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三題噺もどき5

夕食を囲む

作者: 狐彪
掲載日:2026/05/26

 




 テレビの中では、どこかの有名な芸人か芸能人が美味しそうに食事を食べている。

 顔に見覚えはあるんだけど、名前がこう……出てこない。あまり興味が無いから仕方ないと言いたい。最近の人ではなさそうなので尚更分からない。

「……」

 テレビの前には、先月末までこたつ布団が敷かれていたこたつ机が置かれている。

 今は、その上に数種類の食事が並べられ……ようは、家族で食卓を囲んでいるわけだ。

「……」

 隣では、1番下の妹が残ったサラダを食べている。野菜なら無限に食べられると豪語するだけある。私も嫌いではないが、そもそも量を食べられないので、さすがに残りとあってもあの量は無理だ。

「……」

 さらにその隣では、母が酎ハイを飲んでいる。

 我が家では毎日ビールと酎ハイが消費されているのだが、他の家庭はどうなんだろう。

 まぁ、去年から消費量は減っているが、それでも毎日飲んでいることに変わりはない。

 私は炭酸飲めないから、飲めるようになったとしても毎日は無理だろうな……。

 個人的に飲んでみたいと思うのは、カルーアミルクとか言うやつ。なんでもカフェオレみたいなのだと聞く。コーヒーのお酒があるのも驚きだし、甘いのなら飲んでみたいものだ。

「……」

 その母の隣。私と向かい合うようにして座るのは、1つ下の妹。次女と言った方がわかりやすいんだろうか……。

 箸を片手にテレビに見惚けている。テレビの芸人または芸能児を見ていると言うよりは、料理を見ている。食い意地が張っているわけでもないが、次女は食べることが好きなので。それでも太らないのは、運動部に入っているからだろう。それだけではないだろうけど。

「……」

 そう考えると、あの子は運動とかしてないはずなのに、細身だよなぁ。なんというか、細すぎる訳でもないのが不思議でもある。見ていて、不安になる細さではない、けど細いなと思う。

 髪の長さも相まっているんだろうか……。遺伝とかもあるんだろうか。一度だけ、あの子の母親にあったことがあるが、その母も細かったし……。我が家とは正反対だ。

「……」

 まぁ、太っている訳ではなく。一般的な女性の体型と言うだけで……多少太りやすくはある。私も小学生の頃は割と太っていたのだが、気づけば食事量が減り、ストレスを抱え、痩せて言った。ガリガリではないけれど。

「……」

 まぁ、そんな体型の話などどうでもいのだ。

 食事に集中しなければ。

 目の前に用意された、桜の模様が入った茶碗を手に取る。

 真っ白なご飯を箸で掴み、口に運ぶ。そのまま、近場にあったおかずも口に運んでいく。

 家では基本、大皿におかずが盛られている。それが当たり前だと思っていたので、それぞれの小皿におかずがすでによそわれている絵を始めてみたときは驚いた……と思う。かなり昔の事だから覚えていない。

「……」

 ……テレビを見ながら会話をするのは、母と次女。

 美味しそうとか、面白いとか、ここに行きたいとか、そんなことを言っている。たまにそれに末っ子も参加して。

「……」

 去年までは、ここにもう1人いた。

 ビールばかり飲んで、一日に5、6本も開けて。

 その上タバコまで吸ってたんだから、そりゃ健康に害をきたすわけだ。そんな歳でもないくせに。

「……」

 酒が入って、だからといって態度が悪くなるような人はこの家にはいない。ほんのちょっと、空気が柔くなって、口が軽くなって、楽しい話を沢山してくれる人だけ。趣味の話とか仕事の話とか。母も変わらず、楽しげに飲酒している。

「……」

 家の外からまた、サイレンの音が聞こえる。

 あの日、あの夜。

 それからの、1週間。

「もう食べないの?」

「……食べるよ」

 隣にいた妹から声がかかった。

 さすがにまだご飯も残っているし、出されたぶんは食べなくては。母に失礼だ。

 食欲が在ろうとなかろうと、出された分は、責任を持って食べる。

 それはもう、我が家では当たり前の事だ。……よくテレビなどで前日のあまりの何かをアレンジしてとか聞くけれど、アレを見るたびに余ることないだろうと思ってしまう程度にはしっかりと食べている。

「……」

 まぁ、考えても仕方ないことを考えるのは、今はやめておこう。











 お題:桜・コーヒー・テレビ

三題噺もどき―はっぴゃくななじゅうよん。

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