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悪役令嬢ですが、ドレスで世界を制しますわ

作者: 夜明 前
掲載日:2026/05/01


目を覚ました瞬間、すべてを理解した。


――ここは乙女ゲームの世界。

――そして私は、破滅フラグ満載の悪役令嬢、セシリア・ローゼンベルク。


「……最悪ですわね」


鏡に映るのは、完璧な美貌と、破滅確定の未来。


婚約者の王子はヒロインに恋をし、私は嫉妬に狂って追放――典型的な結末。

回避方法?簡単だ。


関わらなければいい。


「恋愛イベント?知りませんわ」


セシリアはスッと立ち上がると、ドレスの裾を整えた。


「それよりも――この世界、ファッションが遅れすぎですわ」


コルセットは苦しいだけ、色使いは単調、装飾は重すぎる。

前世で服飾オタクだった記憶が、怒りとともに蘇る。


「……よろしい。わたくしが変えて差し上げますわ」


その日から、セシリアの“戦い”は始まった。



「お嬢様、また針で指を刺して……」


「これは血の契約ですわ」


「ただの失敗ですよね?」


メイドの冷静なツッコミを無視し、セシリアは布と格闘する。


最初は酷かった。

ドレスは歪み、レースは破れ、使用人たちは震えた。


だが――


「……できましたわ」


数ヶ月後、彼女の手から生まれたのは、軽やかに揺れる新しいドレス。


無駄を削ぎ落としたシルエット。

動きやすさと美しさを両立した設計。

そして、今までになかった鮮やかな配色。


「……これ、売れますわね」


確信だった。



最初の顧客は、半ば無理やり捕まえた貴族令嬢だった。


「な、なんですのこのドレス……軽い!?」


「当然ですわ。踊るための服ですもの」


舞踏会当日。


その令嬢は、誰よりも目立った。


「どこの仕立て!?」

「今までと全然違う……!」


ざわめきは一気に広がる。


セシリアは遠くからそれを見て、静かに微笑んだ。


「流行は、こうして生まれますの」



気づけば、注文は殺到していた。


王都中の貴族が彼女のドレスを求め、

職人たちはその技術に驚き、

ついには王宮からも声がかかる。


「セシリア嬢、ぜひ王家御用達に――」


「お断りですわ」


「えっ!?」


「縛られるのは嫌いですの」


自由に作る。それが彼女の信条だった。



ある日、街で偶然、ヒロインと王子を見かけた。


仲睦まじく歩く二人。


本来なら、胸がざわつく場面――のはずだったが。


「……あら、素敵な色合わせですわね」


視線は服に向いていた。


「でもシルエットが古いですわ。もったいない」


完全に別方向だった。


そのまま踵を返す。


もう彼らの物語に、自分は必要ない。


「わたくしには、わたくしの舞台がありますもの」



数年後。


王都最大のファッションショー。


中央に立つのは、ひとりの女性。


かつて“悪役令嬢”と呼ばれた少女――セシリア。


「皆様、ごきげんよう」


彼女が手を上げると、照明が落ち、モデルたちが歩き出す。


観客は息を呑む。


誰も見たことのない美しさ。

誰も真似できない完成度。


「これが……新時代……!」


歓声が沸き起こる。


セシリアはゆっくりと目を閉じ、そして微笑む。


「破滅フラグ?そんなもの――」


軽くドレスの裾を翻す。


「布と一緒に縫い直して差し上げましたわ」


その日、世界は認めた。


悪役令嬢は、破滅しない。


――頂点に、立つ。

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