊維に織り込んでおり、ローブは大事なマジックアイテムの1つなのだ。


 そのローブを着ている者があちらこちらに点在している。


 質より量。

 いくら俺の魔力が高くても、数には押される。

 こちらが1度魔法を打っている間、一度に広範囲の場所から複数の魔法を打たれてはたまらない。

 防ぐにしても限度があるのだ。

 今日は防御にも力を別けなければならないかもしれない。


 そう思っていた時だった。

 周囲が一度に騒がしくなる。


 どうしたのかと顔を上げた時、その原因に気づいた。


 目の前に立つ者はローブなんて着ていない。

 真っ白な肌。

 金の輝く髪。

 同じく金の瞳。

 とがった耳。

 ハイエルフの中でも最も神に愛された姿と証される色を持つ者。


 そんな存在が2人も立っていた。


「まったく……運が悪い」


 信じられない光景に自分の運のなさが呪わしい。


 ハイエルフ2人とこれだけの魔術師を揃えられたら勝てる見込みなどないだろう。

 運がよければ生き残れるかもしれないが、その可能性は低い。


 向こうのエルフ2人は、俺から視線を外さなかった。

 自分が2人の攻撃標的となっているのがそれでわかる。


 ざわめく周りの兵士達。

 彼らも生き残ることは難しいだろう。


 人間と干渉することを厭うはずのハイエルフがなぜ2人も戦闘に参加しているのかはわからない。

 だが、負ける戦いに命をかけなければならない事だけはわかっていた。







「くっ!」


 腕に走る痛みに苦痛がもれる。

 防御壁を貫く光線が腕を貫いていったのだ。


 光魔法しかないハイエルフに対し、こちらは闇も光もある。

 光の対極は闇。

 彼らにとって闇魔法はそうとう苦しいはずだ。

 こちらの防御壁は光属性にしている為、同属性によって威力は落とすことが出来る。

 けれど、相手は2人のハイエルフと多勢の魔道師だ。


 防御壁を重ね掛けして常に壁を強化していなければあっと言う間にこちらは丸焦げになってしまう。

 しかも防御壁に魔力を取られているせいで、攻撃魔法の精度が落ちている。

 これではいずれ魔力も尽き、後は殺されるだけとなるだろう。


「ぎゃあ!」


 すぐそばで男の悲鳴が上がった。

 防御壁を貫通していった炎魔法で兵士の一人が焼かれている。


 さっき重ね掛けしたばかりだというのに破られたということは、防御壁の精度が落ちているのだろう。

 魔力が底をつき始めているのだ。


「もう……持たないぞ! 逃げろ!」


 周りの兵士に声を掛けるが、逃げたくても逃げられない状況だった。

 安全なのは俺の張る防御壁の中だけで、周りは魔法攻撃の嵐なのだ。

 一歩防御壁から出れば、瞬時に魔法に焼かれるだろう。


 自分の防御壁を小さくし、別に新しい場所に防御壁を作る。

 これで兵士達を逃がすしか方法はない。


 兵士が新しい防御壁に守られているのを確認し、壁を後方へと移動させる。


 攻撃を防ぎつつ、壁を2つにわけて1つを移動させるなど初めてのことだ。

 1度に複数の複雑な魔法を織る。


「くっ!」


 精霊との契約魔法ではない俺には、一気に体への負担がくる。

 体がばらばらになりそうな激痛が走り、膝が折れた。


 何とか地面に倒れず、膝だけで体を支える。

 これで俺が倒れれば防御壁は消え、兵士達は死ぬしかない。

 気力だけが俺を支えていた。


 あともう少しで魔法が届かない場所へ移動させることが出来るところまできた時だった。

 突然強い眩暈に襲われ、次の瞬間、防御壁が消えた。


 しかも最悪なことに、ハイエルフの魔法が同時に俺を襲ってきたのだ。


 脳裏に若菜の顔が浮かぶ。


 若菜を助ける為に俺はしたくもない戦いをしていたのに、俺がここで死んではもう若菜を助けられない。


 若菜だけは守らなければ!

 俺はもう1度呪文を唱えた……。



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