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スイーツな次女とビターな王子  作者: あけはる


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2/4

おくればせながらハッピーバレンタイン!


 優雅に歩いてきたオズワルドと

 そのオズワルドの客人だという美丈夫。


 ソファに座り私とフローラが挨拶を済ませる。


「紹介するよ。スタイ王国の僕の上司、

 いや、恩人と言った方がいいかな。

 レオンハルト・グレイヴ様だ」


その名を聞いた瞬間、私は思わず背筋を伸ばした。


(スタイ王国の、レオンハルト・・・!?)


つまり目の前の青年、


(第二王子じゃん!!!!!)


スタイ王国の第二王子。


昨年王位継承権を辞退し

兄である王太子を支えると早々に宣言したことで話題となった。


若干22歳、聡明で温厚。

他国の事情に明るく、未来の宰相とも目されている。


そしてもう一つ評判なのは、

彼の美しい容姿だ。


淡い灰紫色の髪。

冬の湖のように静かで深い青い瞳。

小さく整った鼻筋に上品な唇。


微笑み一つで場を支配するような美―――


(いや、まぶしすぎるのだが)


思わず心の中で呟いてしまう。


一方フローラは、紹介されるも挨拶した後は

恋する乙女らしくオズワルドを見つめており、

完全にこちらの存在を忘れている。


「そしてこちらは、リチェット侯爵家の次女アニー嬢。

 まだ貴族学院の学生だが、

 国内でも指折りの菓子作りの腕を持っている」


オズワルドの紹介に、私は盛大にむせた。


「ゆ、指折り!?」


「謙遜するな。言葉通りだろう。

 学生ながら去年の全国菓子コンテスト3位だ」


レオンハルト様は、興味深そうに目を細めた。


「……なるほど」


低く静かな声。


「実は、私は甘味があまり得意ではないのですが」


(えっ)


「オズワルドが、あなたの菓子は特別だと強く勧めるので」


(ええええ!?)


ちょっと待ってほしい。

状況を整理すると、


この人は甘いものが苦手。

でも、

私はこの人へ(不可抗力ながら)スイーツを渡さねばならない・・・?


(さ、先に言ってくれええ!!!)


・・・詰んだ。



オズワルドとフローラが

楽しそうにガトーショコラを分け合っている一方―――


「こ、こちらをどうぞ……」


私は震える手で

『絶品!ほろ苦半熟とろけるガトーショコラ(改)』を差し出していた。


いや、自信作。

自信作なんだけどね?


自分で食べるつもりだったのよ、自分で・・・はあ・・・


どうせ、アツアツ甘々な妹カップルを横目に食べるのだからと

今回はビターな味わいに挑戦した。


カカオ濃度を極限まで調整した渾身の一品。

なのだけれども。


……まさか甘味嫌いにあげることになるとはね。


レオンハルト様はそっと受け取り、


静かに一口。


沈黙に暖炉の薪が、ぱちりと弾ける。


(もう、どうにでもなれ)


もはや諦観の表情のアニー。


すると


「……美味しい」


え?


「苦味と香りが見事に調和している。

 こんな菓子は初めてだ」


予想外の評価に固まる私。


「これは……あなたが?」


「は、はい……」


彼はしばらくケーキを見つめ、静かに言った。


「アニー嬢。あなた――店を持つ気はありませんか?」


(え?)


戸惑う私にかまわず話し続ける目の前の美しい人。


「スタイ王国は、王立菓子工房を建設中です。

 実は、私はその運営を任されているのですが」


深いブルーの瞳が私を捉える。


「アニー嬢、工房専属のパティシエになりませんか」


(は?)


「ちょ、ちょっと待ってください!

 私まだ学生で、それに・・・」


「承知しています」


落ち着いた声。


「実は事前にオズワルドから聞いていました。

 あなたは菓子作りに人生を懸けている、そうですね?」


――心臓が、跳ねた。


「あなたのスイーツには今までにない感性がある。

 新しい顧客を取り込めるかもしれない」


そう続けるレオンハルト様の言葉は

アニーの胸を熱くした。


私の夢。


今は学生だから好き勝手が許されているけれども、

例えば姉メリンダに子供が生まれたら?

タウンハウスは出なければならない。

いつまで両親の脛をかじるの?

独り立ちするには

貴族令嬢にふさわしい職を得ないといけない。


自分の店を持って

理想のスイーツを追い求めるなんて。


とても手の届かない夢。


叶うはずがないと、半は諦めていた夢。


それをこの人は―――


揺れているアニーを見てレオンハルトはほほ笑む。


「すぐに答えは要りません。

 あなたの意思で選んでください」


(どうして)


どうしてそんな顔をするの。


まるで――

私の未来を信じているみたいに。



帰りの馬車はガタガタと揺れながら

タウンハウスへの道を進んでいる。


フローラは幸せそうにオズワルドとの話をしている。

この後の学院のパーティ-にも一緒に出席するらしい。


私はというと、フローラの話は耳半分、

窓の外を見ながら、放心していた。


スタイ王国の王立菓子工房。

専属パティシエ。


突然舞い込んできた夢のような話。


(私は……)


聖糖祭は、想いを伝える日。


フローラは恋を実らせ、

そして私は――


人生を選ぶ日になるのかもしれない。


あと2話くらいの予定です・・・!


最後までお読みいただきありがとうございます。

楽しんでいただけましたら幸いです。

もしよろしければご評価やブクマなど応援いただけますと嬉しいです。

よろしくお願いします!

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