表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
純真の八年間  作者: missie
2/2

2

しかし両親の早逝は、若きヘレナの心に深い刻印を残した。ときに彼女は沈思するようになった。それでも家族に対してはいつも優しく、友人たちは彼女の内に明るく澄んだ魂を見ていた。


エリザヴェータの幸福を目にして、彼女は心から従姉の幸せを喜んだ。親しい者たちが安らぎと喜びを見つけること――それこそが、彼女の最も切実な願いだった。


その視線が三度、彼女の視界の端に現れたとき、少女はふと顔を上げた。そして、引き戻す間もなかった青年のまなざしを捕らえた。


それは偶然ではなかった。まるで定められていたかのようだった。


心臓が早鐘を打つ。これまで見たことのない瞳。青く、深く、五月のツァールスコエ・セローの正午の空のよう。


二人はどちらも目を逸らさなかった。


長い睫毛が影を落とす。高く通った鼻梁、滑らかな線。彫りの深い顔立ち。やや金を帯びた褐色の髪。稀有な気質。アドニスのようでありながら、冷たさはなく、温度を宿している。六フィートを超える長身で、細身。


その瞬間がどれほど続いたのか、誰にも分からない。数秒だったのかもしれない。あるいは、時間そのものが意味を失っていたのかもしれない。


彼は微かに微笑んだ。春のそよ風のように。燭光の中で神性の輝きを放つかのように――少なくとも、その瞬間のヘレナの目にはそう映った。


彼女は抗えずに惹きつけられた。憂いを帯びた眉間には鋭さがなく、ただ心地よい静謐だけがあった。


初対面。しかし、すでに幾度も人づてに名を聞いていた人物。


新郎新婦のために金冠を捧持する役を任された付添人の一人。


セルゲイの親友。故アレクサンドル二世皇帝の名付け子――


ボリス・ニコラエヴィチ・ユスポフ公。


その後の舞踏会で、ヘレナは彼と言葉を交わす機会を得られなかった。彼は朝霧のように彼女の視界から消え、人波に呑まれていった。


再会は、遥かイングランド、楓の葉が覆う九月のことである。


 


――

一八八四年九月五日


狩猟期。


その日、ヘレナはいつものように湖のほとりへ向かった。なぜかは自分でも分からない。ただの習慣だった。


湖面に映る自分の顔を見つめ、彼女は眉を上げ、口元を歪める。


ロシアの親族と比べればやや長い鼻。些細なことにいつも悩む眉。父ジョージ・オーガスト・アルバートの特徴がそこにあった。


その忌まわしい倒影を石で砕こうとしたとき、背後で落葉を踏む音がした。


「ヘレナ王女。」


二か月前、彼女を夜ごと眠れなくさせた青い瞳が、黄金色の夕照を湛えていた。


以前は青に見えたその瞳は、今はどこか灰色を帯びている。


ヘレナは一瞬、言葉を失う。視線を伏せ、さも無関心を装う。


だが風がいたずらに吹き、ボリスの帽子の下の整えられた鬢髪を乱す。


「覚えていらっしゃいますか。二か月前、エリザヴェータ公女の結婚式で。」


返答を待たず、彼は続けた。


ヘレナは決して忘れていなかった。むしろ、いつも彼のことを思っていた。彼女は手を握りしめ、彼のもとへ歩み寄る。


「もちろんです。あなたのことは、決して忘れません。」


彼女の言葉に、ボリスは眩しいほどの笑みを浮かべた。


「本当ですか?」


その問いは、十六歳の少女には致命的だった。


彼女ははにかみながら微笑む。


松葉が夕暮れにささやく。


「ボリス!」


呼び声が空気を裂く。ボリスはわずかに身をこわばらせる。


枫の木の陰から現れたのはアルバート。帽子の影の下で青い瞳が光る。


「皆が待っている。」


マールバラ公爵の弟である。


彼はヘレナに一礼した。


「殿下、突然の無礼をお許しください。」


「いいえ、むしろ私が邪魔をしたのかもしれません。」


ヘレナはボリスを見て微笑む。


「またお会いしましょう。狩猟の女神の祝福がありますように。」


 


日が沈んだ後、ボリスは思いがけず再びヘレナを見つけた。


芝生に横たわり、目を閉じている。


「ヘレナ?」


彼は低く、慎重に呼ぶ。


彼女は目を開き、彼を見上げる。


「ボリス! 驚きましたわ。あなたが来るとは思っていなかった。」


最後の陽光が彼を包む。温かく、穏やか。


「私も意外でした。まだここにいらっしゃるとは。」


彼は彼女の隣に腰を下ろす。


「美しい場所ですね。」


「あなたたちユスポフ家の子供は、皆同じ型から作られたみたい。最初は堅物だと思いましたわ。」


「どこからその印象が?」


「たぶん……あなた方の過去があまりに荘重だから?」


彼は笑う。


「もしそうなら、私は法典を抱えているはずですね。」


「それなら私は逃げますわ。」


彼は草の上に仰向けに倒れた。


「私と話していて……退屈ですか?」


「空をご覧なさい。半日も私たちを見ていて、雨を降らせないのだから。」


沈黙のあと、彼は言う。


「婚礼の三日後、あなたに手紙を書きました。」


 


理性を情熱が占めていた。彼は何度も書き、破り、また書いた。水晶のシャンデリアの下を行き来し、絨毯に跡がつくほど歩き回った。


だが結局、その未熟な言葉は灰に帰した。


今では、届かなかったことをむしろ幸運に思う。


 


並んで歩く帰り道。


「本当の友とは……ウォッカとキャビアのようなものだ。別々でも完全で、出会えば饗宴になる。」


「でも、その組み合わせは少し重たいかもしれませんわ。」


彼は照れたように微笑む。


教会の鐘が鳴る。


彼女は落ちた花弁を拾い、彼の掌に置いた。


「次に会うときは、きっと素敵なものになりますように。」


 


異郷の夜。


ボリスは花弁を胸ポケットに忍ばせる。


そこには、かつて存在し、今はもうない黄ばんだ手紙の記憶がある。


「尊敬するヘレナ王女。あなたが私を覚えていてくださるかは分かりません。ただ一つ確かなのは、キューピッドの黄金の矢が、いまも私の心を射抜いているということです……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ