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スイーツな次女とビターな王子  作者: あけはる


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3/4

聖糖祭の午後。


ヴィンタージュ伯爵家から戻ってきた私は

貴族学院に来ていた。


夕方から生徒会主催の

聖糖祭パーティーが行われるためだ。



「うーーーーーん」


スイーツ部の部室(という名の空き調理室)で頭を抱えていた。


机の上には試作品の山。


ビターショコラ、カカオムース、チョコタルト、

チョコプリン、チョコシュー、チョコマカロン。


(考えろ……!)


レオンハルト様に返事をする前に、

どうしても確かめたいことがあった。


それは私の実力だ。


夢は叶えたいし

迷うこともたくさんある。


ただ、スタイ王国に行くにしろ行かないにしろ、

私の技術は果たして、評価に値するのかどうか。


私の実力は通用するのか。

それを自分で見定めないといけない。


国外に飛び出し、この腕一本で

道を切り開いていけるのか。


少しでも、自信を持ちたかった。


「よし、決めた」


私は立ち上がる。


「もう一度“甘くないスイーツ”を作る!

そしてもう一回、レオンハルト様に評価してもらおう!」



日が傾き、

オレンジ色の光が学院の大広間に差し込む頃


学院の聖糖祭パーティーが始まった。


フローラはオズワルドと楽しそうに談笑している。


幸せそうな二人を見て

姉として非常に満足した私は


一応着飾ってはいるが、ここからはずっと

壁の花の予定だ。


というより、スイーツ爆食、の予定なのだ。


(おいしい、スイーツ、スイーツ、おいしい)


きらびやかなテーブルに並べられた珠玉のスイーツたち。

胸が高鳴る。


聖糖祭パーティーのために学院の料理人が腕によりをかけて作った

ケーキ、タルト、シュークリーム、マカロン・・・


(ああ、ここが楽園か・・・)


さっそく、つやッつやの苺がのった

ショートケーキに手を伸ばす―――


「アニー嬢」


背後から心地の良いテノールの声。

驚いて振り向くと


(レオンハルト様!?)


なぜここに。


私の動揺に

いたずらが成功したような表情のレオンハルト。


「招待してもらいました」


「あなたの作るスイーツをもう一度食べてみたくて」


心臓が跳ねる。


「それをお願いしに来たのです」


美しい灰紫の髪が

きらきらと煌めいている。


「今日でなくても構いません、

 もう一度私のためにスイーツをつくってくれませんか?」



(マカロン・・・・)


そう、昼から調理室にこもり


あーでもないこーでもないと

苦心してカカオの配合を調整。


そして、さっき完成したばかりの


ビターチョコマカロン。


それがまだ、調理室に置いてある。


もう一度評価をしてもらおうと考えて

勇んでオズワルド先輩に依頼を出したのはさっき。


こんなに早く会えるとは思ってもいなかった。


(でも、再評価してもらえる)


そのタイミングが早く来たと思えば


(これはチャンスなのでは・・・!)


「しょ、少々お待ちください・・・!」



私は急ぎ調理室までマカロンを取りに行き、

慌ててラッピングを整えて戻る。


レオンハルトはゆったりと

ワインを飲みながら壁にもたれ


テーブルに並べられたスイーツを眺めていた。


(ああ、壁に大輪の花が・・・)


立っているだけで美しいレオンハルト。


(いや、隣国の王子だよ・・・

 それがどうしてこんなことに・・・)


いろんな意味で緊張しながら


震える手で差し出す。


「ビターチョコマカロン、です」


「お、コロンとしていて

 なんだかかわいいですね」


気軽な様子のレオンハルトは

一口、マカロンを頬張った。


「……これは」


「ど、どうでしょうか」


「苦みと甘さのバランスが絶妙だね。

 正直とっても好みだ。何個でも食べられるな・・・」


そんな感想を言いながら


一歩アニーに近づいた。


「やっぱりぜひ、我が国に来てほしい」


真剣な色をのせたブルーの瞳がアニーを捉え、そして。


(え・・・?)


レオンハルトはアニーの手を取った。


その瞬間、

ざわりと会場が揺れた。


「スタイ王国の第2王子が手を!」

「婚約か」

「相手はリチェット侯爵令嬢だ!」


(か、勘違いー!

 ただの!就職!就職面談です!)


そんな周囲に気づいてもなお


「アニー嬢」


まだ真っ直ぐ私を見つめているレオンハルト。


「スタイ王国に来てください。

 新しい文化を作りましょう」


(ご、誤解を、解かなければ――)


あわあわしているアニーをよそに

ふっと微笑んだ彼は


繋いだ手を引きよせ

アニーの耳元で囁いた。


「……私と一緒に」


颯爽と去っていくレオンハルト。


急に近づいた距離を

時間差で自覚し頬が熱くなる。


(いい香り・・・って、はあ?!)


(最後の、何ーーー!?)


その夜

私は全然寝付けずに

ベッドの上でもんもんとしていた。


夢は、叶えたい。

けれど、国外に、一人で?

この腕一本で生きていくの?


ぐるぐる考えていた私の部屋に、

届けられた一通の手紙。


鮮やかな深紅のバラが添えられた

その差出人は


レオンハルト・グレイヴ。


震える手で開封する。


中に入っていたのは――


スタイ王国 王立菓子工房の雇用契約書。


そしてもう一枚。


婚姻の契約書。


「……は???」


手紙が床に落ちた。


そこに添えられた一文。


『工房運営には後ろ盾が必要です。

 私と婚約していただけませんか?』


「は・・・!?!?

 はああああああ!?」


更けていく雪の夜

アニーの絶叫がタウンハウス中に響き渡った。

普段は優男だけど、

今日はちょっと強引なレオンハルトです。


最後までお読みいただきありがとうございます。

楽しんでいただけましたら幸いです。

もしよろしければご評価やブクマなど応援いただけますと嬉しいです。

よろしくお願いします!

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